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第69話 仇敵を討て
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薄暗い城内を、エレンディアは彷徨い歩いていた。
アリアたちと別れた後、案外あっさりと地下の洞窟を抜けられた。だが、ここはどこなのか見当もつかない。
かなり階段を上がったとは思うのだが、窓が一つもないこの城では、今が何階であるか参考にできるものなども何一つなかった。
均整の取れた身体を白く輝く防具に包み、抜き身を提げて各階を探索し続けている。
ここまでに斬って捨てた魔物は数知れない。いちいち数えたところで意味はないのだから、そんな無駄なことをする趣味は、エレンディアにはなかった。
このまま暴れ回っていれば、あの男は現れるだろうか。
いや、あの臆病者のことだ。自ら部下を率いて陣頭に立つなど考えもするまい。
奴は昔からそういう男だった。自分より強い者には媚を売り、弱い者は憂さ晴らしに虐げていた。もっとも、大人の中には奴より弱い者など存在しなかったので、奴が力で押さえつけられるのは必然的に年若い子供達だった。
ここにいるはずだ。
必ず見つけ出して、夫の無念を晴らしてやる。
怒りを新たにしながら歩き続けていると、広い回廊に出た。今までとは趣が異なる禍々しい意匠の回廊を歩き出した時、エレンディアははっきりと『気配』に気づいた。
ついに見つけた。
忘れようにも忘れられない。あの日、封印の間に微かに漂っていた邪悪な空気の残滓。それと全く同じ感覚を、エレンディアは嗅ぎ取ったのだ。
その気配は回廊の奥、突き当りにある真っ黒な扉のついた部屋へと続いていた。
間違いなく、奴はこの中にいる。剣の柄を握る手に、我知らず力が入った。
「覚悟しろ、アルラス」
重い扉を押し開け、エレンディアは中に入って行った。
周囲を警戒しつつ、蝋燭の灯るほの暗い部屋の中へと足を踏み入れる。
人影はない。だが先ほどまでの邪悪な気配は間違いないはずだった。
どこだ、どこにいる。
エレンディアが壁にかけられた大きな鏡の前を通り過ぎた時だった。
不意に灯りが消え、鼻を突くような刺激臭と共に黄色い煙が、真っ暗な室内にたちこめてきた。
「この臭いは……!」
すぐに鼻を押さえたがいくらか煙を吸い込んでしまったらしい。息が詰まり、頭の奥が痺れてきた。
「くっ……しまった……」
薄れゆく意識の中で、エレンディアは己の迂闊さを呪っていた。
目を開けた時、部屋の中は灯りが戻っていた。先ほどよりも火のついた蝋燭の数が増え、かなり明るくなっている。
なぜか視界に奇妙な違和感を覚えたので周りを見渡してみる。そこで初めてエレンディアは自分が僅かに宙に浮いていることに気づいた。少し足が離れる程度の高さである。
両の手足は磔のように伸びているが、身動きは取れない。
身体にはそれ以外変わったところは無いのだが、まるで鎖で縛られたようだ。つまり今自分は宙に浮いた状態で目には見えない何かによって拘束されているらしい。
「何だこれは、一体どうなっている」
手足に力を込めてその何かを振りほどこうとするが、自分の身体とは思えないほどピクリとも動かなかった。
「気の強さは昔からだな。エレンディア」
記憶に残る忌々しい声が聞こえた。いつの間に現れたのか、エレンディアが浮かんでいる壁際の反対に、紫の身体と濃紺の髪色を持った男が立っていた。
「アルラス!! やはりここにいたか!」
もしも視線が物理的な矢となって飛んで行くものなら、バルグレンはその紫色の顔を一瞬で串刺しにされていただろう。
エルフの女戦士がかつての同胞に向けた眼差しは、それほどまでに苛烈を極めた。
「アルラスか……。懐かしい名だ」
不敵な笑みを浮かべて、仇敵はゆっくりと近づいてきた。その余裕ぶりが、さらにエレンディアの灼熱の怒りを煽った。
「いい顔だ。さぞ私が憎かろうな」
真正面に立ったバルグレンは、囚われのエルフの白い頬に手を当てた。顔を撫でると次はクリーム色の髪に手を伸ばす。
「美しい……。実に美しい。千年前より、さらに美貌に磨きがかかったようだ。夫を失った悲しみが、そうさせるのか? だとしたらお前は俺に感謝せねばならんな」
「寝言を言うなよ、裏切り者が。貴様だけは、この命に代えても必ず報いを受けさせてやる!」
