私は私を大切にしてくれる人と一緒にいたいのです。

火野村志紀

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17.躾

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 お義母様や嵐の神の神官から、服で隠れる場所を叩かれることはよくあった。しつけのためと言われれば抵抗できなかった。私からは見えないけれど、きっと背中にも痣が残っていると思う。

「ミリル、明日すぐに医者を手配して」
「はい。朝一で来てもらうようにしますね」
「それとアンリエッタ。あんたを痛めつけた奴らが誰なのかは大体見当がつくわ。だからそれについては深く聞かないことにするけど……セレスタンはこれを知っていたの?」
「……いいえ」

 これは本当。痩せっぽっち、それにこんな痣だらけの体を見せたくない。だからセレスタンと夜を過ごす時も恥ずかしいからと言って、部屋の明かりを消してもらっていた。

「それにしても、これが神官のすることかしらね。嵐の神も野蛮な連中たちに信仰されていて可哀想ですこと」
「……私がセレスタンの妻として、務めを果たすことができなかったのが悪いんです」
「務め?」
「ソール家の跡継ぎを産むことすらできなくて……」
「体質の問題であるなら、そのことであなたを責めるなんてお門違い。……決めたわ。あなたのこと、ソール家にもセレスタンにも絶対に返してやらないから」

 それはもう、一生セレスタンに会えないということ?
 はっきりとした口調でシャーラ様に言われて、私は動揺した。あの人を見捨てて逃げてきたのに、もう会えないかもしれないと思うと、胸が苦しくなった。
 だけど、今屋敷に戻ったら……。それにシャーラ様は私を心の底から心配して、守ろうとしてくれている。その優しさに甘えてしまいたかった。



 翌日から数日間、私は部屋で安静を命じられていた。
 ミリルさんが手配してくれた医者からは、「酷い衰弱状態ですね。食事と睡眠をまともに摂っていなかったのでは?」と言われた。
 メイドとして雇われたはずなのに、ずっと休んでなんかいられない。せめて床掃除くらいは……と申し出ると、シャーラ様に怒られて甘い果物を口に詰め込まれてしまった。疲労回復に効果がある果物みたい。

 私が退屈にならないように、ミリルさんや他のメイドが持ってきてくれた本を読む。その合間に窓へ視線を向けると、庭師が花木の手入れをしていた。
 背が高い銀髪の男の人。歳は……私と同じくらいに見える。
 私もあのくらい背が高かったら、脚立を使わなくていいのに。そう思っていると、庭師と視線が合った。
 私が会釈すると、向こうも自然な動作で頭を下げる。それからすぐに他のところに行ってしまった。

 あとからミリルさんに聞いたのだけれど、彼の名前はクロード。この屋敷の庭園をたった一人で世話をしているのだそう。

「彼、とっても人見知りで無口な性格なんです。なので素っ気なくされたと思っても、あまり気にしないでください」
「は、はい……あの、ミリルさん」
「何でしょうか?」
「……嵐の神の封印はどうなりましたか?」
「ああ、御神体の一部が壊れたとかって話ですよね? それならどうにか抑えられたようです。引退された神官も集まって法力を注いだとかで……神官も全員無事です」

 よかった……。
 安堵で胸を撫で下ろす一方、罪悪感がいつまでも残り続けている。
 結局ネックレスはいくら探しても見つからなかった。きっと別荘に来る途中で外れてしまったのだろう。お義父様に襲われて抵抗していた時に、外れやすくなっていたのかもしれない。

 ソール家から離れたばかりか、セレスタンと私を繋ぐものまで失ってしまった。
 きっと彼に何も言わずに屋敷から逃げてきた罰だと思う。

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