【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】

早奈恵

文字の大きさ
4 / 25

回避方法を模索する

しおりを挟む
「あ、あら? あんなところに池が?」
「あぁ、人工池です。中には外国から贈られた珍しい魚が飼育されています」
「まぁ、わたくし見てみたいわ」
「今ですか?」
「えぇ。今です」

 完全に棒読みだけど、アデリアーナは気にしない。
 気になったのはアンセムだ。
 いつもとは違うアデリアーナの様子に、いきなりどうしたのかと困惑しているのが伝わってくる。

「そうですか……しかし時間が……」
「ほんの少し。……ちょっと覗くくらいなら間に合いますでしょう? ね? お願い」

 可愛く小首を傾げて見せる事も忘れない。
 何故なら予知夢に出てきたパナピーアがこの仕草を乱用して、断罪四人組のみならず学園の男子生徒を籠絡して回っていたからだ。

 アデリアーナは確実に学んでいた。
 男子はこの仕草に弱いのだと……。

 そして今は王立学園の入学前。
 まだ王太子妃教育を受けて日の浅い彼女は、ポーカーフェイスも王族の威厳も完全には身に付いてはいない。

 今の彼女は幼いながらに美しく可憐な美少女。
 予知夢で学んだ今のアデリアーナのほうがパナピーアより断然魅力的だった。
 だから彼女が可愛くお願いすれば、思春期真っ盛りのお坊っちゃまなど一溜りもない。
 アンセムはアデリアーナにデレデレだ。

 しかし相手は公爵令嬢にして王太子の婚約者。
 彼は殿下の側近だ。
 『ここはキッパリお断りを……』と思って彼女を見ると天使の微笑みが返ってきて……。

「……少し。……本当に少しだけですよ?」
「嬉しい。アンセム様はお優しいのね」

 まだ上があったのかと驚くほどの笑顔のあと、ダメ押しにもう一度コテンと首を傾げた。
 途端にアンセムは赤面してそっぽを向く。
 完全に彼の負けだった。
 そしてさっきよりも明らかに気を遣った歩みで、アデリアーナを池の方へといざなっていく。

 アデリアーナから彼の顔は見えなかったが、照れているのは丸分かり。
 あまりにも簡単に思い通り動いてくれて、彼女は非常に驚いていた。

 アンセム様って……。
 これはメイドたちが言っていた、ちょろ過ぎる……というものでしょうか?
 それともパナピーアさんの男性を落とすテクニックがすごいのでしょうか?
 でもこれでパナピーアさんとの鉢合わせは回避できましたわね?
 あぁ良かった。

 アデリアーナは軽く池を見て周り、安心して校舎に入って行く。
 午前中とはいえ日差しのあった外とは違う、冷んやりした空気の中エドウィンの元へと進んでいく。
 途中で上級生と思われる生徒が歩いてきた。

「ごきげんよう。この先の階段は今、業者が教材の搬入中なのです。すみませんが向こうの階段に回っていただけますか?」
「ありがとう、そうするよ。──アデリアーナ様こちらへ」
「え? そちらですか……?」

 まさかこんなところで元通りの道に誘導とか、そんな事ってありますの⁉︎

 アデリアーナは心の中で大混乱していた。
 そんな事はアンセムに分かるはずもない。

「どうしました?」
「いえ、何でもありません」

 うまい言い訳も思い付かず、結局例の廊下を歩く羽目ハメに……。
 ほどなくして見覚えのある場所に差し掛かる。

 あ、ここですわ。
 ここで左からパナピーアさんが突然飛び出して来たのでしたね。
 でも、あの時と時間がズレているし、大丈夫……ですわよね?

 タタタ、タタタ……。

 アデリアーナは耳を疑った。
 足音はからやって来る。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

聖女はもうのんびりしたいんです【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
魔法の国オルレアン。この国には古代より聖女伝説があり、初代聖女エレノアは生きとし生ける者から愛され従わせる事が出来、万物の声が聞こえた。 オルレアンを建国し、初代女王となったエレノアの没後、1000年経っても恩恵を受け、繁栄した国だった。 しかし、甘い汁に慣れきった、恩恵に味を占めた国民達が増え、衰退していって100年。再び聖女を祀れ、とオルレアン国民が声を挙げると、忽ち我が聖女、とその地位を争う様になる。 そんな中、初代聖女エレノアはその1000年を生まれ変わりながら、オルレアン国を見つめて来ていた1人。彼女は1人嘆き悲しむが、エレノアに頼る事だけを考えては駄目だと教えて来たつもりだったが、堕落した国民には届く事は無かった。 そして、再びオルレアン国に生を受けたエレノアは………

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

破滅フラグから逃げたくて引きこもり聖女になったのに「たぶんこれも破滅ルートですよね?」

氷雨そら
恋愛
「どうしてよりによって、18歳で破滅する悪役令嬢に生まれてしまったのかしら」  こうなったら引きこもってフラグ回避に全力を尽くす!  そう決意したリアナは、聖女候補という肩書きを使って世界樹の塔に引きこもっていた。そしていつしか、聖女と呼ばれるように……。  うまくいっていると思っていたのに、呪いに倒れた聖騎士様を見過ごすことができなくて肩代わりしたのは「18歳までしか生きられない呪い」  これまさか、悪役令嬢の隠し破滅フラグ?!  18歳の破滅ルートに足を踏み入れてしまった悪役令嬢が聖騎士と攻略対象のはずの兄に溺愛されるところから物語は動き出す。 小説家になろうにも掲載しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~

今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。 こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。 「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。 が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。 「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」 一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。 ※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です

処理中です...