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第2話 石像の鳥

4 光の空へ

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「ゆいり、光る鳥が!」

 朝の教室に興奮こうふんして現れたるりなみを、ゆいりは石の破片になった石像たちを整理しながら落ち着いた表情でむかえる。
 今日までに、石像はすべて壊れてしまっていた。

「どうなさったんですか。ゆっくり教えてください」

 るりなみが、光る鳥が生まれたことを語るうちに……。

 窓の向こう、なだらかな山々を背景にした王都の空に、きらめくものが現れた。

「ゆいり、あの光はひょっとして!」

 きらめきは大きくなり、近づいてくるようだった。

 それは、光る鳥のれだった。

 群れは窓をすりぬけて部屋の中へ入ってくると、るりなみとゆいりの周りをおどりまわった。

 それから鳥たちは、さまざまな芸をくりひろげる。そのすべてが、色とりどりの光であらわされるのだった。い踊る鳥たちの体は虹色にじいろにゆらめき、歌う声にはどこか奥深いひびきがあって幻想的だった。

 るりなみとゆいりは、鳥たちの美しい芸に、言葉を交わすのも忘れて見入っていた。

 光をなびかせながら、軽やかに踊っていた一羽が、るりなみの周りをめぐって、ぴぃ! と鳴いた。

「君は……生まれ変わったんだね」

 るりなみの言葉を聞くと、鳥はいっそうまばゆくかがやいて踊り出した。
 彗星すいせいのように光がを引いて、まるで鳥の立派な尾羽おばねのようだった。



 やがて鳥たちは、朝の空に飛び去っていった。

「旅に出たのかなぁ」
「またどこかで会えるといいですね」

 二人はそうつぶやいて、鳥たちのきらめきが遠くの山の果てに見えなくなるまで、見送った。



第2話 石像の鳥  * おわり *
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