女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第50話 平原の戦い

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 結局、会議は夕方まで続いた。
 兵士たちは真剣に議論してはいるものの、魔法陣に守られている事と、住民の避難が完了している事が、彼らに緊張感を欠かせているようだった。

 会議が終わって退出する時、エルネストは娘を呼び止めた。
「リーザよ。あの魔法陣は見事だ。実を言うと私の魔法陣は魔物たちが現れたその日のうちに消滅したのだ。笑い事ではないぞ、これは厄介なことだ。どうやら魔物たちの力が強まっているらしい。もしお前の魔法陣が無ければ今頃はとうにこの国は魔物たちに蹂躙されていただろう」

「魔物たちの力が強まっているとは、何かあったのでしょうか」
 返事をしようとしないリーザの代わりに、アリアが訊ねた。

「詳しくはわかりません。しかし何か嫌な予感がしますな。防御を固めるよう将軍に進言しておくことにしましょう」
 そう言って宮廷魔術師は、もう娘の顔を見ようともせずに部屋を出て行った。


 翌朝。

「ホントにあのクソ親父ったら腹が立つわ。あーもう、私エルムーデに戻ろうかしら。それでそのまま魔王の城に乗り込んで、憂さ晴らしに魔物たちをぶっ飛ばしてやるのよ」

 街の元市庁舎内に作られた食堂で、リーザは怒りをぶちまけた。
 民間人はすでに避難しているため、街の酒場や料理屋は全て無人なので、兵隊用の食堂が設けられたのである。

「バカなこと言わないでよ。女王陛下に怒られるわよ」
「そうですよ。だいたいいい年して、いつまで親子喧嘩してるんですか、みっともない」
「小娘は黙ってらっしゃい!!」

 ミサキが何かを言いかけた時だった。
 凍った池の氷が割れるような音が大きく響くと共に、大地が揺れた。
「何でしょうか、この音」

 突然リーザが血相を変えて立ち上がった。
「マズい!! アリア、ミサキ、急いで街の入口へ!」
「何事なの!?」
「私の魔法陣が破られたわ!!」


 三人が街の入り口が見えるところまで来ると、すでに魔物たちが街の中へ入り込んでいた。
「行くわよ!」
 アリアの声で三人は一斉に魔物の群れに飛び込んで行く。

「防御を固めろ! 絶対にこれ以上進ませてはならん!」
 エルネストに率いられた魔法使いの部隊が躍り出た。その後ろからようやく現れた重装備の兵士たちが魔物に斬りかかる。さらに後方には、陣幕の中で何やら怒鳴り続けるクローネカー将軍の姿があった。

 敵は、よく見れば数は多いものの、種類から言えばさほど力のある魔物たちではない。四日の間に集められた兵の数を考えれば、何とか押し返せると思えた。

 だが、戦闘が始まっておよそ二時間後、人間たちは思わぬ苦戦の中にいた。
 さほど手強くはないはずの魔物たちが、意外にしぶといのである。

「数が減らないわね。リーザ、そっちはどう?」
 左隣で炎を放っている仲間に、アリアは呼びかけた。
「まだイケるけど、兵隊さんたちが限界みたいね」
「そうね……」
 確かに兵士たちの顔には疲労の色が濃い。負傷者もかなり出ているようだ。

 さらにアリアは今度は右で薙刀を振るっているミサキを見遣ったが、距離があるので声はかけられなかった。

 とにかくやるしかない。
 女たちは目の前の敵に神経を研ぎ澄ました。
 だがその時、草原の魔物たちの向こうに、新たな黒い影が押し寄せてくるのが見えた。
「最悪。敵の増援だわ」

 リーザの言葉通り、遠目にもはっきりとそれが魔物の群れであることが見て取れた。
「来るわよみんな!」
 アリアたちは身構えた。

 魔物たちでも味方の増援を得て勇気づけられる、ということがあるのかは分からないが、人間たちとそれまで対峙していた魔物たちは、明らかに勢いづいたようだった。
 一撃一撃が威力を増したようで、兵士たちが弾き飛ばされる光景があちこちで見られた。

 アリアたちの周りは、気づけば残りは僅かな兵士だけになっていた。迎撃部隊は各所で寸断されて、乱戦の様相を呈している。
 その綻びを突いて、魔物たちの一部は街の入り口から中心部へと続く大通りの中央を突き進んだ。

「いかん!」
 エルネストが短く叫んだ。その時、甲高い鳴き声と共に羽ばたいてきた大型の鳥の魔物が、その大きな嘴(くちばし)から巨大な火球を吐き出し、大通りの後方に設営されたクローネカー将軍のいる前線指揮所に向かって飛んで行った。
 衝撃音と火柱とが同時に上がり、テント仕立ての前線指揮所は将軍もろとも炎に包まれた。

