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21.最大幸福を目指す神の使徒
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チュンチュンチュンチュン。
と鳴くテンプレ鳥はいない。
その代わり、犬がペロペロと俺の顔をヨダレまみれにして起こしてくれる。
臭っ。
でも可愛いなあ、お前は。
水魔法を手ずから顔射してクリーンにする。
射は射的の射だからな。水を射的のように顔にぶつけるから、顔射だ。間違ってない。
プールで目を洗う二股の変な水道も、眼射装置だ。
お前の好きな巨乳の子も、腐った妄想でウケになりがちなあの子も、プールの度に眼射してるわけだ。
ガン○ムを写実的に描くのもガン写だし、正○丸を常備する奴が乗ってる車も丸車だし、岸壁に咲く曼珠沙華も岸沙だ。
世の中はがんしゃで溢れている。
ということで、今日も今日とてがんしゃを探す。
ニンニンニンニク○黄ニンニン忍たま乱○郎ニンニン。
動いた――――。
棒人間が動いてる。
白地図に緑に着色されて国名が表示されてる。
ユーラケー王国というデカい枠の中にあるトュカナ。その地域から、棒人間5人が消えた。
残りの集団は結構な速さでこちらへと向かってきている。
知識を手に入れれば地図が埋まっていく仕様らしい。
元からの設定なのか奪い取った設定なのか。
ゲームみたいに地図を埋めていく系だから、奪い取った系ではないと思う。貴族系主人公もネズ公も、どちらかといえばラノベっぽいテイストの設定だった。
つまり我が神が俺のために拵えたもの。
元からの仕様というわけだ。
設定が何か気になってんだろ?
要するに世界観だ。ゲームテイストかラノベテイストか、もしくはハードコアな文学テイストか、とか。
地図が埋まっていくのは、ゲームにありがちだろ。徐々に世界が広がっていく楽しみが、ユーザーにグッとくるんだろうな。
そんなもん要らんわ!端っから世界地図を寄越さんかい!と思っているのは俺だけだろうか。神に文句を言っているわけじゃないのよ。
きっと何かしらの意図があるのかもしれんが、普通にメンドイから。だって俺、冒険者でもサバイバル探検家でもないし。
俺達が住む村はコロッセオという名前だ。
奴隷と猛獣を闘わせていた名残だろうか、物騒な名前だ。色もピンクで卑猥だし。俺がいるからなのか、元々エロい村なのか。
「標様、転生者が彷徨いていると報告がありました。如何致しますか?」
「団長、御庭番は?」
「御庭番……とは?」
「ディキたちは?偵察中?」
「はい」
真面目かよ。
「呼び出し!今すぐに職員室に来るよう言いなさいっ!」
「しょく……はっ」
よろしい。
さて、俺のプランは高校生たちをバトロワ状態にして阿鼻叫喚の血の池を作るのだ。しかし俺が関わりすぎると情緒がない。こうなると分かっているSMプレイ程つまらないものはない。
今日はBコースですか?ではどうぞ!なんて言われちゃあ面白くない。
もっとこう、自然な成り行きで。
もっとこう、自ずと進む形にしたい。
魔族の恨みつらみも溜まっているだろう。アイツらにも発散さてやりたい。
嘘だ。
ネズ公の能力が手に入ったから魔族で試したいんだよ。
魔族が転生者を蹂躙して、俺はそれを眺めて。
最後に、ピンッ!とデコピンをかまして、首チョンパしたい。
俺は良き観客でいたいのだ。
そして美味しい美味しい、蜜がたっぷりの、あんまーいところは俺が頂く。
「ケケケ、標様お待たせ致しました」
「おう!みんなは?」
「近くの影に居ります」
「よろしい。では1つ確認がある」
「はっ」
「仲良し小好しの相関図は頭に入ってるか?」
「ケケケ、もちろんでございます」
「よしっ!命令を下す。仲がいい者同士が殺し合いをするように、何か計画を立てろ」
「畏まりました」
とぷんと地面に消えた。
俺んちは、玄関を開けてすぐに土間がある。右側には台所、左には居間。無駄に広くて、無駄な物がなく、無駄にボロい。所謂貧乏長屋で四人と一匹で暮らしている。
標様なのに――――。
土間から消えたディキ、できる奴だ。
居間に座る族長はジジイだ。
座ってるだけなのに汗をかいているババアはムチムチだ。
犬は紫、名はポチ。大型犬で、大人しい子だ。あくびしちゃって、マジカワユイ。
で、俺の隣には団長がいる。殿様の家来みたいに正座して息を潜めている。
野盗団の団長と思っていたが、その実は次期族長らしい。こんな髭面、シラミ顔の奴が偉いとは、魔族のこの先が心配になる。
「団長、彷徨いてる転生者を捕らえるの、お前らでやれる?」
「畏まりました」
――畏まりましたとは?
