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【5.モーニング・トラブル】
しおりを挟む入学からあっという間の2週間。
寮での生活にも、学校の空気にも少しずつ慣れてきた。
……が、今とても困った状況にある。
「瀬川先輩!離してください…!起きて!!」
「……ぅるさい」
俺の背後に回る腕に力が篭もる。
俺は何故か眠る先輩の腕の中に捕らえられていた──
こうなった経緯は今から20分ほど前。
普段なら起きてくる時間になっても先輩が起きてこないから、起こそうとしたのが始まり。
「先輩?起きてください、遅刻しますよー?」
何度か声を掛けたが起きないため、ゆさゆさと先輩の体を揺らす。
「せんぱーい!あーさーでーすーよー!」
「……うるさい」
「え?…うわぁっ」
ミノムシのようになってた布団から腕が伸びてきて、俺を引きずり込んだ。
気が付くと俺は向かい合う形で先輩に抱きしめられていて、動けなくなっていた。
こうなってから20分。
どれだけ声を掛けようが、動こうが全く起きない。
それどころか動けば動くほど強く締められて体力だけが持っていかれた。
……それからどのくらい経っただろうか。
今日は遅刻かなと半ば諦めかけていた頃、ようやく先輩が動き始めた。
「……なんで一緒に寝てんだ…?」
その一言に一気に怒りが沸く。
「先輩が引きずり込んだんです!どれだけ起こしても起きてくれないし…⋯。起きたなら離してください!!」
感情が昂り思わず涙が浮かぶ。
先輩はすぐ離してくれて、ゆっくりと俺の頭を撫でた。
「⋯っすまなかった、次からは気をつける。起こしてくれてありがとうな」
「次からは棒で突っつきますからねっ!」
突っつく真似をすると先輩が笑い、俺釣られて笑う。
「⋯⋯機嫌、直ったみたいだな。部活見学も始まるし、楽しんでこいよ」
また俺の頭を先輩が撫でてくる。
それが心地よくてされるがままになっていた。
陸が元気よく玄関の戸を叩く音が聞こえるまで──。
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