話になりませんわね。

ひろきちさん

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「公爵令嬢"リリーナ・マークス"貴様との婚約は今この時をもって破棄する!!」

学園の卒業パーティの賑わいの中、私の婚約者でありこの国の第1王子でもあるローグ様が声高々に宣言をした。
賑わいが静寂となり周囲の視線が私に集中する。

「失礼ながら・・・理由を伺っても?」

私は手に持っていた扇で口元を隠しながら王子に質問をした。
まぁ聞かなくても予想はつくけど。

「私が何も知らないとでも思っているのか!」
「何をでしょうか?見当も付きませんが?」
「ふん。しらばっくれるつもりか?
 貴様は私の愛しい"ローラ"を平民の出たからと言って虐めた!!
 このような残虐非道な行いをするような女は次期国王たる私にふさわしくない!!」

そう言いながら王子は隣りにいるピンクゴールドの髪を持つ少女を見つめた。
卒業式には似つかわしくないフリルの沢山ついた子供っぽいドレスを着た少女は、男性の庇護欲をそそるような表情で王子を見つめ返し頬を赤く染めている。
完全に二人の世界だ。
何を見せつけられてるんだろ・・・イチャつくなら二人きりのときにして欲しいわ。

それにしても"ローラ嬢"。
確かザッポン男爵家の令嬢だったわよね?
知り合いの令嬢から噂には聞いていたけど元平民で男爵の養女だったはず。

でも王子言っちゃったわねぇ。
"愛する"って。
一応現段階での王子の婚約者は私なわけだし、公然と"浮気してました"って宣言しているようなものだけどわかって言ってるのかしら。
いつも言葉選びはよく考えてって注意してたのに。
ほら周りの人達白い目で見てるわよ。
ただでさえあんまり評判良くなかったのに。

それに・・・次期国王って。
王子は私と婚約破棄しても国王になれるつもりなのかしら?
第2王子が幼いからって理由で次期国王とか言われているけどローグ様ってなんの後ろ盾もない側妃の子供じゃない。
私と婚姻して公爵家に後ろ盾として振る舞ってもらう必要があるはずだけど。
まさか忘れちゃってた?
どうせ婚約破棄するなら私には関係ない話だけど。
それにあんな人が国王になったらこの国も終わりですものね。
むしろその点はローラ嬢には感謝しなくちゃいけないのかな。
まぁとりあえず・・・拒む理由もないわよね。

「わかりました。婚約破棄受け入れさせていただきます。
 書類は当家で準備し手続き進めさせていただきますね」

私がそう言うと何が不満なのか、憮然とした表情で王子は続けてきた。

「・・・それだけか?謝罪はどうした!ローラにこの場で謝罪しろ!
 私も鬼ではない。この場で謝罪すれば許してやらんでもない」

ローラ嬢にならまだしもなんで王子に許して貰う必要が。。。
まぁもう少し付き合ってあげましょうかね。

「そう言われましても、ローラ嬢とは今日が初対面です。
 虐めにしても心当たりがありません?
 何か証拠でもあるのでしょうか?」

私が言うと不機嫌な顔をして声を荒らげてきた。

「貴様!!こちらが下出に出ていれば調子に乗りおって!
 証拠ならある。ルーイ!!」
「はっ!」

後ろに控えていた王子の側近の一人で現宰相の子息"ルーイ"が破れた本を手にして前に進み出た。
それより、誰が下出に出て立って?
さすがにそろそろイライラいしてきたわ。

「この教科書はローラ嬢のものですが、あなたに破かれたと聞いています。
 物的証拠です。
 あなたに反論できますか?」

はぁ。。。
ルーイは王子と違って学園での成績もいいし、もっとまともだと思ってたんだけど。。。
反論も何もローラ嬢が破かれたって言ってるだけでしょ?
そんなの証拠になるわけないし。

