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26.エンドのスタート
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NTR。所謂ネトラレと言うやつだ。寝取る、寝取られる。昔っからある男女の淫謀。それがジャンルになるんだから、凄い。
寝取ってやる!だとか、所帯を持つ男性にしか恋ができないんですとか。
はたまた、寝取られる妻を見て興奮したり、浮気をする旦那に欲情してみたり。
複雑怪奇な男女の機微。難解な迷路が何十にも重なって、結局行き着くところは………………
セクロスですな。
みーんなエロいことが大好き。
つまーり!寝取る寝取られるが持て囃されるのは、行為の前、前戯の役割をシチュエーションが担っているからなのだ!本番がスムーズになる。ローション使ってるぐらいスムーズに。
男ならギンギンだし、女ならヌレヌレよ。
悲しいかな、俺は男だ。女心は皆目見当もつかない。寝取る側、男の心情を解するなら、背徳感と征服欲だろう。イケないことをして、そして、体を重ねて我が手に落とす。俺もパンピーだから、この程度しか分からんけど、多分そういうことだろう。
ゆりかちゃんは彼氏持ち。
背徳感よーし。
征服欲、となるとマグロ相手じゃあ満たされない。そんな時に効果を発揮するのがっ!
『色情付与』
『感覚鋭化』
感度よーし。
征服欲よーし。
童貞喪失確認っ!
これ以上は止そう。どう考えても展開がAVすぎる。あまり詳細に語ると、我が神の怒りを買いそうなので、創出者諸君には申し訳ない。想像で気を鎮めてくれ。パンツを履き直すかどうかは任せるぜっ!
「チェリー?チェリーじゃなくてもいいけど」
「はっ。申し訳ありません、戻りました」
「あ、ああ。大丈夫?顔が赤いけど」
「あ、はい。問題ありません」
「んああ、そう。えーと、コイツらの面倒を……」
これはショタの仕事じゃないや。誰かー大人の男の人呼んでー。
「お任せを。交尾を続けさせればいいのですね?」
「ああうん。付与の効果がどれぐらいで切れるか分からないから、見張ってて。切れたら呼んでほしい」
「はっ」
「んー、やっぱり大人……」
「お任せを」
「――――う、うん、じゃあお願い」
この子、真面目だなー。いい子だ。
さて次はみゆきちゃん。君は青頭の初恋の人だもんねー。初恋ではないか。前の想い人だもんねー。どうやって虐めようかなー。
「みゆきちゃん」
「何したの?」
「ああ、声?あれは、まあ、仲良くしてるだけだろ」
「ゆりかはこうたに一途だったのに、あり得ない」
「ほう、尚の事いいね」
「アンタの能力ね」
「お前もヤル?」
「そんなんで、私の心が折れるとでも?」
「――――ありがとう」
「はあ?」
キターーーーー!!イジメられっ子、ついに覚醒!耐性ができてちょっとの事で折れないんだって!アマネちゃんの再来かな?最高かよ、ああ神よ感謝します。
「今度は死なせないからな。ちゃんと大切にする」
「――イかれてる」
「そうだ、奴隷にならないか?それなら生かし……」
「死ねよ」
「うん、愛してるぜベイビー」
「クソが。マジでキモいわ」
保存決定。青頭を苦しめるのは、フレデリカ虐めだけでいいな。コイツは愉しみに取っておこう。
あー暇だ。転生者たちは帰ったし、ゆりかちゃんとでゅふふCはイチャイチャしてるし、モブ転生者は魔族が玩具にしてるし。
磔組は、やっぱり魔族が愉しんでる。
ということで、やってきたのはジョンの家。久しぶりに来ましたよ。ノックノック。
「ああ、ジローか」
「よっ……!?」
嘘、だろ。お前、まさか!
