叫び

四出 無衣葉

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友人なんていたのだろうか。それすらも、今はわからない

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 入力中の予測変換の中身。

 個性の現れ、悩みの現れ。



 これは、私。本当に情けない、私



 時計が家にあると便利だと思い、どんなものが良いかと検索ボックスに「と」と入力した。すると、予測変換の最初に現れた文字は「友達」だった。

 昨日だったか、いや、一昨日だったか。検索ボックスに「友達の作り方」と打ち込んだのでその名残だろうと思う。今ではあの時何故それを調べたか、覚えてもいないが。

 友達が何故出来ないのかなど分かりきったことである。第一に、友達を作ろうとしないからであり、いつか前のように殴られ蹴られが日常になる可能性を恐れているからだ。他人を信用できなくなっているからだ。それなのに誰かに期待を抱くからだ。「この人なら」って。

 第二に、自分を高めようとする意思も、行動も何一つ怠っているからだ。他人の価値をカーストを勝手に自分の中で作り上げて、私は誰よりも下だと、彼らに何の得も与えられないと嘆くばかりだからだ。嘆いている間に全て終わってしまうというのに。

 最後に、私は私が醜いと思うあまりに、咄嗟に「嘘」が口から飛び出るからだ。それこそ醜さを象徴しているというのに。それも「誰でも嘘だとわかるような嘘」か「自分の価値を下げるための嘘」という、非生産的な嘘を吐く。

 誰かの下にいないと自分は生きていけない。「本当に私はダメダメで...」という愚痴を溢すような奴にダメなやつなんていない。一番ダメなのは私でないといけないから。学業や金銭の量なんかでは計れないところで、私は彼らより下に立っていなくてはならない。そんな強迫観念のようなものが生まれたのは何時からだったか。

 私の中では何よりも美しく、格好よく、尊く、生命のあるべき姿として映っていた、私の二人の幼馴染み。その内の一人が異様に落ち込んでいた時期からだったか。声をかけることも資格もないと思ってしまった自分の暗い心情からだったか。気味悪がられていると、怖い、不気味だと思われていると人伝に聞いてしまったからか。

 結局、誰かの力になることも出来ないほど自分で自分を貶めていたとき、私は彼らと友達になる資格を失ってしまったんだろう。幼い頃であれば、あの時、私が劣等感を抱くことなく、追い付こうと研鑽を積み重ねれば、私の憧れ、あの人達に追い付くことができたのではないか。あの人達と談笑することができたのではないか。「友人」として認めてくれていただろうか。

 全くといっていいほど話を交わすことは無くなった。彼らの友達となる「資格」は、小学生という幼い時間で「期限切れ」だったらしい。そこから会話を交わすことはなかったし、今でも私にとっては雲の上の人達だ。

 彼らは私と仲良くやっていこうとしてくれた。それこそ、こちらが申し訳なくなるくらいに。彼らを拒絶とまではいかなくとも、遠ざけたのは私だ。何だか触れてはならない、私が触れては汚れてしまうような気がしたから。腹に青アザを作り、脛にコブを作る私と関わることで、彼らの品位を下げてしまう気がしたから。

 でも、本当はただ怖がっていただけなのだろうと思う。身体の痛みに耐えるのは、継続される学校内での暴力に耐えるのは簡単だったけれど、心に入るダメージだけはどうにも怖くて仕方がなかったから。

 憧れは憧れのまま。願わくば彼らが幸せに日々を送っていますように。

 どうか、私のようにはなっていませんように。

 あの人達と会話出来る時が、いつか来ますように。
 
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