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▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
1-28 嗚呼林打弓部〔P2〕
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sideシロ
…… …
…
薄っすらとした白い熱が睫毛の隙間に触れると、眠りの浅さから直ぐに気が付く。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
「……ン……あぁ」スト
手に握るナイフに気が付きそれを置き、そして寝転んだまま軽く伸びをしつつ腕時計を見る。
夜明けは5時過ぎってところか。
あっちとの時差と言うのか時間の差異はほとんど無さそうか。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
一晩中聴いていたさざ波の音は気にならなくなった?
「ふぅーーー~… 」コキッパキッ
それからゆっくりと身体を起こし、首や腰を回しながら脳を目覚めさせる。
やっぱこんだけ着込んだまま寝るのはかなりストレスだな。
昨夜は風呂も入ってないし。
しかも地面だし。
薄手の防刃ベストとガードを付けた上から着るモノトーンの迷彩上下には、当然寝心地などと言う快適さは求め様もない。
けどヘルメットはやめて正解だった。
これで更に首まで辛かったらマジでホームシックだよ。
トポっトポっバシャバシャバシャっ
「ふぅーーっ」
濾過機能付のペットボトルから零す水で顔を洗う。
この水は昨日周囲を調べたおりに汲んだ森の湧水で、寝る前に少量飲んでみたけど今のところ吐き気腹痛等は無し。
シャコシャコシャコシャコ…
トポトポっガラガラガラガラ…ベシャ
「ハァーーーーっすっきり」
歯磨きも終え次は朝食。
シャカシャカシャカシャカっ
もぐもぐもぐもぐ…ゴクゴクっ
もぐもぐもぐもぐ…ゴクゴクっ
うん、何千回食っても美味いな。
一晩のホームレスで受けたダメージを癒やすプロテインとバナナは最強。
「…フ」
だけど朝日に照らされ漏れ出るのは自嘲の息。
それは同時に痛感した当たり前の日常の有難みだった。
「ぃよっと」ガサっ
リュックを背負い斜め掛けしたクロスボウは身体の前へ。
んじゃ今日の予定は平原を半日程進んでみるかな。
自転車に跨りつつコンパスを確認すると、GSから出た正面方向に当たる森の切れ目は北西を指している。
向こうのGSの入口は南東方向だったから異世界では方位がほぼ真逆か…
何か法則性はあるのか?
鏡合わせにはとても見えないけど。
いやそれは後回しだな。
情報が少しもない以上いくら考えても無駄だしそんな余裕もない。
自転車で普通に走ると大体時速10~13kmだから、辺りを警戒しつつだから10kmとして……先ずは3時間くらいを目安に行ってみるか。
「さってと、上手く合流出来るかねぇ」
そう独りごちながらペダルに体重を乗せた。
ジャリシャリシャリカッカッシューーーー…
30分と掛からずに右手の森は終わり、右方は見渡す限りの平原が広がっている。
シャリシャリジャーーーーーー…
オレは時折そっちを確認しつつ多分踏みならされたであろう草の少ない左手の森沿いを走り続けている。
けどなぁ…
あまりに一本道過ぎてホントにこっちで良いのか逆に心配になる。
つっても当ては一切無いんだから先ずは行けるだけ行ってみるしかない。
って冒険ぽいっ
オレはナビも何もないこの不便な筈の環境に、初めてやるゲームの世界に入った時みたいな湧き立ちを覚えた。
……
…
ゴクゴクゴクゴクゴクっ
「ふぅ… 」
出発から2度目の休憩。
「………、………、お……… 」
あれはカバか?サイ?
移動中たまに見かける動物は記憶の物よりやや大きい気がしたけど、計測可能距離2kmを超えた遠方では実寸不明。
それに進路上にいるのならまだしも、ワザワザ止まったり近付いたりして確かめるようなバカをする気はない。
明らかに見たことない形状の動物もいたし。
とにかくゾンビのいる世界に迷い込んだくらいの気で安全を第一に先を急ぐのみ。
……
…
ジャーーーーーーーーーー…ジィィっ…
何かしらの収穫を…と走り続けて4時間近く。
…
…
周囲の確認をしつつ見る先は、まだまだ森と平原が延々と続く。
ゴクっゴクゴクっ
「ふぅ… 」
今日はここまで…だな。
カッカシッカシッ…
そう言い聞かせ向きを変える。
ジャリシャリシャリカッカッシューーーー…
正直ヒロ君の安否は気に掛かる。
だからこうして引き返している今も "もう少し進もう" と言ってくる自分も居て…
けど油断=即、死。
取り返しのつかない場面と言うのは予測や認識の外から一瞬で訪れてしまう。
人の力では抗えない何かとはそう言うもの。
けどここに来てなきゃ何をしてた?
