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[番外編] 第7話 虹の王冠

7 あの光のもとまで 

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 わぁわぁ、と階下かいか庭園ていえんや、窓のけられた部屋から、みんなの歓声かんせいがあがった。

 宮廷魔術師きゅうていまじゅつしゆいりが、王子るりなみをとっさに助けた一部いちぶ始終しじゅうを見ていたものもいたかもしれないし、あまりに大きな虹を見つけて声をあげた人たちも多いようだった。

 王宮おうきゅうのみんなが、窓を開けたり、回廊かいろうで立ち止まったりして、空を指さしている。

 そのうちに、王宮を包むような大きな虹の上に、もうひとつ、もうひと周り大きな虹がかかっていくのが、みんなに見えた。

 大きな大きな虹は、王宮から見わたせる王都おうとをもえて、びていった。

 そのふもとが、王都の向こうの草原そうげんおかの上に着地ちゃくちするのを見て──。

「るりなみ様」

 ゆいりはとうの上で、るりなみのかたせたまま、はっきりと言った。

「あの虹のふもとへ行ってみましょう」

 るりなみが「えっ」と声をあげる。
 おどろくのはあたりまえだろう。

「あそこまで? あんなに遠くまで? 今から?」

 ゆいりは固くうなずき、るりなみをきちんと立たせて、正面から向かい合った。

「国王陛下へいか──お父上には、あとで私から報告ほうこくします。と言っても、おこられるのはすべて私でしょうから……」

 るりなみは、ゆいりの言葉のいつもと違う調子にも驚いたようだった。
 何度か、はるかな向こうの虹のふもとと、ゆいりの顔を見くらべていたものの……。

「うん、行こう!」

 笑顔になったるりなみの返事を聞きとどけると、ゆいりは馬車ばしゃ手配てはいしに走った。


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