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24.カロリーヌ③
「セレスタン様、今夜……よろしいでしょうか?」
「すまない。今晩は先日買ってきた本をじっくり読みたいと思うんだ」
「……はい」
私はセレスタン様と結婚した。神殿でたくさんの人々からの祝福を受けながら、互いに愛を誓い合って唇を重ねた……。
泣いて喜んでくれたセレスタン様の御両親に、私も貰い泣きしてしまった。
私の両親はいない。幼い頃に病気で亡くなってしまっていたから。だから御両親から「私たちを本当の親だと思ってくれていいのよ」と言われて、どれだけ嬉しかったことか。
ただ、心から幸せな結婚生活というわけではなかった。セレスタン様は相変わらず優しくて、毎日必ずキスをしてくれる。
だけどセレスタン様と夜を過ごす頻度が少なくなった。一緒の寝室にしようと約束していたはずなのに、「別々にしないか?」と言い出されてしまった。二人の部屋に自分の仕事を持ち込むのが申し訳ないというのが理由だけれど、私はそんなの気にしない。むしろ手伝うつもりでいたのに。
だからたまにセレスタン様が深夜に私の部屋を訪ねて、私を求めてくる時が一番の楽しみになっていた。まるで飢えた獣のように、私を激しく貪る姿に時々恐怖しながらも必死に受け入れた。
本当は以前のように、穏やかに愛し合いたい。そんなわがまま、言えなかった。
それでも結婚から一年後、私はその身に新たな命を宿すことができた。突然体調を崩したので急いで医者に診てもらったところ、妊娠していることが発覚したのだ。
「おめでとう、カロリーヌさん!」
「これでソール家も安泰だな」
屋敷に戻って最初に御両親に報告した。本当は一番最初にセレスタン様に告げたかったけれど、神殿に行ってしまっていたから。
早く帰って来ないかしら。そう思って待っていると、数時間後にセレスタン様は帰って来た。
「ただいま、カロリーヌ」
「おかえりなさい、セレスタン様。今日お医者様に診てもらったのだけれど……」
「ああ……そういえば体調が悪いと言っていたな。どうだった?」
「妊娠しているそうです。セレスタン様……私たちの子供ができました!」
嬉しさのあまり興奮気味に言ってしまった。けれどセレスタン様も私のように歓喜してくれる。
そう思っていたのに、
「そ、そうか……子供ができたのか」
「……セレスタン様? 嬉しくないのですか?」
「何を言っているんだ。嬉しいに決まっているじゃないか! ただ、その……実感が湧かなくてな。俺にもとうとう子供ができたんだな……」
照れ臭そうにはにかむセレスタン様を見てホッとする。一瞬、あまり喜んでなさそうに見えてしまったから。そんなわけないのに。
セレスタン様を疑ってしまったことを恥じていると、抱き締められて背中に手を這わされた。
この手の動きは……。
「セレスタン様?」
「なあ……今晩いいだろうか?」
「い、いけません。妊娠中の行為は負担が多いと、お医者様からも言われています」
セレスタン様はむっと眉を顰めると、私から離れた。分かってくれてよかったと安心したのも束の間、この日を境にセレスタン様から夜のお誘いを受けることが増えた。それも蕩けるように優しい声と表情で。
以前だったらすぐに受け入れただろうけれど、今私の体は私だけのものじゃない。その度に断っていた。
だけどついに。
「どうしてそんなに嫌がるんだ? 俺のことが嫌いになったのか?」
「違います! 万が一、お腹の子に何かあったら……」
「大丈夫だ。お前はアンリエッタと違って強い女性なんだ」
そういう問題でもないし、こんな時にアンリエッタさんの名前を出さないで欲しい。
私は困り果てて、ついにお義母様に相談した。恥ずかしかったけれど、このままだと無理矢理襲われるかもしれないと危機感を抱いた。
「そんなにお腹が膨らんでいるのに? ごめんなさいね、カロリーヌさん。うちの息子が我儘なことを言ってしまって……」
「いいえ……私こそセレスタン様を受け入れられなくて申し訳ありません……」
「いいのよ。跡継ぎが生まれなかったから大変だもの」
