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第67話 再会
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魔王の城に潜り込んでからかなりの時間が経った。
アリアたちは地下の洞窟を抜け、いよいよ城内に入っていた。
ここまで数度にわたって敵と遭遇している。その都度倒してはいるが、三人の招かれざる客の存在は、すでに知られているものと思って間違いないだろう。
「くっ……キリがないわ。早く王女殿下の居場所を探り当てないと……」
新たに現れた魔物たちを撃退した後、アリアは悔しそうに呟いた。
「普通は地下牢とかに居そうなもんだけど、地下の洞窟の中はあんなに探したのに見つからなかったもんねぇ」
「ってことはこの上ですかね? 最上階に囚われているとか」
他の二人もそれぞれ見当を口にする。
「それにほら、勇者たちも探さなきゃなんないのよね? 大変よこれは。あのエルフのおっさん、いっつも面倒なこと言って来るのよ」
世界を救った勇者を見つけ出すという使命を『面倒』呼ばわりしたリーザは、腰に手を当てて憤っている。
「どこにいるんでしょうねぇ、勇者様たち。呼びかけるわけにもいきませんし……」
「当たり前でしょ、魔物を呼び出すようなもんよ。それよりアンタ若いんだからひとっ走り探してきなさいよ」
「嫌ですよそんなの。リーザさんこそ魔法でちゃちゃっと見つけられないんですか?」
二人の会話にアリアが割って入った。
「今のところ、海上で連合軍が敵の注意を引き付けてくれているから、城内の敵の数もこの程度ですんでいるけど、彼らもそう長くはもたないかも知れない。とにかく急ぎましょう!」
不気味な意匠の施された堅牢な造りの城内を進むことさらに数十分。
三人は一階ずつ探索しながら魔城の中を上へと昇っていた。すでにここが何階なのかわからない。
「ちょ、ちょっと、ハァハァ……まだ上が、あるわけ?」
リーザが両手で膝を抑えて息を喘がせている。白い薄衣の胸元から顔を覗かせるたわわな乳房が、上下に揺れる。
「そのようね……。さぁ、しっかりして二人とも」
「で、でもアリア様……はぁはぁ……この城は一体何階建てで、ここは何階なのでしょうか」
ミサキも疲れてきたのだろう。答えようがないことを聞いてくる。
「わからないけど、とにかく階上へ進むしかないわ」
三人は疲れた足を引きずるようにして、大理石のように滑らかな階段を、さらに上がり続けた。
やがて地上から確実に十階は数え、それぞれの足腰が真剣に悲鳴を上げ始めた頃、女たちはとある階の一角で、一際頑丈そうな壁に守られた石牢を発見した。
「あんなところに、牢があるなんて……」
三人が慎重に近づいていくと、牢の入り口には見張りの魔物が立っているのが見えた。
「見張りがいるってことは中に誰かいるってことよね。アリア、もしかしてあそこにいるのが王女様なんじゃない?」
「かも知れないわね。とにかくあの見張りを始末するわよ」
足音を忍ばせ、通路の壁に張り付いて牢に近づいて行く。
アリアがミサキに目で合図をすると、黒髪の巫女は白衣の袖口から細長い棒手裏剣を取り出し、魔物たち目がけて両手を一振りした。
「ギャッッ!!」
短い叫び声を上げて、二体の魔物はほぼ同時に頭を押さえた。その間にアリアが走り出し、一気に魔物の首を斬り裂いた。
足元に転がる二つの頭を蹴り飛ばしたところで、他の二人が牢の前までやってきた。
「見事な連携ね。私たちもなかなかサマになってきたんじゃない?」
リーザが軽く拍手する真似をしながら言った。
「そうですね。この調子で魔王も倒しちゃいましょうよ」
「あら、アンタここに来る前はたった三人だからどうのこうのって泣き言言ってたのに。もう大丈夫なのかしら」
「いえ、まあ、ちょっと不安はありますが……わたくしたちならやれますわ、きっと!」
ミサキは拳を握りしめて鼻息を荒くしている。
「さあ、入るわよ。リーザ、鍵をお願い」
「ほいきた」
魔法使いは杖の先を牢の鍵に向けると、気軽な調子で呪文を唱えた。
カチャン、と小気味のいい音とともに、鍵は役目を解かれて床へ落ちた。
やや重い牢の扉を開けて中へ入る。
薄暗い牢の中で、人影が動いた。
「アリア! 来てくれたのね!」
「殿下! レオノーラ王女様であらせられますか!?」
明かりの届くところまで現れた人影は、まぎれもなくラルディール王国の第一王女、レオノーラ・アレクシア・フォン・エーデルシュタインに違いなかった。
姿を認めるや真っ先に拝跪したアリアにならって、残る二人も同じ姿勢をとった。
アリアは胸が詰まって言葉が出ない。あの日のままの王女のドレスは、ボロボロに擦り切れている。今日に至るまで、この高貴な女性がどれほどの辛酸を舐めてきたのか、想像するに余りあるのだった。
