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第1章 止まった世界の生き方
16話 それぞれの世界 【冬馬編】
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お台場で遊んでから数時間。
「ひぇ~!なんでこう薄暗い学校っていうのは気味悪いもんなのかね…」
「言うほど気味悪くもないよ。あ、人体模型」
「きゃぁああ!!」
「そんな叫ぶほどのものでも…」
「ある!あぁ…もうなんでこんなところを拠点にしようなんて言い出すわけ…?バカトーマ…」
そう薄暗い校舎内で愚痴をこぼしている二人。なぜここにいるのかという経緯は数時間前に遡る─
「トーマ、これからどうするの?秘密基地から出ちゃったわけだし寝床も考えなきゃ」
「拠点のことならすでに考えてあるから大丈夫だよ」
「ほんと!?どんなところ?」
「大きな建物で部屋がいっぱいあるよ。それにベットもそこそこあるしめっちゃ広い運動場と庭が…」
「おぉ~!めっちゃいいじゃんそこ!なんていうホテル?」
「ホテルじゃないんだな~これが。まぁどんなところかは着いてのお楽しみ」
「わーい!」
─「で、着いたところが知らない学校って…どういうつもり…?」
「いいじゃん、学校のほうが広くて部屋も多いし使いやすいんだよ」
「それでももっと良いところがあるはずじゃん!」
「理科室や調理室みたいな専門的な道具が置いてある部屋も充実してるのは学校だけだと思うよ」
「そんなのまだわかんないじゃん!んーと…例えば…」
「あぁ、たしかにもう一個それに近いのがあるな」
「でしょお!ちなみにそれってどこ?」
「病院だけど」
「もっと悪いじゃん!」
「まぁ幽霊だってこの現象で止まってるでしょ」
「そう考えるとちょっと面白いね」
そんな他愛のない会話をしながら歩き着いたのは体育館であった。夕方というのもあってか薄暗く、その広い室内に誰もいない。落ちているバスケットボールの影が伸びていて冬馬たちに懐かしさを感じさせていた。
「体育館かぁ…ちょっと久しぶりに感じちゃった」
「それもそうだよ。なにげに時が止まってからかなり日が経ってるんだから」
「ところでトーマ、ここで何をするの?」
「あぁ。ちょっと試してみたくてさ」
「?また力の実験」
「そんなところ!」
そう言いながら冬馬は二体の時の使者を作り出す。
しかし出てきた使者は以前とは違い片手に刀や盾を持つ者と猫のような見た目をした生き物になっていた。
「わ!猫ちゃんだ!もう片方も完全武装って感じだね~」
「あ、あまり近寄りすぎないでね。今は僕が命令してるから攻撃してないだけでしてないヤツがいたら殺されちゃうから」
「おぉこわ。はーい…」
「ということで君たちはそこら辺にいてね…って猫の方は命令が聞かないのか…」
冬馬は二体の使者に命令をするも猫の方は聞くことなくその場で寝転がる。
「……なるほどね…っとまぁこれだけ分かればいいか」
「ん?どういうこ…」
「はぁ!」
冬馬はすずの質問に耳を傾けることなく先程のように時の使者を作り出す。今度は何十体、いや何百体もの使者を一度に創造する。それぞれ弓矢、銃などの遠距離系の武器を持つもの、先程同様剣と盾を持つもの、槍や鎖を持つものなど様々な武装がされており、きれいな列をつくっていてその様相はまさに軍隊そのものであった。
「な、なにこれ…こんないっぱいのゲニウスが…」
「これはゲニウスじゃないよ。ゲニウスよりもずっと弱いけど僕らがあの時戦ったヤツよりは強い。僕らの軍だよ」
「軍…なんでそんなものを?」
「万夏たちは多分これから僕らに対抗するためにいろんな人を復活させる。それこそ世界最強の格闘家だったりスナイパーだったり、そんな人たちに勝てるわけがない。だからこうして僕らなりに軍隊を作って応えなきゃ」
「なるほど…たしかに万夏くんの力ならそれもできちゃうのか…」
「さっき本屋さんでライトノベルをたくさん読んだからさ、こういうモンスターみたいなののイメージがしやすくなったんだよねー」
「さっきはそれをずっと集中して読んでたんだねぇ」
「本屋さんに行ってよかったよ。おかげで…!」
冬馬は再度時の使者を創造しようとする。しかし先程とは違い少し威圧感のあるブラックホールのようなものを下に発生させ、すずの生物的な本能に恐怖を感じさせた。
「……」
ブラックホールのようなものからは十三体の使者が現れ、それぞれの見た目が違っていた。
「んー、多分これで合ってるのかな。一応この十三体は最強格にしているつもりなんだ。ちょっと数が多くなっちゃったけどね」
そういうと冬馬は十三体の一番左にいた者の前に行く。
「君は『平治』だ。君は『帝中』、君は『歩院』、君は『輝宝』、君は……『亢進』、君は『進紫』、君は『仁悟』、君は『氣琵』、君は『木之伸』、君は『衣都遊』、君は『塀述 』、君は『程愾』そして君は『善知鳥』だ!」
「……な、なんて?」
冬馬がそれぞれに付けた名の意味不明さにすずは困惑する。
「特に由来とかもないよ適当に思いついた言葉を名前にしてみた」
「ひ、ひどー!もっといい名前にしてあげようよ!」
「まぁ、冷たいこと言うようになるけどあくまで配下なわけだし…」
「難しすぎて覚えられる自信ないんだけど…」
「まぁそこはがんばって…!」
「会話を断ち切るようで申し訳ないが、御方々が某の主人であろうか」
「!!……っとそうだけど…」
そう武士のような口調で話すのはガタイもよく威圧感を放つ歩院であった。使者が喋ったことに驚きつつも冬馬は質問に答えると少し安心したように肩の力を抜いていた。
「某らに名を与えてくれたこと、ここに生み出して頂いたことを感謝すると同時に御方々らの絶対的な忠誠をここに誓おう」
「あ、名前受け入れられちゃったよ。もうちょっとマシな名前にも…」
「……くくっ!お…オマエ…ハ…く……ククっ!グァアっ!」
すずが言い終わる前に一番右側、十三番目の善知鳥がすずめがけて飛びかかる。とてつもない脚力で距離を詰めるその勢いにすずは悲鳴を上げる余裕もなく死を悟る。
「ぐぁ…が…ガガ…」
が、善知鳥の攻撃が届く前に崩れ落ちる。それをしたのは使者ではなく冬馬であった。十二体の使者もそれぞれに驚いてみせたり感心していたりと様々な反応を見せた。
すずにとって何が起きたかは分からない。突如善知鳥が飛びかかり、死を悟った矢先に頭が吹き飛び跡形もなくなっている。目の前には頭のない善知鳥だったものが転がっているだけだ。
「………作ったときに命令したと思うんだけど何があってもすずを攻撃するな。すずがかすり傷一つ着くことが絶対に無いようにしろ。これは最重要の『命令』だ」
その静かながらに完全な威圧感を放ち話す冬馬にこの場のほとんどが畏怖した。それと同時に冬馬に対する反抗のできない強さを知り、忠誠を誓うこととなっていったのであった。
万夏、君はこれからどう来るんだろう。戦争でもふっかけてくるのかな?まぁどう来ようとこちらは変わらず時を動かすことを全力で邪魔させてもらう。
冬馬の頭にはどこか余裕さと自由さを手に入れた、さながら魔王のようであった。
もし、世界の時間が止まったら何をするだろうか。銀行強盗、人殺し、“動いた”世界での禁止事項、すなわち犯罪行為をしまくる?時が止まるという摩訶不思議な世界の解明のため旅に出る?
