RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi

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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath

3-3 Pole Shift〜 ミナゲキ

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sideシロ

「でも…仮にシロ君のその話が本当だとしてもさ、あそこからはとても帰れないよね」

過去の記憶を追い掛けていたオレはそこで現実に戻る。

その通りだ。
もしアソコにGSが存在していたとしても、旅客機の航路は上空8千メーター以上であり、気温はマイナス30~40℃の極寒低酸素世界。
生身の人間ではそこに飛び出た瞬間ブラックアウトしてしまい、もしもパラシュートが有ったとしてもその意味を為さない。

だけど…

「なんで今回急に起こったんだろ… 」
「ん?」
「旅客機は定められた航路を飛行するのだから、GapSpotが今まで存在したのなら同様の事が起こっているはず」
「そうだね、ここずっと航空旅客機の喪失事故なんて聞いた事がない。つまり突如発生したってことになるよね」

突如発生…

オレは過去に見たニュースを思い出す。
どこかの国でクジラが何百と岸に打ち上がっていたり、何万イワシが打ち上げられたり…
他にもイルカが群れで川に現れたり、何千もの鳥が地面に激突死したなんて不可思議な事件。科学的検証が出来ない時代では神の怒りなんて言われ恐れられていたけど、現在ではこれらは地磁気のズレによって起きたのではないかと言われている。
その地磁気は地球の南北から発生しているけれど、例えば北の発生点は北極点ではないらしく、しかもその発生点であるは観測する度に南へズレて行っている。
確か毎年何十キロメートルも。


もしかするとこのGSは、それに類する影響であの海岸線から空へとズレ拡がったのか……?



「………でもそれならまだ希望はある…か」

考え込んでいるとリュウコウ君が呟いた。

「希望、ですか?」
「うん。此処が何処にしろ航空機が忽然と消えたなんて大事件、向こうは絶対に大騒ぎになっているよね?」
「はい」
「でも調査の上で危険が無いとなれば旅客便は再運行する。明日か明後日か」
「あっ⁉︎ 」
「うん。この湖にシロ君が言うそのGapSpotってのがあるのだとしたら、近くまた同じ消失事故が起きる。ならいずれアソコから捜索隊も現れるんじゃないのかな?いやでもダメか…出た先がこれじゃ」
「いえリュウコウ君、日本にはUS-2って言う救難用水上機があります。だからどうにかしてこの現状を向こうに報せる事が出来れば、助けはきっと来ますよ」
「そっか、そうだよね。なら帰る為に必要な事や問題点を整理しておこうか」
「はい」


断片的に浮かび上がる記憶の欠片ピースはまだまだ少なくて、やり始めのパズルみたいに大まかな色分けをしてる程度。
でも目を覚ましてから見舞われた数々のトラブルの中、オレ達は漸く上を向く気持ちになった。






side 宇実果

「松宮先輩。ご搭乗頂いているお客様の避難誘導と機内の確認、それと救難食糧ERの搬出も全て完了しました」
「お疲れ様」
「それで、これ……次はどうします?」

後輩のサー日比谷ビヤは気丈に振る舞っているけれど、辺りを見る目は泳ぎ表情は引き攣っている。

どうって何?

無事に不時着した時はその奇蹟に感謝したけれど、喜び勇み避難誘導して出たらそこは洞窟の中なんて…

私だって訳が分からないわよっ

「……っ」

この先どうなるんだろうなんて言える筈もない私は、ほんの少しだけ唇を噛み疼く不安を抑え込むと

「松宮さん」

それを見計らった様なタイミングで凛とした声に呼ばれる。

「はい」
ザっザっザっザ…
「私はこれから機長の指示を仰ぎます。貴女は和同さんと2人でERとサバイバルキットの中身を全てチェックして」
「「ハイ」」

「それから緑川さんと日比谷さんはお客様方について引き続き対応を。特に… 」
「体調を崩した方や補助の必要な方には目を配ります」
「うん、宜しくね」
「「ハイ」」

私、和同比奈ヒナ緑川咲サー日比谷景織子ビヤは、長谷真黎マレイチーフの言葉にいつも通りの返事を返すと、チーフは真っ直ぐな瞳で頷いてから背中を向けた。

はぁ、やっぱ真黎さんには敵わないなぁ…と、私達4人は顔を見合わせて動き出す。





「…53、54、55個」

航空機によるトラブルは24時間以内の救助を想定している。
だから機内に積まれた救難食糧は1人1日分のみだけど、今回の乗員乗客は合わせて134人だから1人2日分ずつ配れるのはラッキーであり、そして今の所ほとんどのお客様が落ち着いて行動してくれているけど…

これで足りるのかな?

ゴクリ。

不安が導き出した疑問に頭を振る。

「宇実果、こっちは問題ないよ。そっちの数は?」
「ぁあうん、破損無し期限内の55個」
「こっちも破損欠陥無し。オッケーだね」

サバイバルキットを確認し終えた同期の和同ヒナが言う。

「ねぇヒナ… 」

ここは何処だと思う?

