RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ

neonevi

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▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath

3-26 Shallow Blue

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side八参

「ハァハァ、ハァハァっ」

シンドイ。

「ハァハァハっハァハァっ」

こんなシンドイもんなんかよクソ。

自分のせいで好きな人間に何か起きるのは…


薄闇と混じり合う岩肌モノクロのトンネルは行きに通った時よりも絶望的に無機質で、振り払えないこの後悔をより一層際立たせてくる。


ザっザっザ…ザ…
「ハァハァ、なぁ八参、気付いてるか?」

「ハァハァっハァっ、俺さ… 」

そう言って足を緩めこっちへ振り返るシロさんは、息が整わない俺の続きを待つ。

「ハァハァ…ダチ、ダチとかっ、ハァ~っツレみたいのっていないんだわ。顔色伺って生き方コロコロ変えらんねーし」

「いや八参… 」
「俺は信じるもんも答えも自分で決めるって……、これはどんなけ重石を乗せられようと、行き止まりだと分かっていても、最期まで絶対ぇ貫くって生きて来た……けど、変わってた周りも変わらない視線も全部が面倒で、でも自分ん中の妙なプライドが深く沈むことも許してくれねぇ。だからこんな世界なんてどうでもイイやって、どっかに行っちまえばって飛行機に乗り込んで、だからこんな所に飛ばされちまっても似合いだなって腹で自嘲ワラってたんだよ」

押し留めていた感情を言葉にしたら、それは喉の粘膜を削る勢いで吹き出した。

「けどそんなだから俺がっ、俺がリュウコウさんを巻き込んじまった。あんな気の良い人を、俺みたいなっ、終わってるヤツの人生にッ」

「やめろ、もういい」
「よくねーよだってッ、こんな事に、こんな風になっちまったら… 」

あぁ。
こんな言い訳じみた自分語りなんてダサ過ぎてしたくねーよ。
けど、それでもアンタには言っておかなきゃ。


「実は俺、もう長くねんだよ」


ゆっくりとした呼吸二回程。


「……そっか、何なんだろうな」


そんな間を置いてのリアクションは余りにも普通過ぎて…
態度に変化を見せないシロさんだから、俺の告白にもそこまで驚かないとは思ってたけど…

" お前の人生が本当に終わっているとしても、その終わりくらいは選ばしてやりたい…傘代わり程度には "

ふとさっきの台詞が浮かぶ。


「なぁ?もしかして気付いてたのかよ」

「気付いてたと言うか、気にはして見てた。脳か?」

「…あぁ、らしいわ」

俺は肯定の意を含め、クソッタレな頭の横を中指で弾く。

「何で気が付いた?」
「リュウコウ君に酒を注がれた時こぼしたろ?まだ飲み始めの頃に」

そんなことで…

「リュウコウさんも?」
「いや知らないと思う。確証は無かったから話してない」

「…そっか悪い。もっと早くに言… 」
「その自分を貫く生き方にオレ達は動かされた。だから知ってたとしても変わらないよ、リュウコウ君も」

あ~~~、はは…
他人の為に命まで危険に晒せるこの人らはそうなんかもな。
けどそんなアンタらだからこそあの時断るべきだったんだよ、どうしたって。


「それにリュウコウ君はまだ死んでない」

「は?な… 」

何言ってんだよ。
あんな所に流されちまったら生きてる訳…

そう思った言葉と流されて行ったあの光景は、シロさんの真っ直ぐな目線によって霧散した。

「だから自分の事はもういいとかはナシだぞ?オレ達がここで死んだりしたら3人の約束、果たせなくなるからな」

約束…

" きっとシビれるほど最高に美味いはずさ "

リュウコウさん。

アンタらにはホント敵わねぇよ。

そしてさも当たり前の様に疑いなく言い切るシロさんにより、ヒビ割れた胸の隙間が少しだけ塞がれた気がした。


「じゃあ話しを戻すぞ。ここ、本当なら数分前とかにあの拓けた所に着いてる筈なんだよな… 」

そう言われてハッとした俺は後ろを振り返る。

リュウコウさんの事で頭がいっぱいだったのと、代わり映えしない景色で気にしてなかったけど…

確かにそうだ、かなり進んで来た。

「な?まるで悪夢だよ。今のとこアレが追い付いて来ないからまだ良いけど」

そう言って水を飲むシロさん。

「いや、悪夢みたいな世界で何でそんな冷静なん?」
「冷静?目の前の事に集中してるだけで今にもへこたれそうだよ。疲れと不安から逃げ出したいし布団に包まりたい」

全っ然感情こもっちゃねーしその態度。
そもそもあんな正面から殺し屋とバトって、いきなりの天変地異に敵にまで気遣ってただろ。

「悪夢って言うから俺も言うけどさ、……ここ、生きモンの体内とかじゃねぇよな?」

だからかこの人と居ると何とかなりそうな気がするわ。
実際どうにもなんなくても。

「フっ、お前意外とファンタジー脳なんだな」
「うるせぇよっ、こんな滅茶苦茶リアルに考えられっか。けど道が変わっちまうとか物語や映画でもあんだろ?」

「生き物ね。まぁ見てるモノ知覚してるモノが全てじゃないのは同意だけど、………ここが何処にしろ今は進むしかないから行くぞ。あと何かあるかもだから最大限注意な?危険な生物は勿論通れそうな道とかも」

