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16.協力
私をじっと見据える瞳の中では、激情の炎が大きく揺らめいているように見えた。怒りか、悲しみによるものか。或いはそのどちらも含まれているのか。
ただ動機はどうあれ、修道院のために動いてくれるのは確かだ。
「そのために証拠も集めておきました。ですが、それはあくまで外部的なもので、言い逃れできない決定的な物証が必要です」
「じゃあ、今すぐにでも修道院をガサ入……調査をお願いします」
「いいえ。僕にはこの件に強制的に介入する権限がありません。アデーレ院長に調べたいと申し出たところで。断われるだけでしょう。一応イレネー様にも協力を仰いだのですが、余計なことを考えるなと言われてしまいまして」
なんてこった。これではお手上げ状態だと焦燥感に駆られていると、
「というわけで、メロディ嬢と同じ手段に出ましょう」
内に秘めた感情を覆い隠すように、レイスは笑顔で提言した。
「つまりこっそり探る……と?」
「はい。それも夜に。暗闇だと動きやすく、若い修道女も部屋に閉じ込めているので、あちらの警戒心も薄れているはずです」
「それはそうかもしれませんが」
メロディの安否が分かっていないのに日が沈んだら行動開始なんて、悠長にしていていいのだろうか。
すると私の考えを見透かしたように、
「メロディ嬢は無事だと思いますよ。……言い方が少々悪くなってしまいますが、彼女含めた修道女は大事な『商品』ですからね」
本当に言い方が悪い。が、おかげで希望を持てた。
けれど、まだ懸念材料が残っている。
「どうやってここから脱出するんですか? 私、魔法とかそういうの全然使えないんですけれど……」
「そうですね。本当は夜までここでじっとしているのが正しいでしょうが、僕もこんな不衛生なところにいつまでもいたくはありませんから、さっさと出てしまいましょう」
レイスはうっすらと笑いながら、部屋の隅に行くと壁に手を当てた。
直後、壁の一部分が水分を含んだ角砂糖のように音もなく溶けていった。外から涼しげな風が入り込み、小屋内の澱んだ空気を浄化していく。
溶解した壁の向こうには木々が立ち並んでおり、小屋の真後ろは森に繋がっていることを思い出した。
「ちょうどいい時間になるまで、森で身を潜めていましょう」
「はい」
「……ぶっ。くくく……」
突然レイスが笑い出した。何だ何だと訝しんでいると、レイスは私を見て一言。
「あなたはこのまま事が終わるまで隠れていることもできるのに、すっかり僕に協力するつもりでいますね」
「いや……足手纏いになりそうなら、残りますけれど」
「そんなことはありません。一人でも仲間がいてくれる方が気が楽ですから」
……あくまで私はセラピー要員に過ぎず、実用の見込みはないようだ。
それでも置いていかれるよりはマシだろう。修道院にも戻れず、じっと森に潜伏し続けるなんて暇で死ぬ。
ただ動機はどうあれ、修道院のために動いてくれるのは確かだ。
「そのために証拠も集めておきました。ですが、それはあくまで外部的なもので、言い逃れできない決定的な物証が必要です」
「じゃあ、今すぐにでも修道院をガサ入……調査をお願いします」
「いいえ。僕にはこの件に強制的に介入する権限がありません。アデーレ院長に調べたいと申し出たところで。断われるだけでしょう。一応イレネー様にも協力を仰いだのですが、余計なことを考えるなと言われてしまいまして」
なんてこった。これではお手上げ状態だと焦燥感に駆られていると、
「というわけで、メロディ嬢と同じ手段に出ましょう」
内に秘めた感情を覆い隠すように、レイスは笑顔で提言した。
「つまりこっそり探る……と?」
「はい。それも夜に。暗闇だと動きやすく、若い修道女も部屋に閉じ込めているので、あちらの警戒心も薄れているはずです」
「それはそうかもしれませんが」
メロディの安否が分かっていないのに日が沈んだら行動開始なんて、悠長にしていていいのだろうか。
すると私の考えを見透かしたように、
「メロディ嬢は無事だと思いますよ。……言い方が少々悪くなってしまいますが、彼女含めた修道女は大事な『商品』ですからね」
本当に言い方が悪い。が、おかげで希望を持てた。
けれど、まだ懸念材料が残っている。
「どうやってここから脱出するんですか? 私、魔法とかそういうの全然使えないんですけれど……」
「そうですね。本当は夜までここでじっとしているのが正しいでしょうが、僕もこんな不衛生なところにいつまでもいたくはありませんから、さっさと出てしまいましょう」
レイスはうっすらと笑いながら、部屋の隅に行くと壁に手を当てた。
直後、壁の一部分が水分を含んだ角砂糖のように音もなく溶けていった。外から涼しげな風が入り込み、小屋内の澱んだ空気を浄化していく。
溶解した壁の向こうには木々が立ち並んでおり、小屋の真後ろは森に繋がっていることを思い出した。
「ちょうどいい時間になるまで、森で身を潜めていましょう」
「はい」
「……ぶっ。くくく……」
突然レイスが笑い出した。何だ何だと訝しんでいると、レイスは私を見て一言。
「あなたはこのまま事が終わるまで隠れていることもできるのに、すっかり僕に協力するつもりでいますね」
「いや……足手纏いになりそうなら、残りますけれど」
「そんなことはありません。一人でも仲間がいてくれる方が気が楽ですから」
……あくまで私はセラピー要員に過ぎず、実用の見込みはないようだ。
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