RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi

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▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ

2-15 Parallelogram〜 並行私片形

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side第四砦街ドーズ保安部員

「交代だ」
「おっ早いな、有難いぜ」

そう言って深夜番の同僚は嬉しそうに中へ戻る。


((まだ戻って来てないんだな))

((……あぁ))

イグアスの住処を見ながら確認すると、仲間からは不安そうな返事が返って来た。

もしかして何か有ったのか?

そんな思いが過る俺に

((それにしてもあのクソ団長ナーグスめ、こんな時にまたも気紛れを起こしやがって… ))

苛立ちを露わにした仲間がボヤく。

((まぁ落ち着けよ。もし第二で予定外の事が起きたとしても、進み出した計画はもう止まらない。それにウインザ団長を騙ったこの偽の手紙だって用意してある。何とでもなるさ))

((…けどブライドウ団長は変なとこ鋭いぜ?))
((まぁな。そりゃ上手く騙せれば一番だけど時間が稼げればそれでも良いんだ。もう少し肩の力を抜けよ))
「そうだ… あッ⁉︎ おい、何だアレッ‼︎ 」
「騒ぐなよ」

思わず声を上げた仲間の視線の先には帰って来たイグアス。

「って何だ… 」

空に線を引くように飛ぶその姿だが、今は本当に線を描いている。

「なぁ、あんなのめちゃくちゃ目立つよな?」

や、やられた…

喚く仲間に返事をする気にもならない。

イグアスの足に括り付けられている色とりどりの煌びやかな紐。
それは子供のイタズラみたいな単純なやり方だが、誰がどう見ても普通では無いと解る連絡手段。

だから朝まで…

やはり第二は……いや、それよりも直ぐに他の人間がここに来る。

「………… 」

どうする?







sideジョウゴ

ーー「ハッハァッハッハァッハッ」

やっとだ靄々野郎ォ、漸くその背中を捉えたぜェ~

"ジョウゴよ、あの弓使いは出来る限り生かして捕らえよ "

言いたい事は分かるがそりゃ難しい注文だ。
どんなカラクリかは知らねぇが、こうして補足したてる今ですら気を抜くと見失いそうになる。
こんな半目みたいな状態でそこまでの余裕はねぇよ。

だが頭領それよりも気に掛かるのはさっきの落石。
どう考えても野郎にとってタイミングが良過ぎる。


ー『ズザッザッザッザッ… 』
「ハッハッハッハッ… 」

それにこの纏わり付く感覚は何だ?
この山に入ってからずっと俺の中の何かが引っ掛かってしゃあねぇ。

" おいっ、頭を冷やせ "

遠い記憶の中のアイツの顔が浮かぶ。

あん時言う事を聞いてたら……

そうだな、ここで止めるか?
どうせこれは任務外だ。

そう思うと途端に馬鹿らしくなって来た。

「ハァッハァッハァッハァッ… 」

いや違ぇッ
立ち塞がる理不尽をブチ壊す為に、俺は鍛えに鍛えここまで這い上がって来た。
あの煮え繰り返った血の熱さと味は死んでも忘れられねぇっ
俺は届かなかったあの日にこの足で追い付きそして…奪われた全部をこの手で必ず取り戻すッ

だから止まらねぇ。
止まって堪るかよ。

あの女に蹴り上げられた玉の借りも、テメェにまとめて支払わせてやる。






sideシロ

ー『ザザッザッザッダっダっダダっ… 』
ーー『ドスッ‼︎ 』

危なっ
狩りかよクソ…

的を絞らせ無い様に方向を変えつつ走ると、斜め横の草叢に矢が刺さる。

「××××××ッ(なんて見辛いッ)」
「×××××××ッ(マズイぞ逃すなッ)」

さっきの落石メテオ、一瞬地震かと焦りもしたけど、あれは天の怒りじゃなかったか。
あれがアイツらをかっ飛ばしてくれてたらなぁ…

そんな愚痴混じりの気持ちを込め、ヘリの向こうに広がった空を見上げる。
やっぱり運はオレだけの味方じゃないなと皮肉混じりに。

「ハァハぁッハッ、はァっハぁっ… 」

まぁでも追いつかれそうだった距離が稼げたのは助かった。

三杯。
家に帰ったら冷えっ冷えのプロテインがぶ飲みして、1時間ふやけるまでシャワー浴びちゃるっ

「ハァッハぁ、はァ……っ」

そうやって自分を鼓舞するけど正直もう限界。
意識しないと手も足も持ち上がらない。

左斜め前の木。
あれを越えたら背にして逃げ切る。

ーシュゥッーー

「ハァっハぁっハァっ」

目的地ゴール目の前にして死ぬかよ、オレぁ当分気儘に過ごす予定なんだからなァっ

ーー『ザザッ、ザッダッダッザッダっダっ… 』

よし越えた。

「×××××××××ッ××××ッ(どこでも良いから当てろッ射て射てッ)」

左斜めにあと3歩ッ

「ハァッ…ハぁッハァっ… 」

2歩ッいッ『ドッ!? 』

ーー『『ズシャァァァーーッ‼︎‼︎ 』』

「ッぅ… 」ザ…

背中からの衝撃に押され転倒するも直ぐに上半身を起こす。

「×××っ×××××(よっしゃッやったぜっ)」

後ろから聞こえる弾んだ敵の声。
でも何故かさっきまでよりも遠い。

「ンぅ…ブっ」

当たった?