ヒロ君の事を心配しつつ仕事?昼寝?
「フ… 」
でもオレはこっちに来た。
心配の種に手が届く場所に。
なら欲張るな。
GPSで詳細な地図が見られる海外ですら場所によっては踏み入っちゃいけない所がある。
ここはどこだ?
あっちの方は?
進む方向すら分かっていないオレにとってこの世界はそれ以上の場所なはず。
だから一歩ずつ。
確かめながら進むのが最善の最大限だ。
……
…
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
ジャーーーーーー…ジジィ。
「なんとか無事に帰還…っと」ザっ…
グっグっグィっグっグっグ…
流石に足が怠いと感じ疲労した脚を曲げ伸ばし。
それから慎重にまわりを警戒しつつ食事に入る。
もぐもぐもぐもぐ…
カレーパン美味っ
やっぱカレーはライスよりパンだよ。
「ゴクっゴクっ…ふぅ… 」
けど明日はどうするかな。
パリっもぐもぐもぐもぐ…
手巻きも美味いけど、米を食うとやっぱあったかい味噌汁が欲しくなるな。
視線の先にあるGSを見て、"一旦帰るか" という考えが浮かぶ。
"30分強" と言うマンションまでの時間と共に。
……
…
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードスッ』
うん。
斜陽に当てられながら射つクロスボウは昨日よりも装填から発射がスムーズになり精度も上がった。
キリキリキリキリキリキリ…
『バシュッーードッ』
よし。
部屋に戻ると言う選択肢は直ぐに捨てた。
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードッ』
「…フゥ~… 」
それは思いを鈍らせる。
キリキリキリキリキリキリ…
『ビシュッーードッ』
「……… 」
この武器を用意した覚悟を。
やり遂げる為の意志を。
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードッ』
こうして未踏地域での2日目が暮れていった。
……
…
翌朝。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
「…はぁ」
そろそろ起きるか。
陽もすっかり空へと上がった頃にのんびり起床。
今日からは野宿を挟み3日程進んでみることに決めたため、退避場所もあるこの場所で眠れるだけ眠ることにした。
けど時間はまだ8時。
2回目となると野宿も少しは慣れたけど、身体の状態はひたすら萎えて眠れない。
そしていつも通り朝の支度に掛かる。
「っし行くか」
カシっカシっカシっ…
今日心掛けることはペース配分。
昨日も無理をしたつもりは無かったけど、往復7時間弱はそれなりに消耗した。
幸い今朝の感じから疲れは残ってはいなさそうだけど、それでも今日から2~3日漕ぎ進むことを考えれば疲労の蓄積は免れないはず。
カシっカシっジャーーーーーーーー…
だから昨日より気持ちペースを落とす。
この場所ではパフォーマンスの低下が命に関わる可能性があるから。
そう言い聞かせて逸る気持ちに蓋をする。
……
…
3時間後。
ジャーーーーーーーー…カシっカシっ
…
…
…ん⁉︎
昨日進んだ地点に着く手前、進行方向の彼方に動く物を捉えた気がした。
『ジジィィッ』
直ぐに木の側へ寄り隠れる様に身を潜ませ、そして双眼鏡で確認をする。
…
…
((~~…ん、ん、ん))
対象が2km以上離れていてボヤける中、ピントを調整し目を凝らす。
けど多分…人だよなぁアレ。
…
…
((ん、ん、ん~… ))
誰だ?
少しずつ近付いてくる小さな人影。
…
…
誰だ…
誰だ~……って「あの子か?っぽいぞ⁉︎ 」
思わず口に出た安堵の喜びは双眼鏡を動かして、一緒であろうヒロ君を探す。
…
…
「………、……、…… 」
が居ない~~…ぞ。
何でだ?
追い掛けられてる?…感じでもない。
けどこっちに向かって走って来てる。
…
…
どう言う状況だ?
