科学になぐさめられる時Ⅰ

michaelyamaguchi

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第Ⅴ章

秘密の合言葉

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ヒデキは一人、ガバメントタイプのスミス&ウェッソンを構えていた。
取り壊しの決まったビルの地下二階。拳銃の練習にはうってつけだ。いずれこのビルも建設予定の高速道路の下敷きになるのだろう。その利権のための、押し殺したような銃声。
照準を合わせる。狙いを定めてから引き金を絞るまでのリズム、これが大切だ。ヒデキは頭の中で、16ビートのリズムを刻んだ。そのタイミングで引き金を絞るのだ。決して走ってはいけない。もたってもいけない。ジャストで絞る。これが易しいようで難しい。
轟音が鳴り響いた。10mほど離れたコンクリートの壁が弾ける。しかし、弾は狙った的には当たらない。微妙にずれてしまう。ただ、その感触は悪くない。
「まだかな。」
三日前から、ヒデキはこの地下にこもっていた。既にヒデキは旅に出たことになっている。ヒットの指令が出るまでは、外部とのコンタクトは一切禁じられていた。ヒットするマシンになるための時間。獲物を狙うハンターになるための時間。
はじめてこの拳銃を握った時は、からっきし当たらなかった。
ガバメントタイプのスミス&ウェッソン。プラグマティズムが生んだ機能に徹した拳銃だ。上手ければ当たる。下手ならば当たらない。上手く出来ている。
拳銃とはおかしなもので、当てようとすればする程、照準は落ち着かない。標的は霞み、手は震える。自分の呼吸で肺が波打つのがヤケに大きく感じられる。それを止めようとすればする程、自分の身体が動いていることに気を取られる。まるで死体役の役者が、胸の鼓動を観客に悟られはしないかと怯えるように。
生きている以上、身体を止めることは出来ない。止める努力に意味はない。それに慣れるのに二日掛かった。止めようとする努力を諦めると、次第に身体のリズムが見えてきた。日常では気が付かない微かなリズム。心臓の鼓動、肺の呼吸、関節の伸縮、角膜の拡縮、そうしたリズムがシンクロするタイミング。意識と無意識の境目。禅の境地。そんなタイミングを捉える。
「ドキューーーーーン。」

ヒデキは何年か前に出会った、流しのトランぺッターの話を思い出した。その落ちぶれたトランペッターはこんなことを言っていた。
「音符には幅があるんだ。」
「幅?」
「あぁ、音符ってぇのは丸いだろ。おたまじゃくしの丸さ。その丸の通り、一つの音を出すのには、その丸の頭で吹くか、真ん中で吹くか、尻で吹くか、吹く人のリズム感によって変わってくるのさ。」
そのトランぺッターは、ナプキンにボールペンでおたまじゃくしの絵を描いた。顔に似合わず、かわいらしい絵だった。その絵を見ながらヒデキは聞いた。
「音符の頭や尻って、それ、走ったりもたったりすることだろう。」
「ほう、よく知っているじゃねぇか。」
トランぺッターはまんざらでもないように、グラスのウィスキーを上手そうに舐めた。
「でもな、走ったりもたったりするのは、ただのリズム音痴さ。飽くまでリズムをキープした上での頭か尻かって話しさ。」
「成程、難しいもんなんだね。」
リズムを外してしまうこととは違うらしい。リズムが合った上での、頭やお尻。
「あぁ、リズム感ってのは本当に難しい。音符の頭でとったり、尻でとったりすることで、微妙なドライブ感とかグルーブ感てぇのが生まれるのさ。」
「そんなこと考えながら吹いているんだね。よく間違えねぇもんだな。」
「まぁ、俺たちは考えながら吹いているが、黒人は考えずにやっちまうからな、勝てねぇんだよ。」
そのトランぺッターは本当に悔しそうに、そう語った。
ヒデキは、聞いてみた。
「勝てないってことは、負けっぱなしって事かい。」
「あんた、面白いこと言う人だね。」
「何て言うかさ、頭や尻がダメだったら、どてっぱらに一発ぶち込んじまえば、良かないのかってね。そう思っただけさ。」
「真ん中ってことか。」
「あぁ、そうさ、ど真ん中。」