「・・・その教科書が破かれたのはいつの話ですか?」
「自分で破っておいて・・・一昨日の放課後だ。
 ローラ嬢が教室に戻ったら破れた教科書が机の上にあったとのことだ」
「何故私がやったと?」
「教室を出ていくリリーナ嬢の後ろ姿を見たと言っている!」
「そうですか。。。ちなみに一昨日というのは間違いないですか?」
「間違いない。そうだなローラ嬢」

そう言いながらローラ嬢を優しい目で見つめるルーイ。
と。今まで王子の後ろに隠れるようにして立っていたローラ嬢が私を睨み返事をした。

「はい!間違いありません。
 それにこんな事言うとまた虐められてしまうかもしれませんが・・・あれは絶対にリリーナ様でした」

そう言いながら泣きそうな顔でルーイを見つめ返すローラ嬢。

・・・そういうことですか。恋は盲目とはよく言ったものね。

「何か言い訳はあるか!
 許してやろうかとも思ったが、罪すら認めぬ様な女などこの国には要らん!
 爵位剥奪の上国外追放だ!!」

ルーイとローラ嬢のセリフを受け王子がドヤ顔で私に宣言する。
本人は自分の台詞に酔ってるようだけど周りのざわつきや視線は気にならないのかしら?

でも・・・何だか面倒になってきたかも。
早く終わらせて美味しいケーキでも食べたくなってきたわ。
そろそろ終わりでいいわよね。

「一昨日というのであれば私には無理ですね」
「なんだと?」
「お忘れですか?私は国王陛下の命で一昨日まで隣国の建国祭に出席しておりました。
 本日の卒業式にあわせて昨日遅くに本国に戻ってきたのですから」
「な!」

あの様子だと忘れてたみたいね。
本来であれば王子が行くべきところなのに頼りないからって国王陛下に私が頼まれたんじゃない。

「それに私は王妃教育や外交のため、ここ数ヶ月は学園に来る日時も限られていました。
 王宮の侍女や次官と行動をともにすることも多かったですし、そもそもローラ嬢はクラスも異なります。わざわざ教科書を破きに行く余裕なんてございませんわ」
「ぐぬぬ。。。」
「話になりませんわね」

固まっている王子とルーイ、それにローラ嬢。

言い返そうと思えば幾らでも言い返せると思うけど、睨んでるだけで言葉が出てこないみたいね。
何だか悔しそう。
と、無言の時間が数刻過ぎ

「そ そうだ!きっとお前の命令で取り巻きたちが「何をやっておる!!」

王子がやっとの思いで反論しようとしたところで、ホールの扉が大きく開き国王陛下の声が響いた。

「ローグ!この騒ぎは何事だ」
「い。いえ父上。その・・・」

陛下の怒声に王子も顔色を悪くしている。
さっきまでの勢いはどうしたのよ。。。
仕方ない私が説明してあげよう。

「発言よろしいでしょうか?陛下」
「リリーナか。発言を許可する」
「ありがとうございます陛下。
 この騒ぎですが、ローグ王子より私が婚約破棄を申し使ったものです」
「婚約破棄だと?」

陛下。
顔が怖いですよ。
怒りの表情で王子を睨む陛下と顔を青くしている王子。

「はい。つい先程国外追放も言い渡されました」
「国外追放?」

陛下の表情が更に険しくなる。

「ローグ!!それは本当か?」
「そ それは」
「貴様に何の権限があってそのようの宣言をしている!」
「お、お言葉ですが父上。
 リリーナはローラ嬢を虐めるような酷い女です!」
「だからどうしたというのだ」
「え?」
「リリーナとの婚約は国益を考慮しての王命でもある。
 それをお前は破棄するというのか!!」
「い、いえそのようなつもりでは・・・」

「それに虐めだと?証拠はあるのか?ちゃんと調査は行ったのか?
 それ以前に国外追放だと?お前にそのようなことを行う権限を与えた覚えは無い!」
「し、しかし・・・」
「言い訳は不要だ!
 衛兵。ローグを北の塔へ連れて行け。多少手荒な扱いをしても構わん!
 処罰は追って伝える」
「そ、そんな。父上!こら離せ!」
「少しお前を甘やかしすぎたかもしれない・・反省しろ!」

