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41.んぴょぉぉぉぉんとキス
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「このナイフ、お気に召しましたか。ではお一ついかが?」
「ほ、欲しいです!」
「ペーパーナイフ」
カラン――。
「スゴォォォイ」
「さあ、受け取って」
「ありがとうございます!宝物にします!あ、あの、お名前は」
「ああ、俺の名前はジュン、で構わないよ。フルネームは仲良くなったあとで、ね」
「仲良くしてくれるんですかぁ?嬉し~。この辺りに喫茶店があるんですけどぉ、このあとって……」
このあとって?
時間はあるかって?
暇かって?
暇に決まってんだろぉぉぉぉぉぉ!
暇にするわ、何がなんでも時間をこじ開けて、時空間を捻じ曲げてでも、時間を作ってみせるわ!
んびょぉぉぉん、とな!
「うーむ、ちょっと忙しいけれど……もちろん時間を作るさ。君のためにね」
「キャーーーありがとうございます!実は私……独身で、ジュンさんにはその……か、かの、かの」
彼女かな?ああ当然いない。
いたこともないし、存在すらしたことがないし、概念ごと時空間の狭間に消し飛ばそうとしたこともあったが、今この時、知ったよ。
君しかいない、とね。
っしゃあ!神よ、ありがとう。ナイスススキル!
いっちょ決めます!男ジュン!いっきまぁぁぁす!
「彼女かな?ああ、つい最近――」
「彼がいるぞ」
ん?レイア?割り込んでこないでもらえるか?
「ゲホンッ、彼女なら――」
「ジュンには結婚を誓った彼氏がいる。だから、君の好意は受け取れない。すまないな」
……あれ?
お前の話してる?俺の話だっけ?
え?時空間歪んでる?
誰が誰に聞いてて、誰が答えてんの?
「彼氏……ですか。男好きなんですか、ジュンさんは。私が舞い上がってるのを、楽しんでたんですか!」
あ、やっぱ歪んでるわ。
酷い歪みだこりゃあ。タイムパトロール呼ばねえと、歴史が変わるぞこれ。
「ジュンはそんな男じゃない!君を傷つけまいと、誘いを受けようとしただけだ。不器用な優しさが分からないのかッ!」
はあ。
……はあ。
もう、ため息しか出ねえよ。
どうしてこうなる?ねえ、どうして?
マヂムリなんですけど。
「分からない、分かりたくない!男好きなんて気持ち悪い!死ね!」
えぇぇぇぇ、そこまで言われる?
なんかムカついてきたけど、一旦おいといてだな、気持ち悪い発言は取り消したほうがいいぞ。
心根で差別するやつは好きにしたらいいが、その思いを他人にぶつけて傷つけるのは、ナシだぜ?
もっと人を愛せ、受付嬢よ。
いや違う!
よく考えてみれば、罵りたくなるほど、マジだってことだな?
俺が好きなんだな、そんだけ好きってことだよな?
「よし黙れレイア。ここは俺に任せろ」
「いいや我慢できない!貴様ッ!ジュンをバカにしたな!」
えええええええ!?
俺と彼女の会話だったよね?
なぜお前が入る、割り込んでくるんだ。
あー、アイツの動き悪いわ。よしっいっちょ代わろうで、ボクサーのパンツごと脱がしてるようなもんだぞ?
ここ、俺のリングだから。
俺の土俵、俺時空間。
だからワタシ黙れ言たね。
ユノムセイン?
「人が人を愛しているだけだ。それをバカにする貴様は、人ではないッ!」
「う、うるさい!」
「そんなんだから独身なのではないか?もっと人を愛せ、人へ優しさを向けろ!人の心を慮れッ!」
「どうして、どうして……優しくしてるのに、どうして……」
あーあ、泣かせちゃった。
よし、ここで俺が優しく介抱して、レイアはクソバカだから、男女の機微なんて知らないんです。と伝えよう。伝わるかな?
いや、まっすぐ言ったほうがいいな。
女が好きです。ヤりたいですと。
うん、それがいい。
「レイア黙れッ!俺が代わるッ!俺にも言わせろッ!」
「……ああ、すまない。出しゃばってしまった」
よぉぉし!邪魔者は消えたぞお嬢さん。
「俺をみてくれ。さあ、俺を見ろ!」
「……な、なんですか」
「俺は君が好きだッ!女が大好きだッ!喫茶店なんかどうでもいいから、今すぐに個室の暗い部屋へ案内してくれ!」
よし言えた。
落とし文句としてはウンコだが、これで分かったろう。
俺は女が大好きな、ただの童貞であることをなッ!
