蒼天の風 祈りの剣

月代零

文字の大きさ
10 / 74
第二章 逆光の少女

#5

しおりを挟む
「いつまで寝てるつもりだ。起きろ」

 明るくなってきて微睡から覚めようとしている矢先、軽い衝撃と声で強制的に微睡から引き戻された。目を開けると、肩口を靴の先でつつかれていた。傷には響かないが、地味に痛い。

「……おはよう」

 まだだいぶ早い時間のようで、空は宵闇の色と暁の色が混じっている。しかし、いつまでも眠っているわけにはいかない。最低限の休息さえ取れれば十分だ。
 持参していた固いパンやチーズを少し腹に入れると、出立した。
 昨夜は襲撃のどさくさで忘れていたが、エディリーンは再びフードを被り、髪を隠していた。
 街道からはだいぶ逸れてしまっていた。太陽の向きと記憶にある地図を照らし合わせながら、南へ向かうルートを取る。

「最初にあんたを襲っていた奴らと、昨晩の奴らは同じ勢力か? また襲ってこられたら、たまったもんじゃないぞ」

 歩きながらエディリーンは言う。
 女性だと発覚してからも、彼女の態度や言葉遣いはあまり変化がなかった。どうやら、これが素の振る舞いであるらしかった。それにつられて、アーネストも騎士仲間に接するような気分になってしまう。

「それは俺にもわからない。しかし、今は砦に急がねば」

 二人はかなり速足で道のりを消化していたが、それでも砦まではあと丸一日以上かかる。

「この先にこの辺り一帯の領主、ルーサー卿の居城がある。そこまで行って、馬を貸してもらおう」
「そいつは味方なのか?」
「いや、第一王子派だな」

 それを聞いて、エディリーンは露骨に呆れた顔をした。

「砦を挟撃されりする危険はないのか?」

 ルーサー卿の領地は、砦の手前。味方に駆けつけるふりをして砦を攻撃することは容易に思われた。

「そんなに表立った裏切り行為はできないはずだ。第一王子派は、国王陛下のご意思とは別の所で動いているから。仮に何かするつもりだとしても、馬ぐらいは貸してもらおう」

 やがて街道まで戻ることができた。戦場が近いこともあり、普段は商人や旅人が行き交っている道も、今は通る者は少ない。南下する者は自分たちの他は皆無で、逃げるように北に向かう者に時々すれ違うのみだった。
 このまま道なりに行けば、くだんのルーサー卿の居城もすぐだ。しかし、歩みを進めていると、進行方向から軽い地響きと土埃が迫ってくることに気付いた。目を凝らすと、騎馬の一団が進んでくるのが見えた。

「なんだ?」

 アーネストは、一団が掲げる旗を確認し、答えた。

「……あれは、ルーサー卿の旗だ」

 アーネストの表情に緊張が走る。エディリーンは目を細めて、前を見据えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...