陽だまりのほうへ

狼虎れお

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【3.オリエンテーション - 下 -】

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「ゆきちゃん、この後どうする?」

食堂に在学生がチラホラと増え始めた頃、陸に問いかけられた。
時計を見るとまだ寮に帰るには早い時間だ。

「んー…天気いいし、中庭行こうよ」

「おっけー!」


***


中庭は風通しが良く、やわらかい日差しが心地よい。
桜はもう散りかけていたけれど、花びらがまだふわりと舞っている。

木陰にベンチがあったから並んで座る。
揺れる葉音とその隙間から差す日差しが暖かくて、午前の疲れを癒してくれる。

「……眠くなってきた」

そう言って目を細めると、陸がぽん、と自分の膝を軽く叩いた。

「少し寝る?使っていいよ」

「……じゃあ、少しだけ」

陸の膝を枕にしてベンチに横になる。
長い付き合いだから自然と甘えられる。

瞼が重くなってきて、風が髪を撫でる。
遠くで誰かの笑い声が聞こえるけど、ここはふたりだけの空間みたいに静かで穏やかだった。

陸が髪を撫でてくるのが心地よくて、俺は少しの間だけまどろんだ。


***


「……ゆきちゃん起きた?」

「ぅん…足痺れてない?」

「大丈夫だよ」

起き上がると、陸がにまにまと笑っている。

「ゆきちゃんが寝てる間に写真撮って、家族LiNeに共有しといたよ」

「…は?」

「みんながいつも通りで安心した、だって。」

「恥ずかしいからやめろっ」

陸とは家族ぐるみで仲が良すぎてLiNeの共有グループが存在する。
そこに俺の寝顔を載せたと言う。
慌ててスマホを確認すると、
『いつも通りで安心したわ』『相変わらず仲良いのね』『夜ちゃんと寝てんのか?』
などとメッセージが並んでいて顔が熱くなる。

「勝手なことすんな、アホ陸!」

「こうしないとゆきちゃん連絡しないでしょ?ゆきちゃんパパママに心配掛けたくないし、可愛いは共有しないとねっ」

……確かに心配は掛けたくない。だけど恥ずかしくて陸の二の腕を思いっきり抓ってやった。


その後は広い校内を探索して回った。静かにしてれば他学年の教室の前を通ってもいいとの事だったから、廊下の窓からチラッと授業を覗いたりもした。
覗いた時に何人かの生徒と目が合い、手を振られたから、ちょっと嬉しくて笑顔で手を振り返した。
陸からは愛想振りまくなって怒られた。別にそんなつもりは無いんだけど……。


「……そろそろ寮に帰ろっか」

「陸は帰ったら明日の授業の予習だな」

「予習なんてしたら明日槍が降るよ?」

確かに。って笑うと陸に肩を組まれる。

「俺にはゆきちゃんっていう先生がついてるからいいの!」

「……授業料取ろうかな」

「ラーメン奢る!」

「クレープも」

「契約成立!テスト前はよろしくね、ゆきちゃん先生」

……まぁいいか。
色々と言いたいことはあるけど、友達の笑顔を前に何も言う気が起きなくなる。


***


寮に戻ると、先輩の姿はまだなかった。
部屋のドアを閉めた途端、今日一日の疲れがどっと押し寄せてきた。

制服のままソファに身を沈め、カバンから教科書を取り出す。
少しだけ、明日の予習をしておこう……そう思ったのに、ページをめくる手が止まる。

窓の外から差し込む夕日が、教科書の白いページをほんのり赤く染める。
俺は教科書を開いたまま、いつの間にか目を閉じていた。





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