「ああ、マルガリータと、ね」
「は、ハハハ。ああ、やっぱりな!お前ならやれると思ってたぜ」
「ありがとう、ジローのおかげだよ」
「……」
「それで?どうした?」
「――いや、顔が見えなかったんで様子を見に」
「そうか、悪いね。まあなんだ、一緒にいるってことは、分かるだろ?」
「ああ、邪魔したな」
ムチムチババアを寝取られた……。いや、良いんだけどね。俺が全力で応援したんだし、良いんだよマジで。でも何だろう、この喪失感。ムチムチが消え、モフモフが消え、壊れるまで大切にしたいと思っていた玩具も消えた。
そして、風俗に通う友人まで。
あっ!これはマズいわ。
テンプレ主人公にありがちな、没落期の展開だろ。ここで荒れて、人を傷つけて、改心して、強くなって的なやつだろ。
クッソ寒いわ。
でも寂しいのはマジなんだよなー。どうしよっかなー。みゆきちゃんはゆっくりと愉しみたいし。
フレデリカ、か?うーん、今じゃないなあ。
はあ。家に帰ってポチを撫でながら、転生者達を眺めようかね。
※※※
負けた……。神のお導きがあったというのに、負けてしまった。父になんと報告すればいいのだろうか。
ただでさえ、貴族の足並みが揃わずに内政が揺らいでいるというのに。
魔王討伐は、私の手腕を認めさせるための試金石だったのに。
「殿下、王国民を奪還致しました」
「魔王に傷の一つぐらいは付けたのでしょう?」
「い、いえ、その……」
「はあ」
神よ、この人達は本当に勇者となるのですか?私にはただの欲深い人間にしか見えません。どうかお導きください。王国をお救いください。
転生者たちが去り、残ったのは元老院院長と、宰相。この広い謁見の間も、人が居なければ無用の長物。市民がいなければ、私も、私達王族も同じく。
どうすればあなた達はまとまってくれるの?
どうすれば市民のために立ち上がってくれるの?
長年国に仕えるあなた達はなら、それを分かっているはず。智慧を持っているはず。
それなのに、無益な議論に時間を費やす。
「トゥカナの復興に金が足りませぬ。領主から復興費として徴税致しましょう」
「ならぬ。反乱でも起きようものなら、国が分裂してしまうではないか」
「では如何に?」
「直轄領に課税しては如何か。まずは王家が動き……」
「後に領主から取り立てると。それならば表立っての不平も出ますまい」
「そうね。いつも通りお願い」
「はっ」
返事は一丁前ね。私が無能だと思って見下しているのでしょう?顔に出ていてよ、院長、宰相。
私達がすべきことは、魔王退治なんかじゃない。貴族を纏め、市民を飢えから救うこと。
でもどうやって?
中立を保ってきたおかげで、平和は保たれてきた。けれど、各国の緊張が高まったおかげで、王国は苦しめられている。東西から睨まれ、北からは魔族領への通行を求める親書ばかりが届く。
今、北方のダームエル王国の通行を許可すれば、東に与したと思われかねない。もしかしたらそれが狙いで親書を送ってきているのかも。
私には無理だわ。お父様、早く帰って来てよ。
ドンドンドンッ!
一体何事!?