「出来るかって聞いたんだよ」
「やりましょう」
「それ止めろ。可能か不能か、どうなんだ?」
「――難しいかと」
「ムズイんかい。ふむ。じゃあお前ら、どうやって発散するよ」
「眺めるだけで……」
「嘘つけ。力がないだけだろ?ホントは殺りたくて堪らないんだろ」
「はい」
「俺もなんだよ。ただ殺すだけじゃあ足りないよな?」
「はい」
「どうしたい」
「尊厳、矜持、本能をまっさらにしたい、と」
「んー?つまり?」
「家畜にまで落として、人間たちの手で殺させたいと思っています」
「その心は」
「復讐でございます。我らの辿った道を必ず歩ませる」
復讐、これですよ。
標様って言うだけの木偶じゃなく、復讐に燃える奴隷の真の姿ですよ。
いいですね~。
「俺が手を貸してやる。だからお前らの手で始末しろ」
「はっ」
俺は演劇を楽しめる。
転生者は望み通り戦える。
魔族は復讐を果たせる。
みーんなハッピーじゃないのさ。
「高校生か。ちょうどいいわ、殺すには」
ポエミーなアホばっかだからな。
あっ!ポエミーがもう一人いたわ。青頭!
忘れた……。拗ねてるかもな。
「ジジイ、青頭どこにいる?」
「フレデリカと一緒に牢屋に居りますな」
「えっ!?」
なんでだ。孫みたく可愛がってたろ!
コイツらイカレてんのかよ。
「フレデリカは魔力の飢えを知らんのです」
「何その設定。初耳!」
「設定?本能でございます。魔力を求めてしまうのです」
「飢えるとどうなんのよ」
「喰いますな」
魔族は魔力が大好きらしい。普通に生活していれば、魔力に飢えることはないのだが、人間に虐められてきた不遇種族。昔はめっちゃ飢えたらしい。森の魔物を喰ったり、人間を喰ったり、悪食っぷりを発揮してなんでも喰ったそうだ。
人間や他の種族と違って、魔法に長けていて、姿形を変えることができるのも、魔力のお陰だそうで、魔力がなければただの飢えた獣に成り果てるそうだ。
今コイツらが飢えていないのは、俺がいるかららしい。ガンガンに魔力を放出しているから、喰う必要がない。吸い込めば体内に取り込めるからだ。
「青頭も魔力をジョボジョボ漏らしてただろ。そりゃあ飢えないんじゃねえの?」
「そのあたりは婆さんが、上手くやっております」
「あ、ババア居ねえな」
新しく牢屋を作って、青頭をぶち込んだそうだ。
牢屋にどうぞ、それで入るなら苦労しない。フレデリカを殺されたくなかったらと脅して入居させたらしい。その代わり、フレデリカと一緒に生活させてやると言って、一緒に住まわせているらしい。
「結界を展開しておりますので青頭の魔力が漏れる事はありません」
「――それでフレデリカを飢えさせる?」
「ええ。ピークに達したとき結界を解いてやれば……」
「襲うだろうと」
フレデリカは青頭にゾッコンらしい。しかし、本当の飢えを知らないが故の妄言だと族長は考えているそうだ。
このまま青頭を殺すと、フレデリカはどうなるか。
族長だって、フレデリカを殺したくはないそうで、自分で青頭を殺すよう仕向けたいらしい。
「青頭、暴れなかったのか」
「あやつも、フレデリカに入れ込んでおるようで」
「嫌われたくないから魔族には手を出さない。フレデリカに手を出さないなら、甘んじて受け入れる。同族に殺されそうになるなんて、トラウマもんだ。傷つけないためにも……とか思ったんだろうな」
「ええ」
牢屋に入れておくのは勿体ない。アイツも復讐者の端くれだ。この戦いには参加してもらいたい。それで疲弊させて、情報も絞れるだけ搾り取って、カッスカスの出涸らしになったら、オークに犯させて、適当に始末しようかと思っていたんだ
