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第7章 だっだっだ うぉおぉ 大乱闘! スマッシュDスターズ
第46話 DStarsのジェームズ・モリアーティー(後編)
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津軽りんご。
DStars特待生。
得意な配信はゲーム配信。
格闘ゲーム・FPS・PVP要素のあるサンドボックス系ゲームにおいて、事務所最強クラスの個人戦闘能力を発揮する『対人戦特化型ゲーマー』。
元個人勢VTuberにして有名アーケードゲーマー。
そう、事務所の泥棒猫――津軽りんごは二つの過去を持つ。
VTuber活動を開始する以前、彼女は「neko2570」というTwitterアカウントで活動しているゲーマーだったのだ。
活動内容は過激の一言。
主要都市のゲームセンターに現れては、格闘ゲームのランキングを書き換え、彼女の頭文字の「NEK」がトップに表示された画像をアカウントに投稿するのだ。
当然、彼女に地元を荒らされたゲーマーたちはこれに激怒。
競うように彼女に対戦を求めるのだが――ただの一度の敗北もなく常勝無敗。
さらに負けたプレイヤーの額に「犬」と描き、「#今日の負け犬」というハッシュタグで、全世界に顔を晒すという鬼畜の所業で当時のゲーセン界隈を震撼させた。
とはいえ、彼女に顔を晒されたプレイヤーたちは、なぜかみな笑顔であった。
VTuber文化の黎明期、突如として「neko2570」はゲームセンターでの活動終了を宣言。そして、ほどなく「津軽りんご」として転生する。
この突然の転身には諸説あり、「彼女が得意とする格闘ゲームの主戦場がアーケードからネットに移行した説」「企業からネット対戦に移行したタイトルの宣伝を頼まれた説」「単に飽きた説」などが囁かれている。
ただ、本人はその理由について頑なに口を閉ざしている。
その後、彼女はVTuberとしても、格闘ゲームのネット大会やサンドボックス系ゲームのPVP大会で、着実に上位入賞を重ねて実績を残す。
その確かなゲームセンスと知名度。
アーケードゲーマー時代からの根強いファン。
なにより「当時にしては珍しいガチの女ゲーマー」「ゲーマーにしては礼儀正しい言葉使い」「ゆるふわ系の声」に目をつけたDStarsから、「特待生」として勧誘を受け企業勢になった。
この際、個人勢時代に絡みがあり、PVP大会でたびたびコンビを組んでいた「生駒すず」の存在が決め手となったらしい。
――と、DStarsの非公式まとめサイトには書かれていた。
「美月さん以上に無茶苦茶な経歴の持ち主だなぁ」
配信一時間前。
夕食を終えた私は、発生練習をしながらりんご先輩の経歴を軽く調べていた。
美月さんと違い前世をオープンにしている彼女の情報は簡単に手に入った。
DStarsの非公式まとめWikiの他にも、「neko2570」時代の悪行――もといゲーセン荒しをまとめたファンサイトがあり、知りたいことはだいたい把握できた。もっとも、アケードゲーマー時代のファンサイトは更新停止していたが。
しかしつくづく思い知らされたのは、りんご先輩がとんでもない悪戯好きで、人気者だということ。
アーケードゲーマー時代のゲーセン荒しが肯定的に語られているのがその証拠。
彼女が現れ話題を呼んだことで、廃業を免れたゲーセンもあれば、彼女に描かれた「犬」の顔をいまだにTwitterのアイコンにしている者までいる。
誰もが「neko2570」という「ゲームセンターに突如現れたスター」を愛し、彼女と過ごした日々を「まるで宝物のように」思っている。
その在り方はまるで、今のVTuberそのものだ。
「りんご先輩はVTuberになった理由を隠しているけれど、純粋にやりたかっただけなんじゃないかな……?」