時計を見ると、深夜の2時。こんな時間にドアを叩くなんて。お願いだから休ませてよ。
「入りなさい」
「お休みのところ申し訳ありません」
「どうしました」
「転生者が死にました」
「まさか魔王が!?」
「いえ、転生者同士の喧嘩です」
「えっ……」
転生者に与えられている塔へ赴いた。現場を見ると共に、事情を聞くためだ。
転生者を呼びなさいと言ったけれど、騎士が登城させるのは危険だと頑なだった。こんな夜中に城から出るなんて、王都が焼け野原にならない限り、あり得ないと思っていたわ。
かなりの騎士が詰めかけているようで、一歩進むごとに、別の騎士の顔が見える。転生者相手に数人の騎士では立ちまわれない。だからこんなに……。
初めてお父様の危機感が理解できた。
転生者は諸刃の剣、下手すると切っ先を喉元に突き付けてくる、飼い慣らせない獣。本来は召喚すべきではないが、こうも世情が不安定になればこそ、致し方なし。
私に噛みついてくる可能性もゼロではない。でも限りなく低いと思っていた。だって私は王族だし、騎士が必ず護衛についてくれているからだ。
件の現場、談話室に踏み入って危機感が確かなものとして感じられた。
惨たらしく壁に張り付いた血糊。一刀両断された人の体。表情は……。
「うぅっ」
「殿下、直視しない方がよろしいかと」
「大丈夫よ」
顔面から真っ二つになり、股まで切り裂かれている。腕の付いた肉塊が二つ、哀れにも弱弱しく内臓をぶちまけて、真っ赤な血だまりに溺れている。
「幸太、あなたなのね」
「――――ああ」
血の付いた刀剣が床に転がっている。あれは幸太の武器。特徴的な形だから覚えている。
「一体なぜ?」
「友梨佳を無理やり……」
聞けば、幸太の想い人を無理やり手籠めにしようとしたらしい。怒るのも無理はない。
けれど、なんだろう、この違和感は。
人が死んだというのに、雰囲気が随分と落ち着ている。幸太は落ち込んでいる、反省?少なくとも後悔しているように見える。
でも他の者は、数名を除いて表情が変だ。
感情の温度が感じられない。
熱く燃えるような怒りも、冷たい蔑みもない。
未体験の現場で緊張している?いいえそれは無いわ。私ですら、感情の起伏を抑えるのに苦労しているのだもの。こんな凄惨な現場を見たこともない私が、緊張と不安でいっぱいの中、不甲斐ない転生者達の処遇に頭を悩ませて、死んだ彼に侮蔑を向けて、幸太にどうやって温情を掛けようかと思っている。
緊張しているから、表情が見えないなんて、そんなはずはない。
だからといって、この違和感の正体を突き止める術もない。
でも変だという事は、直感的に感じていた。
それから、転生者達は不審な死を遂げた。ある者は錯乱し、騎士に襲い掛かったため、その場で処刑された。
ある者は私の部屋に忍込み、昨日の続きをしようと、襲い掛かってきた。もう少しで純潔を奪われると思い、咄嗟にナイフで突き刺した。護身用にとお父様から頂いた、豪華なナイフで首を一撃。
手に残る温かさと、ヌルリとした手触りが忘れられない。外に漏れないようにと、厳重な箝口令を敷いて、私が信を置く部下だけにすべてを明かした。そして、部屋から遺体を運び出し、自殺したように見せかけたのだ。
残る転生者は5名。
たった5名の若者に、魔王が殺せるはずもない。じゃあ彼らは何のためにここに来たの。もう帰してあげたい。意味のない戦いに命を懸けるのではなく、故郷でその人生を過ごしてほしい。
単純な優しさではない。恐怖からだった。ベッドで両手を抑えられ、熱い吐息が私の口に……。
早く消えてほしい。
そして、お父様には戻ってきてほしい。私には国の舵取りなんてできない。
※※※
ここ数日、ボーッと『千里眼』で転生者たちの様子を眺めていた。
つまらない。
マリアーネ王女殿下の寝室に転生者が忍び込んだのは良かった。出来れば本番までいって欲しかったが、殿下は意外と武闘派だった。首筋からぶしゃーよ。
そして、イライラしている。更年期障害かと思うぐらい苛立っている。理由のない怒りだ。もしかしたら溜まっているのかもしれないと思い、魔族の姉ちゃんに金を払ってヌいてもらった。
ソイツが人間のフリをしている頃は、娼婦で名が通っていたので、頼みやすかった。テクは一級品で、影の長さが変わらないうちに彼女は帰っていった。
