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第7章 だっだっだ うぉおぉ 大乱闘! スマッシュDスターズ
第45話 DStarsのジェームズ・モリアーティー(前編)
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「初代スマブラチーム対決⁉ なに勝手にそんなの受けてんの⁉」
「ごめん、うみ。売り言葉に買い言葉で、もう退くに退けなくて」
「ばにらちゃんさぁ? なんでコミュ障なのに煽りに弱いのかな? 冷静になって考えようよ? 委員長のスケジュールもあるんだよ? 明後日って言われても……!」
「ごめん、うみの予定のこと完全に忘れて――」
「……奇跡的に空いてるわ。そういや打ち上げでりんご先輩から『今度コラボしようよ! いつ暇してる?』って聞かれたんで、『いつでも大丈夫ですよ! ちょうど明後日とか暇してますけど、どうっすか?』って、言ってたわ」
「……ぉぃ」
「まさかここまで計算済みとは――恐るべし津軽りんご! 待て、まだ慌てるような時間じゃ、あわ、あわわ、あわあわ、あわあわあわわわ……!」
りんご先輩との通話が終ってすぐ、私はうみに連絡を取った。
彼女の明後日の予定を確認するためだ。
有無を言わさず、強引にコラボを決めたりんご先輩。
けれどうみの予定が空いているかは分からない。同期のスケジュールも確認せず、迂闊な約束をしたと後悔しながら事情を話せば――これだ。
むしろ「先にうみとのコラボがあり、そこに私たちが巻き込まれた」というのが真相のようだった。煽られてコラボを受けたのは、間違いなく私の落ち度だけど。
「犯人は、いつも身近な所にいるってことだね、バニナンくん!」
「誰がバニナンくんじゃ! てめぇ、それで許されると思ってるのか!」
「いやいや、真犯人はどう考えても怪盗りんご・ザ・キッドじゃありませんか! 奴は大変なものを盗んでいきました、委員長とばにらのスケジュールです!」
「……はぁ。それより、うみ? コラボ受けてくれる?」
「もちのロン! こんな面白そうなコラボ、受けない手はないでしょ! その代りに枠は私の方で持たせていただきますよ! そっちの事情に勝手に巻き込まれたわけだから、当然その権利が委員長にはありますよねぇ!」
「まぁ、そこはりんご先輩と要相談ってことで」
コラボの話は順調にまとまった。
りんご先輩も美月さんに話をつけてくれたらしく、ほどなくして彼女のツイッターに「ごめん、今日のデート報告配信だけれど、やっぱりキャンセルで! そのかわりに、近々おもしろいコラボやるからよろしくね!」という告知が流れた。
おおむね美月さんのリスナーの反応は良好。
ライブ後ということもあり「メン限(YouTubeのチャンネルには、メンバーシップという課金制度があり、課金してくれたリスナーだけにライブや動画を配信できる)でいいから雑談枠を!」という声もあったが、大多数は「ライブおつかれさま」「ゆっくり休んで」「一日くらい休んでも問題ないよ」「りんごちゃんとデート楽しんできて」と、好意的に受け止めてくれた。
まずは美月さんがゆっくり休めそうで一安心だ。
しかし、ほんと青葉ずんだのリスナーはモラルが高い。
ともすると「ファンコントロール」がアイドル並みにシビアなVTuber稼業だが、美月さんはこれが格段にうまい。ファン絡みのスキャンダルを一度も起こしたことがないのは、やはり元芸能人だからだろうか。
こういう所も美月さんから学んでいかなくてはいけないな――。
「ずんだ先輩はリスナー相手にうまく話をまとめたみたいだね」
「そうだね」
「んじゃまぁ、コラボは了解ってことで。一応、Discordでコラボ用のチャンネル作っておく。詳細は私とりんご先輩と詰めるから」
「え、うみに任せちゃっていいの?」
「私はほら、今日は配信お休みって生存者(うみのリスナーの愛称)のみんなに連絡してあるから。ばにらはどうせ今日も配信するでしょ?」
「……ばれてたか」
「ほんと配信ジャンキーなんだから。やめろとは言わないけれど、ほどほどにしておきなさいよ。今日はカジュアルゲームの配信で、適当に切り上げちゃいなさい。そういう手を抜いた配信をするのも、VTuberの自己管理よ。いつも全力でやってればいい――なーんてのは、若さを過信した甘えと肝に銘じなさい」
「へい、うみさんが言うと説得力がありやす」
「なんだそれ? 委員長がBBAだとでも言いたいのか? もういっぺん言ってみろや! お前も私とそんなに歳は変わらないだろうが……」
年齢とお肌の話になるとうみは長い。
私は「申し訳ないな」と思いつつ、彼女との通話を強引に切断した。
Discordですぐに鬼電してくるかと思ったが、流石の彼女もライブと打ち上げでおつかれらしい。その後、通話がかかってくることはなかった。
