4 / 11
~旅立ち~
しおりを挟む
ちくわがコミュニケーションを試み始めてからどれだけ経ったろう、時々思い出したように数匹のちくわがそれに声をかける程度には興味を失われていたそのとき。
それは投げやりな誰何の声に応じた。
僕は誰だろう、ともかく、君達が知覚するような存在だ、どうあっても。
投げやりだね。
そうかもしれない。しかし僕がなんと主張しようと、僕はその主張を含めて君達が知覚するところの存在でしかない。僕が誰かという問いは、どのような部分を知覚させてくれるかという問いと解して答えたほうが有意義かもしれない。しかし僕は君達の知覚がどのようなものか知らない。少なくとも僕と同じ開放された孔を有する円筒状の存在であるようだけれど、質感には明らかな違いがある。僕の知覚からすると君達はそういう存在だ。
確かに君のギザギザや扁平で波打たない表面、気泡の析出を想像させる質感は僕たちのそれとは異なるようだね、ともかくとして、はっきりさせておきたいことがある、君は単に慎重で、正確性に拘る哲学的性格なのか、それとも自意識として自己認識が薄いのかってことだ。
どっちも。僕は僕が誰か知らないし、軽々に答えを出そうとも思わない。
では君の当座の目標はそこに答えを出すことかな。
目標。何かが今僕の中で膨らんでは萎んだような感覚があった。何か成さねばならないことを忘れているような。これは僕が誰かってことと結びついている気がする。
大抵のことはそうだと思うけど。
出自とか、僕が誰かってことのかなり深いところと結びついているように思うんだ。そう、誰かに復讐しなくちゃならない。一族の仇。
どうにも不穏当だが、何かが見えてきそうな情報だね。君が現れたとき、君はこの世界の外、水の無い、水面より上から墜ちてきたという目撃談が共有されているよ。何か関係があるかもしれない。
それは大きな手掛かりだね。
加えてもう一つ。君が墜ちてきてから程なく、各所で君のような、つまりギザギザで、我々のような孔を持つが我々とはどこか違う存在を見かけたという話が聞かれている。
出典が不明確だね。
いかなる情報も真の出典は不明確だよ。
君は少し不誠実かもしれないね。
あまり重要ではない情報を細部まで覚えてはいないことをそんな風に言われるとは、親切で教えて上げているのに。
確かに君にとっては重要ではなさそうな情報だね、無理からぬことだ、ごめんよ、しかし親切を自ら強調するのは品がない、あまり好みじゃないな。
一言多いね、そのギザギザは体格だけじゃなくて心の有様なのかな。
そうかもしれない、いや軽口ではなく僕の構造として……
ああまあ、わからなくもない。
ともかく、最近渦潮が発生しては消えない海域だよ。
その、僕のような姿かたちのものたちが目撃されていると。
そう。
行ってみようか。
行ってみよう。
それは投げやりな誰何の声に応じた。
僕は誰だろう、ともかく、君達が知覚するような存在だ、どうあっても。
投げやりだね。
そうかもしれない。しかし僕がなんと主張しようと、僕はその主張を含めて君達が知覚するところの存在でしかない。僕が誰かという問いは、どのような部分を知覚させてくれるかという問いと解して答えたほうが有意義かもしれない。しかし僕は君達の知覚がどのようなものか知らない。少なくとも僕と同じ開放された孔を有する円筒状の存在であるようだけれど、質感には明らかな違いがある。僕の知覚からすると君達はそういう存在だ。
確かに君のギザギザや扁平で波打たない表面、気泡の析出を想像させる質感は僕たちのそれとは異なるようだね、ともかくとして、はっきりさせておきたいことがある、君は単に慎重で、正確性に拘る哲学的性格なのか、それとも自意識として自己認識が薄いのかってことだ。
どっちも。僕は僕が誰か知らないし、軽々に答えを出そうとも思わない。
では君の当座の目標はそこに答えを出すことかな。
目標。何かが今僕の中で膨らんでは萎んだような感覚があった。何か成さねばならないことを忘れているような。これは僕が誰かってことと結びついている気がする。
大抵のことはそうだと思うけど。
出自とか、僕が誰かってことのかなり深いところと結びついているように思うんだ。そう、誰かに復讐しなくちゃならない。一族の仇。
どうにも不穏当だが、何かが見えてきそうな情報だね。君が現れたとき、君はこの世界の外、水の無い、水面より上から墜ちてきたという目撃談が共有されているよ。何か関係があるかもしれない。
それは大きな手掛かりだね。
加えてもう一つ。君が墜ちてきてから程なく、各所で君のような、つまりギザギザで、我々のような孔を持つが我々とはどこか違う存在を見かけたという話が聞かれている。
出典が不明確だね。
いかなる情報も真の出典は不明確だよ。
君は少し不誠実かもしれないね。
あまり重要ではない情報を細部まで覚えてはいないことをそんな風に言われるとは、親切で教えて上げているのに。
確かに君にとっては重要ではなさそうな情報だね、無理からぬことだ、ごめんよ、しかし親切を自ら強調するのは品がない、あまり好みじゃないな。
一言多いね、そのギザギザは体格だけじゃなくて心の有様なのかな。
そうかもしれない、いや軽口ではなく僕の構造として……
ああまあ、わからなくもない。
ともかく、最近渦潮が発生しては消えない海域だよ。
その、僕のような姿かたちのものたちが目撃されていると。
そう。
行ってみようか。
行ってみよう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる