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第3章 魔王を倒した
第67話 光の勇者
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ここは別館のある部屋。俺と椿、紅葉ちゃんの三人は堂宮刑事と越川刑事と対面していた。
俺は堂宮刑事にあることをお願いしていた。
「皆さんをここに集めていただけませんか。犯人が誰だか、わかりました」
その場にいた俺以外の四人の視線が俺に向けられた。
一瞬ドキッとしてしまうが、すぐに推理モードに戻る。
堂宮刑事が右手で左手の拳を包み、それを顎につけながら俺を見た。
「金谷君、本当なのかい?」
俺は首を縦に振り、しっかりと答えた。
「はい。ただ、物的な証拠がまだ見つかっていません。シンクやナイフの柄の部分から指紋が出れば、証拠になるかもしれませんが、いくらでも言い逃れができるでしょう」
「何をもって犯人を告発するんだい?」
「証拠を持った犯人を、白日の下にさらさせます。毒を持った悪魔を討ったとほくそ笑んでいる、光の勇者の正体をね」
「……君はまだ、犯人が物的証拠を持っていると」
「はい。桐原さんが殺害されてから時間はさほど経過していませんし、返り血が付いたものはまだ犯人が身に着けていると思います」
「なるほど」
俺の中には確信に近いものが出来上がっていた。俺の推理が正しければ、みんなの前で犯人を白日の下にさらすことで、犯人の逃げ場を奪いながら告発できると考えていた。
しかし、難易度がかなり高い。主に精神的なハードルが。初めて俺は警察や容疑者を前に推理を披露することになるのだ。母さんの推理小説ではよくある光景だが、リアルですることになるとは思わなかった。
そして、これには周りの人々の協力が不可欠だった。特に、犯人から証拠を引きずり出すには――
「椿にも協力してほしいことがある」
「なんなの?」
椿が首をかしげた。
俺がその内容を話すと、椿は快く顔を縦に振った。
「任せて。さすがにあなたにはできないからね」
「ははは。頼むよ」
説明が終わり、みんなを玄関ホールに集めるということで、警察関係者が部屋を出始めた。
俺はため息をついて、その場にへたり込んだ。推理モードで蓋をしていた疲れがどっと出てくる。
「ああああ……」
「素が出てるよ、リツさん」
紅葉ちゃんの声がすぐ耳元に聞こえる。
さらに姉の椿の声もした。やれやれと言わんばかりの発言だが、どこか感心しているようにも聞こえる。
「リツ、推理モードになるとホント人が変わるわよね。必死で元の人格を押さえながら推理してるの、ある意味才能だと思う」
「才能、ね」
なぜか苦笑いしてしまった。
しかし、不安が消えたわけじゃない。
「正直、犯人はあの人で間違いないけど、もし間違っていたらと思うとな……」
「何今更弱気になってんのよ。あなたの推理ミスなんて、これまでなかったじゃない」
俺は首を振った。
ミスはないかもしれないが、今回の事件で物証が掴めたわけではない。だが、チャンスはこの時しかないのも事実。今ここで犯人を告発しなければ、証拠を隠滅されるリスクが跳ね上がってしまう
「この際言ってしまうけど、イチかバチかの賭けなんだよ。もし推理が間違ってたりしたら、全部終わりだ」
「もう告発すると決めたんだから、元には戻れないよね? じゃあ、進むしかないんじゃない?」
横目で椿を見ると、椿はにっこりとほほ笑んでいた。
「椿……」
「あなたには才能があるんだから。私はそれを買ってあなたを雇ったの。所長の目を侮ってもらっては困るわ」
椿の声が優しく響いていた。
それに呼応するかのように、紅葉ちゃんも口角を上げて話し始めた。
「お姉ちゃんが言うんだから、間違いないよ。わたしが保証する」
「紅葉ちゃん……」
俺は改めて息を深く吸った。そして、胸に手を当てる。
「ああ。行くしかないよな」
ついに、すべての謎が明らかになる。
しかし、“梔子の国に巣食う魔女”を討ち取るという“光の勇者”。勇者が受けた仕打ちはとても過酷で陰鬱なものだったことを、俺たちはまだ知らなかった。
***
別館、玄関ホール。そこには俺たち【ときわ探偵事務所】のメンバーのほか、常盤署の堂宮刑事と越川刑事と警官数名がいる。そして、テーブルを介して反対側に梔子家の当主、梔子喜之助氏、そして喜之助氏の子供たちである長男、梔子隼人、次男、梔子清介、長女、梔子綾乃の四人が並んで立っている。
「今度は何ですか。犯人が分かったんですか?」
喜之助氏が一家を代表として口を開いた。子供たちも不満や不安の色を浮かべている。
「はい。事件のことを探偵事務所の金谷さんから説明すると」
堂宮刑事が答えると、梔子一家四人の視線が俺に向けられた。
一瞬、空気が凍り付いた気がした。
口を開いたのは梔子家の次男、清介だった。
「あんた、本当に犯人が分かったんだよな。警察ならわかるが、あんたそもそも一般人だろ? これから何をしようとしてるのか、わかってるんだよな」
俺は目を閉じていた。
そういわれると、自信がなくなるのは嘘ではない。しかし、俺としてはここで犯人を白日の下にさらす以外、告発する術はなかった。もし、犯人が間違っていたら、俺は間違いなく終わる。椿も、紅葉ちゃんもだ。
だが、俺は確信に近い考えも持っている。そして、ここで告発しないと依頼人が浮かばれない。「お客様あっての探偵業」という、椿の言葉がこだましていた。
決意は固まった。
「はい。犯人は誰か、ここで明らかにしてみましょう」
あたりがざわめく。
