エターナル・ビヨンド～今度こそ完結しますように～

1巻：動き出す歴史

序章：エターナルビヨンド仮説、または、ある男の手記

　今日。長い、それはもう長い戦争が終わった。僕は、運よくこの場に生き残った仲間たちと、ささやかな宴を楽しんだ。つまり、現在は、だらけた気分でこれを書いている。
　明日からは皆、秋祭りの準備で忙しくなるらしい。しかし、今、領地も役職も持たない僕にとっては、久方ぶりのまとまった休暇である。祭りのようなごみごみとした催しも得意ではないし、部屋にこもって、蔵書の整理でもしようと思う。
　そういったつもりの話を宴で誰かに話していたら、それを聞きつけた巫女殿に叱られてしまった。「呪いを侮ってはいけません」と言いつける様は、どこか母親の真似をする幼子のようで、とても微笑ましい気分になった。しかし、彼女が言うならそれは本当なのだろう。僕も何か、呪いを払うような事をせねばなるまい。

　なぜ我々は、呪いを払うために祭りをするのか？それは、多くの人にとって、興が乗り活力の湧く催しだからである。であれば、僕にとって同じような働きをもたらす何かをすれば、祭りには行かずとも良い。
　そこで、僕はこの休暇の間に、此度の戦争についての記録を書こうと思う。文字は僕の人生の喜びであり、文字いじりは大祭りである。

　戦争の中で知り得た人々の動き、誰も知らない、知らなくなってしまった人々のこと…僕が知る全てを、ここに記そう。もしも、この世界もいつか消えてしまうとしても。