「ジュン、何を、言ってるんだ……」
うーん、レイアへの弁明を考えてなかった。
だがしかし!しゃーない!
まずはご卒業させていただき、大人になった俺が色々と考えを巡らせて、レイアも納得のハッピーエンドへと向かうだろう。
よし、まずはヤラせてもらわねば。
「さあ、行こう!楽園へ!」
「……男が好きなわけでは、ないんですか?」
「さっきからそう言ってんじゃん!早く!なんか、長引けば長引くほど、怖くなってくるんだ。神がいたずらしそうで怖いんだ!早く!」
「い、言っている意味が……」
「ヤろう!俺は君とヤりたいんだ!もう分かるだろうがッ!」
「ヤル、ワタシト」
あれ?外国の方?直接的すぎてフリーズしただけ?
まあなんでもいいや!
「俺の手に掴まって、さあ早く!なんか怖くなってきた!このままだと、神のいたずらがぁぁぁ!」
「わ、分かりました。ヤります!ジュンさんと!」
「よし言質取った。キタキタキタキタキタっ!ご卒業アザした!今からご入学してきます!」
自分でも言ってる意味は分からんかったが、んなことはどうだっていい。
俺は、彼女の手を握り走り出した。
マイファザー。
マイマザー。
アイムファインセンキュー、エンジュー?
サンキューオール!
んぴょおぉぉぉぉぁぉんッ!と軽やかにギルドを飛び出した。
カランコロン――。
そして俺は、愕然とした。
「……ジュン」
「ラディッツ……じゃなくてザロッツ」
ザロォォォォォォッツ、なんでここにいるんだ!
いや気にするな、知らん!捨て置けい!
ザザザッ――。
彼女の手を引き走り抜けようとした。
だがしかし、ゴツゴツした職人の手が俺の腕を、掴んで放さない。
さっきから足を動かしてるのにぃぃぃ!
誰か男の人ー!
「ジュン、俺を見てくれ」
「……見たら、放してくれるか」
「ああ」
なぜ俺がこんな気持になるんだ。
くるりと振り返ると、今にも泣き出しそうなザロッツの顔があった。
うーむ、どうしてこんなに申し訳ないと思うのだ。
コイツ、いい奴だし男気あるし、男としてはカッコいいとは思う。
好きな人のために、地獄を見れるんだろ?
立派よ立派。
でも俺は、女が好きなんだよお!
「最後に一目逢いたくて来たんだ……」
「はい」
「その女性は?」
うーん、ごめんよザロッツ!
殴られるから許してくれい!
「……今から二人でヤるんだ」
カランコロン――。
「ジュン!お前は私を騙していたのかッ!?」
ザロッツの越しに見える、怒りに震えるレイアの姿。
うん、お前は騙してた。
それはそう。
でも、ザロッツは騙してないぞ。
正直に言ったからね?女が好きって言ったのに、雄汝禁教に入信して、俺と結婚するって言ったんだからね。
「ジュン……どうして彼女なんだ?それだけ教えてほしい」
いいじゃん。化粧はちょびっと濃いけど、すんごい可愛い。ひと目見た時から、ずーっと可愛いと思ってたよ?ケバいとは思ったけど、可愛いなーって。マジマジ。これはマジ。
だからです。
「彼女が美しいからさ」
ザロッツは唖然としていた。
そのリアクションはおかしいぞ。俺は女が好きで、彼女が美しいからヤる。
納得感のある顔をするのが普通ですよー。ザロッツ、覚えとけなー。
「ジュンッ!どうして私に言ってくれなかった!どうしてひと言も言ってくれなかったんだ!私たちは仲間だろぉぉぉぉぉッ!」
すまないレイア。
ああ、お前が怒る気持ちは正しいよ。
たった二日だけど、お前はいい奴だと分かった。
俺のことを気づかい、仲間を笑顔にしてくれて、そして仲間のために怒ってくれた。
そうだな、嘘を言って悪かった。
「すまないレイアッ!これが本当の俺だッ!俺はどうしても彼女とヤりたいんだ!」
シンと静まり返る町。
いつの間にか、皆の視線が集まっている。
恥ずッ。彼女とヤりたいんだ!って、どんなラブコメにもないだろ、たぶん。いや知らんけど。
すると俺の腕をするりとなぞるように、諦めきれないとでも言いたげに、彼の指なぞっていく。
そしてスッとゴツゴツした感触がなくなった。
「……悪いザロッツ、別の人を見つけてくれ」
お前は、いい奴だ。
きっといい男が現れるさ。
俺なんかよりも、もっとずっといい男がな。
俺は走り出し……てなかった。
足が空回りして……ええええ?