トランぺッターが言うには、真ん中のことはジャストというとのことだった。「ジャストでとる」とも言うのだという。簡単に言えば、メトロノームだ。
メトロノームにリズム感はない。正確な時間間隔を刻むテンポがあるだけだ。つまりそのテンポがおたまじゃくしのど真ん中、に相当すると言うわけだ。正確無比なテンポ、逆に言えば味もそっけもない。味もそっけもないが、これが基本中の基本であることも間違いない。
トランぺッターは最後に言った。
「まぁ、全てはジャストが取れてなんぼの話だけどな。リズムの基本だよ。」

「ジャストが取れてなんぼだよな。」
ヒデキは弾倉を取り替えながら、一人呟いた。
「リズムの基本。」
構えてから照準を合わせるまでのリズム。そして引き金を絞るまでのリズム。反動と硝煙の湧き上がるリズム。そのリズムのジャスト。再び引き金を絞る。
「ドキューーーーーン。」
弾は微妙に的を外れた。
「ジャストは、まだだな。」
拳銃を机に置いて、一息ついた。焦る必要はない。まだ、もう少しだけなら時間はある。
ヒデキは気分を変えた。
「よし、じゃぁ日課でも始めるか。」
そう言うと、ヒデキはヨガ用のマットを敷き、鏡を見える位置にセットした。始めるのはストレッチである。まずは、座って両足の足首を掴み、股関節をリラックスさせる。くびも回し、肩甲骨と肩も回す。続いて前屈、前後の開脚に左右の開脚だ。両側の腋も十分に伸ばしておこう。
一通りの床のストレッチが終わると、続いてヒデキはバーに移った。その地下フロアには、脚立やら鉄パイプやら、足を掛けたり、手でつかんだりするものに事欠かない。
ヒデキは、足を前やら横やら後ろやら、脚立とパイプで上手くバランスを取りながら、丹念に身体の隅々まで十分にストレッチした。ストレッチは全ての基本だ。ないがしろにしてはならない。自分の身体は自分でケアするのだ。
最後にヒデキはタオルを手に取った。両手でつかみ、ひろげる。そこから両端を掴むのだが、この時、片方を上の端、もう片方は下の端を掴む。こうすることでタオルが平行四辺形となり、長さが伸びる。その状態で右手を上、左手を下で、背中に回す。タオルに沿って、両手を背中で近づける。そして、指と指を掴む。
「こっちは行けるんだよな。」
そうなのだ、問題は逆なのだ。
今度は逆に、左手を上、右手を下で、タオルを背中に回す。同じように、両手をタオルに沿って近づける。近づける。近づける。
「ウ、ク、ワ、、、」
肩甲骨を思いきり縮める。息を吐く。思わず首がのけぞる。声がさら出る。
「ヴ、グ、ゲ、、、」
もう少し、もう少しなのだ。もう少しのはずなのだ。
「指、指、人差し指、、、、」
両方の人差し指を思いっきり伸ばす。
「触れ、触れ、指よ、触れ、、、」
指でもがく。
「・」
緊張の糸が切れる。
「ダ。」
諦めた。
敗北感を噛み締めるヒデキ。ヒデキの肩甲骨は堅かった。焦る必要はない。まだ、もう少しだけなら時間はある。

と、その時、扉の向こうに足音が響いた。素早くガバメントを手に取ると、ヒデキは扉を背にして構えた。
足音が壁の向こうで止まる。
それを確かめて、ヒデキは予め決めておいた合言葉を言った。
「 ♪ チューウ、チュウ、チュ、チュ ♪ 」
扉の外から押し殺した声がした。
「 ♪ 夏の、お嬢、さん。 ♪ 」
合言葉は正確に返ってきた。
扉を素早く開けると、押しのけるようにシンイチロウが重そうにテレビを抱えて入ってきた。
「何やってんだよ!?」
「いえ、アニキが寂しいかな、と思って、テレビとビデオデッキ持ってきました。21インチなんですけど、我慢してくださいね。飯島愛のビデオもありますからね。他にもいくつか見繕ってきましたから。」
と言いながら、早速配線をつなぎ始める。
「何だこれ、岡本夏生って、お前の趣味か?。」
ビデオテープも十数本はあるようだ。
「え?ダメですか。アニキ、レースクイーンとか興味ないですか?」
「C.C.ガールズ、ねぇ。」
「俺は青田典子より藤森夕子なんですけどね。何かリクエストあったら言ってくださいね。」
「こんなの持ってくるの、大変だったんじゃないか。」
「何言ってんですか。アニキに最高の環境で練習してもらおうて思ってですね、これでも組の経理をどやしつけて、金出させたんですから。」
そう言うと振り返り、扉に向かって叫ぶシンイチロウ。