お義母様がセレスタン様を説得してくれたのだろう。それからというものの、セレスタン様に迫られることがなくなった。
「すまない。今晩は先日買ってきた本をじっくり読みたいと思うんだ」
「……はい」
私はセレスタン様と結婚した。神殿でたくさんの人々からの祝福を受けながら、互いに愛を誓い合って唇を重ねた……。
泣いて喜んでくれたセレスタン様の御両親に、私も貰い泣きしてしまった。
私の両親はいない。幼い頃に病気で亡くなってしまっていたから。だから御両親から「私たちを本当の親だと思ってくれていいのよ」と言われて、どれだけ嬉しかったことか。
ただ、心から幸せな結婚生活というわけではなかった。セレスタン様は相変わらず優しくて、毎日必ずキスをしてくれる。
だけどセレスタン様と夜を過ごす頻度が少なくなった。一緒の寝室にしようと約束していたはずなのに、「別々にしないか?」と言い出されてしまった。二人の部屋に自分の仕事を持ち込むのが申し訳ないというのが理由だけれど、私はそんなの気にしない。むしろ手伝うつもりでいたのに。
だからたまにセレスタン様が深夜に私の部屋を訪ねて、私を求めてくる時が一番の楽しみになっていた。まるで飢えた獣のように、私を激しく貪る姿に時々恐怖しながらも必死に受け入れた。
本当は以前のように、穏やかに愛し合いたい。そんなわがまま、言えなかった。
それでも結婚から一年後、私はその身に新たな命を宿すことができた。突然体調を崩したので急いで医者に診てもらったところ、妊娠していることが発覚したのだ。
「おめでとう、カロリーヌさん!」
「これでソール家も安泰だな」
屋敷に戻って最初に御両親に報告した。本当は一番最初にセレスタン様に告げたかったけれど、神殿に行ってしまっていたから。
早く帰って来ないかしら。そう思って待っていると、数時間後にセレスタン様は帰って来た。
「ただいま、カロリーヌ」
「おかえりなさい、セレスタン様。今日お医者様に診てもらったのだけれど……」
「ああ……そういえば体調が悪いと言っていたな。どうだった?」
「妊娠しているそうです。セレスタン様……私たちの子供ができました!」
嬉しさのあまり興奮気味に言ってしまった。けれどセレスタン様も私のように歓喜してくれる。
そう思っていたのに、
「そ、そうか……子供ができたのか」
「……セレスタン様? 嬉しくないのですか?」
「何を言っているんだ。嬉しいに決まっているじゃないか! ただ、その……実感が湧かなくてな。俺にもとうとう子供ができたんだな……」
照れ臭そうにはにかむセレスタン様を見てホッとする。一瞬、あまり喜んでなさそうに見えてしまったから。そんなわけないのに。
セレスタン様を疑ってしまったことを恥じていると、抱き締められて背中に手を這わされた。
この手の動きは……。
「セレスタン様?」
「なあ……今晩いいだろうか?」
「い、いけません。妊娠中の行為は負担が多いと、お医者様からも言われています」
セレスタン様はむっと眉を顰めると、私から離れた。分かってくれてよかったと安心したのも束の間、この日を境にセレスタン様から夜のお誘いを受けることが増えた。それも蕩けるように優しい声と表情で。
以前だったらすぐに受け入れただろうけれど、今私の体は私だけのものじゃない。その度に断っていた。
だけどついに。
「どうしてそんなに嫌がるんだ? 俺のことが嫌いになったのか?」
「違います! 万が一、お腹の子に何かあったら……」
「大丈夫だ。お前はアンリエッタと違って強い女性なんだ」
そういう問題でもないし、こんな時にアンリエッタさんの名前を出さないで欲しい。
私は困り果てて、ついにお義母様に相談した。恥ずかしかったけれど、このままだと無理矢理襲われるかもしれないと危機感を抱いた。
「そんなにお腹が膨らんでいるのに? ごめんなさいね、カロリーヌさん。うちの息子が我儘なことを言ってしまって……」
「いいえ……私こそセレスタン様を受け入れられなくて申し訳ありません……」
「いいのよ。跡継ぎが生まれなかったから大変だもの」
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