というか、うみなりに話を切り上げる切っ掛けを作ってくれたのだろう。
ほんと気配り上手だよ。
歳が近いとうみは言うが、彼女の方がよっぽど大人だ。
いつも周りに頼ってばかりの私とは大違い。
うみはいつでも頼もしい。
「そうだ、そろそろ配信の準備をはじめないと。ゲームは――うみにも言われたし、今日はマリオカート配信にしよう。8位以下で即終了で、復活芸で場を繋いで……」
りんご先輩からかかってきた電話のせいで、随分スケジュールが狂ってしまった。おにぎりを頬張り、ちょっと渋いお茶を飲みながら、私は配信の準備を再開する。
Twitterで自分のお絵描きハッシュタグを検索し、よさげなイラストの作者さんにサムネイルに使っていいか確認。返事を待ちながら告知文章を考える。
その傍ら――登録チャンネルの中から気になった配信を幾つか視聴する。
美月さんの生誕ライブは、彼女のチャンネルで同時配信されていた。
そんな事情もあり、昨日の事務所メンバーの配信は控えめ。
メンバーの記念配信には、枠を被せないのが暗黙のルールだが、この日は配信自体がそもそも少なかった。ゲストにDStars現主力を軒並み引っ張った生誕ライブだ。それと真っ向からやりあうのは、賢くないという判断だろう。
ふと、生誕ライブの動画をアーカイブから引っ張り出して視聴する。
うみとの昭和歌謡のメドレー。
特待生(りんご先輩はサプライズのため欠席)とのオリジナル楽曲。
いく先輩との初音ミクカバー。
もみじ先輩、あひる先輩とのキレキレのダンス。
そして、私との熱いラストソング。
からの、アンコールで「りんずん」歌唱コラボ枠の十八番曲。
ダメだと思っていてもエゴサをしてしまう。YouTubeに、日付指定をして「りんずん」「ずんばに」で検索をかければ――その差は歴然。
圧倒的な「りんずん」切り抜きの多さに私はたまらずブラウザを閉じた。
作業途中のツイッター告知文をちゃんと保存しておいたのは、我ながらファインプレーだったと思っている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
圧倒的な人気の差をみせつけられるばにら。
とはいえ、「りんずん」には復帰配信直後のバフもかかっているはず。
こういう時に、冷静になって状況分析をできない&ずるずると落ちて行くのは、いかにもメンタルよわよわだなぁという感じです。まずはそこの所を、先輩たちからは学ばなければ……。(まぁ、それがなかなか難しいんですけれどね……)
さて、不穏なタイトルですがいったいりんごはどんな謀略を巡らしているのか。気になる方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
「ごめん、うみ。売り言葉に買い言葉で、もう退くに退けなくて」
「ばにらちゃんさぁ? なんでコミュ障なのに煽りに弱いのかな? 冷静になって考えようよ? 委員長のスケジュールもあるんだよ? 明後日って言われても……!」
「ごめん、うみの予定のこと完全に忘れて――」
「……奇跡的に空いてるわ。そういや打ち上げでりんご先輩から『今度コラボしようよ! いつ暇してる?』って聞かれたんで、『いつでも大丈夫ですよ! ちょうど明後日とか暇してますけど、どうっすか?』って、言ってたわ」
「……ぉぃ」
「まさかここまで計算済みとは――恐るべし津軽りんご! 待て、まだ慌てるような時間じゃ、あわ、あわわ、あわあわ、あわあわあわわわ……!」
りんご先輩との通話が終ってすぐ、私はうみに連絡を取った。
彼女の明後日の予定を確認するためだ。
有無を言わさず、強引にコラボを決めたりんご先輩。
けれどうみの予定が空いているかは分からない。同期のスケジュールも確認せず、迂闊な約束をしたと後悔しながら事情を話せば――これだ。
むしろ「先にうみとのコラボがあり、そこに私たちが巻き込まれた」というのが真相のようだった。煽られてコラボを受けたのは、間違いなく私の落ち度だけど。
「犯人は、いつも身近な所にいるってことだね、バニナンくん!」
「誰がバニナンくんじゃ! てめぇ、それで許されると思ってるのか!」
「いやいや、真犯人はどう考えても怪盗りんご・ザ・キッドじゃありませんか! 奴は大変なものを盗んでいきました、委員長とばにらのスケジュールです!」
「……はぁ。それより、うみ? コラボ受けてくれる?」
「もちのロン! こんな面白そうなコラボ、受けない手はないでしょ! その代りに枠は私の方で持たせていただきますよ! そっちの事情に勝手に巻き込まれたわけだから、当然その権利が委員長にはありますよねぇ!」
「まぁ、そこはりんご先輩と要相談ってことで」
コラボの話は順調にまとまった。
りんご先輩も美月さんに話をつけてくれたらしく、ほどなくして彼女のツイッターに「ごめん、今日のデート報告配信だけれど、やっぱりキャンセルで! そのかわりに、近々おもしろいコラボやるからよろしくね!」という告知が流れた。
