書き下ろし

札神 八鬼

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狩猟ゲームシリーズ

大人に憧れるお年頃

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※このifではリョウマの母親が生きてる世界線です
※鈴宮さんがリョウマを猫可愛がりしています
※スバルさんのリョウマへの執着はそのままです
※リョウマくんがバリバリの反抗期です


~リョウマ赤ん坊時代~

「かっわいいねえリョウマくん!
ミカに似てお目目くりくりだねぇ!」

「お姉ちゃん、そんなに写真撮ったらリョウマがびっくりするでしょ」

「良いじゃないかミカ、撮らせてやれ
義姉さんも甥っ子が可愛いんだろう」

「見てみてミカ!リョウマくんのお手手が!お手手が!
私の指を掴んだ!かっわいー!!!」

「もうすっかりデレデレだな」

「お姉ちゃん、そろそろ仕事の時間じゃないの?」

「嫌よー!仕事に行きたくないー!!!
今日は休んでリョウマくんと一緒にいるのー!!!」

「そんなこと言わないの!急に仕事休んだら皆困っちゃうでしょ?
文句言わずにお仕事行ってきて!」

「でも、リョウマくんが……」

「あぅ……」

「ほら、リョウマも行ってらっしゃいって言ってるよ」

「リョウマくーん……お姉さんお仕事頑張るからね
私のこと、忘れないでねーーー!!!」

「ふぅ…やっと仕事に行ったみたい」

「皆に好かれてるなんて、リョウマは幸せ者だな」

「………元気に育ってくれたら嬉しいな」

「大丈夫さ、僕達がいるんだからな」

「それもそうね」

~リョウマ小学生時代~

「リョウマはおれのだもん!」

「違うわよ私の甥っ子だもん!
というか元からあんたのものじゃないでしょ!」

「リョウマはおれがまもるんだ、おまえたよりない」

「きー!!!」

「お姉ちゃん、子供と喧嘩しないでよ」

「だってこのクソガキが!」

「ごめんねスバルくん、せっかくリョウマと
仲良くしてくれてるのに」

「ううん、リョウマはおれのだからいいよ」

「だからリョウマくんは私の……」

「はいはいお姉ちゃんは退場しようね」

「嫌よ!これだけは譲れないわ!」

「スバル、いっしょにゲームしようぜ」

「うん、いっしょにやろう」

「ねえリョウマくん!お姉さんのこと好き!?」

「おばさんはおかしくれるからすきだよ」

「やっぱそうよねー!リョウマくんは私が大好きだもんねー!」

「リョウマがすきなのはおかしだからおばさんじゃないよ」

「うるさいクソガキ」

「お姉ちゃん!いい加減にしてよ!」

~リョウマ中学生時代~

「リョウマくん!今日も可愛いいねぇ!お菓子あg……」

「うっせーババア!近寄るんじゃねえ!」

「リョ………リョウマく……」

「いつまでも子供扱いすんな、俺は大人なんだよ」


数時間後……



「それで、お姉ちゃんが目に見えて落ち込んでるのね」

「よほどリョウマに拒絶されたのがショックだったらしい」

「リョウマくんに愛されない人生なんて、死んだ方がましよ……」

「そんな大袈裟な……」

「他は普通なのに、どうして私だけ……」






「ババアがうぜえ」

「ババアって……お姉さんのことをそう呼ぶのはダメだろ」

教室での休み時間、リョウマがポツリと口をこぼした。
それに対してスバルは笑いを噛み殺しながら答える。
スバルは鈴宮 ミオのことを良くは思っていない。
リョウマが産まれた瞬間に立ち会い、ミルクもあげている。
自分よりもリョウマを知り、リョウマが望むものを
気軽に買い与えられる存在。
リョウマを独占したいスバルからしたら、
鈴宮はライバルのような存在だったのだ。
それが今は待望の反抗期だ。
これが長く継続し、あの女を嫌いになってしまえば、
これほど嬉しいことはないのだ。

