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17.愛しのネズ公
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ネズ公が俺のところに来てくれた。床の上の座布団に座りたがったが、俺が禁じた。俺のあぐらの上に座布団を引いてちょこんと座らせている。
でっかい豚人間たちも中に入りたがっていたが、家がぶっ壊れるので外に待機させている。主を守りたい欲求が強いみたいなので、扉は開け放ってあげた。
じーっとこちらを見ている。食わねえよ馬鹿野郎。豚肉食いたいけどお前らは食わねえよ。
ネズ公め、部下の手前キリリとした佇まいだ。愛い、愛い奴だ、くうううう、かわゆいのぉ。
「ケケケ。トゥカナ地方に転生者集団がやってきました。なんでも魔王討伐をすると息巻いているようでございます。ケケ」
「ケケケ君、君名前は?」
「ケケケ、ディキと申します」
「ディキ、君有能そうだ。狂った感じがええよ、うん。ところで魔王とはこのネズ公の事かね?」
「ケケケ、標様あなた様でございます」
「えっ?何で?」
「ケケケ、生き残りの騎士や市民が噂しておりました。目つきの悪い人間の男がオークたちを引き連れていたと。魔力は人間のそれではなく、まさに魔王であると。ケケケ」
「申し訳ござりませぬ、ジロー殿。拙者のせいで巻き込んでしまい申したな」
いいんだぞー。俺は力をレンタルすると言ったからな。お前は可愛いからいいんだよー。にしても運がいいことに、わざわざ俺の村まで近寄ってきてくれたわけか。そして俺を魔王だと勘違いするのもラッキーだ。
だってそうだろ、ここで鼻くそほじってても俺を追ってくるんだから。ぷんすか怒りながらやってくるんだろ?おもろいやないの。一網打尽に出来るやないのお!
「まさに好都合!ではここで待とうじゃないか。やって来た者共を纏めて生け捕りにしたら、奴隷にでもして楽しもうじゃないの!どうよ族長!」
「なかなかの提案かと」
ガハハ!ちょりー、チョリーわ。よその神はバカしかいないのかね。過干渉すぎて人間的な思惟に落ちぶれてしまったのかね。
軍団でぶつければ勝てるとか思ってんのかなぁ?ウチだって有能な手下がいるんすよ。
青頭だろ、ネズ公だろ、そして魔族軍団よ。
いや、旧日本軍は慢心によって敗北したそうじゃないの。ここは気を引き締めよう。
俺は青頭に殺られた。アイツレベルがうようよいる、そう考えるならちょっと警戒したほうがいいだろう。
力で勝てないなら頭を使えばいい。青い頭じゃなく、この俺の灰色の脳みそを使うわけよ。
狩りとはスポーツ。スポーツとは楽しむもの。即ち、楽しんで狩る!これが鉄則。仲間同士殺り合わせるもよし。囚えてめちゃめちゃにしてやるもよし。見せしめに数人ボコって、怨嗟を募らせるもよし。もしかしたらチビって逃げるかも。それもよし。
俺には魔法がある。そして能力がある。目を瞑ってもヘッショを決められる『暗視的中』、『影渡り』で背後からグサリも出来る。『分権』だけは使いどころが分からん。
ネズ公は付与術だろ、青頭は錬成術。
やっぱチョリーわ。チ〇ロQだわ。
「ジロー殿。ご相談がございます」
ん?なんだ?可愛い背中が寂しげだ。
あーーん、撫でたら耳がピクピクするよー。かわゆいのぉ。
「なんじゃモフ蔵」
「モフ……。はっ、我ら早急に住処を移したく存じます」
「――――え~、ここに住めばいいじゃんよ~。今まで通り飯はやるよ。肥溜めとか残飯じゃなくてちゃんとした飯を買ってきてやるよ~。もうちょっと居ればいいじゃんよ~」
「これ以上のご迷惑は掛けられませぬ。それに新しい子を迎えるにあたり、生活基盤を整えたいのです」
「はあ~。寂しいな~。ネズ公が行っちゃうんだ~。どう思う?ディキ」
「ケケケケ。標様が望みに従う。それがペットかと」
「ほらー、そう言ってるよー?」
「某、ペットになった覚えはありませぬ」