今、終わったやんこのくだり。
なんでまた掴んでらっしゃる?
約束違うけど。
俺はまた、なんでか知らんけどまた、掴まれたので、また振り返った。また!
すると、潤んだ目でザロッツが俺を見つめている。
はあ。
なんかヤヴァそうなんだけどぉぉぉ!?
「ジュン、やっぱり我慢できないッ!」
チュッ。
「……んッ!?んんん!?んーッ!」
「んはあ、はあ、すまない。入信する前に一目逢いたかっただけなのに、健気なキミを見てると、我慢ができなかった。許してくれ!」
「……んー、ん?んん、んー?ん?なに今の」
「キス……をしてしまったな。雄汝禁教では禁じられてるはずなのに、ごめん。我慢、できなくて……」
……。
…………。
んー、なるほど。
そうか、ふーん。
俺はキスというやつをしたわけか。
ふーん。
「ひゅー!」
「若いっていいなぁ!」
「そのままヤッちまえよ!」
ふーん。
おけおけおけおけおけおけおけおけおけおけおけ。
全部了解。
全て把握。
オールオッケー。
パーフェクツ。
アイアンダスターンド。
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん、オッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケー」
「そ、そうか。オッケーか。良かったあ」
よーし、大丈夫だぞ俺。
俺は俺だ。な~んにも変わっちゃあいない。
よしよしよしよしよしよしよし、ちょっと混乱してるな、うん。
「ジュン!いや、汝様!雄汝禁教の布教がしたいなら、言ってくれればよかったんだ!私は、恥じているッ!君が正直に打ち明けられる空気を作れなかったことを、すまないと思っている!許してくれ!」
まだ、死ぬな俺。
なーに、たかがキスだろ?
ハハハ。たかがファーストキッスじゃないか。
甘酸っぱいと言われている、例のキスというやつさ。
ハハハ、どんな味だったかなあ?ハハハ。
ハハハハ。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
作者の励みになりますので、♡いいね、コメント、☆お気に入り、をいただけるとありがたいです!
お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
「ほ、欲しいです!」
「ペーパーナイフ」
カラン――。
「スゴォォォイ」
「さあ、受け取って」
「ありがとうございます!宝物にします!あ、あの、お名前は」
「ああ、俺の名前はジュン、で構わないよ。フルネームは仲良くなったあとで、ね」
「仲良くしてくれるんですかぁ?嬉し~。この辺りに喫茶店があるんですけどぉ、このあとって……」
このあとって?
時間はあるかって?
暇かって?
暇に決まってんだろぉぉぉぉぉぉ!
暇にするわ、何がなんでも時間をこじ開けて、時空間を捻じ曲げてでも、時間を作ってみせるわ!
んびょぉぉぉん、とな!
「うーむ、ちょっと忙しいけれど……もちろん時間を作るさ。君のためにね」
「キャーーーありがとうございます!実は私……独身で、ジュンさんにはその……か、かの、かの」
彼女かな?ああ当然いない。
いたこともないし、存在すらしたことがないし、概念ごと時空間の狭間に消し飛ばそうとしたこともあったが、今この時、知ったよ。
君しかいない、とね。
っしゃあ!神よ、ありがとう。ナイスススキル!
いっちょ決めます!男ジュン!いっきまぁぁぁす!
「彼女かな?ああ、つい最近――」
「彼がいるぞ」
ん?レイア?割り込んでこないでもらえるか?
「ゲホンッ、彼女なら――」
「ジュンには結婚を誓った彼氏がいる。だから、君の好意は受け取れない。すまないな」
……あれ?
お前の話してる?俺の話だっけ?
え?時空間歪んでる?
誰が誰に聞いてて、誰が答えてんの?
「彼氏……ですか。男好きなんですか、ジュンさんは。私が舞い上がってるのを、楽しんでたんですか!」
あ、やっぱ歪んでるわ。
酷い歪みだこりゃあ。タイムパトロール呼ばねえと、歴史が変わるぞこれ。
「ジュンはそんな男じゃない!君を傷つけまいと、誘いを受けようとしただけだ。不器用な優しさが分からないのかッ!」
はあ。
……はあ。
もう、ため息しか出ねえよ。
どうしてこうなる?ねえ、どうして?
