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第2章 時の使者
1話 平治
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「これから君たちにはこの学校内を拠点として様々な活動をしてもらいたい」
冬馬は十二体の使者に言う。
「そ、そんなこと言われたって具体的にボクたちは何をすればいいんですか…?」
平治が自信なさげに聞く。
「そうだね…具体的に言うとこれから君たちを殺し、僕らの…この世界を壊しに来る“敵”が来る。その対策を練り、この状態をできる限り維持してほしい。君たちにはその軍のリーダーをしてほしいんだ」
「そ…そんなぁ…唐突に言われても…」
「まぁこれからとは言ったものの時間ならまだかなりある…と思うからゆっくりでいいんだ」
「ご命令とあらば某らはそれに従うのみ。喜んで引き受けさせていただこう」
不安げに言う平治に言い聞かせるように歩院は答える。
「はぁあ…分かりました。ボクもやります」
「ありがとう。よろしくね」
~
「とは言ったもののこれからどうしたら…」
そう先程のことを思い出し頭を抱える平治。輝きを見せるほどの純白の髪と長いまつげ、小柄で茶色のオーバーオールを来た幼女のような見た目をしていて常にハの字型の眉毛は自信のなさを強く主張していた。
「あ、平治!」
「…?あぁ…冬馬様…とすず様。先程は口答えをしてしまい…」
「ん…?いやいや全然いいんだよ。…それよりもさ、どう?校舎内を周ってみて。なんか面白そうなものとか…」
「あぁ…。えと…理科室?に入ってみたところ面白いものがいっぱいあって…例にこんなものを…」
平治は腰につけたそこそこな大きさのウエストポーチから手のひらほどの青白い球体を取り出した。
「…!もう作っちゃったの!?」
「ひぃっ!すみませんすみませんっ!か、勝手に触ってしまいました…!」
「全然いいんだよ!むしろ感謝しかないよ!…これは?」
「瓶に入っている液体や粉とボクの力を混ぜたところ……えいっ!」
平治は壁にその球体をぶつけるとその部分が一気に凍り始める。氷が発生し、冷たい空気がその場を覆う。
「……すごいよ!平治ちゃんてリケジョなんだねぇ」
「えへへ…そ、そんなことは………ってリケジョ?」
「あーリケジョっていうのはね、理系女子の略でこういう科学が強い子のことを…」
「……えーっと……」
「…?どしたの?」
「すず、平治は男の子だよ?」
「……は?うそ…こんな可愛い男の子いていいの…?」
「まぁ、僕も最初性別間違えたかと思ったしわからなくもないけどさ」
「うへへ…あんまり褒めても…い、良いものは出ませんよ…?」
顔を赤くしてわかりやすく照れる平治。
「とにかく、成功したみたいで良かった。これからもその調子で科学武器を作って欲しいな」
「は、はい…!こんなボクでもお役に立てるなら…」
「ところで平治ちゃ…くんはなんで私達に様なんてつけてるの?それにタメ口でいいのに」
「はぁ!?い、いえいえいえ!そそ、そんなタメ口なんて恐れ多い…ボクたちの主に様をつけるのも敬うのも当然ですっ!」
「へぇ~…別に気にしなくていいのに」
「まぁ何でもいいや。別にどう話してこようと万夏たちの計画を妨害できるならそれで十分だよ」
「ま、万夏…?」
「敵だよ、僕らの。僕らの暮らすこの止まった世界を壊そうとするわからずやさ」
「!…な、なるほど…万夏というのですね…」
どことなく平治は闘志を燃やす。そこに冬馬は安心していた。
「さて、ボクはそろそろ理科室に戻りますね。お二人は…」
「帝中のところにでも行こうかな。みんなの様子を見て回ってるんだ」
「かしこまりました。な、なにかありましたら我々“十二使”を始めとした者たちに申し付けください…」
「うん。ありがとう」
「じゃねー平治ちゃ…くーん!」
「また間違えてる」
「うるさいなー可愛すぎて分かんなくなっちゃうの!」