なんて思ってしまうのは浅はかだろうか。
同じゲーム好きをこじらせてこの世界に身を投じた私としては、りんご先輩の転身をそんな風に考えてしまった。
まぁ、彼女は圧倒的なゲームセンスを持った野生のプロ。
こっちはレバガチャでゴリ押しするパッションゲーマー。
見えている世界が違うので、この推測はハズレかもしれない。
電子レンジで温めたホットミルクで喉を潤す。
暗くなった窓の外で「ナーナー」と猫たちの鳴く声がする。
猫皿に用意したねこまんまを食べているだろうか。配信が終る頃には、回収しにいけるといいなと思いつつ、私はOBSを起動して配信準備を始めた。
「しかし、まんまと相手の土俵に上げられたな。格闘ゲームのプロ相手に、チーム戦とはいえ勝てるんだろうか」
一方的な大虐殺の予感に、ホットミルクを飲んでいるはずなのに寒気を感じる。
当然、コラボ対決となれば罰ゲームは覚悟するべきだろう。
いざ、私が負けた時、りんご先輩にどんな要求を突きつけられることか。
まぁ、全世界にネット配信でやることだ、変な要求はされないだろう。
「案外、額に『犬』って描かれた画像をTwitterに上げられたりして」
青葉ずんだと肩を並べ、額に「犬」と描かれた川崎ばにらを想像し、思わず私は噴き出した。「ずんさんは『犬』だけれど、ばにらは『兎』だろうが」というコメントが容易に想像できた。
ふと、Discordに通知が入る。
うみが、私と美月さん、りんご先輩の四人をメンバーに、グループチャットを作ったらしい。明後日のコラボについての連絡用のものだ。
りんご先輩と既にじっくり話しあったのだろう。
すぐに具体的な対戦ルールがつらつらと記載されていく。
・2VS2のチーム戦
・キル数勝負
・5本先取した方のチームの勝利
・使用できるキャラは隠しキャラを含めて全員
・アイテムの発生頻度などはバニラ(標準)
・ステージはランダム
ここまではまぁ、よかったのだが……。
「……え? ちょっと待って?」
・チームは「りんご」「ずんだ」の「特待生チーム」と、「うみ」「ばにら」の「三期生チーム」とする
・枠は復帰直後のりんご先輩を盛り上げるため、彼女のチャンネルで行う
・配信は19:00から1時間程度を予定
書き連ねられた予想外の条件に私は目を剥いた。
てっきり、美月さんと私、りんご先輩とうみのチームで戦うと思っていた。
けど言われてみれば、「特待生」VS「三期生」という構図の方がしっくりくる。
枠もうみがとると言っていたのに、りんご先輩にあっさりとられてしまった。
まぁこれは、「復帰直後でコラボバフが欲しい」と言われれば、上下関係を抜きに断れない。仲間同士で支え合うのはVTuber界隈では仕方のないこと。
とはいえ――。
「ここまで考えて、今回のコラボを仕掛けてくるとは、流石だなぁ」
事務所内で「泥棒猫」という愛称と共に「黒幕」と呼ばれているだけはある。
すべて、りんご先輩の手の内か。
まぁ、そういうことになったのなら仕方ない。
気持ちを切り替えて、今は配信に集中しよう。
そんな私の覚悟は――。
「『・なお、機材(Nintendo64実機を使う)の関係からオフコラボ配信となります。当日の収録場所は、ずんだ先輩のお家です。 @ずんずんずんだ 先輩、当日はよろしくおなしゃす!』……って、ハァ⁉」
最後の一文によって粉々に砕かれることになるのだった。
「うみが来る⁉ ずんだ先輩の家に⁉ りんご先輩も⁉」
あまりの動揺に、私の配信開始が遅れたのは言うまでもない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同期には秘密にしておきたかった先輩の自宅。
先輩から誘われた&仕方がないとはいえ、うみを入れるのにもジェラってしまうばにら。このうさぎ、本当に強欲というか無自覚というか……!
そしてなによりオフコラボ。
はたして憎き泥棒猫を前に、ばにらは感情を抑えられるのか?
