ハルカ・カナタの宇宙戦争

morikawa

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第2章

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 彼女の脳には、本人も知らない間に機械が埋め込まれていた。だが、別に手術で埋め込まれたわけではない。

 彼女の頭の中にある機械は、極めて微小なもの。

 それは、ナノマシンと呼ばれるものだった。

 おそらくは呼吸の際に吸い込んだのか、水か食べ物に含まれていたのだろう。ウイルスや細菌の類と同じだ。

 だが、その機械はウイルスよりも性質が悪かった。最悪だった。彼女の脳を乗っ取り、その支配下に置いたのだ。

 そのナノマシンからの初めての指令で、彼女は自分が宇宙人と呼ばれる存在のスパイ、協力者のようなものになってしまったことを悟る。

 彼女は驚き、困惑した。だが、誰にも言うことはできない。そのような行為はナノマシンによって取れなかったからだ。

 しかし、やがて次第に彼女はその状況に慣れていった。

 ナノマシンは彼女の行動を監視し、地球に関する情報を収集するのが主な目的だったようだ。

 自分の行動が、思考が、逐一どこかに転送されているというのは気味が悪かったが、実害は無かった。

 高い身体能力を持つ彼女は、他にも工作員としての訓練を積まされていた。

 だけど、それも他の協力者から送られてくる見た事もない武器の扱いを、ほとんどは自分だけ、まれに近隣の協力者と共にこっそりと練習するだけで、望まない習い事を強要される程度の負担だった。

 だから彼女が、その不快さに目をつぶっていれば、今までと変わりのない生活を送ることが出来た。ナノマシンに感染していない家族との暮らしも、友人達との学校生活も。

 だが、それは突然破られる。

 彼女を操る異星人の艦隊が太陽系に向かうという連絡を受けたからだ。

 運悪くそれは学校で、その驚愕を表情に出さないのようにするのに彼女は苦労した。友人達に気付かれてはいないようだが、その後も不安でいっぱいだった。

 しかし、末端の協力者である彼女には当然のことながら、異星人の行動について詳細は知らされていない。昨日から世間を賑わす黒い飛行体についても。

 自分が心配してもしょうがない。今まで通りやるしかないと彼女は開き直った。だが、偶然にも彼女はこの事態の中心に放り込まれる。

 見てしまったからだ。早退したはずの友人達が、宇宙船から降りてくるのを。

 彼女は直感的に気付いた。これは異星人達に見られてはいけないことだと。だが、ナノマシンは命令する。詳細を見届けろと。

 宇宙船は光学迷彩でそのほとんどを隠している。友人の家より低い位置にあるこの路地からだけ、運悪く見えてしまったようだ。

 船体の識別はほどんど出来そうにもないが、素振りから黒髪の友人が遠隔で船体を操作しているようだ。

 友人達が家へ入ってしまうと、彼女は逃げるように駈け出した。言いようのない恐怖が襲ってきたからだ。

 だが、それはすぐに現実になってしまう。異星人達は彼女の見た光景だけで友人達を分析し、彼女にそれへの対応を命じてきたのだ。

 それは、宇宙船とその操作ユニットであろう黒髪の友人の拿捕もしくは破壊。

 そして、そのパイロットと目される笑顔の似合う友人の殺害。

 天然で優しい、大事な大事な友人は、強力な共振能力者と断定された。彼女は異星人にとってもっとも危険な存在。最重要事項として彼女の排除が要求された。

 カナタを殺す? 私が? 彼女は震えた。

 しかし、命令には逆らえない。

 いっそ自分が死んでしまえばとも考えた。だが、作戦中の自殺をナノマシンは認めなかった。絶望の内に、彼女は数人の協力者達を従えて行動を開始する。

 ごめんね、カナタ、ハルカ。お詫びにもならないけど、命令を果たして自由になったら、私もすぐに追いかけるから。ごめんね…
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