とは言え直接確認するしか手はない…か。
オレは最後にもう一度周囲に危険が無いことを確かめてから、身に付けた装備と共に彼女の元へと急ぎ向かった。
…… …
…
薄っすらとした白い熱が睫毛の隙間に触れると、眠りの浅さから直ぐに気が付く。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
「……ン……あぁ」スト
手に握るナイフに気が付きそれを置き、そして寝転んだまま軽く伸びをしつつ腕時計を見る。
夜明けは5時過ぎってところか。
あっちとの時差と言うのか時間の差異はほとんど無さそうか。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
一晩中聴いていたさざ波の音は気にならなくなった?
「ふぅーーー~… 」コキッパキッ
それからゆっくりと身体を起こし、首や腰を回しながら脳を目覚めさせる。
やっぱこんだけ着込んだまま寝るのはかなりストレスだな。
昨夜は風呂も入ってないし。
しかも地面だし。
薄手の防刃ベストとガードを付けた上から着るモノトーンの迷彩上下には、当然寝心地などと言う快適さは求め様もない。
けどヘルメットはやめて正解だった。
これで更に首まで辛かったらマジでホームシックだよ。
トポっトポっバシャバシャバシャっ
「ふぅーーっ」
濾過機能付のペットボトルから零す水で顔を洗う。
この水は昨日周囲を調べたおりに汲んだ森の湧水で、寝る前に少量飲んでみたけど今のところ吐き気腹痛等は無し。
シャコシャコシャコシャコ…
トポトポっガラガラガラガラ…ベシャ
「ハァーーーーっすっきり」
歯磨きも終え次は朝食。
シャカシャカシャカシャカっ
もぐもぐもぐもぐ…ゴクゴクっ
もぐもぐもぐもぐ…ゴクゴクっ
うん、何千回食っても美味いな。
一晩のホームレスで受けたダメージを癒やすプロテインとバナナは最強。
「…フ」
だけど朝日に照らされ漏れ出るのは自嘲の息。
それは同時に痛感した当たり前の日常の有難みだった。
「ぃよっと」ガサっ
リュックを背負い斜め掛けしたクロスボウは身体の前へ。
んじゃ今日の予定は平原を半日程進んでみるかな。
自転車に跨りつつコンパスを確認すると、GSから出た正面方向に当たる森の切れ目は北西を指している。
向こうのGSの入口は南東方向だったから異世界では方位がほぼ真逆か…
何か法則性はあるのか?
鏡合わせにはとても見えないけど。
いやそれは後回しだな。
情報が少しもない以上いくら考えても無駄だしそんな余裕もない。
自転車で普通に走ると大体時速10~13kmだから、辺りを警戒しつつだから10kmとして……先ずは3時間くらいを目安に行ってみるか。
「さってと、上手く合流出来るかねぇ」
そう独りごちながらペダルに体重を乗せた。
ジャリシャリシャリカッカッシューーーー…
30分と掛からずに右手の森は終わり、右方は見渡す限りの平原が広がっている。
シャリシャリジャーーーーーー…
オレは時折そっちを確認しつつ多分踏みならされたであろう草の少ない左手の森沿いを走り続けている。
けどなぁ…
あまりに一本道過ぎてホントにこっちで良いのか逆に心配になる。
つっても当ては一切無いんだから先ずは行けるだけ行ってみるしかない。
って冒険ぽいっ
オレはナビも何もないこの不便な筈の環境に、初めてやるゲームの世界に入った時みたいな湧き立ちを覚えた。
……
…
ゴクゴクゴクゴクゴクっ
「ふぅ… 」
出発から2度目の休憩。
「………、………、お……… 」
あれはカバか?サイ?
移動中たまに見かける動物は記憶の物よりやや大きい気がしたけど、計測可能距離2kmを超えた遠方では実寸不明。
それに進路上にいるのならまだしも、ワザワザ止まったり近付いたりして確かめるようなバカをする気はない。
明らかに見たことない形状の動物もいたし。
とにかくゾンビのいる世界に迷い込んだくらいの気で安全を第一に先を急ぐのみ。
……
…
ジャーーーーーーーーーー…ジィィっ…
何かしらの収穫を…と走り続けて4時間近く。
…
…
周囲の確認をしつつ見る先は、まだまだ森と平原が延々と続く。
ゴクっゴクゴクっ
「ふぅ… 」
今日はここまで…だな。
カッカシッカシッ…
そう言い聞かせ向きを変える。
ジャリシャリシャリカッカッシューーーー…
正直ヒロ君の安否は気に掛かる。
だからこうして引き返している今も "もう少し進もう" と言ってくる自分も居て…
けど油断=即、死。
取り返しのつかない場面と言うのは予測や認識の外から一瞬で訪れてしまう。
人の力では抗えない何かとはそう言うもの。
けどここに来てなきゃ何をしてた?