アリアたちは地下の洞窟を抜け、いよいよ城内に入っていた。
ここまで数度にわたって敵と遭遇している。その都度倒してはいるが、三人の招かれざる客の存在は、すでに知られているものと思って間違いないだろう。
「くっ……キリがないわ。早く王女殿下の居場所を探り当てないと……」
新たに現れた魔物たちを撃退した後、アリアは悔しそうに呟いた。
「普通は地下牢とかに居そうなもんだけど、地下の洞窟の中はあんなに探したのに見つからなかったもんねぇ」
「ってことはこの上ですかね? 最上階に囚われているとか」
他の二人もそれぞれ見当を口にする。
「それにほら、勇者たちも探さなきゃなんないのよね? 大変よこれは。あのエルフのおっさん、いっつも面倒なこと言って来るのよ」
世界を救った勇者を見つけ出すという使命を『面倒』呼ばわりしたリーザは、腰に手を当てて憤っている。
「どこにいるんでしょうねぇ、勇者様たち。呼びかけるわけにもいきませんし……」
「当たり前でしょ、魔物を呼び出すようなもんよ。それよりアンタ若いんだからひとっ走り探してきなさいよ」
「嫌ですよそんなの。リーザさんこそ魔法でちゃちゃっと見つけられないんですか?」
二人の会話にアリアが割って入った。
「今のところ、海上で連合軍が敵の注意を引き付けてくれているから、城内の敵の数もこの程度ですんでいるけど、彼らもそう長くはもたないかも知れない。とにかく急ぎましょう!」
不気味な意匠の施された堅牢な造りの城内を進むことさらに数十分。
三人は一階ずつ探索しながら魔城の中を上へと昇っていた。すでにここが何階なのかわからない。
「ちょ、ちょっと、ハァハァ……まだ上が、あるわけ?」
リーザが両手で膝を抑えて息を喘がせている。白い薄衣の胸元から顔を覗かせるたわわな乳房が、上下に揺れる。
「そのようね……。さぁ、しっかりして二人とも」
「で、でもアリア様……はぁはぁ……この城は一体何階建てで、ここは何階なのでしょうか」
ミサキも疲れてきたのだろう。答えようがないことを聞いてくる。
「わからないけど、とにかく階上へ進むしかないわ」
三人は疲れた足を引きずるようにして、大理石のように滑らかな階段を、さらに上がり続けた。
やがて地上から確実に十階は数え、それぞれの足腰が真剣に悲鳴を上げ始めた頃、女たちはとある階の一角で、一際頑丈そうな壁に守られた石牢を発見した。
「あんなところに、牢があるなんて……」
三人が慎重に近づいていくと、牢の入り口には見張りの魔物が立っているのが見えた。
「見張りがいるってことは中に誰かいるってことよね。アリア、もしかしてあそこにいるのが王女様なんじゃない?」
「かも知れないわね。とにかくあの見張りを始末するわよ」
足音を忍ばせ、通路の壁に張り付いて牢に近づいて行く。
アリアがミサキに目で合図をすると、黒髪の巫女は白衣の袖口から細長い棒手裏剣を取り出し、魔物たち目がけて両手を一振りした。
「ギャッッ!!」
短い叫び声を上げて、二体の魔物はほぼ同時に頭を押さえた。その間にアリアが走り出し、一気に魔物の首を斬り裂いた。
足元に転がる二つの頭を蹴り飛ばしたところで、他の二人が牢の前までやってきた。
「見事な連携ね。私たちもなかなかサマになってきたんじゃない?」
リーザが軽く拍手する真似をしながら言った。
「そうですね。この調子で魔王も倒しちゃいましょうよ」
「あら、アンタここに来る前はたった三人だからどうのこうのって泣き言言ってたのに。もう大丈夫なのかしら」
「いえ、まあ、ちょっと不安はありますが……わたくしたちならやれますわ、きっと!」
ミサキは拳を握りしめて鼻息を荒くしている。
「さあ、入るわよ。リーザ、鍵をお願い」
「ほいきた」
魔法使いは杖の先を牢の鍵に向けると、気軽な調子で呪文を唱えた。
カチャン、と小気味のいい音とともに、鍵は役目を解かれて床へ落ちた。
やや重い牢の扉を開けて中へ入る。
薄暗い牢の中で、人影が動いた。
「アリア! 来てくれたのね!」
「殿下! レオノーラ王女様であらせられますか!?」
明かりの届くところまで現れた人影は、まぎれもなくラルディール王国の第一王女、レオノーラ・アレクシア・フォン・エーデルシュタインに違いなかった。
姿を認めるや真っ先に拝跪したアリアにならって、残る二人も同じ姿勢をとった。
アリアは胸が詰まって言葉が出ない。あの日のままの王女のドレスは、ボロボロに擦り切れている。今日に至るまで、この高貴な女性がどれほどの辛酸を舐めてきたのか、想像するに余りあるのだった。
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