主人公のような人間ならそうしたかもしれない。でも僕は違う。動かない、止まった世界はあまりも“都合がいい”
僕は、僕たちは君とともにこの邪魔者のいない世界を楽しむ。たとえどんなことがあったとしても
体育館二階の窓から変わらぬ夕焼け空を睨みつけ冬馬にとっての世界が作られていくのをただ感じていたのだった。
「ひぇ~!なんでこう薄暗い学校っていうのは気味悪いもんなのかね…」
「言うほど気味悪くもないよ。あ、人体模型」
「きゃぁああ!!」
「そんな叫ぶほどのものでも…」
「ある!あぁ…もうなんでこんなところを拠点にしようなんて言い出すわけ…?バカトーマ…」
そう薄暗い校舎内で愚痴をこぼしている二人。なぜここにいるのかという経緯は数時間前に遡る─
「トーマ、これからどうするの?秘密基地から出ちゃったわけだし寝床も考えなきゃ」
「拠点のことならすでに考えてあるから大丈夫だよ」
「ほんと!?どんなところ?」
「大きな建物で部屋がいっぱいあるよ。それにベットもそこそこあるしめっちゃ広い運動場と庭が…」
「おぉ~!めっちゃいいじゃんそこ!なんていうホテル?」
「ホテルじゃないんだな~これが。まぁどんなところかは着いてのお楽しみ」
「わーい!」
─「で、着いたところが知らない学校って…どういうつもり…?」
「いいじゃん、学校のほうが広くて部屋も多いし使いやすいんだよ」
「それでももっと良いところがあるはずじゃん!」
「理科室や調理室みたいな専門的な道具が置いてある部屋も充実してるのは学校だけだと思うよ」
「そんなのまだわかんないじゃん!んーと…例えば…」
「あぁ、たしかにもう一個それに近いのがあるな」
「でしょお!ちなみにそれってどこ?」
「病院だけど」
「もっと悪いじゃん!」
「まぁ幽霊だってこの現象で止まってるでしょ」
「そう考えるとちょっと面白いね」
そんな他愛のない会話をしながら歩き着いたのは体育館であった。夕方というのもあってか薄暗く、その広い室内に誰もいない。落ちているバスケットボールの影が伸びていて冬馬たちに懐かしさを感じさせていた。
「体育館かぁ…ちょっと久しぶりに感じちゃった」
「それもそうだよ。なにげに時が止まってからかなり日が経ってるんだから」
「ところでトーマ、ここで何をするの?」
「あぁ。ちょっと試してみたくてさ」
「?また力の実験」
「そんなところ!」
そう言いながら冬馬は二体の時の使者を作り出す。
しかし出てきた使者は以前とは違い片手に刀や盾を持つ者と猫のような見た目をした生き物になっていた。
「わ!猫ちゃんだ!もう片方も完全武装って感じだね~」
「あ、あまり近寄りすぎないでね。今は僕が命令してるから攻撃してないだけでしてないヤツがいたら殺されちゃうから」
「おぉこわ。はーい…」
「ということで君たちはそこら辺にいてね…って猫の方は命令が聞かないのか…」
冬馬は二体の使者に命令をするも猫の方は聞くことなくその場で寝転がる。
「……なるほどね…っとまぁこれだけ分かればいいか」
「ん?どういうこ…」
「はぁ!」
冬馬はすずの質問に耳を傾けることなく先程のように時の使者を作り出す。今度は何十体、いや何百体もの使者を一度に創造する。それぞれ弓矢、銃などの遠距離系の武器を持つもの、先程同様剣と盾を持つもの、槍や鎖を持つものなど様々な武装がされており、きれいな列をつくっていてその様相はまさに軍隊そのものであった。
「な、なにこれ…こんないっぱいのゲニウスが…」
「これはゲニウスじゃないよ。ゲニウスよりもずっと弱いけど僕らがあの時戦ったヤツよりは強い。僕らの軍だよ」
「軍…なんでそんなものを?」
「万夏たちは多分これから僕らに対抗するためにいろんな人を復活させる。それこそ世界最強の格闘家だったりスナイパーだったり、そんな人たちに勝てるわけがない。だからこうして僕らなりに軍隊を作って応えなきゃ」
「なるほど…たしかに万夏くんの力ならそれもできちゃうのか…」
