放課後の図書室

くねひと

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#23 日常的な風景と非日常的な空間

 それにさ、何かぶら下げてんだよ。それがユラユラ揺れててさ…。
 何、それ?
 分かんない。何かちょっと小さい金属みたいなもの。また戻ってくるとき良く見てみたら?
 それにしても両手を縛られて、おまけに首輪までされちゃってさ、一体何なの、あの二人…。

 SMじゃないの?
 SMかあ…。あんな風にされて羞ずかしくないのかな?
 良く分かんないけど、ああいう人たちにとっては羞ずかしいのがいいんじゃないの? だってもああなっていたし…。
 ふ~ん、そういうものなのかな…。

 妄想が創り出した女生徒の席を通り過ぎ、僕たちは図書室の突き当りまで進んだ腰近くまでの高さの低い本箱が壁一面しつらえてあり、その上の窓には日に焼けた白いカーテンが掛けられている。
 ここで書庫に戻るのだろうか?
 だとしたら後もう少しの我慢だ……。
 そう思ったとき、突然視界がパッと開けた。
 竜崎がカーテンを引いたのだ!

 前にも言ったが、僕達の高校の敷地は高低差がある。目の前には一段低い運動場……。そしてそこには運動部員たちが練習で汗を流しているのだった。
 驚いた僕は窓から離れようと強く腰を引いたのだが、そうすると急な動きに分銅が跳ね上がり、最も鋭敏な箇所をまたしても強く刺激することとなるのだった。

「ぐううう…」
「あー…、そんな風に体を動かすから…」
 竜崎は哀れみとも嘲りとも受け取れるような笑みを浮かべる。

「ほら、もっとこっちに来い」
 林がチェーンリードを引き寄せようとする。
「大丈夫だよ。光の入り具合でこっちから向こうは見えても、向こうからこっちは見えないさ」
 更に僕をさとすように林は言葉を続けた。
 何にしろ抵抗しても首が締め付けられるだけだ……。
 林の言葉を信じた訳ではなかったが、僕は恐る恐る窓辺に近づいた……。

 野球…、サッカー…、そして陸上競技………。
 青空の下、みんな運動に汗を流している………。
 高校生らしい、健全な風景だった。
 それに引き換え、男奴隷という立場に堕とされた今の自分は何なのだろう?
 彼等彼女等が健全な分、余計に自分の今置かれた状況がアブノーマルに思えてくるのだ。

 つい数週間前までは僕も普通の高校生だったのだ。
 それなのに……。
 もう自分は普通の高校生には戻れな…。
 そう思うと、無性に哀しくなり、ついで怒りがこみ上げてくる。

 そして高手小手の縄目が何とも耐え難いものに思え、僕は縄抜けしようとがむしゃらに体を揺すってみるのだった。
 当然、急所にぶら下げられた分銅も跳ねまわったが、もはやそれくらいの痛苦は何ともなかった。

「おいおい、どうした、リョウ?」
 突然僕が狂ったようにもがき出したので、竜崎達3人は慌てたようだ。
 まるで暴れ馬を御するかのように、林がリードチェーンを曳き、竜崎が棒鞭で僕のお尻を叱咤する。
 しかし、僕はそれでも動きを止めなかった。

 ちくしょう! ちくしょう!
 竜崎をののしっているのか?
 それとも不甲斐ない自分にか?
 僕の心は荒ぶっていた…………。
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