「……あ、あはは…」
そう騒がしく話しながら二人は平治と別れる。平治もまた理科室へと足を運ぶのだった。
冬馬は十二体の使者に言う。
「そ、そんなこと言われたって具体的にボクたちは何をすればいいんですか…?」
平治が自信なさげに聞く。
「そうだね…具体的に言うとこれから君たちを殺し、僕らの…この世界を壊しに来る“敵”が来る。その対策を練り、この状態をできる限り維持してほしい。君たちにはその軍のリーダーをしてほしいんだ」
「そ…そんなぁ…唐突に言われても…」
「まぁこれからとは言ったものの時間ならまだかなりある…と思うからゆっくりでいいんだ」
「ご命令とあらば某らはそれに従うのみ。喜んで引き受けさせていただこう」
不安げに言う平治に言い聞かせるように歩院は答える。
「はぁあ…分かりました。ボクもやります」
「ありがとう。よろしくね」
~
「とは言ったもののこれからどうしたら…」
そう先程のことを思い出し頭を抱える平治。輝きを見せるほどの純白の髪と長いまつげ、小柄で茶色のオーバーオールを来た幼女のような見た目をしていて常にハの字型の眉毛は自信のなさを強く主張していた。
「あ、平治!」
「…?あぁ…冬馬様…とすず様。先程は口答えをしてしまい…」
「ん…?いやいや全然いいんだよ。…それよりもさ、どう?校舎内を周ってみて。なんか面白そうなものとか…」
「あぁ…。えと…理科室?に入ってみたところ面白いものがいっぱいあって…例にこんなものを…」
平治は腰につけたそこそこな大きさのウエストポーチから手のひらほどの青白い球体を取り出した。
「…!もう作っちゃったの!?」
「ひぃっ!すみませんすみませんっ!か、勝手に触ってしまいました…!」
「全然いいんだよ!むしろ感謝しかないよ!…これは?」
「瓶に入っている液体や粉とボクの力を混ぜたところ……えいっ!」
平治は壁にその球体をぶつけるとその部分が一気に凍り始める。氷が発生し、冷たい空気がその場を覆う。
「……すごいよ!平治ちゃんてリケジョなんだねぇ」
「えへへ…そ、そんなことは………ってリケジョ?」
「あーリケジョっていうのはね、理系女子の略でこういう科学が強い子のことを…」
「……えーっと……」
「…?どしたの?」
「すず、平治は男の子だよ?」
「……は?うそ…こんな可愛い男の子いていいの…?」
「まぁ、僕も最初性別間違えたかと思ったしわからなくもないけどさ」
「うへへ…あんまり褒めても…い、良いものは出ませんよ…?」
顔を赤くしてわかりやすく照れる平治。
「とにかく、成功したみたいで良かった。これからもその調子で科学武器を作って欲しいな」
「は、はい…!こんなボクでもお役に立てるなら…」
「ところで平治ちゃ…くんはなんで私達に様なんてつけてるの?それにタメ口でいいのに」
「はぁ!?い、いえいえいえ!そそ、そんなタメ口なんて恐れ多い…ボクたちの主に様をつけるのも敬うのも当然ですっ!」
「へぇ~…別に気にしなくていいのに」
「まぁ何でもいいや。別にどう話してこようと万夏たちの計画を妨害できるならそれで十分だよ」
「ま、万夏…?」
「敵だよ、僕らの。僕らの暮らすこの止まった世界を壊そうとするわからずやさ」
「!…な、なるほど…万夏というのですね…」
どことなく平治は闘志を燃やす。そこに冬馬は安心していた。
「さて、ボクはそろそろ理科室に戻りますね。お二人は…」
「帝中のところにでも行こうかな。みんなの様子を見て回ってるんだ」
「かしこまりました。な、なにかありましたら我々“十二使”を始めとした者たちに申し付けください…」
「うん。ありがとう」
「じゃねー平治ちゃ…くーん!」
「また間違えてる」
「うるさいなー可愛すぎて分かんなくなっちゃうの!」
「……あ、あはは…」
そう騒がしく話しながら二人は平治と別れる。平治もまた理科室へと足を運ぶのだった。
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