いきなりクライマックスな感じで攻めてくる泥棒猫に、「この先どうなるんだ?」とワクワクされた方は、なにとぞ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
DStars特待生。
得意な配信はゲーム配信。
格闘ゲーム・FPS・PVP要素のあるサンドボックス系ゲームにおいて、事務所最強クラスの個人戦闘能力を発揮する『対人戦特化型ゲーマー』。
元個人勢VTuberにして有名アーケードゲーマー。
そう、事務所の泥棒猫――津軽りんごは二つの過去を持つ。
VTuber活動を開始する以前、彼女は「neko2570」というTwitterアカウントで活動しているゲーマーだったのだ。
活動内容は過激の一言。
主要都市のゲームセンターに現れては、格闘ゲームのランキングを書き換え、彼女の頭文字の「NEK」がトップに表示された画像をアカウントに投稿するのだ。
当然、彼女に地元を荒らされたゲーマーたちはこれに激怒。
競うように彼女に対戦を求めるのだが――ただの一度の敗北もなく常勝無敗。
さらに負けたプレイヤーの額に「犬」と描き、「#今日の負け犬」というハッシュタグで、全世界に顔を晒すという鬼畜の所業で当時のゲーセン界隈を震撼させた。
とはいえ、彼女に顔を晒されたプレイヤーたちは、なぜかみな笑顔であった。
VTuber文化の黎明期、突如として「neko2570」はゲームセンターでの活動終了を宣言。そして、ほどなく「津軽りんご」として転生する。
この突然の転身には諸説あり、「彼女が得意とする格闘ゲームの主戦場がアーケードからネットに移行した説」「企業からネット対戦に移行したタイトルの宣伝を頼まれた説」「単に飽きた説」などが囁かれている。
ただ、本人はその理由について頑なに口を閉ざしている。
その後、彼女はVTuberとしても、格闘ゲームのネット大会やサンドボックス系ゲームのPVP大会で、着実に上位入賞を重ねて実績を残す。
その確かなゲームセンスと知名度。
アーケードゲーマー時代からの根強いファン。
なにより「当時にしては珍しいガチの女ゲーマー」「ゲーマーにしては礼儀正しい言葉使い」「ゆるふわ系の声」に目をつけたDStarsから、「特待生」として勧誘を受け企業勢になった。
この際、個人勢時代に絡みがあり、PVP大会でたびたびコンビを組んでいた「生駒すず」の存在が決め手となったらしい。
――と、DStarsの非公式まとめサイトには書かれていた。
「美月さん以上に無茶苦茶な経歴の持ち主だなぁ」
配信一時間前。
夕食を終えた私は、発生練習をしながらりんご先輩の経歴を軽く調べていた。
美月さんと違い前世をオープンにしている彼女の情報は簡単に手に入った。
DStarsの非公式まとめWikiの他にも、「neko2570」時代の悪行――もといゲーセン荒しをまとめたファンサイトがあり、知りたいことはだいたい把握できた。もっとも、アケードゲーマー時代のファンサイトは更新停止していたが。
しかしつくづく思い知らされたのは、りんご先輩がとんでもない悪戯好きで、人気者だということ。
アーケードゲーマー時代のゲーセン荒しが肯定的に語られているのがその証拠。
彼女が現れ話題を呼んだことで、廃業を免れたゲーセンもあれば、彼女に描かれた「犬」の顔をいまだにTwitterのアイコンにしている者までいる。
誰もが「neko2570」という「ゲームセンターに突如現れたスター」を愛し、彼女と過ごした日々を「まるで宝物のように」思っている。
その在り方はまるで、今のVTuberそのものだ。
「りんご先輩はVTuberになった理由を隠しているけれど、純粋にやりたかっただけなんじゃないかな……?」
なんて思ってしまうのは浅はかだろうか。
同じゲーム好きをこじらせてこの世界に身を投じた私としては、りんご先輩の転身をそんな風に考えてしまった。