「大体お前もババアも甘やかしすぎなんだよ」

「そうか?お姉さんはともかく、
俺の方は普通だと思うんだけど」

「スバル、もしも俺が誰かに傷つけられたらどうする?」

「リョウマを傷つけた相手の息の根を止める」

「それのどこがまともなんだよ
頭のネジでも飛んでるんじゃねえの?」

ちなみに鈴宮の場合は『相手を社会的に抹殺する』と答える。

「だってリョウマは危なっかしいからな
俺が守ってやらないといけないだろ?」

「それが過保護だって言ってるんだよ」

「そんなことより、リョウマは大人になりたいんだろう?
おばさんに対して言ってたじゃないか」

「当たり前のように俺の制服に盗聴機を仕込むな」

「リョウマが心配でな……」

「だとしても何度壊してもまた仕込まれてるの
恐怖しか感じねえわ」

「リョウマの尊い命に比べれば安いものだろ」

スバルはリョウマを傷つける奴は影で始末してきた。
リョウマ宛のラブレターもリョウマ本人の目に止まる前に破り捨ててきた。
(そのせいで俺のことを知る生徒からは、
リョウマ宛のラブレターを俺に渡すなと噂されている)
そんな裏工作を続けてきた結果、
リョウマは俺が根回しした友達ばかりになっていた。
リョウマの一番は俺だし、それ以外は認めない。
例えリョウマに彼女が出来たとしても、その女は永遠に二番目だ。
そんなスバルの異常な執着心を知ってか知らずか、
リョウマはスバルを親友として側に置いていた。

「とにかく、俺は早く大人になりたい
子供扱いはもうこりごりなんだよ」

「そっか……リョウマがそう言うなら俺も付き合うよ
大人になると言っても、どうするつもりなんだ?」

「ブラックコーヒーを飲めたら大体大人になるんじゃね?」

「大人は好き好んで苦いもの飲んでるからな」

苦いもの飲めたら大人とか可愛いな……という考えは、
口に出してしまう前に飲み込んだ。
でもそれなら、俺が叶えてあげられる。
自然と己の口角が上がっているのが分かった。

「ということでスバル、近くの自販機でブラックコーヒー買ってくる」

「いや、俺が買ってくるよ
リョウマの手伝いをしたいと言ったのは俺だからね」

「お、ありがとなスバル、それじゃ頼むな」

リョウマに頼られていることを実感しニヤニヤが止まらない。
リョウマが、今、俺を頼ってくれている。
これほど幸せなことはないだろう。
しかし自販機へと向かっている最中に、知らない女に話しかけられる。

「スバルくん!」

「うん?どうした?」

誰だこの女は、記憶にないぞ。
俺の記憶はリョウマの為だけに使われてるから、
他の人間のことは全く覚えていない。
そんなことはおくびにもださず、人の良さそうな笑顔で返事をした。

「私、隣のクラスの■■と言います
それで…………その………お願いがあるんですけど」

あー、早くブラックコーヒー買ってリョウマのところに行きたい。
用件があるならさっさと言ってくれないだろうか。
無駄に時間をとらせるなよ。
リョウマと過ごす時間が減るじゃないか。

「この手紙!リョウマくんに渡してください!」

「………分かった、渡しておくよ」

渡さずに破り捨てておくけどな。

「ありがとうございます!」

その女は嬉しそうに笑うと、そのまま走り去っていった。

「この手紙は……自販機の近くのごみ捨て場にでも捨てておくか」

リョウマには俺がいれば十分なのだから……

数分後……

「リョウマ、買ってきたぞ」

「それじゃ、早速飲んでみるか」 

ブラックコーヒーの缶を開け、一口飲んだリョウマは、
今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「にがぃ…」