賢者タイムまっしぐらで、昼間っから何してんだと後悔しつつ横になった。相も変わらずイライラ。
何だろうか、この怒りは。すげームカつく。ムカついてムカついて、何でもいいから壊したくなる。
転生者をイジメたい、そんな気持ちも遠のいた。何でだろうか。とてもつまらない。ハラハラしない。手持ち無沙汰で、ポチが羨ましく感じる。一日中ボーッとして、気が向けば俺にすり寄って撫でられる。気持ち良くなったら、膝に体を預けて丸まって寝る。
可愛い子だ――――。
俺は何を求めているのだろうか。何に怒っている?この空虚感は何だろうか。すべてが無駄に思えてならない。魔族を救い、転生者を殺す。イジメて愉しんで殺して。効率的に人生を謳歌しているだろ。
順風満帆だから腹が立つのか?起伏がないから空虚なのか。
そうなんだろうか……。
神よ、また貴方様に会いたいです。この晴れない気持ちは何なのですか。私の未熟さに貴方様の愛をください。
寝取ってやる!だとか、所帯を持つ男性にしか恋ができないんですとか。
はたまた、寝取られる妻を見て興奮したり、浮気をする旦那に欲情してみたり。
複雑怪奇な男女の機微。難解な迷路が何十にも重なって、結局行き着くところは………………
セクロスですな。
みーんなエロいことが大好き。
つまーり!寝取る寝取られるが持て囃されるのは、行為の前、前戯の役割をシチュエーションが担っているからなのだ!本番がスムーズになる。ローション使ってるぐらいスムーズに。
男ならギンギンだし、女ならヌレヌレよ。
悲しいかな、俺は男だ。女心は皆目見当もつかない。寝取る側、男の心情を解するなら、背徳感と征服欲だろう。イケないことをして、そして、体を重ねて我が手に落とす。俺もパンピーだから、この程度しか分からんけど、多分そういうことだろう。
ゆりかちゃんは彼氏持ち。
背徳感よーし。
征服欲、となるとマグロ相手じゃあ満たされない。そんな時に効果を発揮するのがっ!
『色情付与』
『感覚鋭化』
感度よーし。
征服欲よーし。
童貞喪失確認っ!
これ以上は止そう。どう考えても展開がAVすぎる。あまり詳細に語ると、我が神の怒りを買いそうなので、創出者諸君には申し訳ない。想像で気を鎮めてくれ。パンツを履き直すかどうかは任せるぜっ!
「チェリー?チェリーじゃなくてもいいけど」
「はっ。申し訳ありません、戻りました」
「あ、ああ。大丈夫?顔が赤いけど」
「あ、はい。問題ありません」
「んああ、そう。えーと、コイツらの面倒を……」
これはショタの仕事じゃないや。誰かー大人の男の人呼んでー。
「お任せを。交尾を続けさせればいいのですね?」
「ああうん。付与の効果がどれぐらいで切れるか分からないから、見張ってて。切れたら呼んでほしい」
「はっ」
「んー、やっぱり大人……」
「お任せを」
「――――う、うん、じゃあお願い」
この子、真面目だなー。いい子だ。
さて次はみゆきちゃん。君は青頭の初恋の人だもんねー。初恋ではないか。前の想い人だもんねー。どうやって虐めようかなー。
「みゆきちゃん」
「何したの?」
「ああ、声?あれは、まあ、仲良くしてるだけだろ」
「ゆりかはこうたに一途だったのに、あり得ない」
「ほう、尚の事いいね」
「アンタの能力ね」
「お前もヤル?」
「そんなんで、私の心が折れるとでも?」
「――――ありがとう」
「はあ?」
キターーーーー!!イジメられっ子、ついに覚醒!耐性ができてちょっとの事で折れないんだって!アマネちゃんの再来かな?最高かよ、ああ神よ感謝します。
「今度は死なせないからな。ちゃんと大切にする」
「――イかれてる」
「そうだ、奴隷にならないか?それなら生かし……」
「死ねよ」
「うん、愛してるぜベイビー」
「クソが。マジでキモいわ」
保存決定。青頭を苦しめるのは、フレデリカ虐めだけでいいな。コイツは愉しみに取っておこう。
あー暇だ。転生者たちは帰ったし、ゆりかちゃんとでゅふふCはイチャイチャしてるし、モブ転生者は魔族が玩具にしてるし。
磔組は、やっぱり魔族が愉しんでる。
ということで、やってきたのはジョンの家。久しぶりに来ましたよ。ノックノック。
「ああ、ジローか」
「よっ……!?」
嘘、だろ。お前、まさか!