衛兵に両脇を抱えられ力なく項垂れた王子が連れて行かれる。
北の塔は王族用を幽閉する隔離施設だ。
多分、あそこに連れて行かれるということは・・・


「済まなかったリリーナ嬢」
「え?」

そう言いながら普段の優しい表情に戻った国王陛下は私に頭を下げた。
いえいえ。そこまでしていただかなくても。

「国王陛下、頭を上げてください。気にしてませんから」
「公爵家にはあらためて謝罪を行わせていただく。
 それと・・・あのバカは廃摘する」
「そう・・・ですか」

そうよね。
婚約破棄もだけど国外追放とか職権乱用。
それに多くの貴族が集まる中での醜聞は・・・


「え~ローグが王様になるんじゃないの?
 折角王妃になれると思ってたのに~」

会話を遮るようにローラ嬢の場違いな声が聞こえてきた。
ここまで空気が読めない方だったとは。

「ルーイ。なんだこの娘は不敬な」

突然の声に陛下の目が再び険しくなる。
黙ってればいいのに・・・

「陛下。あ、あの王子の新しい婚約者の・・・」
「新しい婚約者だと?そんなもの許可した覚えはない。
 それに今の発言・・・王族いや貴族としての品格に足りるとは思えん」
「・・・」
「そもそもルーイ。お前が居ながら今回の所業は何だ!
 お前がローグを諫めるべきではなかったのか!」
「・・・それは」
「はぁ・・・もう良い。お前には期待していたのだがな・・・
 衛兵。そこの女とルーイを外に出せ」

「ちょ ちょっと何よ!触らないでよ」
「・・・・」




その後。

ローグ王子は陛下の宣言通り廃摘され親戚筋の辺境伯に預けられることとなった。
平民に落とされなかったのは陛下の温情なのかもしれないけど確か辺境伯のところは魔獣が多く生息し防衛で日々大変だったはず。
今までみたいな優雅な生活は出来ないだろうしある意味平民に落ちるよりも大変かも。
剣術とか魔法とかいつも訓練サボってたし生き延びること出来るのかな?

ルーイは側近の任を解かれた。
大きな罪にこそ問われなかったけど宰相は責任を取って辞任した。
そしてルーイ自身も自身の未熟な行動を恥じ自ら家を出て貴族の位を捨て平民になった。
根が真面目なだけに思いつめなきゃ良いけど、頭はいいから平民になってもやっていけるんじゃないかな。

そしてローラ嬢。
当初は私に対して無実の罪を被せたという罪状だけだったんだけど、調べてみるとあちこちの貴族令嬢から婚約者を取られたとか不貞されたとか色々と苦情・・・
ザッポン男爵も最初のうちは庇っていたけど最終的には庇いきれなくなって慰謝料とともに男爵家を追われた。
元々平民だし神経も図太そうだから死にはしないでしょうけど慰謝料は高額だし・・・
まぁ私の知ったことじゃないわね。


最後に私。
堅苦しい王妃教育を受ける必要がなくなり、少し隣国にでもバカンスにとか考えて居たんだけど、陛下から次期王太子となる王弟殿下のご子息であるヒューイ様の婚約者に推薦されてしまった。
ヒューイ様は、元々王位継承権は返上するつもりで騎士団に所属していたんだけど、今回のことを受け急遽立太子することになったらしい。
王命であれば従うしか無いと思いつつも・・・実はヒューイ様は学園女子からの人気が高い超優良物件。イケメンで優しく、そして騎士としての実力も申し分ないお方。
ちょっと嬉しかったりもしている。
この点に関しては、婚約破棄してくれたローグ様に感謝ね。

唯一の懸念は淑女教育とかは受けたものの私の元の性格が結構ガサツなところ。
ヒューイ様受け入れてくれるかしら?



fin
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