だって拳銃撃ちたいし。アイツの能力、面白そうじゃん。
族長も作戦進行中なら、俺が殺すまでもないのかしら。
「いつになったら飢えがくる」
「もう飢えております。標様の魔力も取り込めぬよう結界は厳重ですからな」
「そっちも面白そうだな。転生者集団の本隊が来る前に終わらせろ。あ、ちなみになんだけどさ、襲わなかったら?」
「あり得ませぬ。が、そうなれば……」
この面は……。
子供かあ、俺はロリに興味がないんだよな。
食わず嫌いなのかしら。
まあいいや。
いや良くねえ、神から仰せつかったのは魔族を救えという使命だ。
フレデリカも一応魔族。殺すのはマズイよな。
「俺には神様からの使命がある。フレデリカは殺さずにな」
「はっ」
※※※
「マティーニ」
「ダイキリ」
「どうするんだ」
「標様のお力を賜われるのだ。そしてお前もいる」
「殺るんだな?」
「耐えてきた。そしてまた十人も殺されたのだ」
「ああ」
「悲願を果たせず、転生者に……」
「そうだな」
「今この時から始める。我らの新たな時代だ」
「死ぬな」
「お前もな」
※※※
「という計画でございます。キヒヒ」
「いいね!進めてくれ!」
「はっ」
さあてついに始まりました!転生者バトルロワイヤル前哨戦っ!
開始のゴングを鳴らすのは髭面の団長とイケメン野郎だっ!
俺は村の入り口に定点カメラ宜しく『千里眼』を発動しているから、家で横になりながら見られる!
千里眼という名前は、千里=約3,900kmから因んだ名前だ。英語に訳すのがメンドイから、超訳したとかそんなんじゃない。
彼らはこれから、村近くに瞬間移動してきた転生者を挽肉にしてやるそうだっ!
続いて紹介するのは、メガネな奴と……幸薄そうな奴と…………とにかくモブの5人だっ!
何故か一箇所に固まってヒソヒソ話しているっ!
ユリカちゃんがいい匂いなんだぁ、でゅふふとか話しているが、クソどうでもいいなぁ!
レフェリーはいない!正真正銘、完全なデスマッチだ!
2対5の圧倒的不利な戦いをどう進めるのか、魔族に注目してみていくぞぉ!
ちなみに、魔族は人間の皮を被り直した!これも作戦の内なので詳細は明かせないが、そういうことなのでヨロシク!
ダイキリ選手、村から堂々と出ていきますねえ。一方の斥候役、でゅふふ転生者たちは、女の子のおっぱいについて熱く語り合っている!どうやら三次元ではない、二次元についてだああ!
両者ついに邂逅!
転生者たちはゴクリと生唾を飲んだぞ。
ダイキリ選手は立ち止まって静観している。どうやら相手の出方を窺っているようだ!
「でゅふふ。あ、あんたは、ま魔族か?」
「……」
「でゅ、でゅふふふ」
焦っているうう!シカトされて、ちょっとだけ挙動不審になっているぞぉ!
団長はどこに行ったんだ!髭面のゴリラがカメラには写っていない状況です。
「でゅふ。こ、この村には魔族しかいない。マリアーネちゃんがそう言っていたでござるよ。でゅふ」
「な、なら、どうする?」
「お、俺たちは斥候。情報を聞きだしたら帰るのが鉄則、そうだろう二等兵」
「はっ!そうであります軍曹閣下」
キショいやり取りで文字数を食い潰す転生者!これは誰得だあ!?これを見ている世界の創生者諸君が、これを欲しているのかあ!?
誰にも分からない、しかし、これが現実に起きているのだ!余すことなく中継しております。
ああっとここで、団長が見えたああ!なんと、なんと!姿を隠して転生者達の背後を取っていたようだあああ!
急に現れた髭面に、ナイーブな男性諸氏がおどおどし始めた!