「ああ、マルガリータと、ね」
「は、ハハハ。ああ、やっぱりな!お前ならやれると思ってたぜ」
「ありがとう、ジローのおかげだよ」
「……」
「それで?どうした?」
「――いや、顔が見えなかったんで様子を見に」
「そうか、悪いね。まあなんだ、一緒にいるってことは、分かるだろ?」
「ああ、邪魔したな」
ムチムチババアを寝取られた……。いや、良いんだけどね。俺が全力で応援したんだし、良いんだよマジで。でも何だろう、この喪失感。ムチムチが消え、モフモフが消え、壊れるまで大切にしたいと思っていた玩具も消えた。
そして、風俗に通う友人まで。
あっ!これはマズいわ。
テンプレ主人公にありがちな、没落期の展開だろ。ここで荒れて、人を傷つけて、改心して、強くなって的なやつだろ。
クッソ寒いわ。
でも寂しいのはマジなんだよなー。どうしよっかなー。みゆきちゃんはゆっくりと愉しみたいし。
フレデリカ、か?うーん、今じゃないなあ。
はあ。家に帰ってポチを撫でながら、転生者達を眺めようかね。
※※※
負けた……。神のお導きがあったというのに、負けてしまった。父になんと報告すればいいのだろうか。
ただでさえ、貴族の足並みが揃わずに内政が揺らいでいるというのに。
魔王討伐は、私の手腕を認めさせるための試金石だったのに。
「殿下、王国民を奪還致しました」
「魔王に傷の一つぐらいは付けたのでしょう?」
「い、いえ、その……」
「はあ」
神よ、この人達は本当に勇者となるのですか?私にはただの欲深い人間にしか見えません。どうかお導きください。王国をお救いください。
転生者たちが去り、残ったのは元老院院長と、宰相。この広い謁見の間も、人が居なければ無用の長物。市民がいなければ、私も、私達王族も同じく。
どうすればあなた達はまとまってくれるの?
どうすれば市民のために立ち上がってくれるの?
長年国に仕えるあなた達はなら、それを分かっているはず。智慧を持っているはず。
それなのに、無益な議論に時間を費やす。
「トゥカナの復興に金が足りませぬ。領主から復興費として徴税致しましょう」
「ならぬ。反乱でも起きようものなら、国が分裂してしまうではないか」
「では如何に?」
「直轄領に課税しては如何か。まずは王家が動き……」
「後に領主から取り立てると。それならば表立っての不平も出ますまい」
「そうね。いつも通りお願い」
「はっ」
返事は一丁前ね。私が無能だと思って見下しているのでしょう?顔に出ていてよ、院長、宰相。
私達がすべきことは、魔王退治なんかじゃない。貴族を纏め、市民を飢えから救うこと。
でもどうやって?
中立を保ってきたおかげで、平和は保たれてきた。けれど、各国の緊張が高まったおかげで、王国は苦しめられている。東西から睨まれ、北からは魔族領への通行を求める親書ばかりが届く。
今、北方のダームエル王国の通行を許可すれば、東に与したと思われかねない。もしかしたらそれが狙いで親書を送ってきているのかも。
私には無理だわ。お父様、早く帰って来てよ。
ドンドンドンッ!
一体何事!?