膝立ちになったオレが突如覚えたのは、今までに経験した吐き気とは異なる違和感。

「ォ…ッっ、ゲホッ」

それは転倒した痛みをソッチ退けにする締め付ける様な息苦しさで…

ーーズキズキズキッ√ 

「…ぁガッ」

更にそれを追うようにやって来たのは背中から胸に熱湯を注いだような弾ける灼熱感。

「ヒューッヒューー…ホブっ」 

嘘だろ?
マジで…か?

そしてカラカラだった口の中を温く重ったるい液体が満たし…

ボタボタボタ…

あっという間に下唇から溢れ出す。


おい、ヘリまであと10m、ない、んだぞ………

「ブヒュッ、ヒューーヒュー~~…~」


おい立て…よ、動け…

ガサっ…ザサ…
ついた手を支えに全身に力を込める。

「……ぅ…ぁ…っ… 」

けれど一向に言うことを聞こうとしない下半身は、背中とは真逆に冷えて固まったみたい。

「……、
   ……、
     ……」

すると動かす視線までコマ送りのように覚束なくなって来る。


これ、マズイ…

「ヒュ~っヒュッ… ……

それよか…




…息が


…吸


… …



ドサッ


…… …な…




… ……




…い





…  …



















































































































… …







ン…



眩い光が一瞬で暗闇を消して行くように、まだ寝惚けている脳が鮮明な五感によって容赦無く塗り潰されて行く。


「…うん?」

けれど突然場面が切り替わったような違和感は、この現実を前にしてもオレを包んで離さない。


『ザァーーーーーーーーーーーーーーーッ』

「……、……、…ぁ 」バッ

「シロ君どうかした?大丈夫?」

突然慌てて胸を擦るオレに、リュウコウ君が優しく声を掛けてくれた。

リュウ…コウ君。


……て誰だ?


…あれ?

けどオレは間違いなくこの人を知っている。

何だこれ…


「……ぁ~と…、大丈夫、だと思うんですけど… 」ガシ、サッガシ…

何がなんだか理解出来ないまま、両手は腿膝を揉み擦る。
落ち着かせるというよりも感触を確かめるため。

そのおかしな様子に気が付いたリュウコウ君?だけど、敢えてそこに視線を落とさない。


いや、それよりもさっきまでオレ…

"シロっ"

隣で息急き切ってオレを呼ぶ若い女…


白昼夢か?いや違う。

でも何してたんだっけ?

気持ちの悪い引っ掛かりは服の裾を引いていて、痛みとか苦しみとかに似た何かが渦巻いている。
なのにその全部が丸っと抜け落ちていて、取っ掛かりの端っこすらも掴めないし記憶の窓が雨粒で滲んだみたいに見通せない。


それに…

「………これ

処に向かっ…

" シロ……早く会いたいよ "

問い掛けようとしたオレに聞き覚えのある声が答える。

そうだ。
オレは彼女に会いに………


だけど名前が思い出せない。

" シロ君っ旅行行こうよっ "

ハジメ……君?


ーーズキンッ√

「…っ」


ぁ…

" 栄養ドリンクと、今回はシャンプーも買ってかないとな "

" 7700円になります "

浮かび上がる鮮明な映像。

これはついさっきの記憶…なのか?

って事はこれは二回目?


この突発的な現象は既視感デジャヴとよく似ている。
けれど既視感デジャヴに見られる一瞬の断片と決定的に違うのは、この不可思議な現象の記憶には確かな物語の羅列があること。


ツツーーーー…

うん?

「ズズッ」

慣れた違和感から鼻をすすり、喉の奥に鉄の味が広がる。
上を向いたオレは直ぐとポケットティッシュを取り出して、それを千切って丸め鼻の穴を確認する。

「……ねぇシロ君、本当に大丈夫?」

突然鼻血を出したオレ見て、再度心配そうに声を掛けてくれるリュウコウ君?は45度。
勿論隣に座るオレも。

「…あぁとはい、気圧の所為ですかね?昔からよく出るんで大丈夫です」


『ザァーーーーーーーーーーーーーーーッ』

鼻栓を詰めながら誤魔化す様に答えるオレは今、重力に逆らって上昇する航空機の中に居た。







▽ 二章 ▽ 
明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ


~糸冬~






次回からは

▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath

へと入ります。


お読み頂いている方には申し訳有りませんが、今後は更新頻度が落ちるかと思われます。
そんなでもポチっと応援してくれる人が増えたらいいなぁなんて願いつつ、色々な毎日をお過ごしの皆様へ…
ふとした時に敢えて手や足を少し止め、ゆっくりと呼吸を整えてみて下さい。
広い場所で下を向くときも、1人で後ろを振り返ってみるときも、あなたの今はあなただけのモノ。








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