「おーい、こっち持ってきて。」
すると目隠しをされた配達屋のバイトたちが、恐る恐る荷物を運びこんできた。
「おい、気を付けろよ。」
どやしつけるシンイチロウ。
「気を付けろって、シンイチロウ、目隠しされてたら気を付けようもないだろうよ。」
「だって、ココがわかったらヤバいでしょ。」
「そりゃぁ、ヤバいけどよ。目隠ししたまま荷物運ばせるのもなぁ。」
バイトは合計十人もいただろうか。運び込まれる荷物は、トラック一杯はありそうだった。運び込まれる荷物の山。
気が付くと、倉庫は最新鋭の電化製品に囲まれた、カンフォタボーなアメニティー空間に変貌していた。ご丁寧なことに、熱帯魚の水槽から観葉植物まで置いてある。
「アニキ、この水槽いいでしょ。魚ってのは妙に落ち着くんですよね。それにこの畳。部屋の一か所は和風でないとね。あと一人用サウナ。これ割と便利っすよ。」
シンイチロウのルーム紹介は続く。
「揃えたビデオは、AV以外は戦争ものと環境ものが結構充実しています。AVと戦争もので興奮したら、環境ビデオでクールダウンしてください。イソギンチャクとクマノミも良いですが、大ウミガメの産卵とかも結構イケますよ。」
そう言いながらも、真剣に点検する様子のシンイチロウ。
「忘れ物はないかな。指を突っ込むだけの血圧測定器も買っておきましたから、一応毎朝測っておいてくださいね。
これで一応揃ったな。」
満足げにシンイチロウは、部屋を見渡していた。ヒデキはそのシンイチロウの延髄めがけてフライングニールキックを正確に叩き込んだ。シンイチロウの身体が吹っ飛んだ。

「バカヤロウ。お前、これじゃぁ台無しだろうが。」
訳が分からない、シンイチロウ、畳みかけるヒデキ。
「俺はこれから野獣になって、ハイエナになって、飢えた狼になって、冷酷無残で冷徹非情の殺人マシーンになるんだろうが。コンクリートの冷たさと都会の孤独が、俺の中に眠っていた野生を目覚めさせ、研ぎ澄まされた牙に嚙みちぎられる犠牲者を、刺すような目線で探すんだろうが。」
シンイチロウが呆然とヒデキを見上げた。
「眠っちゃうじゃないかよ、これじゃぁよ。」
シンイチロウが恐る恐る聞いた。
「何がでしょうか?」
「狼だろう。」
押し殺した声でヒデキが続ける。
「目覚めようとしていた飢えた狼が、これじゃぁまた眠っちゃうだろ。こんなにカンフォタボーでアメニティーでソフトでメローなシチュエーションだったら、折角の狼が羊さんになって眠っちゃうんだよ。BGMがマイルスデービスのトランペットからユーミンの中央フリーウェイに変わっちゃうんだよ。分からねぇのかよ、そのくらい。参ったなー。全然イメージ違うんだもんなー。」
ヒデキは不貞腐れて、運び込まれたフローリング用の背の低いソファに寝転がった。
「シンイチロウ、いいか、このアメニティーを絵に描いたような空間で、『タクシードライバー』のロバート・デニーロってイメージ湧くか。『蘇る金狼』の松田優作って雰囲気出るか。『逃亡者』のデヴィッド・ジェンセンって緊迫感感じるか?」
「最後のがちょっとわからないんですけど。」
ヒデキはソファで上半身を起こして横になり、片ひじを立てた。
「あるかないかって聞いてんだよ。」
「な、ないです。」
「ないだろう。
これじゃぁよう、どう考えたって、『東京ラブストーリー』を真似して作ったテレビ埼玉辺りのパクりにしか見えねぇーだろ。」
かすかに首を傾げるシンイチロウ。
「でなきゃぁ、BSフジ辺りのしょーもない再放送のお茶の間劇場ぐらいなもんだよ。」
ヒデキは、ソファから立ち上がり続けた。
「お前はよぉ、イメージってのがないから何時まで経ってもダメなんだよ。今日び、こんな可愛らしいリビングみたいなセット、宇宙企画の不倫妻シリーズぐらいしか使いっこねぇぞ。」
「す、すみません。」
「いつも俺が言っているだろ、モノや形から入るなってよぉ。それをお前は、ヘイヘイ、ヘイヘイ、ってよぉ、良いのは返事ばっかしでよぉ、なんも人の言うこと聞いてねぇからこういうことになるんだよ。ったく、ようぉ、、、」
振り返ると、シンイチロウは正座して涙ぐんでいた。
「俺、アニキのためだと思って、つい軽はずみなことしちまって、とっても大事な時期だと言うのに、アニキを怒らせるようなことしちまって、俺ってなんてバカなんだろう。」