「でゅふふ、きゅ、急に現れたんだな。ど、どどどうする?」
「に、逃げるが吉」
「しかし、またどやされるでござるよ」
「じゃあやりますか?」
「やる、とは?」
「でゅふふ」
倫理観が狂っているぅ!転生者あるある、テンプレの王道を行くというのか!童貞臭い、皮の被ったポンコツが殺戮マシーンの狂気を見せるというのかぁ!
「標様、お力をお貸し頂たく存じます」
「標様、我も同じく、お力添えを頂たく」
ルール無用のバトルロワイヤル前哨戦!
なんとここで、ドーピング申請が来たああ!
実況担当である私、ジロー・キクカドは、ここでドーピング申請を受理しまして、この魔族たちに能力を使用いたします!
『死の舞闘』
この付与術という能力は、魔法を作り出せるという、所謂チート能力だ!ただし、サポート専用魔法しか生み出せないのが難点だが、解釈のしようによっては、いくらでも抜け道がありそうなガバガバ設定だっ!
さあて、マティーニとダイキリにチートなパワーを与えたところで、力関係はやっとイーブンか。しかし人数差を考慮すれば、不利なのは変わらない!圧倒的不利から不利になった程度だ!一体どうするというのだ!
ここで、二次元オンリーのド変態たちが動き出したぁ!
『武器選択、守護者……』
『歪脚』
言わせない!言わせないっ!
言わせね○ーよ?を完璧に再現した、まさに我○家の伝道師!
転生者の脚を、まとめてへし折ったぁああ!
「でゅふっ!」
全員がでゅふふと呻いているぅ!クソ雑魚いぞ転生者!殺る?とかほざいていたあの頃が懐かしいぞお!
転生者とはこうも雑魚いのかあ!?
いいえ、それは違います。死の舞闘とは魔力の付与であり、本人が持つ魔力以上に魔力を消費して、体内の循環器系を悉く痛めてしまう禁断の技なのだ!いったいその魔力はどこから出てくるのか。俺だ!俺の魔力を共有しているのだ。
つまり、あそこにいる2人は転生者と対等な強さを持ち、尚且つ俺の膨大な魔力を持っているのだ。転生者並みと言っても過言ではありませんっ!
完全なるチート!
クソ雑魚童貞共のチ○コは、小便をするだけのナニで終わってしまうか!がんしゃなんて、また遠い夢で終わってしまうのだろうかぁ!
「マティーニ、殺すなよ」
「分かっている。足止めご苦労」
「ふっ、標様のお力が偉大だっただけだ」
続きは次回!チャンネルはそのままでお待ち下さいっ!
と鳴くテンプレ鳥はいない。
その代わり、犬がペロペロと俺の顔をヨダレまみれにして起こしてくれる。
臭っ。
でも可愛いなあ、お前は。
水魔法を手ずから顔射してクリーンにする。
射は射的の射だからな。水を射的のように顔にぶつけるから、顔射だ。間違ってない。
プールで目を洗う二股の変な水道も、眼射装置だ。
お前の好きな巨乳の子も、腐った妄想でウケになりがちなあの子も、プールの度に眼射してるわけだ。
ガン○ムを写実的に描くのもガン写だし、正○丸を常備する奴が乗ってる車も丸車だし、岸壁に咲く曼珠沙華も岸沙だ。
世の中はがんしゃで溢れている。
ということで、今日も今日とてがんしゃを探す。
ニンニンニンニク○黄ニンニン忍たま乱○郎ニンニン。
動いた――――。
棒人間が動いてる。
白地図に緑に着色されて国名が表示されてる。
ユーラケー王国というデカい枠の中にあるトュカナ。その地域から、棒人間5人が消えた。
残りの集団は結構な速さでこちらへと向かってきている。
知識を手に入れれば地図が埋まっていく仕様らしい。
元からの設定なのか奪い取った設定なのか。
ゲームみたいに地図を埋めていく系だから、奪い取った系ではないと思う。貴族系主人公もネズ公も、どちらかといえばラノベっぽいテイストの設定だった。
つまり我が神が俺のために拵えたもの。
元からの仕様というわけだ。
設定が何か気になってんだろ?
要するに世界観だ。ゲームテイストかラノベテイストか、もしくはハードコアな文学テイストか、とか。
地図が埋まっていくのは、ゲームにありがちだろ。徐々に世界が広がっていく楽しみが、ユーザーにグッとくるんだろうな。
そんなもん要らんわ!端っから世界地図を寄越さんかい!と思っているのは俺だけだろうか。神に文句を言っているわけじゃないのよ。
きっと何かしらの意図があるのかもしれんが、普通にメンドイから。だって俺、冒険者でもサバイバル探検家でもないし。
俺達が住む村はコロッセオという名前だ。
奴隷と猛獣を闘わせていた名残だろうか、物騒な名前だ。色もピンクで卑猥だし。俺がいるからなのか、元々エロい村なのか。
「標様、転生者が彷徨いていると報告がありました。如何致しますか?」
「団長、御庭番は?」
「御庭番……とは?」
「ディキたちは?偵察中?」
「はい」
真面目かよ。
「呼び出し!今すぐに職員室に来るよう言いなさいっ!」
「しょく……はっ」
よろしい。
さて、俺のプランは高校生たちをバトロワ状態にして阿鼻叫喚の血の池を作るのだ。しかし俺が関わりすぎると情緒がない。こうなると分かっているSMプレイ程つまらないものはない。
今日はBコースですか?ではどうぞ!なんて言われちゃあ面白くない。
もっとこう、自然な成り行きで。
もっとこう、自ずと進む形にしたい。
魔族の恨みつらみも溜まっているだろう。アイツらにも発散さてやりたい。
嘘だ。
ネズ公の能力が手に入ったから魔族で試したいんだよ。
魔族が転生者を蹂躙して、俺はそれを眺めて。
最後に、ピンッ!とデコピンをかまして、首チョンパしたい。
俺は良き観客でいたいのだ。
そして美味しい美味しい、蜜がたっぷりの、あんまーいところは俺が頂く。
「ケケケ、標様お待たせ致しました」
「おう!みんなは?」
「近くの影に居ります」
「よろしい。では1つ確認がある」
「はっ」
「仲良し小好しの相関図は頭に入ってるか?」
「ケケケ、もちろんでございます」
「よしっ!命令を下す。仲がいい者同士が殺し合いをするように、何か計画を立てろ」
「畏まりました」
とぷんと地面に消えた。
俺んちは、玄関を開けてすぐに土間がある。右側には台所、左には居間。無駄に広くて、無駄な物がなく、無駄にボロい。所謂貧乏長屋で四人と一匹で暮らしている。
標様なのに――――。
土間から消えたディキ、できる奴だ。
居間に座る族長はジジイだ。
座ってるだけなのに汗をかいているババアはムチムチだ。
犬は紫、名はポチ。大型犬で、大人しい子だ。あくびしちゃって、マジカワユイ。
で、俺の隣には団長がいる。殿様の家来みたいに正座して息を潜めている。
野盗団の団長と思っていたが、その実は次期族長らしい。こんな髭面、シラミ顔の奴が偉いとは、魔族のこの先が心配になる。
「団長、彷徨いてる転生者を捕らえるの、お前らでやれる?」
「畏まりました」
――畏まりましたとは?
「出来るかって聞いたんだよ」
「やりましょう」
「それ止めろ。可能か不能か、どうなんだ?」
「――難しいかと」
「ムズイんかい。ふむ。じゃあお前ら、どうやって発散するよ」
「眺めるだけで……」
「嘘つけ。力がないだけだろ?ホントは殺りたくて堪らないんだろ」
「はい」
「俺もなんだよ。ただ殺すだけじゃあ足りないよな?」
「はい」
「どうしたい」
「尊厳、矜持、本能をまっさらにしたい、と」
「んー?つまり?」
「家畜にまで落として、人間たちの手で殺させたいと思っています」
「その心は」
「復讐でございます。我らの辿った道を必ず歩ませる」
復讐、これですよ。
標様って言うだけの木偶じゃなく、復讐に燃える奴隷の真の姿ですよ。
いいですね~。
「俺が手を貸してやる。だからお前らの手で始末しろ」
「はっ」
俺は演劇を楽しめる。
転生者は望み通り戦える。
魔族は復讐を果たせる。
みーんなハッピーじゃないのさ。
「高校生か。ちょうどいいわ、殺すには」
ポエミーなアホばっかだからな。
あっ!ポエミーがもう一人いたわ。青頭!
