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第四話 ねむり姫
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火災の煙の中、近付いて来る二人の姿が見えた。顔を見て、ヒナタは驚いて声を出した。
「えっ、山内さん?」
「あっ、ヒナタちゃん? どうしてここに」
お互いにその後の言葉がすぐには見つからなかった。
「それよりも出口は? ここの扉は開かないの?」そう言って美里は完全に閉じられた防火扉を叩いた。
「ダメです。今さっき完全に閉じちゃいました」くやしそうにヒナタが言った。
「そんな……」美里はがっくりとしゃがみ込んでしまった。
足元から煙がどんどん上がってきていた。防火扉のお蔭で火は防げるようだが、煙は入ってくる。もうすぐここも息が出来なくなるだろう。三人は防火扉を背に座り込んでしまった。
「ヒナタちゃんはどうしてここに?」
「ええ、一つ下の階で検査中だったんです。危うく焼き殺されるところでしたよ。吉野先生と逃げて来たら、ここの扉が開いていて、声をかけたんですけど……あの吉野って人が犯人です。菜々美さんに毒を盛ったんです」
真剣な顔でヒナタは話した。
「ええっ!」
「そんな……」
瞳と美里は突然の話に二人して大きな声を上げてしまった。
「この火事もあの人が関わっているんじゃあないかな? 今だってこの扉を閉めちゃったんですから」
「一人で逃げた訳。見殺しじゃない……そうか、だから美里さんも部屋に取り残されていたんだ」
なるほどと瞳は一人納得した。
「じゃあ、わたしをわざと逃げ遅れさせて殺そうとしたの?」美里が不安げな顔で尋ねた。
「そうですね。わたしも取り残されてましたから……もう、先に避難しましたなんて嘘言ったんじゃないですか」ヒナタもくやしそうに言った。
「このまま死んだら犯人の思う壷だよね」
「わたし、くやしいです……」
しんみりと瞳とヒナタが呟いた。
煙でもうとなりの顔も見え辛くなってきた。
そんな時、美里が一人だけ冷静な声で二人に語り掛けた。
「ねえ、二人とも。わたしの中のグリムが言っているの。そんな『悪魔のささやき』に乗ってみる?」美里の表情まではよく見えなかった。
瞳とヒナタは顔を見合わせた。
「えっ、山内さん?」
「あっ、ヒナタちゃん? どうしてここに」
お互いにその後の言葉がすぐには見つからなかった。
「それよりも出口は? ここの扉は開かないの?」そう言って美里は完全に閉じられた防火扉を叩いた。
「ダメです。今さっき完全に閉じちゃいました」くやしそうにヒナタが言った。
「そんな……」美里はがっくりとしゃがみ込んでしまった。
足元から煙がどんどん上がってきていた。防火扉のお蔭で火は防げるようだが、煙は入ってくる。もうすぐここも息が出来なくなるだろう。三人は防火扉を背に座り込んでしまった。
「ヒナタちゃんはどうしてここに?」
「ええ、一つ下の階で検査中だったんです。危うく焼き殺されるところでしたよ。吉野先生と逃げて来たら、ここの扉が開いていて、声をかけたんですけど……あの吉野って人が犯人です。菜々美さんに毒を盛ったんです」
真剣な顔でヒナタは話した。
「ええっ!」
「そんな……」
瞳と美里は突然の話に二人して大きな声を上げてしまった。
「この火事もあの人が関わっているんじゃあないかな? 今だってこの扉を閉めちゃったんですから」
「一人で逃げた訳。見殺しじゃない……そうか、だから美里さんも部屋に取り残されていたんだ」
なるほどと瞳は一人納得した。
「じゃあ、わたしをわざと逃げ遅れさせて殺そうとしたの?」美里が不安げな顔で尋ねた。
「そうですね。わたしも取り残されてましたから……もう、先に避難しましたなんて嘘言ったんじゃないですか」ヒナタもくやしそうに言った。
「このまま死んだら犯人の思う壷だよね」
「わたし、くやしいです……」
しんみりと瞳とヒナタが呟いた。
煙でもうとなりの顔も見え辛くなってきた。
そんな時、美里が一人だけ冷静な声で二人に語り掛けた。
「ねえ、二人とも。わたしの中のグリムが言っているの。そんな『悪魔のささやき』に乗ってみる?」美里の表情まではよく見えなかった。
瞳とヒナタは顔を見合わせた。
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