おおむね美月さんのリスナーの反応は良好。
ライブ後ということもあり「メン限(YouTubeのチャンネルには、メンバーシップという課金制度があり、課金してくれたリスナーだけにライブや動画を配信できる)でいいから雑談枠を!」という声もあったが、大多数は「ライブおつかれさま」「ゆっくり休んで」「一日くらい休んでも問題ないよ」「りんごちゃんとデート楽しんできて」と、好意的に受け止めてくれた。
まずは美月さんがゆっくり休めそうで一安心だ。
しかし、ほんと青葉ずんだのリスナーはモラルが高い。
ともすると「ファンコントロール」がアイドル並みにシビアなVTuber稼業だが、美月さんはこれが格段にうまい。ファン絡みのスキャンダルを一度も起こしたことがないのは、やはり元芸能人だからだろうか。
こういう所も美月さんから学んでいかなくてはいけないな――。
「ずんだ先輩はリスナー相手にうまく話をまとめたみたいだね」
「そうだね」
「んじゃまぁ、コラボは了解ってことで。一応、Discordでコラボ用のチャンネル作っておく。詳細は私とりんご先輩と詰めるから」
「え、うみに任せちゃっていいの?」
「私はほら、今日は配信お休みって生存者(うみのリスナーの愛称)のみんなに連絡してあるから。ばにらはどうせ今日も配信するでしょ?」
「……ばれてたか」
「ほんと配信ジャンキーなんだから。やめろとは言わないけれど、ほどほどにしておきなさいよ。今日はカジュアルゲームの配信で、適当に切り上げちゃいなさい。そういう手を抜いた配信をするのも、VTuberの自己管理よ。いつも全力でやってればいい――なーんてのは、若さを過信した甘えと肝に銘じなさい」
「へい、うみさんが言うと説得力がありやす」
「なんだそれ? 委員長がBBAだとでも言いたいのか? もういっぺん言ってみろや! お前も私とそんなに歳は変わらないだろうが……」
年齢とお肌の話になるとうみは長い。
私は「申し訳ないな」と思いつつ、彼女との通話を強引に切断した。
Discordですぐに鬼電してくるかと思ったが、流石の彼女もライブと打ち上げでおつかれらしい。その後、通話がかかってくることはなかった。
というか、うみなりに話を切り上げる切っ掛けを作ってくれたのだろう。
ほんと気配り上手だよ。
歳が近いとうみは言うが、彼女の方がよっぽど大人だ。
いつも周りに頼ってばかりの私とは大違い。
うみはいつでも頼もしい。
「そうだ、そろそろ配信の準備をはじめないと。ゲームは――うみにも言われたし、今日はマリオカート配信にしよう。8位以下で即終了で、復活芸で場を繋いで……」
りんご先輩からかかってきた電話のせいで、随分スケジュールが狂ってしまった。おにぎりを頬張り、ちょっと渋いお茶を飲みながら、私は配信の準備を再開する。
Twitterで自分のお絵描きハッシュタグを検索し、よさげなイラストの作者さんにサムネイルに使っていいか確認。返事を待ちながら告知文章を考える。
その傍ら――登録チャンネルの中から気になった配信を幾つか視聴する。
美月さんの生誕ライブは、彼女のチャンネルで同時配信されていた。
そんな事情もあり、昨日の事務所メンバーの配信は控えめ。
メンバーの記念配信には、枠を被せないのが暗黙のルールだが、この日は配信自体がそもそも少なかった。ゲストにDStars現主力を軒並み引っ張った生誕ライブだ。それと真っ向からやりあうのは、賢くないという判断だろう。
ふと、生誕ライブの動画をアーカイブから引っ張り出して視聴する。
うみとの昭和歌謡のメドレー。
特待生(りんご先輩はサプライズのため欠席)とのオリジナル楽曲。
いく先輩との初音ミクカバー。
もみじ先輩、あひる先輩とのキレキレのダンス。
そして、私との熱いラストソング。
からの、アンコールで「りんずん」歌唱コラボ枠の十八番曲。
ダメだと思っていてもエゴサをしてしまう。YouTubeに、日付指定をして「りんずん」「ずんばに」で検索をかければ――その差は歴然。
圧倒的な「りんずん」切り抜きの多さに私はたまらずブラウザを閉じた。
作業途中のツイッター告知文をちゃんと保存しておいたのは、我ながらファインプレーだったと思っている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
圧倒的な人気の差をみせつけられるばにら。
とはいえ、「りんずん」には復帰配信直後のバフもかかっているはず。
こういう時に、冷静になって状況分析をできない&ずるずると落ちて行くのは、いかにもメンタルよわよわだなぁという感じです。まずはそこの所を、先輩たちからは学ばなければ……。(まぁ、それがなかなか難しいんですけれどね……)
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