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第5章 届け! これがVTuberの全てをこめた「クリア耐久配信」だ!
第34話 負けたら絶対許さないから(前編)
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「ずんだ先輩? どうして私のLINEに?」
「アンタが無様にポーズなんてするからでしょ! ほら、さっさとコントローラーを手に取りなさい! 初代『超兄貴』なんて、アンタの腕があれば楽勝よ!」
言われるまま、私は床のコントローラーを手にした。
肩と耳でスマホを挟む。通常配信なら「通話しているのがバレる」所だが、突発コラボということもあり配信で表示しているのは立ち絵だけ。
これなら、どれだけ動いてもリスナーにバレることはない。
「みんな、ごめんバニ! 待たせたバニ! ばにらも攻略再開するバニ!」
画面前のマイクに向かって私は叫ぶ。
スマホの向こうでずんだ先輩がほっとため息を吐いた。
「いい、ばにら。シューティングゲームに重要なのは集中力よ。特に『超兄貴』の最終ステージは、集中力の切れる瞬間を狙ってくる構成だわ」
「……集中力」
「いろんな耐久配信で、アンタはここぞという時にはちゃんと集中してきた。『マリオ』でも、『壺おじ』でも、『サンズ戦』でも、『JumpKing』でも! アンタは、最後をビシッとキメたじゃないの!」
私が過去に挑戦したクリア耐久配信。
どれも5時間超えの超ハードなものだった。
喉が嗄れ、指先が痺れ、眠気や頭痛と戦った。けれども私は勝ちきった。
耐久配信を完走した――。
「そうだろう! 川崎ばにら!」
私の内なる声をずんだ先輩が代弁する。
「私は知ってる! アンタがすごい配信者だって! アンタのゲーム配信にはいつだって、他の配信者にはないすごみがある! これが『川崎ばにら』だと、リスナーを唸らせる力がある! それを思い出せ! 集中しろ――川崎ばにら!」
「ずんだ先輩!」
「やれ、川崎ばにら! 負けたら絶対に許さないから!」
どんな応援コメントよりも心に響く声を耳に最終ステージに再び挑む。
向かってくる敵に的確に攻撃を当て、飛び交う弾幕をギリギリでかわし、記憶を頼りに中ボスの攻撃を避けて最短で倒していく。
「くそっ、ボ帝が堅い! あれ、ばにらがもう中ボスまで来てる!」
うみがラスボスの「ボ帝ビル」に負けてステージの最初に戻る。
入れ替わるように私はさきほど死んだ通路に到達した。
狭い通路に敵がひしめいている。
少しでも操作をミスれば、迫り来る壁に押しつぶされ、敵や弾幕に当たって死ぬ。
けれども今の私には心強い味方がいる。
「集中! 基本は上下で揺さぶってくるだけ! 敵を倒すことだけ考えて!」
「はいっ!」
「サムソンとアドンは捨てて! 自機だけ残せばボス戦はどうにかなる! とにかく、一発でボ帝ビルまでたどり着くわよ!」
「分かりましたっ!」
ずんだ先輩の声を信じて私は冷静に指を動かす。
迫り来る壁を避け。オプションユニットを犠牲にして突き進む。
やがてラスボスが待つ空間が見えてくる。そこに通じる細い穴に入ると、「ここから先には行かせない」とばかりに、大量の敵が私の前に現れた。
「落ち着いて! ゆっくり後ろに下がりながら確実に当てるのよ!」
「はいっ!」
画面中央の自機を徐々に後ろに下げる。
少しずつ後退して大量の敵を通常タイプのビームで蹴散らす。
ギリギリの所で敵を倒し、私はついにラスボスの下へと辿りついた。
「残機3! ほぼ無傷でラスボス到着バニ!」
