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第1章 止まった世界の生き方
10話 方針
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「冬馬、力のことはどうだった?」
「まぁ…良くはないよ。ハズレなだけあるね」
すずとの話を終えた後、冬馬は秘密基地内にいた万夏の問いかけに苦笑しながら答える。
「……これからどうしようか」
万夏は若干の沈黙の後口を開く。冬馬もそのことについては話さなくてはならないと思っていたはずだ。
万夏の日菜乃を救うという目的が果たされた今、冬馬が一緒にいる理由はないのだ。そうなればもちろん互いに別の方向へ進むことも考えられる。
「冬馬」
万夏はいつもとは違う真面目で本気の雰囲気を放ち冬馬の名を呼ぶ。
「俺と一緒にこの力を使って世界を元に戻さないか?」
冬馬は万夏の提案に一瞬驚くが、すぐに考え始める。
「止まった世界に居続けるのは流石に無理があるし、危険だ。ヤツのような敵がいるとしたら」
この呪いのような力があればすずの安全は保障される。また、万夏の神のような力があればまた学校に通い、いつもの何気ないすずとの生活に戻れる。そう考えた時、不思議な抵抗感を覚えつつも答えを定めた冬馬の答えは─
「あぁ。一緒にこの変な世界を戻そう」
快諾であった。それもそのはず敵でありそうな存在が自分の配下になっている今、他の存在がない限りすべてが安全圏であることに変わりはないのだ。ただし、問題があるとすれば
「どうやって元に戻すつもりなの?人間を、ものを一つ一つちまちま戻してくなんて非効率的なことはできないし」
となる。もちろん人間やものを一つ一つ日菜乃を元に戻すような要領ですることは可能だがその労力といい、まったくもって現実的でない。
「そこだね…また後で5人で作戦会議をしようと思ってるけど一例としてはゲニウスの知識を頼るとか、俺がもっとこの力を使いこなせるようにして一気にするとか…」
どこか不安だが冬馬はその作戦会議に打開策が出ることを祈って待ったのだった。
「じゃあヤツとの死闘後で疲れが残っているところ申し訳ないんだけど作戦会議をしよう」
万夏ら5人は秘密基地内で集まる。その空気は時の使者との作戦会議ほど明るいものではなく重ためだった。
「俺としては自分のこの力をうまく使って一気にしたいと思うんだけどゲニウス、それは可能なの?」
「おお、突然の問いかけにびっくりだけどその答えは知らねぇ。つーか俺はその心臓を食ってねーんだから知ってるわけがねぇ」
ゲニウスはめんどくさそうに正論で答える。
「まぁ言えるとすれば能力ってのは頭の柔らかさによって無限大の効果をもたらすわけだ。つまりはオマエら次第でできるかもな」
「万夏としてはどうするつもりだったの?ゲニウスさん頼りだけってわけじゃないでしょ?」
日菜乃が何気なく聞く。ゲニウスにさんをつけるあたり真面目な人なんだろうなとくだらないことを考えながら冬馬は万夏の回答を待つ。
「もちろん。まずはこの力を理解するために冬馬と一緒に修行じゃないけど練習をする」
「…え」
万夏の回答に思わず冬馬は声をあげる。
「…?どしたのトーマ?」
「……いや。呪いみたいな力だから使いたくないなって」
冬馬はすずにわかりやすい作り笑いを見せ答える。
「それも。呪いだって逆に使いこなせれば強い」
「ま、それもそうだね。この力を選んだのは自分だし」
「とりあえずは二人で力の理解を深めていって鍵になりそうな事があれば片っ端から試していこう。それまで日菜乃とすずさんは一旦休みで」
万夏のまとめにより話し合いは終わりを告げる。
「万夏の元気が残っていればだけど今からでも始めたいな」
「いいね。始めよう」
「ゲニウスも来てほしい」
「えーやだよめんどくせぇなー。オレだって寝てたいんですけど~」
冬馬の提案に万夏は快諾するがゲニウスはめんどくさそうにして寝っ転がったまま動く様子はない。
「命令」
「はい!ついて行かせていただきます!」
冬馬の一言にゲニウスは勢いよく立ち上がる。冗談でいったつもりのためおおよそその冗談に乗っただけだろう。
「さっきも言った通り頭の柔らかさによってその力はいくらでも跳ね上がる。それを踏まえてとにかくやってみろ。」
ゲニウスが言い終えると二人はそれぞれ力を使っていく。
「はぁっ!」
万夏は全力で目の前の鳥に開いた手に力を入れる。その手のひらから光が溢れるがすぐに分散され消える。当然鳥も動くことはなく失敗に終わる。
「万夏の場合は力みすぎだもっと力を抜け。それができれば文句はねぇな」
「わかった」
ゲニウスのアドバイスを聞き万夏は鳥に手をかざす。
「ふんっ…」
冬馬もまたなにもないところに時の使者が出てくることを想像する。今度は二人でてくることを想像して。先程同様、下から円形のブラックホールのようなものが出来上がり、2体の時の使者が生成される。時の使者は死闘したときと変わらない見た目をしており、ぐねぐねと動くばかりだった。
「すごい…それが冬馬の…」
万夏は冬馬の力に驚く。
「ん、ぼちぼちだな。あとはソイツらを生むだけじゃなく他の技を作るとかもっとつえーやつを生むとかそのあたりを目標にすると良いかもな」
ゲニウスは時の使者の頭を潰しながらそう提案をする。
「あぁ。そうしてみる」
冬馬もまたその提案を聞き入れ、また新たな技を想像する。