「何ということだ……。誰か、急ぎ将軍の安否を確認せよ!」

 命令を受けた兵士が戻って来た時、結果はすでに表情が物語っていた。
「ダメか……」
「は。残念ながら、将軍以下、指揮所に詰めていた方々は全滅です……」
「やむを得ん。とにかく陣形を再編して……」
 エルネストが言いかけた時だった。
「閣下!!」

 先ほどの猛禽の魔物が、今度は急降下してきたのである。
 身構える間もなく、巨大な怪鳥は両足の鋭い鉤爪を振りかざし、エルネストたちの中へ突っ込んだ。

 反転して逃げ出そうとした兵士は頭を割られた。とっさに横へ飛びすさったエルネストは脇腹を斬り裂かれた。


 アリアたち三人の元へ、将軍の死亡と宮廷魔術師重傷という伝令がたどり着いたのは奇跡と言えた。思わず三人は持ち場を離れ、エルネストの所へ駆け戻った。

「ローエンベルン殿!」
「リーザさん、早く!!」
 リーザが父の元へ走り寄って来た時、宮廷魔術師は血に染まった身体で石畳の地面に横たわったまま、意識を失っていた。

「お父様……」
 美しい白皙の顔を蒼白にして、リーザは父の傍へ膝をつくとすぐに両手を傷口にかざし、全回復の魔法をかけた。
 生命が危ぶまれるほどの傷だったが、瞬く間に傷口がふさがっていく。

「凄い……リーザさん」
 感嘆するミサキの横で、リーザが人知れず額の汗を拭ったところを、アリアは見ていた。

 だが戦況は悪化の一途を辿っていた。
 さらに敵の新手が現れ、街の入り口付近にいた兵士たちは押し寄せる黒い波に飲み込まれた。
 四本足の、牛とも猪ともつかない巨大な魔物や、骸骨姿の剣士たちが雄叫びを上げながら近づいて来る。

「ミサキ! リーザとエルネスト殿を守って! 私はコイツらを食い止める!」
「はい!」
 群れをなして襲い来る魔物たちから倒れたエルネストとそれを介抱するリーザを守るべく、アリアとミサキは武器を構えて迎え撃った。

 だが、初めのうちは何とか押し返していたものの、徐々に敵はこちらを上回るようになってきていた。
 次第に劣勢になる二人。
 やはり魔物たちの力が強まっているようだ。アリアは二体の骸骨を斬り捨てたが、ガーゴイルたちに取り囲まれ、四方から乱打を浴びた。

「くううッ!」
「アリア様!!」
 とっさに駆け寄ろうとしたミサキの隙を突いて、別の方向から魔物の新手がリーザたちに迫る。
 慌てて戻りかけたミサキの背中に、ガーゴイルの一体が放った雷撃魔法が命中した。

「キャアアアアッ!!」
「ミサキ!!」
 倒れ込むミサキを助けようと、今度はリーザが飛び出す。
 そこをリザードマンたちに狙われ、袋叩きに遭ってしまう。大陸最強の魔法使いは、肉弾戦は決して得意ではない。

「アアアアアアッ!!」
 輝く金髪が乱れ、魔法使いは崩れ落ちた。
「リーザ!」
 アリアが何とか囲みを破り、トカゲたちを斬り倒した。痛む身体を引きずってミサキとリーザを助け起こすが、すでに三人は満身創痍である。

 リーザは這うようにして父の元へと戻った。まだエルネストの意識は回復しないようだ。
 だがそんな三人の前になおも敵が迫る。
 そしてその頭上には先ほどの怪鳥が数羽飛び回り、真っ黒な身体でこちらを狙いすましたように向かって来た。

「くっ……。このままでは……!」
 後ろを振り返るとエルネストを抱えたリーザが、動けないまま路上に座り込んでいる。
 アリアが剣を構えてその前に立ちはだかり、ミサキが焼けた背中のままリーザ親子の上に覆いかぶさった。

 猛禽の魔物は大きく嘴を開け、凄い速さで近づいて来る。覚悟を決めたアリアが剣を振りかざした時だった。

 突如、耳を聾するほどの轟音と共に怪鳥は稲妻に打たれ、煙を上げながら地面に叩きつけられた。

 さらに爆音が響き渡り、市街に侵入しようとしていた魔物たちが次々に吹き飛ばされていく。
 その向こうの平原でも同じように爆発が起こり、黒い波と化していた魔物の群れは、一部は火球の中で焼かれ、一部は地割れに飲み込まれ、一部は超高温の雷撃で蒸発した。

 呆気にとられるアリアが見たものは、目の前に落ちてきた燃える怪鳥の死体と、その周りに空から降り立った銀色の髪の人間たちだった。
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