女騎士アリア~凌辱の限りを尽くされながら、女だけのパーティは魔王討伐を目指す~

タバスコ野郎

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第51話 救いの手を伸べる者

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「何とか間に合った、とは言い難いようだな」
 アリアたちの前に突如現れた銀髪の人間たちの中で、リーダー格らしき長身の男が、いまだ炎を燻らせ続ける本営の方を苦々し気に見つめながら呟いた。

「エレンディアよ」
 男は少し離れた所に立っていた若い女を呼び寄せた。
「はっ」

 エレンディアと呼ばれた若い女は小走りに近づいた。
 年の頃はちょうどアリアぐらいだろうか。長い髪は銀髪ではなくやや薄いクリーム色をしていて、後ろで一本に束ねている。新雪を思わせる真っ白な肌に、秀でた鼻梁とやや上がり気味の目をした美女である。
 薄い水色の瞳と、それに合わせたかに思える明るい群青色の服の上半身には、白銀の胸当てを身に着けている。
 腰には細身の長剣を帯び、同じく白銀の籠手を両手に着けている様子は、彼女が剣士であることを物語っていた。

「エレンディアよ、まだ少し雑魚ザコ共が残っている。お前はマリンデンたちと共に、残った連中を片付けろ」
「かしこまりました」
「私は人間たちの手当てをする。フェルミア、パラメラス、一緒に来い」
「はっ」

 これもまた美しい顔の二人の男女が、長身の男の傍へ駆け寄った。
 エレンディアと言う名の女は、仲間を三人連れて魔物たちの方へと歩き出した。
「お待ちください!」
 状況はよく分からぬが、とにかくアリアはこの不思議な一団を率いている長身の男に声をかけた。

「私はラルディール王国のアリア・ベルヴァルトと申します。貴殿方は一体……」
 長身の男は思いのほか柔和な眼差しでアリアに向き直った。

「知っているよ。私の名はランドリオンだ。今は奴らを片付けるのが先だ。我々が何者で、何のためにここへ来たかを話し出すと長くなる。君は、傷の方はもう大丈夫なのかね?」

 ランドリオンと名乗った銀髪の男は、確かめるようにアリアの身体を見下ろした。アリアがいささか驚いたことに、今までの男たちと違って、その眼付きは好色さを全く感じさせないものだった。

「はい、大丈夫です。私も一緒に戦います」
「そうか。それならエレンディアと行くが良い。彼女と一緒なら安全だ」
 そう言うとランドリオンは、片手を振りながらエルネストの容態を見に行った。

 アリアは早速エレンディアの所へ歩み寄り、声をかけた。
「初めまして。アリアと申します」
「私はエレンディアだ。よろしく」

 エレンディアはアリアの傷ついた様子をちらりと見て、そっと手をかざした。
 暖かな光がアリアの傷を癒してくれた。
「とりあえずはこれで戦えるだろう」
 ぶっきらぼうな物言いとは裏腹に、透き通るような水色の瞳はどこか儚げだった。

 女であるアリアでも息を飲むほど美しい顔立ちではあるが、その瞳は何かを常に憂えているような、あるいは大きな悲しみを抱えているような、そんな風にアリアには思えた。

「有難うございます」
 小さく頷く間にエレンディアとその仲間が三人、いまだ残る魔物たちに向かっていく。
「ミサキ、リーザたちをお願いね」

 何にせよこちらに対して敵意はなさそうである。アリアは先ほどからずっとリーザ親子の前に立ちはだかっているミサキに後事を託すと、全く正体の分からぬ者たちの背中を追って駆けだした。


 その夜、夕食を終えたアリアたち三人は、市庁舎の一角にあるエルネストの部屋でランドリオン達の一行と机を挟んでいた。部屋の隅には寝台が置かれ、この部屋の主が身を横たえている。
 幸いエルネストはリーザの魔法のおかげで一命をとりとめた。並みの魔法使いの回復魔法では助からなかっただろうとは、怪我人自らの弁である。

 初めアリアは気を遣って別の部屋でと言ったのだが、ランドリオンがどうしてもエルネストも一緒にと言って譲らなかったのである。


 あの後、戦闘は長くは続かなかった。
 エレンディアを始めとする謎の一団は驚くべき戦闘力を発揮し、彼らが加わってから小一時間ほどで、魔物の群れは青々とした牧歌的な平原にその屍を晒すことになったのである。
「凄い……あれだけの敵が、こんなわずかな時間で片付くなんて」
 アリアは眼前に広がる緑の野に折り重なる魔物の死体を、呆気にとられながら見つめていた。


「昼間は突然のことで、驚かせてすまなかった。我々の正体も分からぬまま、よく協力してくれた、礼を言う」
 礼を言うとは言いながらも何故か威丈高(いたけだか)な態度と口調が、短気なミサキの癇に障ったようだ。正体不明の相手と同じくらいにこの国では奇異に映る異国の巫女は、やや尖った声で訊ねた。
「それで、あなた方は一体何者なのです?」

 一瞬アリアは仲間の無礼にひやりとしたが、ランドリオンは全く気にも留めていない様子であっさりと答えた。
「我々は、エルフ族だ」

 エルフ族――。思いがけない言葉に、アリアは息を飲んだ。確かに名は知っているが、その種族は遥か昔に人間たちの前から姿を消したと聞いている。

「エルフの方々のことは聞いたことがあります。しかし、我々の社会とは隔絶した生活を送っていらっしゃるものとばかり思っておりましたが、そのあなた方が何故我々を助けて下さったのでしょうか」

 ランドリオンは静かに一つ頷くと、驚くべきことを口にした。
「それは、魔王が復活した責任は我々エルフにあるからだ」

「どういうことですか、一体」
 アリアが身を乗り出して訊ねた。
「ついにこの話をする時が来たようだ。長くなるが、極めて重要なことなので良く聞いてくれたまえ」

 そう言って、エルフは遥かな時代の伝説を語り始めた――。
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