シンイチロウは本気で泣いていた。ヒデキは隣にしゃがんで、シンイチロウの肩にそっと手をやった。
「いや、シンイチロウ、泣くことはないんだぜ。」
「いえ、俺こんな時にアニキの気持ちも分からないなんて、俺ってとことんダメなんでしょうね。」
泣き崩れるシンイチロウ。
「いや、俺も少し言い過ぎた。悪かったよ。お前の気持ちは嬉しいんだ。勝手なことばかり言って済まなかったな。」
「アニキ、本当にすみませんでした。こんながらくた、今すぐに全部たたき出します。こんなつまらないもの持ってきた上に、女まで用意しちまって。本当にすみませんでした。」
「女って?」
「アニキ、済みません。女ぐらい欲しいかなって思って、二十人ばかり見繕って、目隠しさせてトラックに放り込んできちゃったんですよ。済みません。すぐに追い返します。」
ヒデキは咳ばらいをし、ティッシュを二枚とると、泣き崩れているシンイチロウの前に膝をついた。
「シンイチロウ君、これで涙をぬぐいたまえ。別に君のしていることが間違っているとは言っていないんだよ。ただちょっとタイミングが良くなかったぐらいの事なんだからね。
さぁ、元気を出して、泣いてなんかいるとカタツムリに笑われるぞぉ。何時ものシンイチロウ君らしくないぞぉ。
仕方ないなぁ。こういう時はシンイチロウ君のために、女の子でも呼んで慰めてあげられるといいんだけどなぁ。」
フラフラと立ち上がり、扉の外の様子を伺うヒデキ。
「あれぇ、トラックに女の子がいるみたいだぞ。何人だぁ?あれぇ、二十人もいるぞぉ。シンイチロウ君、どうするぅ?みんな寂しがっているみたいだぞぉ。呼んできてあげようかなぁ?
あれぁ、返事がないぞぉ?どうしたのかなぁ?」
と、振り返った途端、ヒデキはシンイチロウが放った後ろ回し蹴りを、避ける間もなく延髄に食らった。記憶はそこで途絶えた。

てなことをしながら、数日が経った。ヒデキの拳銃の腕は順調に上がっていた。シンイチロウも毎日練習に付き合った。
これなら行ける、そんな実感を二人は掴み始めていた。昇り調子。勢いがある。こういう時にやらせて欲しい。昇りつめた後で、それをキープするのは難しい。昇るだけよりも、何倍もの労力がかかる。殺るなら今。
そんな時、ハンタロウが二人の倉庫にやってきた。
「ヒデキ、お疲れさまだな。」
ヒデキとシンイチロウは並んで頭を下げた。
「チワっす。」
「チーっす。」
ハンタロウは言った。
「明日だ。」
明日。殺る日は明日。
「オジキ、明日なんですね。」
ヒデキは自分に言い聞かせるように、頷いた。うっすらと小夜子のことが頭をよぎった。いずれにせよ、明日には決着が付く。
シンイチロウを見ると、強い視線で見返してくる。眼は口ほどにものを言い。ヒデキはシンイチロウを見返しながら、拳に力を入れた。そしてもう一度小夜子の顔を思い浮かべた。
『俺は殺る。』
心の中で固く誓った。

すると、ハンタロウがバツが悪そうに、妙にソワソワしながらうろつき出した。
「こりゃーよー、あんまり関係のねぇことなんんだけどよぉ、ヒデキ。」
「はい。」
「でも今から言うと、混乱するからいいや。やめとく。」
「ハ?何ですか?」
「いや、いい。折角の仕上がりに水を差すようなこと言っちゃぁいけねぇからよぉ。止めとくことにしておくわ。」
声を落とし、
「でも、やっぱ大事なことなんだよなぁ。」
ハンタロウはまだうろうろしている。
「大事なことなら、勿体ぶらずにどうぞ言ってください。」
「そうですよ、オジキ。明日殺る上で大事なことなら、是非とも今、ヒデキのアニキに言ってあげてください。」
「でもなぁ、今更こんな大切なこと言っても、逆に悪い気がするしなぁ。」
「だから何がですか。」
「そーですよ。オジキ。そんな奥歯にものの挟まったような言い方、水臭いじゃないですか。」
「言ってもいいか。」
「はい。」
「はい。」
「後悔しないな。」
「しません。」
「しません。」
ハンタロウはため息をついて、二人に向き直ると、こう言った。
「相対論的効果による、長さの縮みだ。」
「・・・」
「・・・」
「さてと、シンイチロウ、飯にでもすっか。」
「そうっすね、アニキ。今日はカレーだからホームランですよ。」
「ホームランも良いけど、猫だましと内無双も良いな。」