声を上げたのは当主の喜之助氏。
「探偵さん、この中に犯人がいるというのですか」
「僕はそう考えています。まずは、事件の経緯とその裏での犯人の行動について説明します。あの時何があったか、明らかにしましょう」
俺は堂宮刑事にあることをお願いしていた。
「皆さんをここに集めていただけませんか。犯人が誰だか、わかりました」
その場にいた俺以外の四人の視線が俺に向けられた。
一瞬ドキッとしてしまうが、すぐに推理モードに戻る。
堂宮刑事が右手で左手の拳を包み、それを顎につけながら俺を見た。
「金谷君、本当なのかい?」
俺は首を縦に振り、しっかりと答えた。
「はい。ただ、物的な証拠がまだ見つかっていません。シンクやナイフの柄の部分から指紋が出れば、証拠になるかもしれませんが、いくらでも言い逃れができるでしょう」
「何をもって犯人を告発するんだい?」
「証拠を持った犯人を、白日の下にさらさせます。毒を持った悪魔を討ったとほくそ笑んでいる、光の勇者の正体をね」
「……君はまだ、犯人が物的証拠を持っていると」
「はい。桐原さんが殺害されてから時間はさほど経過していませんし、返り血が付いたものはまだ犯人が身に着けていると思います」
「なるほど」
俺の中には確信に近いものが出来上がっていた。俺の推理が正しければ、みんなの前で犯人を白日の下にさらすことで、犯人の逃げ場を奪いながら告発できると考えていた。
しかし、難易度がかなり高い。主に精神的なハードルが。初めて俺は警察や容疑者を前に推理を披露することになるのだ。母さんの推理小説ではよくある光景だが、リアルですることになるとは思わなかった。
そして、これには周りの人々の協力が不可欠だった。特に、犯人から証拠を引きずり出すには――
「椿にも協力してほしいことがある」
「なんなの?」
椿が首をかしげた。
俺がその内容を話すと、椿は快く顔を縦に振った。
「任せて。さすがにあなたにはできないからね」
「ははは。頼むよ」
説明が終わり、みんなを玄関ホールに集めるということで、警察関係者が部屋を出始めた。
俺はため息をついて、その場にへたり込んだ。推理モードで蓋をしていた疲れがどっと出てくる。
「ああああ……」
「素が出てるよ、リツさん」
紅葉ちゃんの声がすぐ耳元に聞こえる。
さらに姉の椿の声もした。やれやれと言わんばかりの発言だが、どこか感心しているようにも聞こえる。
「リツ、推理モードになるとホント人が変わるわよね。必死で元の人格を押さえながら推理してるの、ある意味才能だと思う」
「才能、ね」
なぜか苦笑いしてしまった。
しかし、不安が消えたわけじゃない。
「正直、犯人はあの人で間違いないけど、もし間違っていたらと思うとな……」
「何今更弱気になってんのよ。あなたの推理ミスなんて、これまでなかったじゃない」
俺は首を振った。
ミスはないかもしれないが、今回の事件で物証が掴めたわけではない。だが、チャンスはこの時しかないのも事実。今ここで犯人を告発しなければ、証拠を隠滅されるリスクが跳ね上がってしまう
「この際言ってしまうけど、イチかバチかの賭けなんだよ。もし推理が間違ってたりしたら、全部終わりだ」
「もう告発すると決めたんだから、元には戻れないよね? じゃあ、進むしかないんじゃない?」
横目で椿を見ると、椿はにっこりとほほ笑んでいた。
「椿……」
「あなたには才能があるんだから。私はそれを買ってあなたを雇ったの。所長の目を侮ってもらっては困るわ」
椿の声が優しく響いていた。
それに呼応するかのように、紅葉ちゃんも口角を上げて話し始めた。
「お姉ちゃんが言うんだから、間違いないよ。わたしが保証する」
「紅葉ちゃん……」
俺は改めて息を深く吸った。そして、胸に手を当てる。
「ああ。行くしかないよな」
ついに、すべての謎が明らかになる。
しかし、“梔子の国に巣食う魔女”を討ち取るという“光の勇者”。勇者が受けた仕打ちはとても過酷で陰鬱なものだったことを、俺たちはまだ知らなかった。
***
別館、玄関ホール。そこには俺たち【ときわ探偵事務所】のメンバーのほか、常盤署の堂宮刑事と越川刑事と警官数名がいる。そして、テーブルを介して反対側に梔子家の当主、梔子喜之助氏、そして喜之助氏の子供たちである長男、梔子隼人、次男、梔子清介、長女、梔子綾乃の四人が並んで立っている。
「今度は何ですか。犯人が分かったんですか?」
喜之助氏が一家を代表として口を開いた。子供たちも不満や不安の色を浮かべている。
「はい。事件のことを探偵事務所の金谷さんから説明すると」
堂宮刑事が答えると、梔子一家四人の視線が俺に向けられた。
一瞬、空気が凍り付いた気がした。
口を開いたのは梔子家の次男、清介だった。
「あんた、本当に犯人が分かったんだよな。警察ならわかるが、あんたそもそも一般人だろ? これから何をしようとしてるのか、わかってるんだよな」
俺は目を閉じていた。
そういわれると、自信がなくなるのは嘘ではない。しかし、俺としてはここで犯人を白日の下にさらす以外、告発する術はなかった。もし、犯人が間違っていたら、俺は間違いなく終わる。椿も、紅葉ちゃんもだ。
だが、俺は確信に近い考えも持っている。そして、ここで告発しないと依頼人が浮かばれない。「お客様あっての探偵業」という、椿の言葉がこだましていた。
決意は固まった。
「はい。犯人は誰か、ここで明らかにしてみましょう」
あたりがざわめく。
声を上げたのは当主の喜之助氏。
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