仰る通りだ。
まあいいかな、新しい住処を探して稼いでほしいから、旅立たせようかな。可愛い子には旅をさせろだろ?マジかよネズ公、行っちゃうの……。
「――分かったよ、いいよ行って。でも約束は守れ」
「はっ、リース料ですな」
「そうそう」
つーかコイツら、森に住むんだよな。トゥカナとかいう街を侵攻したのは俺がけしかけたからだ。俺としては、ネズ公たちがあの街に根付くといいなと思って送り出したのだ。まあ下心もあったけど。そしたら上手く行った。無抵抗のまま検問所に近づいた一匹の豚を騎士が殺したから。そしたらネズ公が怒って総攻撃よ。降伏するまで続けるとか言ってたな。
結局止めたのは俺なんだけどな。
そん時、受胎用人間はオマケで拾ってきたわけだけで、それが孕んでくれたらしい。
コイツらは新しい森に行きたい。森に住みたい。
好きな森に住めばいいけど、税金てどっから取るのよ。人間とは友好的な関係を望んでるのか、それとも敵対か?前に見たときは、話し合いにこだわってたからなあ。
「ネズ公、お前ってさどうしたいの?」
「どう?とは、少し漠然としておりますな」
「転生者を殺したいの?人間を殺したいの?何がしたいの?」
「――仲間たちと共に生きたいと考えております」
「ふーん。税金はどこから取る予定?木の実を持ってこられても困るんだけどな」
「話し合いの上でちゃんと稼ごうと考えております」
――――コイツ、くっそ甘くねえか?
「ゆくゆくは、ジロー殿の世話からも離れて自立したいと……」
「ほう?」
怖っ。ジジイの目よ。ババアは相変わらず凛としてるなぁ。ムチムチはモモが良きかな。昨日風呂に入ったから香りはまだ余裕だ。
「お前、名前なんだっけか」
「ネズ公とお呼びください」
「いや、リアルネーム」
「根津等不子でございます」
「おお、ネズミっぽい。運命的だな」
「は、はあ。出来れば人間に戻りたいのですが」
「やっぱお前、今ここで殺そうか」
んー、良い手触りだ。ちょうど手に収まる。力を入れるとモニュッと内臓が動いている感じがする。もっと絞ればケツからウンコチビるだろうな。
「王様ー!?うぐっ」
入口をぶっ壊してでも入ろうとした豚人間だったが、どっかに吹っ飛んでいった。
外から激しい音が聞こえる。魔族連中が暴れてくれてるらしい。使えるなあ、こ奴ら。
「ケケケ、外はお任せを」
「半殺しにしろと伝えとけ」
「ケケケ、畏まりました」
ディキ君も影移動の使い手らしい。モグラ叩きみたいに飛び出したり引っ込んだり、面白いやつだ。人間に擬態しているが、その顔がキチガイじみていて、見ていて飽きない。目がイッてるんだよなー。
「グフッ、ジロー、どのぉ、やめ、て」
「俺は転生者を狩るという使命を帯びている。お前も対象だ。だがこうして生きてられるのは、従順で可愛いからだ」
「ご、ごごべん、な゛ざい゛」
「そしてここにいる人間たちは全員が魔族なんだ。めっちゃ転生者が嫌いらしい。ほれジジイ見てみろ、笑ってるだろ?転生者を嬲り殺すのが趣味らしい」
「――――はっ――――――はっ――――――――はっ」
「お前の立場を教えてやる。俺を殺さなきゃお前は一生俺のペットだ。大丈夫、可愛ければ丁重に扱うと約束する」
「――――――――――――――――はっ」
死に掛け3秒前って感じだ。座布団にピロピロ漏らしてやがる。ちょうどそこに落としてやったけどピクリともしない。強く握りすぎたかな。なんか木の枝を折ったみたいな感覚があったんだよなあ。
OH SHIT 魔力がめっちゃ溢れてる!なんかヤバくね?年寄りの口から魂が出る的なヤツじゃね?
「あーー、族長。生きてる?コイツ」
「もう死にますな」
「えっ!?ヤダ、助けて!マジでお願い!」
「――ふむ、畏まりました。婆さんや頼む」
凛として〇雨な婆さんがテクテクやってきて、ネズ公の上に手をかざした。
『治癒せよ』
「出たあー、ヒール!」
ファイアーボールに並んでムチャクチャ汎用性の高いチート魔法だああああ!