敵もいなくなった世界でこの能力が役に立つのか、そんな事を考えながらひたすらに力の理解を深めようとしていったのだった。
「まぁ…良くはないよ。ハズレなだけあるね」
すずとの話を終えた後、冬馬は秘密基地内にいた万夏の問いかけに苦笑しながら答える。
「……これからどうしようか」
万夏は若干の沈黙の後口を開く。冬馬もそのことについては話さなくてはならないと思っていたはずだ。
万夏の日菜乃を救うという目的が果たされた今、冬馬が一緒にいる理由はないのだ。そうなればもちろん互いに別の方向へ進むことも考えられる。
「冬馬」
万夏はいつもとは違う真面目で本気の雰囲気を放ち冬馬の名を呼ぶ。
「俺と一緒にこの力を使って世界を元に戻さないか?」
冬馬は万夏の提案に一瞬驚くが、すぐに考え始める。
「止まった世界に居続けるのは流石に無理があるし、危険だ。ヤツのような敵がいるとしたら」
この呪いのような力があればすずの安全は保障される。また、万夏の神のような力があればまた学校に通い、いつもの何気ないすずとの生活に戻れる。そう考えた時、不思議な抵抗感を覚えつつも答えを定めた冬馬の答えは─
「あぁ。一緒にこの変な世界を戻そう」
快諾であった。それもそのはず敵でありそうな存在が自分の配下になっている今、他の存在がない限りすべてが安全圏であることに変わりはないのだ。ただし、問題があるとすれば
「どうやって元に戻すつもりなの?人間を、ものを一つ一つちまちま戻してくなんて非効率的なことはできないし」
となる。もちろん人間やものを一つ一つ日菜乃を元に戻すような要領ですることは可能だがその労力といい、まったくもって現実的でない。
「そこだね…また後で5人で作戦会議をしようと思ってるけど一例としてはゲニウスの知識を頼るとか、俺がもっとこの力を使いこなせるようにして一気にするとか…」
どこか不安だが冬馬はその作戦会議に打開策が出ることを祈って待ったのだった。
「じゃあヤツとの死闘後で疲れが残っているところ申し訳ないんだけど作戦会議をしよう」
万夏ら5人は秘密基地内で集まる。その空気は時の使者との作戦会議ほど明るいものではなく重ためだった。
「俺としては自分のこの力をうまく使って一気にしたいと思うんだけどゲニウス、それは可能なの?」
「おお、突然の問いかけにびっくりだけどその答えは知らねぇ。つーか俺はその心臓を食ってねーんだから知ってるわけがねぇ」
ゲニウスはめんどくさそうに正論で答える。
「まぁ言えるとすれば能力ってのは頭の柔らかさによって無限大の効果をもたらすわけだ。つまりはオマエら次第でできるかもな」
「万夏としてはどうするつもりだったの?ゲニウスさん頼りだけってわけじゃないでしょ?」
日菜乃が何気なく聞く。ゲニウスにさんをつけるあたり真面目な人なんだろうなとくだらないことを考えながら冬馬は万夏の回答を待つ。
「もちろん。まずはこの力を理解するために冬馬と一緒に修行じゃないけど練習をする」
「…え」
万夏の回答に思わず冬馬は声をあげる。
「…?どしたのトーマ?」
「……いや。呪いみたいな力だから使いたくないなって」
冬馬はすずにわかりやすい作り笑いを見せ答える。
「それも。呪いだって逆に使いこなせれば強い」
「ま、それもそうだね。この力を選んだのは自分だし」
「とりあえずは二人で力の理解を深めていって鍵になりそうな事があれば片っ端から試していこう。それまで日菜乃とすずさんは一旦休みで」
万夏のまとめにより話し合いは終わりを告げる。
「万夏の元気が残っていればだけど今からでも始めたいな」
「いいね。始めよう」
「ゲニウスも来てほしい」
「えーやだよめんどくせぇなー。オレだって寝てたいんですけど~」
冬馬の提案に万夏は快諾するがゲニウスはめんどくさそうにして寝っ転がったまま動く様子はない。
「命令」
「はい!ついて行かせていただきます!」
冬馬の一言にゲニウスは勢いよく立ち上がる。冗談でいったつもりのためおおよそその冗談に乗っただけだろう。
「さっきも言った通り頭の柔らかさによってその力はいくらでも跳ね上がる。それを踏まえてとにかくやってみろ。」
ゲニウスが言い終えると二人はそれぞれ力を使っていく。
「はぁっ!」
万夏は全力で目の前の鳥に開いた手に力を入れる。その手のひらから光が溢れるがすぐに分散され消える。当然鳥も動くことはなく失敗に終わる。
「万夏の場合は力みすぎだもっと力を抜け。それができれば文句はねぇな」
「わかった」
ゲニウスのアドバイスを聞き万夏は鳥に手をかざす。
「ふんっ…」
冬馬もまたなにもないところに時の使者が出てくることを想像する。今度は二人でてくることを想像して。先程同様、下から円形のブラックホールのようなものが出来上がり、2体の時の使者が生成される。時の使者は死闘したときと変わらない見た目をしており、ぐねぐねと動くばかりだった。
「すごい…それが冬馬の…」
万夏は冬馬の力に驚く。
「ん、ぼちぼちだな。あとはソイツらを生むだけじゃなく他の技を作るとかもっとつえーやつを生むとかそのあたりを目標にすると良いかもな」
ゲニウスは時の使者の頭を潰しながらそう提案をする。
「あぁ。そうしてみる」
冬馬もまたその提案を聞き入れ、また新たな技を想像する。
敵もいなくなった世界でこの能力が役に立つのか、そんな事を考えながらひたすらに力の理解を深めようとしていったのだった。
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