うみが驚きの声を上げる。
形勢逆転。一転して優勢になった私をうみが煽ってくる。
だが、それを軽くあしらう。
うみには悪いがここで一気に決めさせてもらう。
「ばーにばにばにばに! さぁ、ぶっ倒してやるバニ『ボ帝ビル』!」
オプションユニットを失った自機は、通常の弾幕と集中ビームが撃てるだけ。
火力の低さを補うため、登場直後のラスボスに集中砲火を容赦なく浴びせた。
流石にラスボスだけあって多彩な攻撃を繰り出す「ボ帝ビル」。縦横無尽に画面を動き周り、幾多の弾幕を操り、ボディービルダーを召喚しては撃ちだしてくる。
そんな攻撃をずんだ先輩のサポートでかわし、着実に弾を当てていく――。
「ダメージが蓄積されると、『ボ帝ビル』が姿を消して巨大化するわ。押しつぶし攻撃を仕掛けてくるから、上方向に逃げて避けるのよ!」
「はいっ!」
「一度攻撃が終われば『ボ帝ビル』の鼻輪を集中砲火! それでゲームクリアよ!」
「はいっ!」
言った傍から「ボ帝ビル」が姿を消す。
しばらくして現れたのは多眼の羊のような巨大な悪魔。
左右から板で挟むような攻撃を繰り出してきたのを上に逃げて回避する。
開かれた「ボ帝ビル」の懐。
いかつい顔の鼻に通されたリングめがけて私は突っ込んだ――!
「今よばにら! やったるでな!」
「うぉーーっ! いけいけいけ! ○ねぇえええ!」
事務所から注意されそうな汚い言葉を発して、ラスボスの鼻輪に集中ビームを浴びせる。もう一度、プレスが来るか。それとも、フェードアウトするのか。
どっちだと考えているうちに――ラスボスが爆発した。
勝利を告げるBGMが鳴り響く。
ラスボスの巨大な顔が青空に溶けていく。
私の自機が空に向かって飛ぶ。
もう次のステージは表示されない。
そして、クリアを示すエンドロールが流れた――。
「……やったぁっ! クリアだバニっ!」
「おめでとう! やればできるじゃない!」
耳元でずんだ先輩の勝利を祝う声がする。
コメント欄が私を讃えるメッセージで埋め尽くされる。
ふと隣を見ればうみがコントローラーを手にしておだやかな顔をしていた。
ポーズボタンを押して彼女がこちらを振り返る。
「だっはー! 負けたぁ! 自信があったのにぃ!」
そんな言葉と共に頭を押さえると彼女は空いている手でサムズアップする。
ちょっぴりその目の端に光るものが見えた。
ありがとう、うみ。
こんなに私たちのことを心配してくれて。
私は本当に「頼もしい同期」――いや、「ライバル」を持ったよ。
かくして、朝まで続いた耐久併走配信はここに幕を閉じた。
――と、いい感じに締めようとしたのだが。
「はいはいはい! さきほどの試合について委員長から異議申し立てがあります!」
「……なんだバニ、いきなりそんなテンションで」
「最終ステージ! ばにらちゃんが、誰かとこっそり通話してました! 立ち絵だから動きが見えないと思って、そういうずるするんだから!」
「お前、それ言っちゃうバニか!」
「オラッ! 誰とひそひそ話してたんだ! だいたい見当がついてるんだよ! 通話しだした途端、明らかに動きがよくなってさ! どうせ耳元でアドバイスもらってたんだろ! 『超兄貴』のさ! そんなんできるのなんて――」
往生際の悪さもまた配信者の華。
というか、あえて言わせたいのだろう。
もしかして彼女も会社とグルなのか。
どうしても、私たちに「百合営業」させるつもりだろうか。
けれども、うみが浮かべるニマニマとた顔は敗者のそれではない。
そりゃそうだ。だって、私の耳元で繋がっている通話こそが、彼女がこの配信で設定した真の勝利条件なのだから。