忘れた……。拗ねてるかもな。
「ジジイ、青頭どこにいる?」
「フレデリカと一緒に牢屋に居りますな」
「えっ!?」
なんでだ。孫みたく可愛がってたろ!
コイツらイカレてんのかよ。
「フレデリカは魔力の飢えを知らんのです」
「何その設定。初耳!」
「設定?本能でございます。魔力を求めてしまうのです」
「飢えるとどうなんのよ」
「喰いますな」
魔族は魔力が大好きらしい。普通に生活していれば、魔力に飢えることはないのだが、人間に虐められてきた不遇種族。昔はめっちゃ飢えたらしい。森の魔物を喰ったり、人間を喰ったり、悪食っぷりを発揮してなんでも喰ったそうだ。
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「あ、ババア居ねえな」
新しく牢屋を作って、青頭をぶち込んだそうだ。
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「結界を展開しておりますので青頭の魔力が漏れる事はありません」
「――それでフレデリカを飢えさせる?」
「ええ。ピークに達したとき結界を解いてやれば……」
「襲うだろうと」
フレデリカは青頭にゾッコンらしい。しかし、本当の飢えを知らないが故の妄言だと族長は考えているそうだ。
このまま青頭を殺すと、フレデリカはどうなるか。
族長だって、フレデリカを殺したくはないそうで、自分で青頭を殺すよう仕向けたいらしい。
「青頭、暴れなかったのか」
「あやつも、フレデリカに入れ込んでおるようで」
「嫌われたくないから魔族には手を出さない。フレデリカに手を出さないなら、甘んじて受け入れる。同族に殺されそうになるなんて、トラウマもんだ。傷つけないためにも……とか思ったんだろうな」
「ええ」
牢屋に入れておくのは勿体ない。アイツも復讐者の端くれだ。この戦いには参加してもらいたい。それで疲弊させて、情報も絞れるだけ搾り取って、カッスカスの出涸らしになったら、オークに犯させて、適当に始末しようかと思っていたんだ
だって拳銃撃ちたいし。アイツの能力、面白そうじゃん。
族長も作戦進行中なら、俺が殺すまでもないのかしら。
「いつになったら飢えがくる」
「もう飢えております。標様の魔力も取り込めぬよう結界は厳重ですからな」
「そっちも面白そうだな。転生者集団の本隊が来る前に終わらせろ。あ、ちなみになんだけどさ、襲わなかったら?」
「あり得ませぬ。が、そうなれば……」
この面は……。
子供かあ、俺はロリに興味がないんだよな。
食わず嫌いなのかしら。
まあいいや。
いや良くねえ、神から仰せつかったのは魔族を救えという使命だ。
フレデリカも一応魔族。殺すのはマズイよな。
「俺には神様からの使命がある。フレデリカは殺さずにな」
「はっ」
※※※
「マティーニ」
「ダイキリ」
「どうするんだ」
「標様のお力を賜われるのだ。そしてお前もいる」
「殺るんだな?」
「耐えてきた。そしてまた十人も殺されたのだ」
「ああ」
「悲願を果たせず、転生者に……」
「そうだな」
「今この時から始める。我らの新たな時代だ」
「死ぬな」
「お前もな」
※※※
「という計画でございます。キヒヒ」
「いいね!進めてくれ!」
「はっ」
さあてついに始まりました!転生者バトルロワイヤル前哨戦っ!
開始のゴングを鳴らすのは髭面の団長とイケメン野郎だっ!
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千里眼という名前は、千里=約3,900kmから因んだ名前だ。英語に訳すのがメンドイから、超訳したとかそんなんじゃない。
彼らはこれから、村近くに瞬間移動してきた転生者を挽肉にしてやるそうだっ!
続いて紹介するのは、メガネな奴と……幸薄そうな奴と…………とにかくモブの5人だっ!
何故か一箇所に固まってヒソヒソ話しているっ!
ユリカちゃんがいい匂いなんだぁ、でゅふふとか話しているが、クソどうでもいいなぁ!
レフェリーはいない!正真正銘、完全なデスマッチだ!
2対5の圧倒的不利な戦いをどう進めるのか、魔族に注目してみていくぞぉ!