現世にいる時にチラリと見たアニメで使ってたわ。ググったら異世界転生ものでは相当使い古されてる魔法らしい。
そしてここでも使うのだ。ヒール強し。
「っっげほっ。はあはあはあ。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」
あっ……。こちらこそごめんなさい。自分のウンチの上に落としてしまってごめんなさい。
「ネズ公?大丈夫なのか?生きてる?ゾンビじゃないよな?」
「ごめんなさいごめんなさい、殺さないでください」
「オーケー包茎。ナデナデしたいけど汚いから体を洗おうな。婆さんや頼む。いい感じの魔法でウンコ諸共汚れを消してくれ」
『水よ渦巻け』
座布団で頭を上下させていたネズ公。その周りを水が覆い、ネズ公の口からゴポゴポと気泡が溢れた。どう見ても溺れてるんだが。
「あのー水責めじゃなくて洗ってほしいんだけど」
「洗うております」
あー確かに。雑巾みたいにぐるぐる回ってらあ。逆回転した!おお、縦回転になった。いやー可哀そうに、苦しそうだ。ネズ公が苦しむ姿はなかなか辛いなあ。あんまり興奮しないわ。
ポトリとリビングの床にネズ公を吐き出した水玉。その中は茶色く汚れていた。ふわふわと動きだしたうんこ水は玄関をくぐるとバシャリと地面に落下した。
気功の達人みたいに腕をくねくねしていたババアには悪いんだけど、わざわざ玄関前にまき散らさなくてもよくね?まあいいけどさ。
あっ座布団も要らねえな、うんこツイてるし。さて、早速よろしいかなネズ公よ。
「ネズ……婆さん、ホントに綺麗だよね?」
「ええ、あの水の中に全ての汚れが含まれておりました」
「ああそう。では失礼して」
毛はふわふわになっていた。さっきまで溺れかけていたとは思えないふんわり感だ。あの水玉が水分を吸い上げてくれたのか。スゲー、ドライヤーいらずじゃん。
ブルブル震えてるじゃないのさ。うーん、肌で感じるとちょっと興奮するな。手に伝わる温もりと怯えが不埒な心に囁いてくるぜ。一瞬で殺せるぞ、もったいないもったいない。丁寧に甚ぶり優しく扱えってな。すぐに壊れる小動物がこんなに愛おしいか。
いやすぐに壊せてしまうから、愛おしいのだろう。
嗜虐心と自制心がせめぎ合う。最高潮のクライマックスを迎えるために必要な時間だ。まだ殺すな、嫌だ殺したい。このやきもきする時間はとても堪らない。
ああ、風俗行きてえ。
「ジ、ジロー様、お助けを。お願いします」
おっと危ない、思わず手に力が。回復させたばかりだってのに。
「悪い。さて、何の話だっけ?」
「こ、殺さないでください。お願いします」
「ペットになってくれる?そうでないと魔族達が納得しないんだよなあ」
「――――ペットとは何をするんですか?私には仲間がいます。ずっとここに、ここに」
「いる事は出来ない、だな?」
「お願いします、殺さないでください」
何とも強欲。しかしそこは譲れないか。ふむふむ、一カ月に一回顔を見せれば良いよなんて愛人契約じみたことは出来んな。だってその間に、対俺の軍団を作られたら困るし。名前を知ってるから魔法で監視できるけど、定期的にチェックするとかだるいし。
さてどうしようか。
「ケケケ、標様。豚共をシメました。殺しますか?」
「えっ!?待って、お願いします!助けてください!何でも、何でもしますから助けてください」
「ふーん、何でも?」
「皆を助けてくれるなら、ペットでも奴隷でも何にでもなります。何でもします」
ほう、ほうほう。それはいかんな。この展開は主人公っぽいな。ここて敢えて酷い命令をして、実はネズ公の成長を促す的なパターンか?それはあり得ん。キショさMaxだもんね。逆に卑猥な路線に持ち込む主人公もいるが、コイツはネズミだ。どう使っても無理だろ。
じゃあどうするか。難しいのお。