「ほう、その状態でか? 負けず嫌いなお前らしく、自分の立場がまだわかっていないようだ。お前は自由を奪われた。次に奪われるのは……命か」
バルグレンは虜囚の喉を絞めた。
「うぐぅっ!」
だがすぐに手を離すと、今度はエレンディアの股間をまさぐり、服の上から秘所を掴んだ。
「キャアッ!!」
中指が割れ目の位置に行き当たり、ゆっくりと埋まっていく。
「それとも、貞操か。どちらを選ぶ?」
「くっ……! 誰が貴様の慰みものになどなるか。死んだ方がマシだ。雷よ降り注げ!」
エレンディアは声を張り上げて呪文を唱えたが、周囲には何の変化もない。
「そんな……何故……?」
「クックックッ。教えてやろう。お前が気を失っている間に、呪文封じの術をかけておいたのだ」
「卑怯者め!」
睨み据えたところで、だがどうなるものでもなかった。
「もう一度聞く。俺の女として生き延びるか、それともこのまま亡き夫に操を立てて嬲り殺しに合うか、どちらを選ぶ?」
「すでに答えたはずだ。記憶力が無いのか貴様は」
怒気を通り越していっそ冷酷ともいえる声音だった。
狡猾な顔に嗜虐的な笑みを浮かべて、バルグレンは頷いた。
「よかろう。ではせっかくなのでな。この際両方楽しませてもらうとしよう」
エレンディアが身に着けている白銀の籠手や胸当ての前で、バルグレンは人差指を軽く振る。
乾いた金属音をたてて、エルフの女戦士を護る防具は床へ落ちた。
そして次の一振りで、上半身の服は頭の上まで上がって脱げ、下半身の服は防具と同じく床に落ちた。
「や、やめろ!!」
だが憎き夫の仇は、やめるどころか下卑た笑いに顔を歪めて手を伸ばし、生まれたままの姿になった元同胞の白い乳房を揉んだ。
「貴様……! その汚らわしい手を離せ!」
「この期に及んでまだそんな強気でいられるのは何故だ? お前はもはやどうすることもできず、この俺にされるがままの凌辱を受けるだけなんだぞ」
言葉通り、エレンディアは仇敵に唇を奪われた。
「むううっ!」
片手で胸を揉まれながら、もう片方の手が股間を這い回る。
「千年間、さぞ淋しかっただろう。今すぐ女の悦びを取り戻させてやるからな。我が友ファウリオンへのせめてもの手向けだ」
そう言ってバルグレンは、エレンディアの裸体を貪るように愛撫し始めた。
アリアたちと別れた後、案外あっさりと地下の洞窟を抜けられた。だが、ここはどこなのか見当もつかない。
かなり階段を上がったとは思うのだが、窓が一つもないこの城では、今が何階であるか参考にできるものなども何一つなかった。
均整の取れた身体を白く輝く防具に包み、抜き身を提げて各階を探索し続けている。
ここまでに斬って捨てた魔物は数知れない。いちいち数えたところで意味はないのだから、そんな無駄なことをする趣味は、エレンディアにはなかった。
このまま暴れ回っていれば、あの男は現れるだろうか。
いや、あの臆病者のことだ。自ら部下を率いて陣頭に立つなど考えもするまい。
奴は昔からそういう男だった。自分より強い者には媚を売り、弱い者は憂さ晴らしに虐げていた。もっとも、大人の中には奴より弱い者など存在しなかったので、奴が力で押さえつけられるのは必然的に年若い子供達だった。
ここにいるはずだ。
必ず見つけ出して、夫の無念を晴らしてやる。
怒りを新たにしながら歩き続けていると、広い回廊に出た。今までとは趣が異なる禍々しい意匠の回廊を歩き出した時、エレンディアははっきりと『気配』に気づいた。
ついに見つけた。
忘れようにも忘れられない。あの日、封印の間に微かに漂っていた邪悪な空気の残滓。それと全く同じ感覚を、エレンディアは嗅ぎ取ったのだ。
その気配は回廊の奥、突き当りにある真っ黒な扉のついた部屋へと続いていた。
間違いなく、奴はこの中にいる。剣の柄を握る手に、我知らず力が入った。
「覚悟しろ、アルラス」
重い扉を押し開け、エレンディアは中に入って行った。
周囲を警戒しつつ、蝋燭の灯るほの暗い部屋の中へと足を踏み入れる。
人影はない。だが先ほどまでの邪悪な気配は間違いないはずだった。
どこだ、どこにいる。
エレンディアが壁にかけられた大きな鏡の前を通り過ぎた時だった。
不意に灯りが消え、鼻を突くような刺激臭と共に黄色い煙が、真っ暗な室内にたちこめてきた。
「この臭いは……!」