時計を見ると、深夜の2時。こんな時間にドアを叩くなんて。お願いだから休ませてよ。
「入りなさい」
「お休みのところ申し訳ありません」
「どうしました」
「転生者が死にました」
「まさか魔王が!?」
「いえ、転生者同士の喧嘩です」
「えっ……」
転生者に与えられている塔へ赴いた。現場を見ると共に、事情を聞くためだ。
転生者を呼びなさいと言ったけれど、騎士が登城させるのは危険だと頑なだった。こんな夜中に城から出るなんて、王都が焼け野原にならない限り、あり得ないと思っていたわ。
かなりの騎士が詰めかけているようで、一歩進むごとに、別の騎士の顔が見える。転生者相手に数人の騎士では立ちまわれない。だからこんなに……。
初めてお父様の危機感が理解できた。
転生者は諸刃の剣、下手すると切っ先を喉元に突き付けてくる、飼い慣らせない獣。本来は召喚すべきではないが、こうも世情が不安定になればこそ、致し方なし。
私に噛みついてくる可能性もゼロではない。でも限りなく低いと思っていた。だって私は王族だし、騎士が必ず護衛についてくれているからだ。
件の現場、談話室に踏み入って危機感が確かなものとして感じられた。
惨たらしく壁に張り付いた血糊。一刀両断された人の体。表情は……。
「うぅっ」
「殿下、直視しない方がよろしいかと」
「大丈夫よ」
顔面から真っ二つになり、股まで切り裂かれている。腕の付いた肉塊が二つ、哀れにも弱弱しく内臓をぶちまけて、真っ赤な血だまりに溺れている。
「幸太、あなたなのね」
「――――ああ」
血の付いた刀剣が床に転がっている。あれは幸太の武器。特徴的な形だから覚えている。
「一体なぜ?」
「友梨佳を無理やり……」
聞けば、幸太の想い人を無理やり手籠めにしようとしたらしい。怒るのも無理はない。
けれど、なんだろう、この違和感は。
人が死んだというのに、雰囲気が随分と落ち着ている。幸太は落ち込んでいる、反省?少なくとも後悔しているように見える。
でも他の者は、数名を除いて表情が変だ。
感情の温度が感じられない。
熱く燃えるような怒りも、冷たい蔑みもない。
未体験の現場で緊張している?いいえそれは無いわ。私ですら、感情の起伏を抑えるのに苦労しているのだもの。こんな凄惨な現場を見たこともない私が、緊張と不安でいっぱいの中、不甲斐ない転生者達の処遇に頭を悩ませて、死んだ彼に侮蔑を向けて、幸太にどうやって温情を掛けようかと思っている。
緊張しているから、表情が見えないなんて、そんなはずはない。
だからといって、この違和感の正体を突き止める術もない。
でも変だという事は、直感的に感じていた。
それから、転生者達は不審な死を遂げた。ある者は錯乱し、騎士に襲い掛かったため、その場で処刑された。
ある者は私の部屋に忍込み、昨日の続きをしようと、襲い掛かってきた。もう少しで純潔を奪われると思い、咄嗟にナイフで突き刺した。護身用にとお父様から頂いた、豪華なナイフで首を一撃。
手に残る温かさと、ヌルリとした手触りが忘れられない。外に漏れないようにと、厳重な箝口令を敷いて、私が信を置く部下だけにすべてを明かした。そして、部屋から遺体を運び出し、自殺したように見せかけたのだ。
残る転生者は5名。
たった5名の若者に、魔王が殺せるはずもない。じゃあ彼らは何のためにここに来たの。もう帰してあげたい。意味のない戦いに命を懸けるのではなく、故郷でその人生を過ごしてほしい。
単純な優しさではない。恐怖からだった。ベッドで両手を抑えられ、熱い吐息が私の口に……。
早く消えてほしい。
そして、お父様には戻ってきてほしい。私には国の舵取りなんてできない。
※※※
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そして、イライラしている。更年期障害かと思うぐらい苛立っている。理由のない怒りだ。もしかしたら溜まっているのかもしれないと思い、魔族の姉ちゃんに金を払ってヌいてもらった。
ソイツが人間のフリをしている頃は、娼婦で名が通っていたので、頼みやすかった。テクは一級品で、影の長さが変わらないうちに彼女は帰っていった。
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何だろうか、この怒りは。すげームカつく。ムカついてムカついて、何でもいいから壊したくなる。
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可愛い子だ――――。
俺は何を求めているのだろうか。何に怒っている?この空虚感は何だろうか。すべてが無駄に思えてならない。魔族を救い、転生者を殺す。イジメて愉しんで殺して。効率的に人生を謳歌しているだろ。
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