まぁ、彼女は圧倒的なゲームセンスを持った野生のプロ。
こっちはレバガチャでゴリ押しするパッションゲーマー。
見えている世界が違うので、この推測はハズレかもしれない。
電子レンジで温めたホットミルクで喉を潤す。
暗くなった窓の外で「ナーナー」と猫たちの鳴く声がする。
猫皿に用意したねこまんまを食べているだろうか。配信が終る頃には、回収しにいけるといいなと思いつつ、私はOBSを起動して配信準備を始めた。
「しかし、まんまと相手の土俵に上げられたな。格闘ゲームのプロ相手に、チーム戦とはいえ勝てるんだろうか」
一方的な大虐殺の予感に、ホットミルクを飲んでいるはずなのに寒気を感じる。
当然、コラボ対決となれば罰ゲームは覚悟するべきだろう。
いざ、私が負けた時、りんご先輩にどんな要求を突きつけられることか。
まぁ、全世界にネット配信でやることだ、変な要求はされないだろう。
「案外、額に『犬』って描かれた画像をTwitterに上げられたりして」
青葉ずんだと肩を並べ、額に「犬」と描かれた川崎ばにらを想像し、思わず私は噴き出した。「ずんさんは『犬』だけれど、ばにらは『兎』だろうが」というコメントが容易に想像できた。
ふと、Discordに通知が入る。
うみが、私と美月さん、りんご先輩の四人をメンバーに、グループチャットを作ったらしい。明後日のコラボについての連絡用のものだ。
りんご先輩と既にじっくり話しあったのだろう。
すぐに具体的な対戦ルールがつらつらと記載されていく。
・2VS2のチーム戦
・キル数勝負
・5本先取した方のチームの勝利
・使用できるキャラは隠しキャラを含めて全員
・アイテムの発生頻度などはバニラ(標準)
・ステージはランダム
ここまではまぁ、よかったのだが……。
「……え? ちょっと待って?」
・チームは「りんご」「ずんだ」の「特待生チーム」と、「うみ」「ばにら」の「三期生チーム」とする
・枠は復帰直後のりんご先輩を盛り上げるため、彼女のチャンネルで行う
・配信は19:00から1時間程度を予定
書き連ねられた予想外の条件に私は目を剥いた。
てっきり、美月さんと私、りんご先輩とうみのチームで戦うと思っていた。
けど言われてみれば、「特待生」VS「三期生」という構図の方がしっくりくる。
枠もうみがとると言っていたのに、りんご先輩にあっさりとられてしまった。
まぁこれは、「復帰直後でコラボバフが欲しい」と言われれば、上下関係を抜きに断れない。仲間同士で支え合うのはVTuber界隈では仕方のないこと。
とはいえ――。
「ここまで考えて、今回のコラボを仕掛けてくるとは、流石だなぁ」
事務所内で「泥棒猫」という愛称と共に「黒幕」と呼ばれているだけはある。
すべて、りんご先輩の手の内か。
まぁ、そういうことになったのなら仕方ない。
気持ちを切り替えて、今は配信に集中しよう。
そんな私の覚悟は――。
「『・なお、機材(Nintendo64実機を使う)の関係からオフコラボ配信となります。当日の収録場所は、ずんだ先輩のお家です。 @ずんずんずんだ 先輩、当日はよろしくおなしゃす!』……って、ハァ⁉」
最後の一文によって粉々に砕かれることになるのだった。
「うみが来る⁉ ずんだ先輩の家に⁉ りんご先輩も⁉」
あまりの動揺に、私の配信開始が遅れたのは言うまでもない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同期には秘密にしておきたかった先輩の自宅。
先輩から誘われた&仕方がないとはいえ、うみを入れるのにもジェラってしまうばにら。このうさぎ、本当に強欲というか無自覚というか……!
そしてなによりオフコラボ。
はたして憎き泥棒猫を前に、ばにらは感情を抑えられるのか?
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