我らが軍団に加えるのは決定した。なので高校生転生者と戦うときは必ずこいつらを参戦させる。前線に投入する。それは、俺のペットであり奴隷だからであってこの交換条件とは関係がない。
むむ、マジでどうしよう。アマネちゃんとイチャイチャさせてみるか?それともミカ……ミカちゃんがいたよおおお。
「決めた。何でもするんだな?」
「はい、します。ですから仲間たちを助けてください」
「お前が果たしたなら助けてやる」
「分かりました。必ず果たします」
よろしい、大変よろしいですな。
俺が見た限り、生物は死ぬと魔力がなくなってしまう。カラッカラの干物になっちまうわけよ。だがしかし本当になくなるのだろうか。
血液は残るし、小便も糞も腹ん中に溜まったまま。臓器だって蒸発したりしないし。つまり残っていると思うんだよ。何ていうか最後の雫みたいな?飲み終えたコップに残るあの少量の水みたいなやつが。すぐに蒸発する量だけど、確かに残ってる。
のではないかと思ってみた。常々考えていたとか、人体に興味があるとかそんなんじゃない。
そんな言い訳をすれば、マッドサイエンティストぐらいには見えるだろ?少なくとも人類とか魔族の役に立とうとしているんだなーぐらいにはさ。高尚な目的を錯覚するだろ。その為に今考え付いた言い訳だ。
さてやってきました。ここはアマネちゃんのお部屋です。女子のお部屋はワクワクするよね。垂れ流しの糞尿の匂いでしょ?コーンコーンと鉄棒に頭を打ちつける音でしょ?それからミカちゃんの死体でしょ。ああ、俺がぶっかけたもんがカピカピになってやがらあ。キャッ。
「ネズ公、この方は勇敢で誇り高い騎士様だ。ご挨拶なさい」
「――――――――初めまして。根津等不子と申します」
ゴンッゴンッゴンッ。
あらヤダ。激しいわ。
婆が言うには、毎日治療してやってるらしい。他の魔族だと殺しかねないから直々にな。凄いなー、大物じゃんよ。
「立派な御方だ。しっかりと目に焼き付けなさい」
ネズ公は無言で眺めていた。何を思っているんだいネズ公よ。お前の頭ん中覗きたいよ。今日だけは覗き魔になりたいよ。
「さて、お前にはこの女を食ってもらう。恐らく、内臓に魔力が含まれていると思うんだ。その魔力を取り込んで、お前の魔力量が回復するのか調べたい。というのも、戦場では糧食にありつけない日もあるだろう。だから……」
俺はグダグダ口上を述べた。これは趣味じゃない、純粋な研究心から試したいんだと伝えるために。
男ってのは何時だってそうだ。
ちょっとでもよく思われたいもんだろ?
でっかい豚人間たちも中に入りたがっていたが、家がぶっ壊れるので外に待機させている。主を守りたい欲求が強いみたいなので、扉は開け放ってあげた。
じーっとこちらを見ている。食わねえよ馬鹿野郎。豚肉食いたいけどお前らは食わねえよ。
ネズ公め、部下の手前キリリとした佇まいだ。愛い、愛い奴だ、くうううう、かわゆいのぉ。
「ケケケ。トゥカナ地方に転生者集団がやってきました。なんでも魔王討伐をすると息巻いているようでございます。ケケ」
「ケケケ君、君名前は?」
「ケケケ、ディキと申します」
「ディキ、君有能そうだ。狂った感じがええよ、うん。ところで魔王とはこのネズ公の事かね?」
「ケケケ、標様あなた様でございます」
「えっ?何で?」
「ケケケ、生き残りの騎士や市民が噂しておりました。目つきの悪い人間の男がオークたちを引き連れていたと。魔力は人間のそれではなく、まさに魔王であると。ケケケ」
「申し訳ござりませぬ、ジロー殿。拙者のせいで巻き込んでしまい申したな」
いいんだぞー。俺は力をレンタルすると言ったからな。お前は可愛いからいいんだよー。にしても運がいいことに、わざわざ俺の村まで近寄ってきてくれたわけか。そして俺を魔王だと勘違いするのもラッキーだ。
だってそうだろ、ここで鼻くそほじってても俺を追ってくるんだから。ぷんすか怒りながらやってくるんだろ?おもろいやないの。一網打尽に出来るやないのお!