「そうっすね、なんと言っても三所攻めの舞の海っすよね。」
と言っている二人の間に、ハンタロウのワルサーが火を噴いた。炸裂する銃弾。思わず飛びのく二人。
「聞けよ。」
「チーっす。」
「チーっす。」
「いいかヒデキ、シンイチロウ。物体はだなぁ、その動くスピードが光に近づけば近づくほど、進行方向に向かって長さが縮んでいくんだ。そして、光と同じスピードになった瞬間、その長さはゼロとなる。」
「そんなぁ、長さが縮むなんて。」
「ポコチンみたいに伸び縮みするわけないじゃないですか。」
「ところがするんだな、これが。どうだ、その理由を聞きたいだろ。」
「・・・」
「・・・」
二人は顔を見合わせ、口を開く。
「いいえ、別に。」
「特に立ち入ったことは、それほど。」
ハンタロウは38口径のワルサーを構えなおした。
「今度は外さねぇぞ。」
「・・・」
「・・・」
今度は即座に口を開く。
「す、すっごく、き、聞きたいよな、シンイチロウ君。」
「は、はい、ヒデキさん、もうこれが聞けなきゃぁ、よ、夜しか眠れませんよ。」
ワルサーを下ろしながら、
「そうか、二人とも素直でいいぞ。
じゃぁ、そこに座りなさい。」
言われた通りに仲良くソファに座ろうとする二人。
「あ、アニキ、お先にどうぞ。」
「遠慮するこたぁねぇよ。お前が先に座れよ。」
「いや、それは出来ないっすよ。アニキからどうぞ。」
「たまにはいいじゃねぇかよ。固いこと言うなよ。」
「本当っすか。冗談はよしこさんっすよ。」
「心配すんじゃねぇよ。俺とお前の仲じゃねぇかよ。」
「エヘヘ、そういわれればそうっすね。」
「手前ら死にてぇみたいだな。」
飛び込むようにして、ソファに座る二人。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
ゆっくりと二人の前を一往復し、そしてワルサーの銃身を腰にしっかりとねじ込むと、ハンタロウは語り出した。
「じゃぁ、まずは光のスピードは何処の誰が見ようと同じに見えるってことをまず頭に叩き込め。」
「はい、誰でも同じスピードってことですね。」
「それぐらいなら、あっしも覚えられます。」
「じゃぁ。ここで、お前ら二人がそれぞれ列車の両端に立っていたとしよう。シンイチロウが列車の一番前、ヒデキが列車の一番後ろだ。」
瞬間的にヒデキが立ち上がった。
「なんで俺がシンイチロウより後ろ何ですか?」
「えへへ、アニキ、たまには俺も前に出る時もあるってことですよ。」
「何だとこの野郎。いつも手前の尻拭いてやってんのは俺じゃねぇか。」
「何言ってんですか、尻拭いているのはどっちだと思ってんですか?」
シンイチロウも立ち上がる。
「どっちでもいいんだよ。」
ハンタロウが一喝する。
「へい。」
「へい。」
するとハンタロウは近くに落ちていた延長コードを持ってくると、二人にその両端を持たせ、長さ一杯に離れさせた。
「ではここで、列車の長さを測るために、そうだな、何が良いかな、、、」
少し思案したハンタロウはこう切り出した。
「今、シンイチロウが射精をしたと考えてみよう。」
「射精って?」
「射精ですか?」
「そーだ。」
「射精が何か?」
「射精なんかする訳は?」
「今に分かる、黙って聞け。」
「へい。」
「へい。」
取りあえず顔を見合わせて、
「ヨッ、シンイチロウ。」
「ヘイ、アニキ。」
呼吸を合わせる二人。
「では、シンイチロウのポコチンがこのコードのコンセントとするならば、その陰茎から放たれるシンイチロウの精子は、このコードを伝わって、ヒデキめがけて、
べチョ。」
ハンタロウは、精子の軌道をたどるように、シンイチロウ側からヒデキ側に向かって歩き、コードの先端を持つヒデキに辿り着き、ヒデキの頬を軽く叩いた。
「手前、アニキに向かって射精しやがったな。何しやがるんだ、この野郎。」
「いや、あっしはそんな気は毛頭ないんで。」
「落ち着け。」
二人を引き離すハンタロウ。
「ヨッ、シンイチロウ。」
「ヘイ、アニキ。」
再び呼吸を合わせる二人。
「つまり、列車の長さは、今丁度シンイチロウとヒデキの間をつなぐ、このコードの長さって訳だ。」
「へい。」
「へい。」
「ここで話を簡単にするために、シンイチロウの射精する精子、こいつのスピードを時速100キロメートルとする。」
