転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨

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胃が痛いグラス【3】

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 麗らかと称するに相応しい春の気候。リチェルリット国ならではのとても美しい庭の花々に普段なら心が凍り付いていると言われる自分でさえ足を止めるだろう。普段なら……。【怒り】それは私7歳あたりから消えてしまった感情だと思って居たのだが、その感情がふつふつと心の中で煮えたぎり、歩くのに最適な軽い素材の靴でさえ、カツカツカツカツと、甲高い音を立てるほどに早足に治癒部隊隊舎へと駆け込み。いつも通りを装って受付に行きお見舞いの手続きを手早く済ませ、今度は音の鳴らぬように、それでいて素早く前後に足を動かし目的の病室の方向へ一寸もずれずにまっすぐ向かった。

 やがて、【カリスティア】と名の病室にたどり着きノックを3度すると、幼い声で気の抜けたような返事が返ってきた。ため息一つに廊下に吐き出して、扉を開けて病室に入ると思った通りに無表情に似合わない明るい口調で「よーグラス!!いらっしゃい」っと出血多量で暫く寝ていろと言われたはずの彼女が毛布を蹴り上げてこちらに走ってきて言われたので、嬉しい反面呆れの籠もったため息を彼女の目の前でこぼした。

「ありゃ、怒ってる?」

「できるだけ安全に貴方の道を進める力を付けれるように計らいましたのに初日で死にかけられる私の気持ちを察して頂ければ、私がどんな感情かおわかりいただけると提案いたします」

「いやーだってわざわざ自分の身体を切って覚えろなんて言われたらそりゃねぇ……」

「それだけ、貴方は欲しい人材ということです。スキルを覗いても素質が……普通は市民には一桁あるだけで天才……王族や貴族は血筋の問題で10~25ですが……58は……」

「そんなすごいもんなの?」

 あっけらかんと知らなかったと言い放つ彼女の目を見ると、心底呆れていますとわかりやすく眉間に皺のよる自分が彼女のアメジストの瞳に反射して見えた……心なしか胃痛がする気がする。やれやれと何度かわからないため息を彼女に向けて放ち、彼女を抱き上げ抗議の声を無視してベットへと寝かせる。彼女の体調のことも心配だが、表情が凍死した王子と言われていた自分が、彼女によって思ってもみない自身の感情をさらけ出している事実に多少うろたえる自分を誤魔化すため。


「素質とは自身のもつスキルレベルの一つの限界です。私は22ですから22までは難なくレベルをあげることができます。そして22以降のレベルを上げるには今までの5倍時間と努力が必要となります。貴方は58までは苦労なく上がるということですよ」

 彼女のステータスはディザ様の手によって幹部と関係性が近しいと判断された私にだけ開示されたが……もし、彼女が自分と出会うことなく、別の才能に気がついたものに利用されていたかもしれないと思うと……。

 手が震えて無意識に彼女に貰った腕輪を握りしめる。未だに使えないけれど確かに自分の物だとしっくりと手になじむ彼女に初めて作って貰った腕輪。握りしめて居るとそっと彼女の小さく、それでいて剣によるタコでゴツリとした手が震える自分の手に撫でるようにかざされる。思考の海に溺れていつの間にか俯いていた頭を上げると彼女の無表情の顔が目の前にあって、頭を撫でられた。身長差があるので、身を乗り出して膝立ちした不格好な形だけど、優しく自分の嫌いな白髪の髪の毛を撫でる。驚きのあまり固まって居ると

「顔真っ赤でかわいいー」

 っと相変わらずの無表情だけれども、声音は楽しそうな彼女。頭に心臓が這い上ってきたような五月蠅い心臓音。何もかもが自分には理解できなくて、立ち上がり。「っと……とりあ、げずこのような無理はこれ以上しないようにお願いします」

「あっ、噛んだ」

「失礼します!」

 できるだけ人通りが皆無の通りを選んで自身の所属する魔術隊舎へと駆け足で駆け込む。やはり他の人には無表情で居られているようで、みなにこれといって指摘されることはなかった。

 




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