すぐに鼻を押さえたがいくらか煙を吸い込んでしまったらしい。息が詰まり、頭の奥が痺れてきた。
「くっ……しまった……」
薄れゆく意識の中で、エレンディアは己の迂闊さを呪っていた。
目を開けた時、部屋の中は灯りが戻っていた。先ほどよりも火のついた蝋燭の数が増え、かなり明るくなっている。
なぜか視界に奇妙な違和感を覚えたので周りを見渡してみる。そこで初めてエレンディアは自分が僅かに宙に浮いていることに気づいた。少し足が離れる程度の高さである。
両の手足は磔のように伸びているが、身動きは取れない。
身体にはそれ以外変わったところは無いのだが、まるで鎖で縛られたようだ。つまり今自分は宙に浮いた状態で目には見えない何かによって拘束されているらしい。
「何だこれは、一体どうなっている」
手足に力を込めてその何かを振りほどこうとするが、自分の身体とは思えないほどピクリとも動かなかった。
「気の強さは昔からだな。エレンディア」
記憶に残る忌々しい声が聞こえた。いつの間に現れたのか、エレンディアが浮かんでいる壁際の反対に、紫の身体と濃紺の髪色を持った男が立っていた。
「アルラス!! やはりここにいたか!」
もしも視線が物理的な矢となって飛んで行くものなら、バルグレンはその紫色の顔を一瞬で串刺しにされていただろう。
エルフの女戦士がかつての同胞に向けた眼差しは、それほどまでに苛烈を極めた。
「アルラスか……。懐かしい名だ」
不敵な笑みを浮かべて、仇敵はゆっくりと近づいてきた。その余裕ぶりが、さらにエレンディアの灼熱の怒りを煽った。
「いい顔だ。さぞ私が憎かろうな」
真正面に立ったバルグレンは、囚われのエルフの白い頬に手を当てた。顔を撫でると次はクリーム色の髪に手を伸ばす。
「美しい……。実に美しい。千年前より、さらに美貌に磨きがかかったようだ。夫を失った悲しみが、そうさせるのか? だとしたらお前は俺に感謝せねばならんな」
「寝言を言うなよ、裏切り者が。貴様だけは、この命に代えても必ず報いを受けさせてやる!」
「ほう、その状態でか? 負けず嫌いなお前らしく、自分の立場がまだわかっていないようだ。お前は自由を奪われた。次に奪われるのは……命か」
バルグレンは虜囚の喉を絞めた。
「うぐぅっ!」
だがすぐに手を離すと、今度はエレンディアの股間をまさぐり、服の上から秘所を掴んだ。
「キャアッ!!」
中指が割れ目の位置に行き当たり、ゆっくりと埋まっていく。
「それとも、貞操か。どちらを選ぶ?」
「くっ……! 誰が貴様の慰みものになどなるか。死んだ方がマシだ。雷よ降り注げ!」
エレンディアは声を張り上げて呪文を唱えたが、周囲には何の変化もない。
「そんな……何故……?」
「クックックッ。教えてやろう。お前が気を失っている間に、呪文封じの術をかけておいたのだ」
「卑怯者め!」
睨み据えたところで、だがどうなるものでもなかった。
「もう一度聞く。俺の女として生き延びるか、それともこのまま亡き夫に操を立てて嬲り殺しに合うか、どちらを選ぶ?」
「すでに答えたはずだ。記憶力が無いのか貴様は」
怒気を通り越していっそ冷酷ともいえる声音だった。
狡猾な顔に嗜虐的な笑みを浮かべて、バルグレンは頷いた。
「よかろう。ではせっかくなのでな。この際両方楽しませてもらうとしよう」
エレンディアが身に着けている白銀の籠手や胸当ての前で、バルグレンは人差指を軽く振る。
乾いた金属音をたてて、エルフの女戦士を護る防具は床へ落ちた。
そして次の一振りで、上半身の服は頭の上まで上がって脱げ、下半身の服は防具と同じく床に落ちた。
「や、やめろ!!」
だが憎き夫の仇は、やめるどころか下卑た笑いに顔を歪めて手を伸ばし、生まれたままの姿になった元同胞の白い乳房を揉んだ。
「貴様……! その汚らわしい手を離せ!」
「この期に及んでまだそんな強気でいられるのは何故だ? お前はもはやどうすることもできず、この俺にされるがままの凌辱を受けるだけなんだぞ」
言葉通り、エレンディアは仇敵に唇を奪われた。
「むううっ!」
片手で胸を揉まれながら、もう片方の手が股間を這い回る。
「千年間、さぞ淋しかっただろう。今すぐ女の悦びを取り戻させてやるからな。我が友ファウリオンへのせめてもの手向けだ」
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