「割と速いな、お前。」
「いや、それほどでも。」
まんざらでもなさそうなシンイチロウ。
「そして、更に話しを簡単にするために、この列車も時速100キロメートルで走っているとする。つまり、列車はシンイチロウの精子とは真逆の方向に走っていると言うわけだ。」
「へい。」
「へい。」
「ポーラ。」
ハンタロウのボケには反応しないヒデキとシンイチロウ。
「ホン。」
咳払い。
「ではここからが本題だ。このシンイチロウの精子を列車の外の人が見たらどうなるか。
今、シンイチロウの精子が時速100キロでヒデキの方向へ飛んでいる。しかし、列車も同時に真逆のシンイチロウの方向へ、同じく時速100キロで走っている。ならばそれを外から見る人にとっては、100キロマイナス100キロ、つまり0キロ。ということは、」
「止まって見える。」
「止まって見える。」
同時に答える二人。
「ご名答。しかし、いくらその精子が止まったように見えても列車はちゃんと前に進んでいるから。」
シンイチロウは下がり、ヒデキは進む。そして今度は、ヒデキの方から頬をがハンタロウの手のひらに当たる。
「やっぱり、べチョ。」
「手前、アニキに向かってマスかきやがったな、コノヤロウ。」
「いえ、あっしはマスかこうなんて気は毛頭ないんで。」
「落ち着け。」
二人を再び引き離すハンタロウ。
「ヨッ、シンイチロウ。」
「ヘイ、アニキ。」
三度、呼吸を合わせる二人。
ハンタロウの説明は続く。
「今この精子は、普通の精子だった。だから、列車の中にいる人間にとっては時速100キロに見え、列車の外にいる人間にとっては止まって、つまり時速0キロに見えた。」
ハンタロウはやや声を落とし続ける。思わず顔を寄せる二人。
「ところがだ、一番最初に言ったとおり、光のスピードだけは何処の誰が見ようと同じスピードだ。」
ヒデキが思案気に頷く。
「ヘイ。」
「ジュード。」
ボケたシンイチロウの頭をヒデキが叩く。
ハンタロウの説明は続く。
「ならば、今日はこのシンイチロウの精子を光精子としよう。」
「ヒカリ精子?」
「何ですか、それは?」
「つまりだ、シンイチロウの精子は普通ではない、光みたいな精子だったとするわけだ。
だとすると、しつこいようだが、列車の中にいる人間にとっては時速100キロに見えるのは今まで通りだが、」
ハンタロウは自分にも、そしてヒデキとシンイチロウの二人にも納得させるように、
「が、しかし、同時に列車の外にいる人間にとっても時速100キロに見えなければならない。
そうだよな?」
ハンタロウの右手のサムアップに、同じく右手でサムアップするヒデキとシンイチロウ。
「じゃぁ、いいか。早速やってみるぞ。二人とも配置につけ。」
再び元の位置に、駆け足で戻る二人。
ハンタロウはシンイチロウの横に立つと、
「シンイチロウの射精した光精子が、時速100キロでヒデキへ、」
ハンタロウはヒデキに向かいながら、ヒデキを手招きする。
「そして、列車も同じく時速100キロでシンイチロウの方へ進んで行く。」
ヒデキもハンタロウに近づいていく。
「そして、べチョ。」
「手前、言うに事欠いてアニキに顔射とは、何事だ。コノヤロウ。」
「いえ、あっしは顔射も何も、いつも中出しなんで。」
「だから、落ち着けって言ってんだよ。」
二人を三度、引き離すハンタロウ。
「ヨッ、シンイチロウ。」
「ヘイ、アニキ。」
更に、呼吸を合わせる二人。
「どうだ、見てみろ。コードがたるんでいるだろ。」
ヒデキとシンイチロウの間のコードは確かにたるんでいる。
眼と眼を見合わす、ヒデキとシンイチロウ。
「このたるみを直すと、これだけ縮んでいる。」
ハンタロウは、短くなったコードを二人に示した。
「本当だ。」
「本当だ。」
「つまり、外から見ている人間にとっては、列車の前方から発せられた光精子が、列車の最後尾に通常よりも先に到達してしまうから、その分だけ短くなって見えるって訳だ。」
「なるほど。」
「なるほど。」
「マクドなるほど。」
ハンタロウのボケをスルーする二人。
「ヨッ、ヒデキ。」
「ヘイ、シンイチロウ。」
何度でも呼吸を合わせる二人。自分で収拾を図るハンタロウ。