「ブラックだからな」

「何でこんなに苦いんだよぉ……
こんなの飲めるわけねえじゃねえか」

「ブラックなんだからそりゃ苦いだろ」

「誰だよブラックコーヒー飲もうとか言った奴」

「お前だぞリョウマ」

「うぅ……ブラックコーヒーで大人になるのは諦めるか」

「その方が良いだろうな」

~放課後~

「あのハゲのカツラ取ったら大人になれるって聞いた」

「誰に聞いたんだそんなの」

「田中」

「俺ちょっと行ってくるな」

「待てリョウマ!そんなので大人になれるわけが……」

※その後めっちゃ怒られた


~数時間後~


「なかなか大人になるのは難しいな」

「飴咥えながら何してるんだリョウマ」

「タバコは大人が良く吸ってるけど、
やろうとしたら父さんに止められた」

「当たり前じゃないか?」

「というわけで飴咥えてタバコっぽくしてる」

今は冬というのもあり、リョウマから白い息が出ている。
それに気づいたリョウマが興奮した声で俺に話しかけた。

「スバル!スバル!今の白い息、タバコの煙っぽくなかったか!?」

「そうだな、大人っぽいぞリョウマ」

「だろ!?見てろよスバル!
今からかっこ良くタバコ吸ってるみてえに白い息出すから!」

リョウマがウキウキと嬉しそうに白い息を出している姿を、
スバルは微笑ましく見守っていた。
こうして白い息で喜んでる時点で子供っぽいとは絶対に口に出さない。

身体が冷える季節、息が白く凍る日に、
リョウマはスバルと一緒に帰りながら考えていた。

「大人って、何だろうなスバル」

「さあ?俺には良く分からないよ、ただ……」

「ただ?」

「大人って、自由でもあるけど、
色々我慢してる人のことを言うんじゃないか?」

「どうしてそう思うんだよ、スバル」

「だって、大人となると仕事をしないといけないだろ?
子供の時には出来たゲームとか、お腹いっぱい食べたお菓子も、
我慢しなきゃいけなくなるんだ」

「……………」

「きっと、大人ってそういう人達のことを言うんだよ」

「………俺も大人になったら、我慢するのかな……」

「大丈夫だよ、いざとなれば俺が一生養うから」

「息するように頭おかしいこと言ってんじゃねえぞ」

「えー、俺は本気だったんだけどなー」

「………スバル、少し寄り道して良いか?」

「うん、良いよ」





「お姉ちゃん、リョウマが帰ってきたよ」

「うぅ……ごめんねリョウマくん
お姉さんうざかったよね
これからはもうちょっと控えるから、嫌いにならないで……」

「…………良いよ、悪いのは俺だし、後……これ」

リョウマは鈴宮に向かって飴を差し出した。
鈴宮は突然のことに目をパチクリとさせている。

「リョウマくん、これもしかして、お姉さんにくれるの?」

「大人ってのは我慢してるんだろ
仕方ねえからくれてやるよ
まあ姉みてえなもんだし、たまには仲良くしてやるよ
………………姉さん」

「リョヴマぐん!!!!」

「うるせぇな!汚いから鼻水拭けよ」

「あらあら、短い反抗期だったわね」

「仲直り出来て良かったな義姉さん」

「うん!!!」


~数年後~

「てことが昔あったよな」

「やめろ黒歴史を掘り返すな」

「あの時のリョウマは本当に可愛かったよなー」

「というか、お前が俺のラブレター
勝手に処分してたのは初耳なんだが?」

「………………」

「おい、目を逸らすな」

「そんなことより、仕事だよ仕事
昔のことなんて忘れようじゃないか」

「あ、そういやスバルに
伝えておこうと思ってたことがあってな」

「ん?何だリョウマ」

「結婚した」

「…………………………………は?」

「だから、結婚したんだよ」

「誰だリョウマに手を出した尻軽女はぁ!!!」

「何でそうなるんだよ始末しようとするんじゃねえ!」

「だって、俺の!俺のリョウマが!!!」

「元からお前のものじゃねえから俺は!」

「その女ぶっ殺す!!!」

「相手はお前が一番でも良いって納得してくれてるんだよ!」

「じゃあ良いや、おめでとうリョウマ」

「認めるのはやっ、一番だったら良いのかよ」

「あ、でもリョウマを捨てたらすぐにその女殺すから、
別れたら真っ先に俺に教えてくれよ」

(こいつにだけは絶対に知らせないようにしよう……)


誰も欠けることのなかった世界。
誰も不幸にならない幸せな結末。
こんなあり得たはずの未来は、
ここでしか実現できない幻であった。
せめてこの世界では、彼らが幸せでありますように。

    
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