38 / 96
38.誓約のベル
レイスの言葉に困惑しつつ、誓約のベルがどういうものか思い返す。
魔力を練って作り上げたアイテムで、この国の人間であれば魔法が使えなくても作ることができる。
さらにレイスのように魔法が使える者が作ったベルには、特殊な力が宿っている。
レイス作なら、ベルのある場所に瞬時に移動できるといった感じらしい。
で、これは全てのベル共通なのだが、自分の魔力を辿ってベルが今どこにあるのか、ある程度なら探知も可能。
レイスが言い当てたのもこれのおかげだ。
ゲーム内だと結構重要なアイテムと見せかけて、この聖鐘祭後は存在が抹消してしまう。シナリオにベルを絡ませるのが面倒になったのだろう。なので私も、完全に忘却の彼方に追いやられていた。
しかもお守り代わりに持って来て、レイスを喜ばせる結果となってしまった。恨むぞ、GPS機能。
「あの……深い意味があって持参したわけではないので……」
「ええ、分かっていますよ」
その笑顔は分かっていないだろうに。レイスのバックに大輪の花が咲いている幻覚が見える。
「実のところ、あなたに好意を寄せているのは本当ですが、結ばれたいとは毛頭考えていませんし」
「……え!? あ、いえ、私は修道女ですからね」
「それもありますが、あなたを早々と未亡人にしてしまうかもしれないですから」
「未亡人?」
まさか自分の未来を予知している? と一瞬ドキッとしてしまった。
レイスはそんな私と視線を合わせて、
「二度も毒殺されかかっていますからね。三度目も近い将来訪れるかもしれない」
「……それは」
「あ、少しここで待っていてくれますか? 父親のご友人がいらっしゃるので、ご挨拶に行ってきます」
「は、はい」
私が返事すると、「では、失礼」と行ってしまう。
……私より年下なのに、自分が死ぬのを当たり前のように受け入れている。最初からそうじゃなくて、誰に狙われているか分からず、死の恐怖に怯えていた時期もあったろうに。
溜め息をついていると、ホールの入口から甲高い声がした。
「うわぁぁ……! すごい、すごい! お城の中ってこんなに広いんだぁ……!」
ショートボブにしたピンク色の髪と、若葉色の大きな瞳。
可愛らしさをアピールするようなスカート丈が膝の辺りまでしかないドレス。
興奮で頬を紅潮させながら、パーティー会場を見渡す少女を私はよく知っている。
このゲームのヒロイン、リーゼ(デフォルトネーム)。
ついに姿を見せた主役に、私の掌に汗が滲む。
何だ、あのいかにもぶりっ子そうな小娘……。
ゲームをプレイしていた時は可愛い女の子だなぁと思っていたけれど、第三者の目線から見るとこうも印象変わるとは。
呆れ半分感心半分でリーゼの動向を見守る。
ゲーム通りであれば、攻略キャラの誰かと会話をしてその流れで誓約のベルを渡すのだ。
平民のリーゼは勉強不足でベルについての知識が足りない。そのため友人に「制約のベルは仲良くなりたい人に渡すんだよ」とアドバイスされ、仲良くなる=友達になることだと勘違いしたためである。
さて誰に話しかける……? と観察していると、リーゼはホールを見回してからテオドールの下に向かった。
まあ、リーゼをパーティーに招待したのは彼なので自然な流れだろう。
やはりテオドールルートになるのか。
そうすると、山火事ならぬ国火事フラグが立ってしまうと冷や汗を掻いていると、
「あの……リグレット様、ですよね……?」
大人しそうな少女に声をかけられた。
「そうですが、私に何かご用ですか?」
「さっきレイス様とお話しているのが聞こえてきたんですけれど、あの方からベルをいただいたんですよね?」
「まあ、友人の証のような形ではありますが」
「で、でしたら……そのベル、私に譲ってもらえますか!?」
深々と頭を下げながら両手を突き出して来た。
既にもらえる気でいる少女に、思わず引いてしまった。
魔力を練って作り上げたアイテムで、この国の人間であれば魔法が使えなくても作ることができる。
さらにレイスのように魔法が使える者が作ったベルには、特殊な力が宿っている。
レイス作なら、ベルのある場所に瞬時に移動できるといった感じらしい。