「そして、これは列車のスピードが速くなればなるほど縮んでいき、列車のスピードが光の速度と同じになった瞬間、」
「瞬間。」
「瞬間。」
「ゼロになる。」
考え出す二人。

「長さがゼロ。」
ヒデキが悩むと、
「そうか、そう言う事か。」
シンイチロウが手を打つ。
「どうした、何がわかったんだ、シンイチロウ?」
ハンタロウの眼の色が輝く。
シンイチロウは、三歩程進み出て振り返り、二人の双方に確かめるように言った。
「オジキ、アニキ、相手が縮んでいった日にゃぁ、いくらハジキが上手くたって、当たる訳ないってことじゃぁないですか。」
「そうだよ、そうなんだよ、シンイチロウ。」
感極まってシンイチロウを抱きしめるハンタロウ。そして言葉を続ける。
「だからだ、明日殺る玉がどれくらいのスピードで動くのか、これが本質的な問題になってくるって言う訳だ。」
「そう言うことだったんですね、オジキ。俺のヤマをそれだけ考えていてくれたなんて、痛み入りやす。」
ヒデキも感極まって、涙を拭いながらハンタロウに頭を下げる。
「いいってことよ。可愛い舎弟が日の目を見るって時によ。これが任侠の道って言うやつじゃねぇか。」
「流石、ハンタロウのオジキだけのことはある。俺なんかにゃマネできねぇ。」
「何言ってやがるんだ、ヒデキ、照れるじゃねぇかよ。」
「いや、俺はありのままを言っただけで。」
「だから、それが照れるって言ってんだよ。」
「すんません。」
「バカヤロウ。」
なんだかんだ、肘を付き合う、ハンタロウとヒデキ。
「あのぉ、ハンタロウのオジキ、一言聞いていいでしょうか?」
シンイチロウが恐る恐る切り出す。
「何だ。何でも聞いてみろ。」
「あっし、生まれてこの方、新幹線が縮んで見えたこともないし、そうした動くものが縮んじまったてなことって経験ないんですが、これはあっしがバカだからなんでしょうか?」
「シンイチロウ、お前は以外に頭がいいぞ。」
ハンタロウに褒められたシンイチロウは、思わず笑みを浮かべた。
「いいか、この相対論的効果による長さの縮みがはっきりと目に見えるのはだなぁ、物体のスピードが光のスピードの90%以上になった時だ。」
「光のスピードの、」
「90%以上?」
「あぁ、そうだ。」
「して、その速さは?」
「時速でどのくらい?」
ハンタロウが暗算する。
「えぇと、光のスピードが秒速30万キロメートルだから、その90%っていうのは、秒速27万キロメートルってことだろ、ってことはだなぁ、」
「秒速27万キロメートルと言う事は、」
「時速に直すと、」
計算完了。
「時速、9億7千2百万キロメートルだ。」
「九億七千」
「二百万キロメートル」
「で、それは例えばどんなもの」
「何でしょうか?」
「そんなものは、」
ハンタロウは一息ついて、断言した。
「ない。」
「ハ?」
「ハ?」
「現在の科学技術では、まだそんな速い乗り物は開発されていない。」
ヒデキとシンイチロウは顔を見合わせ、頷きあった。
「出来ていないんですね。」(二人)
「あぁ。」
「なら、一言言って良いですか?。」(二人)
「何だ?」
「なら、全然問題ないじゃないですか。」(二人)
「ゼンッゼン。」(二人)
一瞬、静寂が三人を包み込んだ。
ハンタロウはゆっくりとヒデキに歩み寄ると、身体を摺り寄せながら呟いた。
「確かに全然問題はない。
ないんだけどよう、ヒデキ。お前は今、物凄く自信が付いたろ。え?自信がよぉ。」
「ハ?」
ハンタロウは肘でヒデキを突きながら、なおも続けた。
「え、ヒデキ。今、お前、拳銃打ったら、物凄く当たるって、感じするだろう。おぅ?。」
「・・・?」
「だってよ、お前ったらよ、相対性理論まで考えた上で、相手を殺るんだぜ。」
「ハァ、、ハイ。」
ハンタロウの顔が次第に緩み、笑みを帯びてくる。
「え?どうだい。相対性理論だぞ、コノヤロウ。ここまで考えて相手を殺る奴なんざぁ、世界中の何処を探したって、見つからねぇだろうよ。え?」
「え、えぇ、た、確かに。」
ハンタロウが満面の笑みを浮かべ、
「だろう、そうだろう。だろうともよ。
だとしたらだ、お前は絶対に外しっこないよな。そりゃぁ、そうだろうよ。天下の相対性理論だぞ。そんじょそこらの小便垂れとは訳が違うってもんだ。
お前もそう思うだろう、シンイチロウ。」
いきなり振られたシンイチロウ。