マヂムリなんですけど。
「分からない、分かりたくない!男好きなんて気持ち悪い!死ね!」
えぇぇぇぇ、そこまで言われる?
なんかムカついてきたけど、一旦おいといてだな、気持ち悪い発言は取り消したほうがいいぞ。
心根で差別するやつは好きにしたらいいが、その思いを他人にぶつけて傷つけるのは、ナシだぜ?
もっと人を愛せ、受付嬢よ。
いや違う!
よく考えてみれば、罵りたくなるほど、マジだってことだな?
俺が好きなんだな、そんだけ好きってことだよな?
「よし黙れレイア。ここは俺に任せろ」
「いいや我慢できない!貴様ッ!ジュンをバカにしたな!」
えええええええ!?
俺と彼女の会話だったよね?
なぜお前が入る、割り込んでくるんだ。
あー、アイツの動き悪いわ。よしっいっちょ代わろうで、ボクサーのパンツごと脱がしてるようなもんだぞ?
ここ、俺のリングだから。
俺の土俵、俺時空間。
だからワタシ黙れ言たね。
ユノムセイン?
「人が人を愛しているだけだ。それをバカにする貴様は、人ではないッ!」
「う、うるさい!」
「そんなんだから独身なのではないか?もっと人を愛せ、人へ優しさを向けろ!人の心を慮れッ!」
「どうして、どうして……優しくしてるのに、どうして……」
あーあ、泣かせちゃった。
よし、ここで俺が優しく介抱して、レイアはクソバカだから、男女の機微なんて知らないんです。と伝えよう。伝わるかな?
いや、まっすぐ言ったほうがいいな。
女が好きです。ヤりたいですと。
うん、それがいい。
「レイア黙れッ!俺が代わるッ!俺にも言わせろッ!」
「……ああ、すまない。出しゃばってしまった」
よぉぉし!邪魔者は消えたぞお嬢さん。
「俺をみてくれ。さあ、俺を見ろ!」
「……な、なんですか」
「俺は君が好きだッ!女が大好きだッ!喫茶店なんかどうでもいいから、今すぐに個室の暗い部屋へ案内してくれ!」
よし言えた。
落とし文句としてはウンコだが、これで分かったろう。
俺は女が大好きな、ただの童貞であることをなッ!
「ジュン、何を、言ってるんだ……」
うーん、レイアへの弁明を考えてなかった。
だがしかし!しゃーない!
まずはご卒業させていただき、大人になった俺が色々と考えを巡らせて、レイアも納得のハッピーエンドへと向かうだろう。
よし、まずはヤラせてもらわねば。
「さあ、行こう!楽園へ!」
「……男が好きなわけでは、ないんですか?」
「さっきからそう言ってんじゃん!早く!なんか、長引けば長引くほど、怖くなってくるんだ。神がいたずらしそうで怖いんだ!早く!」
「い、言っている意味が……」
「ヤろう!俺は君とヤりたいんだ!もう分かるだろうがッ!」
「ヤル、ワタシト」
あれ?外国の方?直接的すぎてフリーズしただけ?
まあなんでもいいや!
「俺の手に掴まって、さあ早く!なんか怖くなってきた!このままだと、神のいたずらがぁぁぁ!」
「わ、分かりました。ヤります!ジュンさんと!」
「よし言質取った。キタキタキタキタキタっ!ご卒業アザした!今からご入学してきます!」
自分でも言ってる意味は分からんかったが、んなことはどうだっていい。
俺は、彼女の手を握り走り出した。
マイファザー。
マイマザー。
アイムファインセンキュー、エンジュー?
サンキューオール!
んぴょおぉぉぉぉぁぉんッ!と軽やかにギルドを飛び出した。
カランコロン――。
そして俺は、愕然とした。
「……ジュン」
「ラディッツ……じゃなくてザロッツ」
ザロォォォォォォッツ、なんでここにいるんだ!
いや気にするな、知らん!捨て置けい!
ザザザッ――。
彼女の手を引き走り抜けようとした。
だがしかし、ゴツゴツした職人の手が俺の腕を、掴んで放さない。
さっきから足を動かしてるのにぃぃぃ!
誰か男の人ー!
「ジュン、俺を見てくれ」
「……見たら、放してくれるか」
「ああ」
なぜ俺がこんな気持になるんだ。
くるりと振り返ると、今にも泣き出しそうなザロッツの顔があった。
うーむ、どうしてこんなに申し訳ないと思うのだ。
コイツ、いい奴だし男気あるし、男としてはカッコいいとは思う。
好きな人のために、地獄を見れるんだろ?