で、これは全てのベル共通なのだが、自分の魔力を辿ってベルが今どこにあるのか、ある程度なら探知も可能。
レイスが言い当てたのもこれのおかげだ。
ゲーム内だと結構重要なアイテムと見せかけて、この聖鐘祭後は存在が抹消してしまう。シナリオにベルを絡ませるのが面倒になったのだろう。なので私も、完全に忘却の彼方に追いやられていた。
しかもお守り代わりに持って来て、レイスを喜ばせる結果となってしまった。恨むぞ、GPS機能。
「あの……深い意味があって持参したわけではないので……」
「ええ、分かっていますよ」
その笑顔は分かっていないだろうに。レイスのバックに大輪の花が咲いている幻覚が見える。
「実のところ、あなたに好意を寄せているのは本当ですが、結ばれたいとは毛頭考えていませんし」
「……え!? あ、いえ、私は修道女ですからね」
「それもありますが、あなたを早々と未亡人にしてしまうかもしれないですから」
「未亡人?」
まさか自分の未来を予知している? と一瞬ドキッとしてしまった。
レイスはそんな私と視線を合わせて、
「二度も毒殺されかかっていますからね。三度目も近い将来訪れるかもしれない」
「……それは」
「あ、少しここで待っていてくれますか? 父親のご友人がいらっしゃるので、ご挨拶に行ってきます」
「は、はい」
私が返事すると、「では、失礼」と行ってしまう。
……私より年下なのに、自分が死ぬのを当たり前のように受け入れている。最初からそうじゃなくて、誰に狙われているか分からず、死の恐怖に怯えていた時期もあったろうに。
溜め息をついていると、ホールの入口から甲高い声がした。
「うわぁぁ……! すごい、すごい! お城の中ってこんなに広いんだぁ……!」
ショートボブにしたピンク色の髪と、若葉色の大きな瞳。
可愛らしさをアピールするようなスカート丈が膝の辺りまでしかないドレス。
興奮で頬を紅潮させながら、パーティー会場を見渡す少女を私はよく知っている。
このゲームのヒロイン、リーゼ(デフォルトネーム)。
ついに姿を見せた主役に、私の掌に汗が滲む。
何だ、あのいかにもぶりっ子そうな小娘……。
ゲームをプレイしていた時は可愛い女の子だなぁと思っていたけれど、第三者の目線から見るとこうも印象変わるとは。
呆れ半分感心半分でリーゼの動向を見守る。
ゲーム通りであれば、攻略キャラの誰かと会話をしてその流れで誓約のベルを渡すのだ。
平民のリーゼは勉強不足でベルについての知識が足りない。そのため友人に「制約のベルは仲良くなりたい人に渡すんだよ」とアドバイスされ、仲良くなる=友達になることだと勘違いしたためである。
さて誰に話しかける……? と観察していると、リーゼはホールを見回してからテオドールの下に向かった。
まあ、リーゼをパーティーに招待したのは彼なので自然な流れだろう。
やはりテオドールルートになるのか。
そうすると、山火事ならぬ国火事フラグが立ってしまうと冷や汗を掻いていると、
「あの……リグレット様、ですよね……?」
大人しそうな少女に声をかけられた。
「そうですが、私に何かご用ですか?」
「さっきレイス様とお話しているのが聞こえてきたんですけれど、あの方からベルをいただいたんですよね?」
「まあ、友人の証のような形ではありますが」
「で、でしたら……そのベル、私に譲ってもらえますか!?」
深々と頭を下げながら両手を突き出して来た。
既にもらえる気でいる少女に、思わず引いてしまった。
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした
由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。
無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。
再び招かれたのは、かつて母を追放した国。
礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。
これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。