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9.シャーラ
私とエレナが固まっていると、女性は人差し指を立てて自らの正体を明かした。
「私の名前はシャーラ。……ラナン家のシャーラって聞けば、神官のあなたなら分かると思うけれど?」
「え……っ!?」
驚愕する私を見て、エレナが不思議そうに首を傾げる。
「この美人さんって有名人なの? 今日初めてうちに来たお客様なんだけど……」
「有名人も何も……火の神の神官長だよ!」
ただでさえ火の神の神官は、この国で一、二を争うほどの権力を誇っている。
その中でもトップの存在に当たるのが、代々神官長を輩出し続けてきたラナン家。
私は慌ててその場に跪こうとしたけれど、
「ああ、私そういう過剰な対応をされるのが苦手なの。何だか気まずくなっちゃうというか」
と苦笑交じりのシャーラ様に止められてしまった。
「そんなことより、さっきの話をしましょうか。実はうちってたくさん別荘を持っていて、私は今その一つでのんびり過ごしているの。よかったら、そこで一緒に暮らさない?」
「い、一緒に暮らす……? 私がですか?」
「正確には住み込みで働いてもらう、かしら。ちょうど私の世話をしてくれていたメイドが結婚して辞めてしまって、新しい人を募集していたの。もちろん、無給とは言わないわ。給金も出してあげる」
住み込みで働かせてもらえるだけじゃなくて、お金まで貰える。それに火の神の神官長相手なら、お義母様たちも強く出ることはできない。
今の私の悩みを全て解決できる夢のような話に、すぐにでも飛びつきたくなってしまった。
だけど、あまりにも私に都合がよすぎる。
「えっと……何故シャーラ様は私のために、そこまでしてくださるのですか?」
「嫌がらせよ」
「え?」
「私、嵐の神の神官が大嫌いなのよ。どいつもこいつも野蛮で傲慢。神格の低い神を見下して、『自分たちが嵐の神を封じているおかげで、この国は安泰なんだ』って思い込んでいる。だから、そいつらの嫌がることをしてやりたい。ただそれだけ」
セレスタンもそこに含まれているのだろうか。彼は花の神を『美しいものを与えてくれる神』と言ってくれたのだけれど。
でも、今は自分のことだけを考える。そう決めて私はシャーラ様に頭を下げた。
「シャーラ様、私一生懸命頑張りますのでよろしくお願い致します!」
「こちらこそよろしく。ええと……」
「私はアンリエッタと申します」
「そう。いい名前ね、アンリエッタ」
シャーラ様は穏やかに微笑みながら、そう褒めてくれた。
私も顔を上げて微笑み返していると、いつの間にか店内の様子を見に行っていたらしいエレナがうんざりした様子で戻って来た。
「やっぱあんたを店の奥に引っ込めておいて正解だったわ」
「エレナ、何かあったの?」
「セレスタンの家の奴らが、あんたを探しに来てたんだって。店長も客も知らない振りをしたみたいだけど」
「…………」
やっぱりお義母様は私を連れ戻すつもりなんだ。
だけど、どうして? 私を心の底から嫌っていたお義母様にとっては、私なんてそのままいなくなってしまったほうが都合がいいはずなのに……。
私がボロボロになるまで虐めたいから? それとも他に理由が……?
「私の名前はシャーラ。……ラナン家のシャーラって聞けば、神官のあなたなら分かると思うけれど?」
「え……っ!?」
驚愕する私を見て、エレナが不思議そうに首を傾げる。
「この美人さんって有名人なの? 今日初めてうちに来たお客様なんだけど……」
「有名人も何も……火の神の神官長だよ!」
ただでさえ火の神の神官は、この国で一、二を争うほどの権力を誇っている。
その中でもトップの存在に当たるのが、代々神官長を輩出し続けてきたラナン家。
私は慌ててその場に跪こうとしたけれど、
「ああ、私そういう過剰な対応をされるのが苦手なの。何だか気まずくなっちゃうというか」
と苦笑交じりのシャーラ様に止められてしまった。
「そんなことより、さっきの話をしましょうか。実はうちってたくさん別荘を持っていて、私は今その一つでのんびり過ごしているの。よかったら、そこで一緒に暮らさない?」
「い、一緒に暮らす……? 私がですか?」
「正確には住み込みで働いてもらう、かしら。ちょうど私の世話をしてくれていたメイドが結婚して辞めてしまって、新しい人を募集していたの。もちろん、無給とは言わないわ。給金も出してあげる」
住み込みで働かせてもらえるだけじゃなくて、お金まで貰える。それに火の神の神官長相手なら、お義母様たちも強く出ることはできない。
今の私の悩みを全て解決できる夢のような話に、すぐにでも飛びつきたくなってしまった。
だけど、あまりにも私に都合がよすぎる。
「えっと……何故シャーラ様は私のために、そこまでしてくださるのですか?」
「嫌がらせよ」
「え?」
「私、嵐の神の神官が大嫌いなのよ。どいつもこいつも野蛮で傲慢。神格の低い神を見下して、『自分たちが嵐の神を封じているおかげで、この国は安泰なんだ』って思い込んでいる。だから、そいつらの嫌がることをしてやりたい。ただそれだけ」
セレスタンもそこに含まれているのだろうか。彼は花の神を『美しいものを与えてくれる神』と言ってくれたのだけれど。
でも、今は自分のことだけを考える。そう決めて私はシャーラ様に頭を下げた。
「シャーラ様、私一生懸命頑張りますのでよろしくお願い致します!」
「こちらこそよろしく。ええと……」
「私はアンリエッタと申します」
「そう。いい名前ね、アンリエッタ」
シャーラ様は穏やかに微笑みながら、そう褒めてくれた。
私も顔を上げて微笑み返していると、いつの間にか店内の様子を見に行っていたらしいエレナがうんざりした様子で戻って来た。
「やっぱあんたを店の奥に引っ込めておいて正解だったわ」
「エレナ、何かあったの?」
「セレスタンの家の奴らが、あんたを探しに来てたんだって。店長も客も知らない振りをしたみたいだけど」
「…………」
やっぱりお義母様は私を連れ戻すつもりなんだ。
だけど、どうして? 私を心の底から嫌っていたお義母様にとっては、私なんてそのままいなくなってしまったほうが都合がいいはずなのに……。
私がボロボロになるまで虐めたいから? それとも他に理由が……?
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