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23.カロリーヌ②
初めてセレスタン様と夜を過ごした。
甘ったるい疲労感と幸福感に浸っていると、セレスタン様は何かを私に差し出した。薄暗いせいではっきりと見えないけれど、ネックレスのように見える。
「俺を愛してくれるお前へのプレゼントだ。受け取ってくれると嬉しい」
「本当ですか? ありがとうございます、セレスタン様……!」
カーテンの隙間から差し込む月光がネックレスを照らす。シルバーのチェーンと小指の爪程の大きさのダイヤモンドが目映い光を放つ様に、私はうっとりと魅了された。
セレスタン様からの初めてのプレゼントに心が舞い上がる。「俺が着けていいか?」と聞かれ、私は恥じらいながら頷いた。
するとセレスタン様は両腕が私の首に回して……。
「……どうですか? 似合いますか?」
「ああ。とっても似合っているよ」
嵐の神を象徴すると言われているダイヤモンド。それが私の胸の中で光り輝いている。
まるで嵐の神に祝福されているような心地になっていると、
「アンリエッタよりも見栄えもいい」
「……え?」
どうしてそこでアンリエッタさんの名前が出るの?
私が思わず声を漏らすと、セレスタン様は愛おしげにダイヤモンドを撫でながらこう言った。
「これは俺が儀式に行く前の晩にアンリエッタに贈ったものだったんだ。だが街中に捨てられてしまった」
「そ、そんなものをどうして私に……?」
私のために買ったものじゃないの? しかも一度は捨てられたものを……。
困惑しながらセレスタン様に尋ねる。その声は自分でも分かるくらい震えていた。
「特に目立った傷もついていなかったからな。せっかく買ったものを捨ててしまうのも勿体ないだろう。これを作ってくれた職人にも失礼だ」
「そう……ですね」
ちゃんとした理由をいくつも挙げられると、何の反論もできなかった。
けれど胸の奥に黒いインクを一滴落とされたような気持ち悪さに、私は上手く笑えていただろうか。
セレスタン様が私を愛してくれているのは本当。今も私を抱き締めて、濃厚な口付けを与えてくれる。
だけどセレスタン様にとって、結局私は『アンリエッタさんの代わり』。そんなことばかり考えてしまって、その考えから逃げるように夜が明けるまでずっとセレスタン様を求め続けた。
そしてあの日、私はアンリエッタさんと再会した。
以前見た時よりもさらに健康的になっていたけれど、どういうわけか彼女が出てきたのは病院だった。その隣にはシャーラ神官長。大事にされているようでよかったと思う一方、少し面白くなかった。
私も、セレスタン様のご両親や嵐の神の神官たちに大切に扱われている。欲しいものがあれば、使用人が何でも買ってくれる。
それは私がセレスタン様の妻だから。それ以上の理由なんてない。
なのにアンリエッタさんは、何の繋がりもないはずのシャーラ神官長に守られている。
あの人からセレスタン様を奪っておきながら、嫉妬していることに自己嫌悪する。けれどセレスタン様が私と結婚すると言ってくれて救われた気がした。
「これで最後の別れを済ませることができた」
「ええ……」
アンリエッタさんと別れたあと、街を歩いていると一軒の薬屋の前に人だかりができていた。ここの薬師が違法な薬物をこっそり販売していたらしいと、野次馬が話しているのが聞こえる。
怖い話だと思っていると、セレスタン様がピタリと動きを止めた。
「……セレスタン様?」
「あ、いや……何でもないんだ。早く屋敷に戻ろう」
そう言葉を返すセレスタン様の顔は明らかに引き攣っていた。
甘ったるい疲労感と幸福感に浸っていると、セレスタン様は何かを私に差し出した。薄暗いせいではっきりと見えないけれど、ネックレスのように見える。
「俺を愛してくれるお前へのプレゼントだ。受け取ってくれると嬉しい」
「本当ですか? ありがとうございます、セレスタン様……!」
カーテンの隙間から差し込む月光がネックレスを照らす。シルバーのチェーンと小指の爪程の大きさのダイヤモンドが目映い光を放つ様に、私はうっとりと魅了された。
セレスタン様からの初めてのプレゼントに心が舞い上がる。「俺が着けていいか?」と聞かれ、私は恥じらいながら頷いた。
するとセレスタン様は両腕が私の首に回して……。
「……どうですか? 似合いますか?」
「ああ。とっても似合っているよ」
嵐の神を象徴すると言われているダイヤモンド。それが私の胸の中で光り輝いている。
まるで嵐の神に祝福されているような心地になっていると、
「アンリエッタよりも見栄えもいい」
「……え?」
どうしてそこでアンリエッタさんの名前が出るの?
私が思わず声を漏らすと、セレスタン様は愛おしげにダイヤモンドを撫でながらこう言った。
「これは俺が儀式に行く前の晩にアンリエッタに贈ったものだったんだ。だが街中に捨てられてしまった」
「そ、そんなものをどうして私に……?」
私のために買ったものじゃないの? しかも一度は捨てられたものを……。
困惑しながらセレスタン様に尋ねる。その声は自分でも分かるくらい震えていた。
「特に目立った傷もついていなかったからな。せっかく買ったものを捨ててしまうのも勿体ないだろう。これを作ってくれた職人にも失礼だ」
「そう……ですね」
ちゃんとした理由をいくつも挙げられると、何の反論もできなかった。
けれど胸の奥に黒いインクを一滴落とされたような気持ち悪さに、私は上手く笑えていただろうか。
セレスタン様が私を愛してくれているのは本当。今も私を抱き締めて、濃厚な口付けを与えてくれる。
だけどセレスタン様にとって、結局私は『アンリエッタさんの代わり』。そんなことばかり考えてしまって、その考えから逃げるように夜が明けるまでずっとセレスタン様を求め続けた。
そしてあの日、私はアンリエッタさんと再会した。
以前見た時よりもさらに健康的になっていたけれど、どういうわけか彼女が出てきたのは病院だった。その隣にはシャーラ神官長。大事にされているようでよかったと思う一方、少し面白くなかった。
私も、セレスタン様のご両親や嵐の神の神官たちに大切に扱われている。欲しいものがあれば、使用人が何でも買ってくれる。
それは私がセレスタン様の妻だから。それ以上の理由なんてない。
なのにアンリエッタさんは、何の繋がりもないはずのシャーラ神官長に守られている。
あの人からセレスタン様を奪っておきながら、嫉妬していることに自己嫌悪する。けれどセレスタン様が私と結婚すると言ってくれて救われた気がした。
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「ええ……」
アンリエッタさんと別れたあと、街を歩いていると一軒の薬屋の前に人だかりができていた。ここの薬師が違法な薬物をこっそり販売していたらしいと、野次馬が話しているのが聞こえる。
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