「うん?まぁすぐに助けは来るって」

問い掛けを呑み込んだ私を察してか、ヒナは明るい笑顔でそう言った。


ザっザっザっ

ザっザ…
「すみません、ちょっといいですか?」

「ぁはい、どうかされましたか?」

あ、あのイケメン二人組だ…

と、不安の坂も一瞬で登っていく私のテンションは現金だ。

「CAさんは此処が何処だか分かりますか?」

そう言って話すのはスンゴイ中性顔のイケメン。

おほぅっ、お肌スベスベだし化粧してる?ってくらい色っぽい目元。
この冷たそうな感じが好きな人には爆刺さりするわね。
でも声はちゃんと男だな…

と思いつつもどう答えるべきか考える。

「あ、大丈夫です。分からない前提で聞いてますから」

すると彼は空かさずにそう続けた。

「それで尋ねたいのは他の便の運行再開の時期なんです」

他の便の運行の再開?

航空機消失ここまでのトラブルだと判断は難しいでしょうけど、CAさんはいつ頃になるかと思われますか?」

「「…………… 」」

この人この状況解ってんの?と私は隣を見ると、左に居るヒナもキョトンとしていた。

「じゃあこのまま同じ航路の便が飛び立ったのなら、あの湖からまた出て来るかもって思いません?」

そう言って彼は指したのは機材の後方。

「「え⁉︎ 」」

私達は釣られる様に揃い見る。

「そうなると最悪衝突も考えられると思うのですが」

「「っ… 」」

また出て来る?
衝突?

「だってここには空、有りませんよね?だからこのまんまの現実を捉えて考えるなら、地上数千メートルで別の空間にワープした…ってのが妥当だと思うんです」

別の空間…

" ヤベェっチョーヤベェっ、絶対異世界だろこれっ "

なんて少し前に学生っぽい子達のはしゃぐ声に、子供だなぁなんて聞き流していたけど…
現実問題誰一人として携帯も繋がらない。

いやでもワープて…

「だからあの状態でももし可能であれば、次の便までに少しでも前方へ移動しといた方が良いのではと…… 」

移動……

砂浜に機体の半分が埋まってるけど、あれなら後部タイヤギヤは出せそう?
燃料は当然タップリ残ってるし。

「ただ此処が危険な場所だとしたら安全なのは機内しかありません。だから前方に出ることで搭乗口の高低差がより出来てしまうと、あの緩やかな非常用のスライドスロープを今程簡単には上がれなくなりますよね?その辺りを… 」
「ちょ、ちょっと待って下さい。その、仰っている事は一応分かりますけど、あれを動かすのは機長の判断になりますし… 」
「勿論分かっています。その機長の救助要請が届けば問題ナシ。でもこちらからの連絡が届かない、救助が来るのを待つしかないと決まった場合には、今の話しをCAさんから機長にお伝え下さい。それと出来れば早目に貨物室の荷物を取り出す事も合わせてお願いします。各々食糧なんかも持ち合わせているかもなので」

「…そう、ですね、分かりました」

隣に居るヒナの頷きを確認して私が答えると、イケメン二人組も頷きを返し去って行った。






side真黎

ガシャ
「失礼します」

中では機長と副操縦士コーパイが難しい顔をしていた。


「…返信はありましたか?」

私が尋ねると、機長は振り返る事なく首を振った。
だから質問を変える。

「あの、機長はここが何処なのかお分かりなのでしょうか?」


「………ふぅーー~~……私が、聞きたいくらいだな」

計器を見つめたままの機長はそう言い、固まった副操縦士は黙ったまま。

「そう…ですか。とりあえずお客様には救難信号を送っている旨をお伝えし落ち着いて頂いてますが……この後は如何いたしましょうか?」


「…………すまん、何もかもが分からない。空を航行していたのに水面に不時着し、しかも日本の海洋上の航路のはずなのに目の前は洞窟だ。……GPSも無線も何も反応はない…何度確認してもだ。トランスポンダーも正常に動作しているから管制官から本部へ消息を絶った事は伝わっているはず……だが応答は勿論何の反応もない。もう私もどうしていいのか分からない」

機長は力なく天井を仰いだ。

「水と食料も少ない今、このままだと早晩お客様もパニックになるかと」

私は続ける。

「そうだな……だが今の私には何も出来ない。すまんが皆それぞれの意思で動いてくれ」
「では機長、実は一部のお客様からご指摘とご提案があったのですが… 」

私は宇実果から聞いた話をする。



「…分かった。機体を動かすこと以外はその様にしてくれ。機体これに関してはまた指示をする」

大橋機長はそう言うと、また機器へと向き直ってしまった。
これ以上は放って置いてくれと言わんばかりに。

「…承知いたしました。失礼します」

その雰囲気に出口を見つけられない私はそれ以上何も言えず、重苦しいコックピットを後にすることしか出来なかった。








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