立派よ立派。
でも俺は、女が好きなんだよお!
「最後に一目逢いたくて来たんだ……」
「はい」
「その女性は?」
うーん、ごめんよザロッツ!
殴られるから許してくれい!
「……今から二人でヤるんだ」
カランコロン――。
「ジュン!お前は私を騙していたのかッ!?」
ザロッツの越しに見える、怒りに震えるレイアの姿。
うん、お前は騙してた。
それはそう。
でも、ザロッツは騙してないぞ。
正直に言ったからね?女が好きって言ったのに、雄汝禁教に入信して、俺と結婚するって言ったんだからね。
「ジュン……どうして彼女なんだ?それだけ教えてほしい」
いいじゃん。化粧はちょびっと濃いけど、すんごい可愛い。ひと目見た時から、ずーっと可愛いと思ってたよ?ケバいとは思ったけど、可愛いなーって。マジマジ。これはマジ。
だからです。
「彼女が美しいからさ」
ザロッツは唖然としていた。
そのリアクションはおかしいぞ。俺は女が好きで、彼女が美しいからヤる。
納得感のある顔をするのが普通ですよー。ザロッツ、覚えとけなー。
「ジュンッ!どうして私に言ってくれなかった!どうしてひと言も言ってくれなかったんだ!私たちは仲間だろぉぉぉぉぉッ!」
すまないレイア。
ああ、お前が怒る気持ちは正しいよ。
たった二日だけど、お前はいい奴だと分かった。
俺のことを気づかい、仲間を笑顔にしてくれて、そして仲間のために怒ってくれた。
そうだな、嘘を言って悪かった。
「すまないレイアッ!これが本当の俺だッ!俺はどうしても彼女とヤりたいんだ!」
シンと静まり返る町。
いつの間にか、皆の視線が集まっている。
恥ずッ。彼女とヤりたいんだ!って、どんなラブコメにもないだろ、たぶん。いや知らんけど。
すると俺の腕をするりとなぞるように、諦めきれないとでも言いたげに、彼の指なぞっていく。
そしてスッとゴツゴツした感触がなくなった。
「……悪いザロッツ、別の人を見つけてくれ」
お前は、いい奴だ。
きっといい男が現れるさ。
俺なんかよりも、もっとずっといい男がな。
俺は走り出し……てなかった。
足が空回りして……ええええ?
今、終わったやんこのくだり。
なんでまた掴んでらっしゃる?
約束違うけど。
俺はまた、なんでか知らんけどまた、掴まれたので、また振り返った。また!
すると、潤んだ目でザロッツが俺を見つめている。
はあ。
なんかヤヴァそうなんだけどぉぉぉ!?
「ジュン、やっぱり我慢できないッ!」
チュッ。
「……んッ!?んんん!?んーッ!」
「んはあ、はあ、すまない。入信する前に一目逢いたかっただけなのに、健気なキミを見てると、我慢ができなかった。許してくれ!」
「……んー、ん?んん、んー?ん?なに今の」
「キス……をしてしまったな。雄汝禁教では禁じられてるはずなのに、ごめん。我慢、できなくて……」
……。
…………。
んー、なるほど。
そうか、ふーん。
俺はキスというやつをしたわけか。
ふーん。
「ひゅー!」
「若いっていいなぁ!」
「そのままヤッちまえよ!」
ふーん。
おけおけおけおけおけおけおけおけおけおけおけ。
全部了解。
全て把握。
オールオッケー。
パーフェクツ。
アイアンダスターンド。
「うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん、オッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケーオッケー」
「そ、そうか。オッケーか。良かったあ」
よーし、大丈夫だぞ俺。
俺は俺だ。な~んにも変わっちゃあいない。
よしよしよしよしよしよしよし、ちょっと混乱してるな、うん。
「ジュン!いや、汝様!雄汝禁教の布教がしたいなら、言ってくれればよかったんだ!私は、恥じているッ!君が正直に打ち明けられる空気を作れなかったことを、すまないと思っている!許してくれ!」
まだ、死ぬな俺。
なーに、たかがキスだろ?
ハハハ。たかがファーストキッスじゃないか。
甘酸っぱいと言われている、例のキスというやつさ。
ハハハ、どんな味だったかなあ?ハハハ。
ハハハハ。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハ。
――――作者より――――
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お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
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