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本編
16.俺は辺境伯になる!②
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にっこり笑ったデニスは神々しかった。
その彼が天使の微笑みのままブリトニーに話しかける。
「俺が辺境伯になるには、ステファニーと結婚しなくちゃならない。ブリトニー、キミなら分かってくれるだろう?」
「えぇ。私、わがままなんて言わない。デニスの一番になりたかったけど、それは諦めるわ」
「ありがとう、ブリトニー。そんなに俺のこと考えてくれるなんて、本当にキミは優しいね」
「良いの、私の幸せは、デニスの幸せの上にあるんだもの」
私とブラッドはこのやり取りをお芝居でも見るような気持ちで見守った。
私たちには理解できない。
「と言うことで、俺はステファニーと結婚することにするよ」
「「はぁ?」」
「え? そんなに驚かなくても。元に戻すだけだって」
「ちょっと良いかしら? 私はともかく、ブラッドをどうするつもりなのか、一応聞いて置きたいんだけど」
私から剣呑な気配を感じ取ったのか、若干腰が引けてるけど、それでもこの怒りの度合いをまだ測りきれてないらしい。
「ブラッドリー? それは……。あぁ、そうだ。卒業したら、辺境騎士団で小隊長として迎えるのはどうだ? 学園出てすぐにだなんて、けっこう高待遇だと思うんだけど」
「そう。それじゃあ、私は?」
「ステファニー? だからステファニーは俺と結婚……」
「しません」
「は?」
「だって私、デニスを好きじゃないもの」
「え?」
本当に驚いている彼に、私のほうがもっと驚いた。
「嘘言うなよ」
「嘘なんて言ってないわ」
「だって、いつも俺の後を付いて回ってただろ?」
「それは目を離すとすぐ何かやらかすから、見張ってただけよ」
「家族なんだから遠慮するなって言ってたし……」
「それは婚約者だったんだもの。将来結婚するって思ってる人なら、そのくらい言うでしょう」
「じゃ、じゃあ、俺が試合に勝った時とか、あんなに喜んだのは?」
「幼なじみに良い事があったら、普通の人は喜ぶわよ。むしろ喜ばない人のほうが少ないと思うけど?」
「だって、すごく褒めてくれたし……嫌いな奴ならそんな事しないだろ?」
それを聞いた私が額を手で押さえていると、ブラッドに『苦労するな』と優しく肩を叩かれた。
その彼が天使の微笑みのままブリトニーに話しかける。
「俺が辺境伯になるには、ステファニーと結婚しなくちゃならない。ブリトニー、キミなら分かってくれるだろう?」
「えぇ。私、わがままなんて言わない。デニスの一番になりたかったけど、それは諦めるわ」
「ありがとう、ブリトニー。そんなに俺のこと考えてくれるなんて、本当にキミは優しいね」
「良いの、私の幸せは、デニスの幸せの上にあるんだもの」
私とブラッドはこのやり取りをお芝居でも見るような気持ちで見守った。
私たちには理解できない。
「と言うことで、俺はステファニーと結婚することにするよ」
「「はぁ?」」
「え? そんなに驚かなくても。元に戻すだけだって」
「ちょっと良いかしら? 私はともかく、ブラッドをどうするつもりなのか、一応聞いて置きたいんだけど」
私から剣呑な気配を感じ取ったのか、若干腰が引けてるけど、それでもこの怒りの度合いをまだ測りきれてないらしい。
「ブラッドリー? それは……。あぁ、そうだ。卒業したら、辺境騎士団で小隊長として迎えるのはどうだ? 学園出てすぐにだなんて、けっこう高待遇だと思うんだけど」
「そう。それじゃあ、私は?」
「ステファニー? だからステファニーは俺と結婚……」
「しません」
「は?」
「だって私、デニスを好きじゃないもの」
「え?」
本当に驚いている彼に、私のほうがもっと驚いた。
「嘘言うなよ」
「嘘なんて言ってないわ」
「だって、いつも俺の後を付いて回ってただろ?」
「それは目を離すとすぐ何かやらかすから、見張ってただけよ」
「家族なんだから遠慮するなって言ってたし……」
「それは婚約者だったんだもの。将来結婚するって思ってる人なら、そのくらい言うでしょう」
「じゃ、じゃあ、俺が試合に勝った時とか、あんなに喜んだのは?」
「幼なじみに良い事があったら、普通の人は喜ぶわよ。むしろ喜ばない人のほうが少ないと思うけど?」
「だって、すごく褒めてくれたし……嫌いな奴ならそんな事しないだろ?」
それを聞いた私が額を手で押さえていると、ブラッドに『苦労するな』と優しく肩を叩かれた。
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