なら、勝者に、ご褒美をあげるのは当然だろう。
「……決まってるバニでしょ!」
ずんだ先輩の名前を私はうみとリスナーに向けて告げた。
頬を濡らす熱い涙を手の甲で拭いながら。
ほんと、立ち絵だけでよかった。
「アンタが無様にポーズなんてするからでしょ! ほら、さっさとコントローラーを手に取りなさい! 初代『超兄貴』なんて、アンタの腕があれば楽勝よ!」
言われるまま、私は床のコントローラーを手にした。
肩と耳でスマホを挟む。通常配信なら「通話しているのがバレる」所だが、突発コラボということもあり配信で表示しているのは立ち絵だけ。
これなら、どれだけ動いてもリスナーにバレることはない。
「みんな、ごめんバニ! 待たせたバニ! ばにらも攻略再開するバニ!」
画面前のマイクに向かって私は叫ぶ。
スマホの向こうでずんだ先輩がほっとため息を吐いた。
「いい、ばにら。シューティングゲームに重要なのは集中力よ。特に『超兄貴』の最終ステージは、集中力の切れる瞬間を狙ってくる構成だわ」
「……集中力」
「いろんな耐久配信で、アンタはここぞという時にはちゃんと集中してきた。『マリオ』でも、『壺おじ』でも、『サンズ戦』でも、『JumpKing』でも! アンタは、最後をビシッとキメたじゃないの!」
私が過去に挑戦したクリア耐久配信。
どれも5時間超えの超ハードなものだった。
喉が嗄れ、指先が痺れ、眠気や頭痛と戦った。けれども私は勝ちきった。
耐久配信を完走した――。
「そうだろう! 川崎ばにら!」
私の内なる声をずんだ先輩が代弁する。
「私は知ってる! アンタがすごい配信者だって! アンタのゲーム配信にはいつだって、他の配信者にはないすごみがある! これが『川崎ばにら』だと、リスナーを唸らせる力がある! それを思い出せ! 集中しろ――川崎ばにら!」
「ずんだ先輩!」
「やれ、川崎ばにら! 負けたら絶対に許さないから!」
どんな応援コメントよりも心に響く声を耳に最終ステージに再び挑む。
向かってくる敵に的確に攻撃を当て、飛び交う弾幕をギリギリでかわし、記憶を頼りに中ボスの攻撃を避けて最短で倒していく。
「くそっ、ボ帝が堅い! あれ、ばにらがもう中ボスまで来てる!」
うみがラスボスの「ボ帝ビル」に負けてステージの最初に戻る。
入れ替わるように私はさきほど死んだ通路に到達した。
狭い通路に敵がひしめいている。
少しでも操作をミスれば、迫り来る壁に押しつぶされ、敵や弾幕に当たって死ぬ。
けれども今の私には心強い味方がいる。
「集中! 基本は上下で揺さぶってくるだけ! 敵を倒すことだけ考えて!」
「はいっ!」
「サムソンとアドンは捨てて! 自機だけ残せばボス戦はどうにかなる! とにかく、一発でボ帝ビルまでたどり着くわよ!」
「分かりましたっ!」
ずんだ先輩の声を信じて私は冷静に指を動かす。
迫り来る壁を避け。オプションユニットを犠牲にして突き進む。
やがてラスボスが待つ空間が見えてくる。そこに通じる細い穴に入ると、「ここから先には行かせない」とばかりに、大量の敵が私の前に現れた。
「落ち着いて! ゆっくり後ろに下がりながら確実に当てるのよ!」
「はいっ!」
画面中央の自機を徐々に後ろに下げる。
少しずつ後退して大量の敵を通常タイプのビームで蹴散らす。
ギリギリの所で敵を倒し、私はついにラスボスの下へと辿りついた。
「残機3! ほぼ無傷でラスボス到着バニ!」
うみが驚きの声を上げる。
形勢逆転。一転して優勢になった私をうみが煽ってくる。
だが、それを軽くあしらう。
うみには悪いがここで一気に決めさせてもらう。
