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69.空を駆ける
バイクと鍵を見比べていると、魔物がこちら目がけて尻尾を振り下ろそうとしていた。
狙いはジュリアンか、それとも青玉の馬もといバイクか。どちらにしろ急いで避けなければ。
「殿下、こっちだ!」
「待て! 青玉の馬が……」
「あんなデカブツの攻撃なんざ、俺の剣でも止められない! それに頼みの綱だった馬があれだと使えるかも分からねぇ……!」
ジンがジュリアンを抱えて、素早く魔物の攻撃範囲から離れる。護衛兵たちも。
そして残されたのは一台のバイク。あんなに綺麗なのに、尻尾に叩き潰されてしまうのか……。
そう思うと、居ても立っても居られなくて私は走り出した。
「テメェ、何やって……そこから離れろ! 死ぬぞ!!」
ジンに忠告に構っている暇はない。私の脚力では今から引き返そうとしても、もう手遅れだ。だったら進むしかない。私はバイクに跨った。
ずっと握り締めていたせいで生温かくなった鍵を鍵穴に突っ込むと、すんなり入ってくれた。
それをゆっくりと回転させれば、ブロロロ……というエンジン音とバイク全体に行き渡る振動。
こいつ……動くぞ! と手ごたえを感じるものの、早く走らせないとバイクもろともぺしゃんこだ。
「うおおおおお……ああああっ!?」
アクセルを思い切り捻ったのが悪かったのか、ぐわんっと前輪が浮き上がった。私に久しぶりのバイク運転は荷が重すぎた。
色んな意味でデッドオアアライブ……!! いやデッドオアデッド!!
本気で死を覚悟していると、ギュイイイインッと音がして勝手にバイクが走り出した。
空に向かって。
「うわあああ」
車体を傾けて尻尾の攻撃をギリギリで回避し、Regret0502号は勢いを保ち続けながらさらに突き進む。
まるで空に見えない道路でも整備されているかのような安定ぶり。私は覚悟を決めた。
「アントワネット様、今助けに行きます!」
尻尾攻撃を潜り抜けて、魔物の間合いに入ればこっちのものだ。魔物の頭へと一気に距離を詰めていく。
まさか私がバイク、いや青玉の馬を駆って突撃すると思っていなかったのだろう。魔物は慌てたように逃げ出そうとするが、免許センターの教員から「君……中々やるじゃない」と言われた私のドライブテクを舐めるな。
「リグレット様……!」
魔物に咥えられた状態のアントワネットが悲痛な声を上げた。
おのれ、アントワネットを怖がらせおってと、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「お前をマムシ酒にしてやろうか!!」
魔物の目の辺りにバイクの車体でタックルすると、その衝撃で口が大きく開いてアントワネットを離した。
待ってたぜぇ!! この〝機会〟をよぉ!!
ハンドルを素早く切って進路変更。私も危険を承知しつつ、ハンドルから両手を離して落下するアントワネットをキャッチする。
突然二人分の体重を支えることになったにも拘わらず、バイクの重心は全く崩れることがなかった。それどころか魔物からの反撃から逃れるように、安全なルートで地上へと駆け下りる有能さを発揮している。
オ……オート機能が搭載されているだと……!?
