女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第49話 親子対面

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 バルクロンドを発って二日目の早朝、馬を急がせ続けてついに三人はアーフェンガルドの西の国境付近に到着した。

 時間を節約するため、国内を移動するのではなくバルコニアから北西へ弧を描くように領土の外縁部を移動したので、アリアたちが姿を現したのはアーフェンガルドの西に広がるエルリア平原だった。

 確かに魔物の軍団が押し寄せている。だが、
「あれは、何かしら?」

 アリアの目の先には、街の中へ入ろうとする魔物を弾き返す虹色の光の壁が見えた。

「魔物を防ぐ魔法陣よ。でもあの光は私が作った方の魔法陣だわ。お父様の魔法陣はやっぱりもたなかったみたいね」
「リーザさんが作ったんですか? 凄い!」
「ありがと。でもちょっとマズいわね。本当ならもっと強い光なのよ」
「どういうこと?」

 振り返るアリアにリーザは答えた。
「私の魔法陣はお父様のものより数倍強力なんだけど、それも破られそうになってるってことよ」
「では急ぎましょう。街に入って迎撃部隊と合流しないと」
「街に入るって……魔物たちが入口にいますけど?」
 ミサキが当然の疑問を口にしたが、同じくアリアも当然のように答えた。
「じゃあ蹴散らすしかないわね」

「ですよね……」
「はあ……」

「大丈夫よ。何もアイツらを全滅させようって言うんじゃないんだから。街の中にさえたどり着けばいいのよ」
「はあ……」

 溜息をつく仲間たちを置いて、緋色の髪の女騎士は馬を蹴った。
「行くわよ!」

「もうこうなりゃヤケクソだわ! ミサキ、覚悟はいい!?」
「はい!」
 三人の女たちは魔物のただ中に飛び込んで行った。

 爆炎と氷塊が緑の草原を彩り、剣と薙刀によって魔物たちの首が幾つも宙を舞う。
 だが突然の攻撃はほんの一時のことだった。
 魔物たちの死体で出来た通路を、三騎は走り抜けて行った。


「ローエンベルン殿、こちらにおいででしたか。その節は、有難うございました」
 アリアがリーザの父親であり宮廷魔術師でもあるエルネスト・フォン・ローエンベルンに再会したのは、西の国境の街イーゼルの市庁舎内に置かれた臨時の前線司令部でのことだった。

「こちらこそ、愚女がご厄介になっておるそうで恐れ入ります」
 リーザがアリアの仲間になってアーフェンガルドを出る時、エルネストは城にいなかった。
 久しぶりの親子対面ということになる。

「一応息災のようだな。アリア殿にご迷惑はかけておらぬだろうな?」
 エルネストは娘を軽く一瞥して目を逸らした。
「いえ、別に」
 リーザも目を背けたまま、腕組をして答える。

 気まずい雰囲気を取り繕うべく、アリアはミサキを紹介した。
「ローエンベルン殿、この者が三人目の守護聖女です」
「初めまして閣下。タカクラ・ミサキと申します」
「おお、そうでしたか。順調に見つかって良かった。さぞかしあなたにも娘がお世話になっておるのでしょうな。申し訳ない」

 エルネストがミサキに頭を下げた時、兵士が彼を呼びに来た。
「閣下。恐れ入りますが、会議室にお越し下さい」
「わかった。では皆さんもご一緒に。将軍に紹介いたしますので」
 宮廷魔術師はそう言って先を歩き出した。

「行きましょう二人とも」
 アリアが声をかけたが、
「私はここで待ってるわ。フン、あのクソ親父、何よ偉そうに。『ご迷惑はかけておらぬだろうな?』ですって? 私がいつ迷惑をかけたってのよ!?」
 腕組をしたまま仁王立ちで怒る美女を二人の仲間は宥めた。

「だれも迷惑かけられたなんて言ってないでしょう? そんなに怒らないでよ、ね?」
「そうですよ。『親孝行、したい時には親は無し』っていうことわざがわたくしの国にはありましてですね……」
「何がことわざよ! ばあさんかアンタは!」
 リーザは腕を取ろうとしたミサキの手を振り払った。
「わたくしに当たらないでくださいよ! あっ、お父様こっち見てますよ? ほら、早く行きましょう」
「イヤよ、もうイヤ! イヤったらイヤ!」
「ダメよリーザ。将軍には会わなきゃならないんだから。女王陛下が仰ってたでしょう?」
「アンタが会ったらいいじゃないの。私は言われてないもん」
 子供のようにむくれる魔法使いを見て、二人は目を見かわすと一つ頷いてリーザの両腕をそれぞれ掴んだ。