「ばーにばにばにばに! さぁ、ぶっ倒してやるバニ『ボ帝ビル』!」
オプションユニットを失った自機は、通常の弾幕と集中ビームが撃てるだけ。
火力の低さを補うため、登場直後のラスボスに集中砲火を容赦なく浴びせた。
流石にラスボスだけあって多彩な攻撃を繰り出す「ボ帝ビル」。縦横無尽に画面を動き周り、幾多の弾幕を操り、ボディービルダーを召喚しては撃ちだしてくる。
そんな攻撃をずんだ先輩のサポートでかわし、着実に弾を当てていく――。
「ダメージが蓄積されると、『ボ帝ビル』が姿を消して巨大化するわ。押しつぶし攻撃を仕掛けてくるから、上方向に逃げて避けるのよ!」
「はいっ!」
「一度攻撃が終われば『ボ帝ビル』の鼻輪を集中砲火! それでゲームクリアよ!」
「はいっ!」
言った傍から「ボ帝ビル」が姿を消す。
しばらくして現れたのは多眼の羊のような巨大な悪魔。
左右から板で挟むような攻撃を繰り出してきたのを上に逃げて回避する。
開かれた「ボ帝ビル」の懐。
いかつい顔の鼻に通されたリングめがけて私は突っ込んだ――!
「今よばにら! やったるでな!」
「うぉーーっ! いけいけいけ! ○ねぇえええ!」
事務所から注意されそうな汚い言葉を発して、ラスボスの鼻輪に集中ビームを浴びせる。もう一度、プレスが来るか。それとも、フェードアウトするのか。
どっちだと考えているうちに――ラスボスが爆発した。
勝利を告げるBGMが鳴り響く。
ラスボスの巨大な顔が青空に溶けていく。
私の自機が空に向かって飛ぶ。
もう次のステージは表示されない。
そして、クリアを示すエンドロールが流れた――。
「……やったぁっ! クリアだバニっ!」
「おめでとう! やればできるじゃない!」
耳元でずんだ先輩の勝利を祝う声がする。
コメント欄が私を讃えるメッセージで埋め尽くされる。
ふと隣を見ればうみがコントローラーを手にしておだやかな顔をしていた。
ポーズボタンを押して彼女がこちらを振り返る。
「だっはー! 負けたぁ! 自信があったのにぃ!」
そんな言葉と共に頭を押さえると彼女は空いている手でサムズアップする。
ちょっぴりその目の端に光るものが見えた。
ありがとう、うみ。
こんなに私たちのことを心配してくれて。
私は本当に「頼もしい同期」――いや、「ライバル」を持ったよ。
かくして、朝まで続いた耐久併走配信はここに幕を閉じた。
――と、いい感じに締めようとしたのだが。
「はいはいはい! さきほどの試合について委員長から異議申し立てがあります!」
「……なんだバニ、いきなりそんなテンションで」
「最終ステージ! ばにらちゃんが、誰かとこっそり通話してました! 立ち絵だから動きが見えないと思って、そういうずるするんだから!」
「お前、それ言っちゃうバニか!」
「オラッ! 誰とひそひそ話してたんだ! だいたい見当がついてるんだよ! 通話しだした途端、明らかに動きがよくなってさ! どうせ耳元でアドバイスもらってたんだろ! 『超兄貴』のさ! そんなんできるのなんて――」
往生際の悪さもまた配信者の華。
というか、あえて言わせたいのだろう。
もしかして彼女も会社とグルなのか。
どうしても、私たちに「百合営業」させるつもりだろうか。
けれども、うみが浮かべるニマニマとた顔は敗者のそれではない。
そりゃそうだ。だって、私の耳元で繋がっている通話こそが、彼女がこの配信で設定した真の勝利条件なのだから。
なら、勝者に、ご褒美をあげるのは当然だろう。
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