「まさに好都合!ではここで待とうじゃないか。やって来た者共を纏めて生け捕りにしたら、奴隷にでもして楽しもうじゃないの!どうよ族長!」
「なかなかの提案かと」
ガハハ!ちょりー、チョリーわ。よその神はバカしかいないのかね。過干渉すぎて人間的な思惟に落ちぶれてしまったのかね。
軍団でぶつければ勝てるとか思ってんのかなぁ?ウチだって有能な手下がいるんすよ。
青頭だろ、ネズ公だろ、そして魔族軍団よ。
いや、旧日本軍は慢心によって敗北したそうじゃないの。ここは気を引き締めよう。
俺は青頭に殺られた。アイツレベルがうようよいる、そう考えるならちょっと警戒したほうがいいだろう。
力で勝てないなら頭を使えばいい。青い頭じゃなく、この俺の灰色の脳みそを使うわけよ。
狩りとはスポーツ。スポーツとは楽しむもの。即ち、楽しんで狩る!これが鉄則。仲間同士殺り合わせるもよし。囚えてめちゃめちゃにしてやるもよし。見せしめに数人ボコって、怨嗟を募らせるもよし。もしかしたらチビって逃げるかも。それもよし。
俺には魔法がある。そして能力がある。目を瞑ってもヘッショを決められる『暗視的中』、『影渡り』で背後からグサリも出来る。『分権』だけは使いどころが分からん。
ネズ公は付与術だろ、青頭は錬成術。
やっぱチョリーわ。チ〇ロQだわ。
「ジロー殿。ご相談がございます」
ん?なんだ?可愛い背中が寂しげだ。
あーーん、撫でたら耳がピクピクするよー。かわゆいのぉ。
「なんじゃモフ蔵」
「モフ……。はっ、我ら早急に住処を移したく存じます」
「――――え~、ここに住めばいいじゃんよ~。今まで通り飯はやるよ。肥溜めとか残飯じゃなくてちゃんとした飯を買ってきてやるよ~。もうちょっと居ればいいじゃんよ~」
「これ以上のご迷惑は掛けられませぬ。それに新しい子を迎えるにあたり、生活基盤を整えたいのです」
「はあ~。寂しいな~。ネズ公が行っちゃうんだ~。どう思う?ディキ」
「ケケケケ。標様が望みに従う。それがペットかと」
「ほらー、そう言ってるよー?」
「某、ペットになった覚えはありませぬ」
仰る通りだ。
まあいいかな、新しい住処を探して稼いでほしいから、旅立たせようかな。可愛い子には旅をさせろだろ?マジかよネズ公、行っちゃうの……。
「――分かったよ、いいよ行って。でも約束は守れ」
「はっ、リース料ですな」
「そうそう」
つーかコイツら、森に住むんだよな。トゥカナとかいう街を侵攻したのは俺がけしかけたからだ。俺としては、ネズ公たちがあの街に根付くといいなと思って送り出したのだ。まあ下心もあったけど。そしたら上手く行った。無抵抗のまま検問所に近づいた一匹の豚を騎士が殺したから。そしたらネズ公が怒って総攻撃よ。降伏するまで続けるとか言ってたな。
結局止めたのは俺なんだけどな。
そん時、受胎用人間はオマケで拾ってきたわけだけで、それが孕んでくれたらしい。
コイツらは新しい森に行きたい。森に住みたい。
好きな森に住めばいいけど、税金てどっから取るのよ。人間とは友好的な関係を望んでるのか、それとも敵対か?前に見たときは、話し合いにこだわってたからなあ。
「ネズ公、お前ってさどうしたいの?」
「どう?とは、少し漠然としておりますな」
「転生者を殺したいの?人間を殺したいの?何がしたいの?」
「――仲間たちと共に生きたいと考えております」
「ふーん。税金はどこから取る予定?木の実を持ってこられても困るんだけどな」
「話し合いの上でちゃんと稼ごうと考えております」
――――コイツ、くっそ甘くねえか?