「ちょっと! やめて! イヤだったら! やめてぇぇぇぇ!!」
 周囲の兵士たちが何事かと集まる中、この国の長い歴史上で最強の魔法使いは、太股を露わにして廊下を引きずられて行った。


「なるほど、あなた方が何者であるかはよく分かりました。よくぞ駆け付けて下さった。礼を申します」
 クローネカーと名乗った将軍は女王マグダレーナの書いた書状を読み終えると、アリアたちにそう言った。

 魔法力で名を馳せただけあって、石造りの会議室には鎧姿の兵士よりも多くの魔法使いたちが席に着いており、将軍の席の隣にはエルネストが端然と座っている。

「しかしながら、部隊の指揮については将軍たる小官が任されております。なるべく私の指示に従っていただきたい」
 でっぷりと肥えた身体の将軍は、口髭を捻りながら細い目の奥を光らせた。チラチラと三人の美女たちを値踏みするような目である。特にリーザが気になる様子で、大きく開けた胸元からこぼれ落ちそうな胸の谷間と、太股から下が覗いているタイトスカートのスリットとを、何度も視線が往復している。

「無論です閣下。我らもそのつもりで参りました」
「さようですか。それなら結構、では早速状況を説明いたしましょう。どうぞお掛けください」
 女騎士の返答に満足したらしく、将軍は機嫌良さそうに開けてあった席を指し示した。

「現在、魔物の軍勢はこの街の西に居座っており、街の中への侵入を試みております。その数およそ200ないし300。幸い我が国には魔法使いの作った魔法陣があり、魔物はいまだこれを撃ち破れずにいます。ただ、一つ目の魔法陣はすでに突破されました」
 そこで将軍はちらりとリーザの父親の方を見た。

「現在二つ目の魔法陣が起動しておりますが、これはかなり強力です。念のためこの街の住民は領内の山岳地方へ避難させましたが、このまま上手く行けば、魔物たちは諦めて引き返すのではないかと考えております」
 そこでアリアは手を挙げないわけには行かなかった。

「失礼ですが将軍閣下。私の友人が申しますには、その二つ目の魔法陣も、間もなく破られそうであると」
 それが説明を遮られたことに対するものか、それとも発言の中身に対するものかわからないが、クローネカー将軍は一気に不機嫌そうになった。

「何ですと? 誰がそんないい加減なことを。我が国の魔法使いは極めて優秀ですぞ。大体破れかかっているとどうしてわかるのです?」
「それは私があの魔法陣を作った人間だからよ」
 リーザは金髪をかき上げながら将軍を見据えた。

「何!? あなたが? ローエンベルン殿、それは本当ですか?」
 将軍が度肝を抜かれた顔で訊ねると、宮廷魔術師は笑いを噛み殺したように言った。
「いや申し訳ない。言おうと思っていたのだがつい言いそびれてしまって。私も自分の魔法陣が破られるまでは知らなかったのですがね、どうやらそのようです。」

「二つ目の魔法陣が破れかかっているということもですか!?」
 将軍は今や真っ赤になっている。無理もない、とアリアはエルネストを見ながら思った。どうやらこの父親はやはり娘とどこか似ている。わざとからかって楽しんでいる風がある。

「いや、それは気づきませんでした。娘の魔法力は私より強いのですが、それでも防ぎきれるかどうか……」
「娘!? 貴殿の娘ということはまさか……」
 将軍は飛び上がらんばかりに驚いた。

「さようです将軍。この者が私の不肖の娘、ローエンベルンの魔女と呼ばれる魔法使いです」
「これが、あの……魔女……」
 勇猛なはずの将軍は恐怖の色の浮かんだ目で、目の前の美貌の魔法使いを見ている。先ほどまでの好色な目つきはいつのまにか吹き飛んだようだ。

「ちょっとアリア。女王からの手紙にはそういうこと書いてなかったの?」
「ええ……。あれには私たちが伝説の守護聖女であるということと、王城内も含めて、領内を自由に行き来させ、万事協力するようにとしか書いてなかったわね」
 そこへミサキが顔を出した。
「それにしても将軍のあの怯えようはただ事ではありませんわ。リーザさん、今までに一体何をしでかしたんです?」

 一つ咳払いが聞こえた。将軍が気を取り直したらしい。
「な、なるほど。つまり、リーザロッテ殿の魔法力のおかげで、より強力な魔法陣に守られていたというわけですな。しかし、とにかく魔法陣が破れかかっているのであれば対応を考えねば」
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