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12.セレスタン③
「アンリエッタのネックレスが店の前に落ちていたぞ! これはどういうことだ!?」
怒りに任せてそう叫ぶと、エレナは眉を顰めながら両手で自分の耳を覆った。
何だこの馬鹿にしているような態度は。俺はエレナの胸倉を掴んだ。
すると客の何人かが「おいやめろって!」と止めに入ろうとする。それを睨みつけて止めた。
「さてはお前がアンリエッタをどこかにやったな? お前の家にでも匿っているのか?」
「そんなわけじゃないじゃん。大体さぁ、うちならとっくの昔に捜索隊が来て調べていったよ」
表情一つ変えずにエレナはそう答えた。
「だったら、このネックレスの件はどう説明するつもりだ。これは俺が儀式に出向く前日にアンリエッタに贈ったものなんだぞ」
「だから何? アンリエッタを隠していると思うなら、よーく調べて行きな」
どこか挑発的な口調のエレナに俺は確信する。
この女、やはり何かを知っていると。だがこの様子だと店にはアンリエッタはいない。
だったら無理矢理にでも吐かせるしかない……と考えていると、
「やめなさいな。女……しかも奥さんのお友達に手を上げるなんて、神官以前に男として最低な部類よ」
窓際でケーキを食べていた銀髪の女に嘲笑混じりの言葉をぶつけられた。
この女、どこかで見たことがある。
「あなたが例の神官ね。アンリの言う通り、見た目だけならいい男じゃない」
「……! アンリエッタを知っているのか!?」
「知ってるわよ。だって私と一緒に暮らしているんだもの」
「はぁ!?」
アンリエッタと一緒に暮らしている!?
それにようやく女の正体に気づいて更なる衝撃を受けた。
「……あなたは火の神の神官長シャーラ殿とお見受けする。私はセレスタン、アンリエッタの夫としてあなたに聞きたいことがいくつかある」
「いいわよ。私もあなたに聞いてみたいことがあるの」
上から目線の態度に苛立ちが込み上げるが、ぐっと押さえる。
「アンリエッタは何故あなたの下にいる?」
「私が気に入っちゃったから連れ帰ったの。真面目で礼儀正しくて、言われた仕事をきっちりこなしてくれる子ね」
「言われた仕事……? アンリエッタに何をさせているんだ!?」
「メイドよ、メイド。随分と慣れているみたいで助かったわ。普段から掃除、洗濯、食事の準備とやっていたみたいね」
「当たり前だ。アンリエッタは日頃から嵐の神の神殿で、そのような仕事をさせられていたからな」
「ふーん。庭園の手入れも自分から進んでやってくれているけれど、あなたのところの神殿に庭園なんてあったかしら……?」
アンリエッタが自分から庭園を?
もしかしたら、ずっとやってみたいと思っていたのだろうか。それなら俺の屋敷にも庭園があるから、やらせてあげたい。
そのためにも、一刻も早くアンリエッタを取り戻さなくては。
「アンリエッタを返してもらおう。これは立派な誘拐だ!」
「そう思うのだったら、うちを訴えればいいわ。ラナン家はあなたの家……ソール家と徹底的にやり合う気だから」
冷めた視線を突きつけられ、一瞬身震いを起こす。
ラナン家のシャーラ。若い身でありながら、神官長の座についた実力者だ。
まさか彼女を敵に回すとは思わなかったが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「もちろん、そうさせてもらう。ソール家一同でラナン家と戦う覚悟だ」
「……あなたの戦う相手は他にいると思うけど」
「……何を言っている?」
「そんなの自分で考えなさい。それじゃあ失礼するわね、エレナさん」
シャーラはテーブルに代金を置くと、颯爽と店から出て行った。
その代金を手に取りながらエレナが俺に冷たく言い放った。
「何も注文しないならさっさと帰ってくれない? 邪魔なんだけど」と。
怒りに任せてそう叫ぶと、エレナは眉を顰めながら両手で自分の耳を覆った。
何だこの馬鹿にしているような態度は。俺はエレナの胸倉を掴んだ。
すると客の何人かが「おいやめろって!」と止めに入ろうとする。それを睨みつけて止めた。
「さてはお前がアンリエッタをどこかにやったな? お前の家にでも匿っているのか?」
「そんなわけじゃないじゃん。大体さぁ、うちならとっくの昔に捜索隊が来て調べていったよ」
表情一つ変えずにエレナはそう答えた。
「だったら、このネックレスの件はどう説明するつもりだ。これは俺が儀式に出向く前日にアンリエッタに贈ったものなんだぞ」
「だから何? アンリエッタを隠していると思うなら、よーく調べて行きな」
どこか挑発的な口調のエレナに俺は確信する。
この女、やはり何かを知っていると。だがこの様子だと店にはアンリエッタはいない。
だったら無理矢理にでも吐かせるしかない……と考えていると、
「やめなさいな。女……しかも奥さんのお友達に手を上げるなんて、神官以前に男として最低な部類よ」
窓際でケーキを食べていた銀髪の女に嘲笑混じりの言葉をぶつけられた。
この女、どこかで見たことがある。
「あなたが例の神官ね。アンリの言う通り、見た目だけならいい男じゃない」
「……! アンリエッタを知っているのか!?」
「知ってるわよ。だって私と一緒に暮らしているんだもの」
「はぁ!?」
アンリエッタと一緒に暮らしている!?
それにようやく女の正体に気づいて更なる衝撃を受けた。
「……あなたは火の神の神官長シャーラ殿とお見受けする。私はセレスタン、アンリエッタの夫としてあなたに聞きたいことがいくつかある」
「いいわよ。私もあなたに聞いてみたいことがあるの」
上から目線の態度に苛立ちが込み上げるが、ぐっと押さえる。
「アンリエッタは何故あなたの下にいる?」
「私が気に入っちゃったから連れ帰ったの。真面目で礼儀正しくて、言われた仕事をきっちりこなしてくれる子ね」
「言われた仕事……? アンリエッタに何をさせているんだ!?」
「メイドよ、メイド。随分と慣れているみたいで助かったわ。普段から掃除、洗濯、食事の準備とやっていたみたいね」
「当たり前だ。アンリエッタは日頃から嵐の神の神殿で、そのような仕事をさせられていたからな」
「ふーん。庭園の手入れも自分から進んでやってくれているけれど、あなたのところの神殿に庭園なんてあったかしら……?」
アンリエッタが自分から庭園を?
もしかしたら、ずっとやってみたいと思っていたのだろうか。それなら俺の屋敷にも庭園があるから、やらせてあげたい。
そのためにも、一刻も早くアンリエッタを取り戻さなくては。
「アンリエッタを返してもらおう。これは立派な誘拐だ!」
「そう思うのだったら、うちを訴えればいいわ。ラナン家はあなたの家……ソール家と徹底的にやり合う気だから」
冷めた視線を突きつけられ、一瞬身震いを起こす。
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まさか彼女を敵に回すとは思わなかったが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「もちろん、そうさせてもらう。ソール家一同でラナン家と戦う覚悟だ」
「……あなたの戦う相手は他にいると思うけど」
「……何を言っている?」
「そんなの自分で考えなさい。それじゃあ失礼するわね、エレナさん」
シャーラはテーブルに代金を置くと、颯爽と店から出て行った。
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「何も注文しないならさっさと帰ってくれない? 邪魔なんだけど」と。
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