すると地上ではジンが剣を地面に突き立てて、何かを唱えている最中だった。
「雷神の鉄槌を受けよ……!」
どこからかやって来た黒雲が空を覆い、あっという間に広場周辺が薄暗くなる。
そして空から放たれた青白い雷が魔物に直撃して、凄まじい轟音が響き渡った。断末魔を上げることすら出来ず、黒焦げになった魔物が崩れ落ちる。
ズズン……という鈍い地響きを聞きながら、私たちは無事にジュリアンたちの下に戻って来た。けれど、皆して呆然としている。
「せ、聖女だ、君は紛うことなき聖女だ。青玉の馬を乗りこなし、勇敢にも魔物に立ち向かうなんて……」
「い、いえ! 決して乗りこなしていたわけでは~……」
「ありがとう。君は僕の恩人だよ! その子を……アントワネットを助けてくれた。感謝してもし切れないよ!」
そう言って微笑むジュリアンの目尻には光るものが。そして私の両手をがっしりホールド。
何だ、この攻略キャラに滅茶苦茶感謝される展開……すっごい既視感がある……。
狙いはジュリアンか、それとも青玉の馬もといバイクか。どちらにしろ急いで避けなければ。
「殿下、こっちだ!」
「待て! 青玉の馬が……」
「あんなデカブツの攻撃なんざ、俺の剣でも止められない! それに頼みの綱だった馬があれだと使えるかも分からねぇ……!」
ジンがジュリアンを抱えて、素早く魔物の攻撃範囲から離れる。護衛兵たちも。
そして残されたのは一台のバイク。あんなに綺麗なのに、尻尾に叩き潰されてしまうのか……。
そう思うと、居ても立っても居られなくて私は走り出した。
「テメェ、何やって……そこから離れろ! 死ぬぞ!!」
ジンに忠告に構っている暇はない。私の脚力では今から引き返そうとしても、もう手遅れだ。だったら進むしかない。私はバイクに跨った。
ずっと握り締めていたせいで生温かくなった鍵を鍵穴に突っ込むと、すんなり入ってくれた。
それをゆっくりと回転させれば、ブロロロ……というエンジン音とバイク全体に行き渡る振動。
こいつ……動くぞ! と手ごたえを感じるものの、早く走らせないとバイクもろともぺしゃんこだ。
「うおおおおお……ああああっ!?」
アクセルを思い切り捻ったのが悪かったのか、ぐわんっと前輪が浮き上がった。私に久しぶりのバイク運転は荷が重すぎた。
色んな意味でデッドオアアライブ……!! いやデッドオアデッド!!
本気で死を覚悟していると、ギュイイイインッと音がして勝手にバイクが走り出した。
空に向かって。
「うわあああ」
車体を傾けて尻尾の攻撃をギリギリで回避し、Regret0502号は勢いを保ち続けながらさらに突き進む。
まるで空に見えない道路でも整備されているかのような安定ぶり。私は覚悟を決めた。
「アントワネット様、今助けに行きます!」
尻尾攻撃を潜り抜けて、魔物の間合いに入ればこっちのものだ。魔物の頭へと一気に距離を詰めていく。
まさか私がバイク、いや青玉の馬を駆って突撃すると思っていなかったのだろう。魔物は慌てたように逃げ出そうとするが、免許センターの教員から「君……中々やるじゃない」と言われた私のドライブテクを舐めるな。
「リグレット様……!」
魔物に咥えられた状態のアントワネットが悲痛な声を上げた。
おのれ、アントワネットを怖がらせおってと、ふつふつと怒りが込み上げてくる。
「お前をマムシ酒にしてやろうか!!」
魔物の目の辺りにバイクの車体でタックルすると、その衝撃で口が大きく開いてアントワネットを離した。
待ってたぜぇ!! この〝機会〟をよぉ!!
ハンドルを素早く切って進路変更。私も危険を承知しつつ、ハンドルから両手を離して落下するアントワネットをキャッチする。
突然二人分の体重を支えることになったにも拘わらず、バイクの重心は全く崩れることがなかった。それどころか魔物からの反撃から逃れるように、安全なルートで地上へと駆け下りる有能さを発揮している。
オ……オート機能が搭載されているだと……!?
すると地上ではジンが剣を地面に突き立てて、何かを唱えている最中だった。
「雷神の鉄槌を受けよ……!」
どこからかやって来た黒雲が空を覆い、あっという間に広場周辺が薄暗くなる。
そして空から放たれた青白い雷が魔物に直撃して、凄まじい轟音が響き渡った。断末魔を上げることすら出来ず、黒焦げになった魔物が崩れ落ちる。
ズズン……という鈍い地響きを聞きながら、私たちは無事にジュリアンたちの下に戻って来た。けれど、皆して呆然としている。
「せ、聖女だ、君は紛うことなき聖女だ。青玉の馬を乗りこなし、勇敢にも魔物に立ち向かうなんて……」
「い、いえ! 決して乗りこなしていたわけでは~……」
「ありがとう。君は僕の恩人だよ! その子を……アントワネットを助けてくれた。感謝してもし切れないよ!」
そう言って微笑むジュリアンの目尻には光るものが。そして私の両手をがっしりホールド。
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