「ゆくゆくは、ジロー殿の世話からも離れて自立したいと……」
「ほう?」
怖っ。ジジイの目よ。ババアは相変わらず凛としてるなぁ。ムチムチはモモが良きかな。昨日風呂に入ったから香りはまだ余裕だ。
「お前、名前なんだっけか」
「ネズ公とお呼びください」
「いや、リアルネーム」
「根津等不子でございます」
「おお、ネズミっぽい。運命的だな」
「は、はあ。出来れば人間に戻りたいのですが」
「やっぱお前、今ここで殺そうか」
んー、良い手触りだ。ちょうど手に収まる。力を入れるとモニュッと内臓が動いている感じがする。もっと絞ればケツからウンコチビるだろうな。
「王様ー!?うぐっ」
入口をぶっ壊してでも入ろうとした豚人間だったが、どっかに吹っ飛んでいった。
外から激しい音が聞こえる。魔族連中が暴れてくれてるらしい。使えるなあ、こ奴ら。
「ケケケ、外はお任せを」
「半殺しにしろと伝えとけ」
「ケケケ、畏まりました」
ディキ君も影移動の使い手らしい。モグラ叩きみたいに飛び出したり引っ込んだり、面白いやつだ。人間に擬態しているが、その顔がキチガイじみていて、見ていて飽きない。目がイッてるんだよなー。
「グフッ、ジロー、どのぉ、やめ、て」
「俺は転生者を狩るという使命を帯びている。お前も対象だ。だがこうして生きてられるのは、従順で可愛いからだ」
「ご、ごごべん、な゛ざい゛」
「そしてここにいる人間たちは全員が魔族なんだ。めっちゃ転生者が嫌いらしい。ほれジジイ見てみろ、笑ってるだろ?転生者を嬲り殺すのが趣味らしい」
「――――はっ――――――はっ――――――――はっ」
「お前の立場を教えてやる。俺を殺さなきゃお前は一生俺のペットだ。大丈夫、可愛ければ丁重に扱うと約束する」
「――――――――――――――――はっ」
死に掛け3秒前って感じだ。座布団にピロピロ漏らしてやがる。ちょうどそこに落としてやったけどピクリともしない。強く握りすぎたかな。なんか木の枝を折ったみたいな感覚があったんだよなあ。
OH SHIT 魔力がめっちゃ溢れてる!なんかヤバくね?年寄りの口から魂が出る的なヤツじゃね?
「あーー、族長。生きてる?コイツ」
「もう死にますな」
「えっ!?ヤダ、助けて!マジでお願い!」
「――ふむ、畏まりました。婆さんや頼む」
凛として〇雨な婆さんがテクテクやってきて、ネズ公の上に手をかざした。
『治癒せよ』
「出たあー、ヒール!」
ファイアーボールに並んでムチャクチャ汎用性の高いチート魔法だああああ!
現世にいる時にチラリと見たアニメで使ってたわ。ググったら異世界転生ものでは相当使い古されてる魔法らしい。
そしてここでも使うのだ。ヒール強し。
「っっげほっ。はあはあはあ。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい」
あっ……。こちらこそごめんなさい。自分のウンチの上に落としてしまってごめんなさい。
「ネズ公?大丈夫なのか?生きてる?ゾンビじゃないよな?」
「ごめんなさいごめんなさい、殺さないでください」
「オーケー包茎。ナデナデしたいけど汚いから体を洗おうな。婆さんや頼む。いい感じの魔法でウンコ諸共汚れを消してくれ」
『水よ渦巻け』
座布団で頭を上下させていたネズ公。その周りを水が覆い、ネズ公の口からゴポゴポと気泡が溢れた。どう見ても溺れてるんだが。
「あのー水責めじゃなくて洗ってほしいんだけど」
「洗うております」
あー確かに。雑巾みたいにぐるぐる回ってらあ。逆回転した!おお、縦回転になった。いやー可哀そうに、苦しそうだ。ネズ公が苦しむ姿はなかなか辛いなあ。あんまり興奮しないわ。
ポトリとリビングの床にネズ公を吐き出した水玉。その中は茶色く汚れていた。ふわふわと動きだしたうんこ水は玄関をくぐるとバシャリと地面に落下した。
気功の達人みたいに腕をくねくねしていたババアには悪いんだけど、わざわざ玄関前にまき散らさなくてもよくね?まあいいけどさ。
あっ座布団も要らねえな、うんこツイてるし。さて、早速よろしいかなネズ公よ。
「ネズ……婆さん、ホントに綺麗だよね?」
「ええ、あの水の中に全ての汚れが含まれておりました」
「ああそう。では失礼して」
毛はふわふわになっていた。さっきまで溺れかけていたとは思えないふんわり感だ。あの水玉が水分を吸い上げてくれたのか。スゲー、ドライヤーいらずじゃん。