「ヘ、ヘイ、お、思います。」
「そうか、そうか、シンイチロウ、お前もそう思うか。
おい、ヒデキ、シンイチロウもそう思うんだってよ。どうだよ、え、流石お前の舎弟だけのことはあるなぁ。アニキ思いの良い舎弟じゃねぇかよ。」
つられてヒデキも、つい顔をほころばせながら言った。
「え、えぇ、もうどこに出しても恥ずかしくないぐらいでして。」
すると、言われたシンイチロウも恐縮しながら嬉しそうに言う。
「何言ってんすか、俺はアニキの言うとおりにしてるだけっす。」
ハンタロウはそう言う合う二人の背中をバンバン叩きながら、
「だろうよ、だろうよ、そうだろうよ。
こりゃぁスゲェことになったぞ、おい。世界初の相対論的ヒットマンの誕生だよ。でかしたぞ、ヒデキ。お前、よくやったなぁ。」
「そ、そうっすよね、何たって相対性理論っすもんね。俺ったら、そんなもん分かった上で、殺っちゃうんすもんね。」
「やりましたね、アニキ。」
「おうよ、おうよ。その通りよ、ヒデキ。お前何時からそんなに頼もしくなったんだ。成長したな、お前も。」
「いやぁ、これも全部、オジキのお陰っす。ありがとうございました。」
「何、水くせぇこと言ってんだよ。可愛いお前が人一人ぶっ殺しに行くって時によ、相対性理論の一つや二つ、何のこたぁ、ねぇってんだよ。なぁ、シンイチロウ。」
ハンタロウに肩を組まれたシンイチロウも、満面の笑みで答える。
「もう、あたりきしゃりきのこんこんちきってくらいなもんでさぁ。何とか理論の三つや四つ、炊き込みご飯に炊き込んで、かっ食らってやりますよ。」
「おぉ、そりゃぁいいや。目出てぇ、目出てぇ。俺はお前らみてぇな舎弟を持てて、本当に幸せだよ。」
「お礼が言いたいのはこっちの方ですよ、オジキ。」
「あざっす。」
「おうおう、礼には及ばねぇぞ。目出てぇ次いでに、良いこと教えてやろう。」
「なんでしょうか。」
「あざっす。」
「秘密の合言葉だ。」
「秘密の合言葉?」
「秘密の合言葉?」
二人は同時に口を開いていた。
「そうだ。秘密の合言葉だ。いいかヒデキ、実際に殺るって時にはよう、やっぱり緊張しちまって、ブルブル震えが来ちまうものなんだよ。」
「へぇ。」
「そういう時にはこの秘密の合言葉を呟け。」
ハンタロウはニヤリとして口にした。
「アインシュタイン。」
「え?アインシュタイン?」
「そうだ、アインシュタイン。」
ハンタロウは顎でヒデキの拳銃をしゃくりながら、
「落ち着くぜ。」
ヒデキはどこかで聞いた言葉だと思った。そうだ、ハンタロウの本に書いてあった言葉だ。しかし、拳銃を持って呟くのは初めてだった。ヒデキは訝りながらも銃をゆっくりと構え、そしてその秘密の合言葉を呟いてみた。
「アインシュタイン。」
すると、不思議とリズムが見えてくる気がした。ジャストのリズムが、照準の向こうに見えてくる。
「本当だ。」
横のシンイチロウに銃を渡す。
「シンイチロウ、お前もやってみろよ。」
「まさか、そんなこと。」
と同じように訝りながらも、シンイチロウも銃を構えて呟いた。
「アインシュタイン。」
驚きを隠さず、
「あれ、本当にそんな気がします。」
お互い見合って、興奮を確認する二人。
ハンタロウが補足する。
「これがな、ニュートン、これだとダメなんだなぁ、不思議と。」
シンイチロウから銃を奪い、やってみるヒデキ。
「ニュートン。あれ、全然、ダメだ。」
「ガリレオ、これもダメ。」
今度は銃を渡されたシンイチロウだ。
「ガリレオ。」
ヒデキを振り返り。
「全然っす。」
「コペルニクス、これは結構良い線行っているんだけど、でもやっぱり駄目だ。」
ヒデキが銃を受け取り、
「コペルニクス。」
首を振り、
「クスってところが、ちょいダメっすね。」
ハンタロウが〆る。
「やっぱ、アインシュタインだな。」
シンイチロウも頷く。
「そうっすよ、アニキ。アインシュタインっすよ。」
ヒデキはもう一度銃を構え直し、
「そうだな。なんと言っても、やっぱこれっきゃねぇーな。」
照準を合わせながら引き金に指をかけて、秘密の合言葉を呟いた。
「アインシュタイン。」
轟音と共に、弾丸は標的のど真ん中をぶちぬいた。
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