「さっき本屋さんでライトノベルをたくさん読んだからさ、こういうモンスターみたいなののイメージがしやすくなったんだよねー」
「さっきはそれをずっと集中して読んでたんだねぇ」
「本屋さんに行ってよかったよ。おかげで…!」
冬馬は再度時の使者を創造しようとする。しかし先程とは違い少し威圧感のあるブラックホールのようなものを下に発生させ、すずの生物的な本能に恐怖を感じさせた。
「……」
ブラックホールのようなものからは十三体の使者が現れ、それぞれの見た目が違っていた。
「んー、多分これで合ってるのかな。一応この十三体は最強格にしているつもりなんだ。ちょっと数が多くなっちゃったけどね」
そういうと冬馬は十三体の一番左にいた者の前に行く。
「君は『平治』だ。君は『帝中』、君は『歩院』、君は『輝宝』、君は……『亢進』、君は『進紫』、君は『仁悟』、君は『氣琵』、君は『木之伸』、君は『衣都遊』、君は『塀述 』、君は『程愾』そして君は『善知鳥』だ!」
「……な、なんて?」
冬馬がそれぞれに付けた名の意味不明さにすずは困惑する。
「特に由来とかもないよ適当に思いついた言葉を名前にしてみた」
「ひ、ひどー!もっといい名前にしてあげようよ!」
「まぁ、冷たいこと言うようになるけどあくまで配下なわけだし…」
「難しすぎて覚えられる自信ないんだけど…」
「まぁそこはがんばって…!」
「会話を断ち切るようで申し訳ないが、御方々が某の主人であろうか」
「!!……っとそうだけど…」
そう武士のような口調で話すのはガタイもよく威圧感を放つ歩院であった。使者が喋ったことに驚きつつも冬馬は質問に答えると少し安心したように肩の力を抜いていた。
「某らに名を与えてくれたこと、ここに生み出して頂いたことを感謝すると同時に御方々らの絶対的な忠誠をここに誓おう」
「あ、名前受け入れられちゃったよ。もうちょっとマシな名前にも…」
「……くくっ!お…オマエ…ハ…く……ククっ!グァアっ!」
すずが言い終わる前に一番右側、十三番目の善知鳥がすずめがけて飛びかかる。とてつもない脚力で距離を詰めるその勢いにすずは悲鳴を上げる余裕もなく死を悟る。
「ぐぁ…が…ガガ…」
が、善知鳥の攻撃が届く前に崩れ落ちる。それをしたのは使者ではなく冬馬であった。十二体の使者もそれぞれに驚いてみせたり感心していたりと様々な反応を見せた。
すずにとって何が起きたかは分からない。突如善知鳥が飛びかかり、死を悟った矢先に頭が吹き飛び跡形もなくなっている。目の前には頭のない善知鳥だったものが転がっているだけだ。
「………作ったときに命令したと思うんだけど何があってもすずを攻撃するな。すずがかすり傷一つ着くことが絶対に無いようにしろ。これは最重要の『命令』だ」
その静かながらに完全な威圧感を放ち話す冬馬にこの場のほとんどが畏怖した。それと同時に冬馬に対する反抗のできない強さを知り、忠誠を誓うこととなっていったのであった。
万夏、君はこれからどう来るんだろう。戦争でもふっかけてくるのかな?まぁどう来ようとこちらは変わらず時を動かすことを全力で邪魔させてもらう。
冬馬の頭にはどこか余裕さと自由さを手に入れた、さながら魔王のようであった。
もし、世界の時間が止まったら何をするだろうか。銀行強盗、人殺し、“動いた”世界での禁止事項、すなわち犯罪行為をしまくる?時が止まるという摩訶不思議な世界の解明のため旅に出る?
主人公のような人間ならそうしたかもしれない。でも僕は違う。動かない、止まった世界はあまりも“都合がいい”
僕は、僕たちは君とともにこの邪魔者のいない世界を楽しむ。たとえどんなことがあったとしても
体育館二階の窓から変わらぬ夕焼け空を睨みつけ冬馬にとっての世界が作られていくのをただ感じていたのだった。
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