そう言って頷き合った俺達はまた先へと走り出す。


……




ザっザっザっ
「フゥーーー~~、一応着いた…な」

行きに来た時の、おそらくは倍以上掛かってたどり着いたあの拓けた場所だけど、こんな仕様はまるで俺達を逃さない為みたいだ。

だからゆっくりと吐き出した息と淡々とした口調だけど、流石のシロさんにも隠せない安堵が滲み出ていた。


「ハァハァハァ、ここは、まんまだよな?」

「……、……、そう…っ⁉︎ 八参、壁際に寄るぞ」

デッケェ空間の奥まで見渡していたシロさんは、突然押し殺しながらも強い口調で素早く動く。



((……何か居たのか?急にどうしたんだよ ))

壁際にしゃがみ込み小声でそう言うと、何も言わないシロさんがしゃくったアゴの先はあの〆縄岩イワクツキの穴。

祟り?バチ?
そんなもん今まで信じる気にもならなかったけど、流石にこんな場所に来た日には…

(( ちょ、やめてくれよ ))

冗談は…と続けようとした時そこから漏れ出る気配に胸がザワつくと、それはあっという間に鮮明な足音へ変わる。


(( けどこれ人間のだよな?何で隠れんだよ ))

俺は水でも汲みに来た誰かが怖いもの見たさに覗いたんだと思い言う。

(( いや音がおかしいし多過ぎる ))

けどただただ真剣なシロさんに気圧された俺は口をつむぎ


「………っ⁇⁈ 」

そして凝視していたそこから現れたのは、明らかに普通じゃミタコトない奴。
いや、次々と引っ切り無しに出て来る人数は20人を優に超え、物々しい異様な奴らが集団を形成した。


な、何だよアレ…

武装、してるのか…


ソイツらは全員手に槍?を持ち、同じような鎧らしき物を纏っている。

これは…

あの雰囲気はとても友好的な感じがしねぇ…


殺し屋の次は軍隊と言う予想外のその光景は正直さっき迫って来た光る渦よかもショックがデカく、何者かとか、何で行き止まりから来たとかの思考が定まらない内に、俺達の元来た旅客機のある方の穴へと消えて行った。


「……ぁ、なぁ、ヤバくね?旅客機に居る奴ら」
「そうだな。けど一本道じゃ報せに行くことも出来ない」
「そ、そうだけどよ…何か、何か出来ねぇのか?」

「戦うか?と言っても2人では無理…だから、向こうで混戦になってからの話しだけど」

「んならすぐ追わねぇとっ」
(( ちょっと待て八参っ ))

ザっザっザっ
「何だよ急ごうぜ?」

そう言って走り出した俺を見るシロさんの視線は、何故か俺ではないもっと向こうを見つめていた。

まさかっ

『ズザッ』

急ブレーキを掛けシロさんの向いてる方へ首を動かすと、そこに更に現れた奴らと俺は目が合った…気がした。

明かりのない場所と120~130mの距離の中、突如開始されたダルマさんが転んだみたいに固まる俺。

「…………… 」


やらかした…


その間にもアトから後続の兵士ヤツラがゾロゾロ来る。

(( ゆっくりだ、ゆっくりと屈め ))

その声に金縛りが解かれた俺は指示通りに動く。


ッ⁉︎ ダメだ。

目が合ったソイツは隣の奴と何やら話した後、2人でこっちへと向かって歩き出した。


最悪だ…

また俺のせいで。


「悪い…完全に俺のミスだ。シロさんは何とか逃げてくれ」

何処にだよクソっと自分を殴りたくなるけど、俺にはそう言うことしか出来ない。

ザ、ザ、ザ、ザ、ザ…
「遅かれ早かれだ。もし襲って来た場合出来る限りオレが倒すから、お前はオレから5m以内でとにかく致命傷を避けろ。良いな?絶対に無理はするなよ?」

普通じゃない環境、人殺しや重犯罪者に囲まれて、それなりの暴力の中生き抜いて来たって自負があった。
大抵は屈服させたり利用するのが目的の暴力は、明確な報復以外殺しは延長上でも端の端にあったし、精神異常系の奴は自分より弱い奴しか狙わない。
でも戦闘力と殺意を兼ね備えたガチの芝木らホンモノと対面し、しかもそれらが罪ですらないここじゃそんな自負モノ何の頼りにもならないことを痛感した。


「ー~ッ、わ、分かった」

だからここまで迷惑を掛け続けた俺はいい加減この感情くらいは押さえ、情けなくともこの人に全てを預けるのが道理。




ザっザっザっ

ザっザっザっ

遠慮など感じられない足音だけど、敵だって決まった訳じゃ…

そんな期待は即裏切られ、兵士達は武器を構え臨戦態勢へ。


はぁ…またサバイバルかよ。
けどそうだな。
ここが俺の死に場所だとしても悪くない。

いや、違うか。

「ハッ」

思っていたよりかずっと…ずっと良いぜ。

どうせ先の見えてるこの命だ。
最後の一欠片までこの人の為に丸ごと使ってやんよ。


目の前に立つ頼もしい背中を見ながら俺は、腹の底から本気でそう思えたんだ。







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