ちなみに、魔族は人間の皮を被り直した!これも作戦の内なので詳細は明かせないが、そういうことなのでヨロシク!
ダイキリ選手、村から堂々と出ていきますねえ。一方の斥候役、でゅふふ転生者たちは、女の子のおっぱいについて熱く語り合っている!どうやら三次元ではない、二次元についてだああ!
両者ついに邂逅!
転生者たちはゴクリと生唾を飲んだぞ。
ダイキリ選手は立ち止まって静観している。どうやら相手の出方を窺っているようだ!
「でゅふふ。あ、あんたは、ま魔族か?」
「……」
「でゅ、でゅふふふ」
焦っているうう!シカトされて、ちょっとだけ挙動不審になっているぞぉ!
団長はどこに行ったんだ!髭面のゴリラがカメラには写っていない状況です。
「でゅふ。こ、この村には魔族しかいない。マリアーネちゃんがそう言っていたでござるよ。でゅふ」
「な、なら、どうする?」
「お、俺たちは斥候。情報を聞きだしたら帰るのが鉄則、そうだろう二等兵」
「はっ!そうであります軍曹閣下」
キショいやり取りで文字数を食い潰す転生者!これは誰得だあ!?これを見ている世界の創生者諸君が、これを欲しているのかあ!?
誰にも分からない、しかし、これが現実に起きているのだ!余すことなく中継しております。
ああっとここで、団長が見えたああ!なんと、なんと!姿を隠して転生者達の背後を取っていたようだあああ!
急に現れた髭面に、ナイーブな男性諸氏がおどおどし始めた!
「でゅふふ、きゅ、急に現れたんだな。ど、どどどうする?」
「に、逃げるが吉」
「しかし、またどやされるでござるよ」
「じゃあやりますか?」
「やる、とは?」
「でゅふふ」
倫理観が狂っているぅ!転生者あるある、テンプレの王道を行くというのか!童貞臭い、皮の被ったポンコツが殺戮マシーンの狂気を見せるというのかぁ!
「標様、お力をお貸し頂たく存じます」
「標様、我も同じく、お力添えを頂たく」
ルール無用のバトルロワイヤル前哨戦!
なんとここで、ドーピング申請が来たああ!
実況担当である私、ジロー・キクカドは、ここでドーピング申請を受理しまして、この魔族たちに能力を使用いたします!
『死の舞闘』
この付与術という能力は、魔法を作り出せるという、所謂チート能力だ!ただし、サポート専用魔法しか生み出せないのが難点だが、解釈のしようによっては、いくらでも抜け道がありそうなガバガバ設定だっ!
さあて、マティーニとダイキリにチートなパワーを与えたところで、力関係はやっとイーブンか。しかし人数差を考慮すれば、不利なのは変わらない!圧倒的不利から不利になった程度だ!一体どうするというのだ!
ここで、二次元オンリーのド変態たちが動き出したぁ!
『武器選択、守護者……』
『歪脚』
言わせない!言わせないっ!
言わせね○ーよ?を完璧に再現した、まさに我○家の伝道師!
転生者の脚を、まとめてへし折ったぁああ!
「でゅふっ!」
全員がでゅふふと呻いているぅ!クソ雑魚いぞ転生者!殺る?とかほざいていたあの頃が懐かしいぞお!
転生者とはこうも雑魚いのかあ!?
いいえ、それは違います。死の舞闘とは魔力の付与であり、本人が持つ魔力以上に魔力を消費して、体内の循環器系を悉く痛めてしまう禁断の技なのだ!いったいその魔力はどこから出てくるのか。俺だ!俺の魔力を共有しているのだ。
つまり、あそこにいる2人は転生者と対等な強さを持ち、尚且つ俺の膨大な魔力を持っているのだ。転生者並みと言っても過言ではありませんっ!
完全なるチート!
クソ雑魚童貞共のチ○コは、小便をするだけのナニで終わってしまうか!がんしゃなんて、また遠い夢で終わってしまうのだろうかぁ!
「マティーニ、殺すなよ」
「分かっている。足止めご苦労」
「ふっ、標様のお力が偉大だっただけだ」
続きは次回!チャンネルはそのままでお待ち下さいっ!
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この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
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現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
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パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
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精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
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