ヒロ君の事を心配しつつ仕事?昼寝?
「フ… 」
でもオレはこっちに来た。
心配の種に手が届く場所に。
なら欲張るな。
GPSで詳細な地図が見られる海外ですら場所によっては踏み入っちゃいけない所がある。
ここはどこだ?
あっちの方は?
進む方向すら分かっていないオレにとってこの世界はそれ以上の場所なはず。
だから一歩ずつ。
確かめながら進むのが最善の最大限だ。
……
…
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
ジャーーーーーー…ジジィ。
「なんとか無事に帰還…っと」ザっ…
グっグっグィっグっグっグ…
流石に足が怠いと感じ疲労した脚を曲げ伸ばし。
それから慎重にまわりを警戒しつつ食事に入る。
もぐもぐもぐもぐ…
カレーパン美味っ
やっぱカレーはライスよりパンだよ。
「ゴクっゴクっ…ふぅ… 」
けど明日はどうするかな。
パリっもぐもぐもぐもぐ…
手巻きも美味いけど、米を食うとやっぱあったかい味噌汁が欲しくなるな。
視線の先にあるGSを見て、"一旦帰るか" という考えが浮かぶ。
"30分強" と言うマンションまでの時間と共に。
……
…
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードスッ』
うん。
斜陽に当てられながら射つクロスボウは昨日よりも装填から発射がスムーズになり精度も上がった。
キリキリキリキリキリキリ…
『バシュッーードッ』
よし。
部屋に戻ると言う選択肢は直ぐに捨てた。
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードッ』
「…フゥ~… 」
それは思いを鈍らせる。
キリキリキリキリキリキリ…
『ビシュッーードッ』
「……… 」
この武器を用意した覚悟を。
やり遂げる為の意志を。
キリキリキリキリキリキリ…
『シュゥッーードッ』
こうして未踏地域での2日目が暮れていった。
……
…
翌朝。
『ザザァーーーー…ザザァーーーーァァ…』
「…はぁ」
そろそろ起きるか。
陽もすっかり空へと上がった頃にのんびり起床。
今日からは野宿を挟み3日程進んでみることに決めたため、退避場所もあるこの場所で眠れるだけ眠ることにした。
けど時間はまだ8時。
2回目となると野宿も少しは慣れたけど、身体の状態はひたすら萎えて眠れない。
そしていつも通り朝の支度に掛かる。
「っし行くか」
カシっカシっカシっ…
今日心掛けることはペース配分。
昨日も無理をしたつもりは無かったけど、往復7時間弱はそれなりに消耗した。
幸い今朝の感じから疲れは残ってはいなさそうだけど、それでも今日から2~3日漕ぎ進むことを考えれば疲労の蓄積は免れないはず。
カシっカシっジャーーーーーーーー…
だから昨日より気持ちペースを落とす。
この場所ではパフォーマンスの低下が命に関わる可能性があるから。
そう言い聞かせて逸る気持ちに蓋をする。
……
…
3時間後。
ジャーーーーーーーー…カシっカシっ
…
…
…ん⁉︎
昨日進んだ地点に着く手前、進行方向の彼方に動く物を捉えた気がした。
『ジジィィッ』
直ぐに木の側へ寄り隠れる様に身を潜ませ、そして双眼鏡で確認をする。
…
…
((~~…ん、ん、ん))
対象が2km以上離れていてボヤける中、ピントを調整し目を凝らす。
けど多分…人だよなぁアレ。
…
…
((ん、ん、ん~… ))
誰だ?
少しずつ近付いてくる小さな人影。
…
…
誰だ…
誰だ~……って「あの子か?っぽいぞ⁉︎ 」
思わず口に出た安堵の喜びは双眼鏡を動かして、一緒であろうヒロ君を探す。
…
…
「………、……、…… 」
が居ない~~…ぞ。
何でだ?
追い掛けられてる?…感じでもない。
けどこっちに向かって走って来てる。
…
…
どう言う状況だ?
とは言え直接確認するしか手はない…か。
オレは最後にもう一度周囲に危険が無いことを確かめてから、身に付けた装備と共に彼女の元へと急ぎ向かった。
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