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22.カロリーヌ①
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私にとってセレスタン様は太陽のように暖かい人だった。そして私に『恋』というものを教えてくれた。
出会いは、私が用事があって嵐の神の神殿を訪れた時。雨の神の神殿よりも広い造りになっていて、迷子になった私に声をかけてくれたのがセレスタン様だった。
セレスタン様のことは以前から知っていた。神官長という役職のない嵐の神の神官の中で、ソール家は一番偉い家だから。
そんな彼に声をかけられて緊張する私に、セレスタン様は「こっちだ」と案内してくれた。十分にも満たない短い時間……。その中で彼は私の心にするりと入り込んでいた。
地位なんて関係ない。セレスタン様自身のことをもっと知りたい、近づきたい。そんな淡い願望が芽生えた。
だけど用事を済ませて神殿を後にしようとした時、私は見てしまった。
セレスタン様が若い女性と楽しそうに話しているのを……。
あんなに素敵そうな人だから、お相手がいるのは当然よね。自分を無理矢理納得させようとしていると、神官同士の話し声が聞こえてきた。
「セレスタン殿もあんな頭の悪そうな女のどこに惚れたのやら」
「花の神の神官と結婚しようなんて、母君も反対するわけだ」
「確かにセレスタン殿はあの神官と出会ってから、穏やかな性格になったと思うが……」
私は拳を握り締めた。よりにもよって花の神の神官なんて。今日好きになったばかりの人があんな人に取られる。あまりにも自分勝手な怒りだと分かっていても、嫉妬心が消えることはなかった。
けれどセレスタン様を困らせたくはない。だから彼への想いをすぐに消してしまおうと、何度も考えた。
それでも、セレスタン様とアンリエッタさんが結婚したあとも私の恋心は冷めることがなくて……むしろ……。
そんなある時、アンリエッタさんが姿を消したという噂が広まった。周囲からの非難の目に晒され続け、三年間耐えたけれど結局逃げてしまったのだとか。
アンリエッタさんには正直同情していた。妬みはあっても、花の神の神官だからといって差別される彼女を哀れんでいた。
だけど……セレスタン様のご両親から息子の新しい結婚相手になって欲しいと言われた時、私は同情も憐憫も捨てて喜んだ。
セレスタン様の心からアンリエッタさんを追い出すために、彼を火の神の神官長の別荘へ連れて行った。セレスタン様のお義母様から、実はアンリエッタさんがそこで悠々自適な生活を送っていると聞かされたから。
それを見ればセレスタン様も、アンリエッタさんに幻滅するはずと私は信じていた。だってセレスタン様はあんなにボロボロになるくらい追い詰められているのに、自分は神官長の別荘で楽しく暮らしているなんて。
お義母様もきっと、私がこうすると思って教えたのだろう。「私が教えたって言わないでちょうだいね」と言われたのをちゃんと守った。
そして実際に行ってみると、アンリエッタさんは庭師の男性と幸せそうにしていた。まさかセレスタン様がいるのに浮気を……? いいえ、あんなに誠実そうなあの人がそんなことをするはずがない。
けれどチャンスだと思った。私は咄嗟に嘘をついた。素直なセレスタン様も私の言葉を信じてくれて、私を新しいお嫁さんに選んでくれた。
歓喜と罪悪感に揉みくちゃにされながら、私は数年越しで手に入れた幸せを噛み締めることにした。きっと私にはいつか、雨の神による裁きが下る。それだけのことをしてしまったから。
だから今は、今だけは……。
出会いは、私が用事があって嵐の神の神殿を訪れた時。雨の神の神殿よりも広い造りになっていて、迷子になった私に声をかけてくれたのがセレスタン様だった。
セレスタン様のことは以前から知っていた。神官長という役職のない嵐の神の神官の中で、ソール家は一番偉い家だから。
そんな彼に声をかけられて緊張する私に、セレスタン様は「こっちだ」と案内してくれた。十分にも満たない短い時間……。その中で彼は私の心にするりと入り込んでいた。
地位なんて関係ない。セレスタン様自身のことをもっと知りたい、近づきたい。そんな淡い願望が芽生えた。
だけど用事を済ませて神殿を後にしようとした時、私は見てしまった。
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「確かにセレスタン殿はあの神官と出会ってから、穏やかな性格になったと思うが……」
私は拳を握り締めた。よりにもよって花の神の神官なんて。今日好きになったばかりの人があんな人に取られる。あまりにも自分勝手な怒りだと分かっていても、嫉妬心が消えることはなかった。
けれどセレスタン様を困らせたくはない。だから彼への想いをすぐに消してしまおうと、何度も考えた。
それでも、セレスタン様とアンリエッタさんが結婚したあとも私の恋心は冷めることがなくて……むしろ……。
そんなある時、アンリエッタさんが姿を消したという噂が広まった。周囲からの非難の目に晒され続け、三年間耐えたけれど結局逃げてしまったのだとか。
アンリエッタさんには正直同情していた。妬みはあっても、花の神の神官だからといって差別される彼女を哀れんでいた。
だけど……セレスタン様のご両親から息子の新しい結婚相手になって欲しいと言われた時、私は同情も憐憫も捨てて喜んだ。
セレスタン様の心からアンリエッタさんを追い出すために、彼を火の神の神官長の別荘へ連れて行った。セレスタン様のお義母様から、実はアンリエッタさんがそこで悠々自適な生活を送っていると聞かされたから。
それを見ればセレスタン様も、アンリエッタさんに幻滅するはずと私は信じていた。だってセレスタン様はあんなにボロボロになるくらい追い詰められているのに、自分は神官長の別荘で楽しく暮らしているなんて。
お義母様もきっと、私がこうすると思って教えたのだろう。「私が教えたって言わないでちょうだいね」と言われたのをちゃんと守った。
そして実際に行ってみると、アンリエッタさんは庭師の男性と幸せそうにしていた。まさかセレスタン様がいるのに浮気を……? いいえ、あんなに誠実そうなあの人がそんなことをするはずがない。
けれどチャンスだと思った。私は咄嗟に嘘をついた。素直なセレスタン様も私の言葉を信じてくれて、私を新しいお嫁さんに選んでくれた。
歓喜と罪悪感に揉みくちゃにされながら、私は数年越しで手に入れた幸せを噛み締めることにした。きっと私にはいつか、雨の神による裁きが下る。それだけのことをしてしまったから。
だから今は、今だけは……。
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