ブルブル震えてるじゃないのさ。うーん、肌で感じるとちょっと興奮するな。手に伝わる温もりと怯えが不埒な心に囁いてくるぜ。一瞬で殺せるぞ、もったいないもったいない。丁寧に甚ぶり優しく扱えってな。すぐに壊れる小動物がこんなに愛おしいか。
いやすぐに壊せてしまうから、愛おしいのだろう。
嗜虐心と自制心がせめぎ合う。最高潮のクライマックスを迎えるために必要な時間だ。まだ殺すな、嫌だ殺したい。このやきもきする時間はとても堪らない。
ああ、風俗行きてえ。
「ジ、ジロー様、お助けを。お願いします」
おっと危ない、思わず手に力が。回復させたばかりだってのに。
「悪い。さて、何の話だっけ?」
「こ、殺さないでください。お願いします」
「ペットになってくれる?そうでないと魔族達が納得しないんだよなあ」
「――――ペットとは何をするんですか?私には仲間がいます。ずっとここに、ここに」
「いる事は出来ない、だな?」
「お願いします、殺さないでください」
何とも強欲。しかしそこは譲れないか。ふむふむ、一カ月に一回顔を見せれば良いよなんて愛人契約じみたことは出来んな。だってその間に、対俺の軍団を作られたら困るし。名前を知ってるから魔法で監視できるけど、定期的にチェックするとかだるいし。
さてどうしようか。
「ケケケ、標様。豚共をシメました。殺しますか?」
「えっ!?待って、お願いします!助けてください!何でも、何でもしますから助けてください」
「ふーん、何でも?」
「皆を助けてくれるなら、ペットでも奴隷でも何にでもなります。何でもします」
ほう、ほうほう。それはいかんな。この展開は主人公っぽいな。ここて敢えて酷い命令をして、実はネズ公の成長を促す的なパターンか?それはあり得ん。キショさMaxだもんね。逆に卑猥な路線に持ち込む主人公もいるが、コイツはネズミだ。どう使っても無理だろ。
じゃあどうするか。難しいのお。
我らが軍団に加えるのは決定した。なので高校生転生者と戦うときは必ずこいつらを参戦させる。前線に投入する。それは、俺のペットであり奴隷だからであってこの交換条件とは関係がない。
むむ、マジでどうしよう。アマネちゃんとイチャイチャさせてみるか?それともミカ……ミカちゃんがいたよおおお。
「決めた。何でもするんだな?」
「はい、します。ですから仲間たちを助けてください」
「お前が果たしたなら助けてやる」
「分かりました。必ず果たします」
よろしい、大変よろしいですな。
俺が見た限り、生物は死ぬと魔力がなくなってしまう。カラッカラの干物になっちまうわけよ。だがしかし本当になくなるのだろうか。
血液は残るし、小便も糞も腹ん中に溜まったまま。臓器だって蒸発したりしないし。つまり残っていると思うんだよ。何ていうか最後の雫みたいな?飲み終えたコップに残るあの少量の水みたいなやつが。すぐに蒸発する量だけど、確かに残ってる。
のではないかと思ってみた。常々考えていたとか、人体に興味があるとかそんなんじゃない。
そんな言い訳をすれば、マッドサイエンティストぐらいには見えるだろ?少なくとも人類とか魔族の役に立とうとしているんだなーぐらいにはさ。高尚な目的を錯覚するだろ。その為に今考え付いた言い訳だ。
さてやってきました。ここはアマネちゃんのお部屋です。女子のお部屋はワクワクするよね。垂れ流しの糞尿の匂いでしょ?コーンコーンと鉄棒に頭を打ちつける音でしょ?それからミカちゃんの死体でしょ。ああ、俺がぶっかけたもんがカピカピになってやがらあ。キャッ。
「ネズ公、この方は勇敢で誇り高い騎士様だ。ご挨拶なさい」
「――――――――初めまして。根津等不子と申します」
ゴンッゴンッゴンッ。
あらヤダ。激しいわ。
婆が言うには、毎日治療してやってるらしい。他の魔族だと殺しかねないから直々にな。凄いなー、大物じゃんよ。
「立派な御方だ。しっかりと目に焼き付けなさい」
ネズ公は無言で眺めていた。何を思っているんだいネズ公よ。お前の頭ん中覗きたいよ。今日だけは覗き魔になりたいよ。
「さて、お前にはこの女を食ってもらう。恐らく、内臓に魔力が含まれていると思うんだ。その魔力を取り込んで、お前の魔力量が回復するのか調べたい。というのも、戦場では糧食にありつけない日もあるだろう。だから……」
俺はグダグダ口上を述べた。これは趣味じゃない、純粋な研究心から試したいんだと伝えるために。
男ってのは何時だってそうだ。
ちょっとでもよく思われたいもんだろ?
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