冥府探偵零時

札神 八鬼

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本編

第二十五話 幻想売りの少女【中編】

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零時がストーカー三人を引き連れ、
電話で指定された心霊スポットに向かうと、
その前で王志が零時達を待っていた。
零時に気付くとにこりと微笑み、零時に軽く手を振った。

「おや、随分と連れてきましたね」

「王志さんがどれ程の実力者か分かりませんでしたから、
念には念を入れて……ですかね」

「そうでしたか……それは申し訳無いことを
ですが、人手は多ければ多い程捜査がしやすくなりますから、
私としては構いませんよ」

「一応確認しますけど、入る許可は取りましたか?」

「ええ、それは勿論
この土地の管理者からは許可を貰っていますよ
他の肝試し目的の不法侵入者共と同類になってはいけませんから」

「では何の憂いもなく入れるわけですね
入る前に……彼らの紹介をしても良いですか?」

「そういえばその方達とは初めましてですね
彼らとはどのようなご関係で……」

「単なる仕事仲間ですよ
ほら伊織、挨拶してくれ」

零時に促されて、伊織は零時から王志に視線を向ける。

「初めまして、僕はハッカーの希丸 伊織きまる いおり
時人くんの恋人候補兼、未来の伴侶さ!」

自信満々に自己紹介する伊織に王志は呆気に取られ、
零時は軽く頭を抱え、首を横に振った。

「まあこの通り、性根はあれですが、
技術は本物なので、足は引っ張らないと思います」

「なるほど……他の二人もこんな感じなんでしょうか?」

「そっ………うーーーーん……そう、ですね……」

「今の間は本当は否定したいけど、
実際その通りだから違うと言えない間ですか?」

「良く分かりましたね今ので」

「表情がそうだと物語ってましたからね」

「酷いじゃないか白雪王子!
僕ならあいつみたいな頭おかしい自己紹介せずに、
愛のある自己紹介をしてみせるのに!」

「普通に自己紹介すれば良いんだよ」

「初めまして、白雪王子の次に麗しい君
僕の名前は白雪 命しらゆき みこと
いずれ白雪王子の生涯のパートナーとなる男さ!」

「あっ、なるほどこの方もこんな……」

「はい、まあ……お察しの通りです……」

「今のところ人選狂ってますけど大丈夫なんですか?」

「技術は確かなので……」

「まあ戦力になるなら良いんですけど……」

「あの、わ、私も何か言った方が良い……のかな?」

「頼むからお前だけは普通に自己紹介してくれ」

姫川は王志に向き直ると、緊張した面持ちで自己紹介する。

「初めまして、私……姫川 瑠璃ひめかわ るりって言います
よ、宜しくお願いします……」

「二人と比べるとまだマシに見えますね」

「あれでもテロ組織のトップですけどね」

「あなたの人脈謎過ぎません?
…………まあ良いでしょう、人手は欲しいのは確かです
それでは、早速調査を開始しますが……
さて、二人組に分かれたかったのですが、
数が一人足りませんね」

「それなら……じゃんけんとかで分かれます?」

「まあ、それが一番良いでしょう
では、グーがA班、チョキがB班、パーでC班に分かれましょう
Cは必然的に一人で調査しますから……
一人でも問題ない方が良いですね」

じゃんけん中……

◇◇◇

零時達がじゃんけんで組分けをした結果、
三つの班に分かれた。

「順番に確認をしましょう
まずはA班から名乗り出て下さい」

A班:零時 時人 希丸 伊織

「A班は俺と伊織だな」

「まさかまた同じ班になれるなんて……
これはもう運命なんじゃない?
いつ結婚しようか時人くん」

「結婚もしないし偶然だし、そもそも胸部を押し付けるな」

「時人くんたら冷たーい!
まあ、そんなつれない時人くんも好きだけどさっ」

「では次、B班」

B班:白雪 命 姫川 瑠璃

「くっ!まさか白雪王子と離れるだなんて!
おのれ伊織ぃ!」

「あの、宜しくお願いします!」

「ん?ああ、宜しくね姫川さん
同じ班になったからには、
全力で君をエスコートすると約束しよう」

「最後にC班は私一人ですか……
まあ、妥当な組分けですね」

C班:鬼王 王志

「申し訳ありません
依頼者を一人で調査させることになってしまって……」

「いえ、構いませんよ
元は一人で調査するつもりでしたから、
それに……一人の方が気にせず戦えますからね
未だに守りながらの戦いは不得手ですから」

「失礼だが……王志くんは戦えるのかい?」

「ええ勿論、戦えないなら怪異が渦巻く
心霊スポットに調査なんて行かないでしょう?」

「む、まあそれもそうか……
本当に一人で大丈夫なのかい?
もし君が良ければB班に入れようか?」

「いえ、お気持ちは有り難いですが結構です
先程も言いましたが、私の戦闘スタイルの都合上、
一人の方がやりやすいですから」

「それならいいんだが……
無理そうならすぐに僕達と合流するんだよ」

「ええ、お気遣い有り難う御座います
一人では対応出来なくなった場合に、
頼ることにしますね」

「では調査を始めましょうか
依頼内容は特定の怪異を見つけることで宜しいですか?」

「そうですね……発見次第報告して下さい
可能であれば無力化して下さると有り難いのですが、
相手は怪異ですからね
対話が不可能であると判断した場合は、
すぐに撤退することをオススメします」

「分かりました、発見次第電話で伝えます」

「ありがとうございます、
それでは、行きましょうか皆さん」

王志が心霊スポットに向けて足を進めると、
零時達も同じく心霊スポットに足を踏み入れる。
やはり心霊スポットと言うだけあって、
辺りには死臭のようなものが漂い、
異様な空気感に零時達の気が引き締まる。

「では皆様、手筈通りに宜しくお願いします
怪異を見つけても下手に近づかないようにして下さい
あれらに一度目を付けられれば、
異界に連れていかれて、調査処では無くなりますからね」

王志の忠告に皆が頷くと、
それぞれ別の道へと進んでいく。

◇◇◇

【A班 零時チーム】

零時は周りを警戒しながら、伊織は零時に腕を絡めながら進んでいく。

「伊織、そろそろ離れてくれないか?」

「やだ、こうでもしないと時人くんは、
僕のこと意識してくれないじゃん」

「普通に邪魔だから離れてくれ」

「もうっ、せっかくのデートなのにつれないなぁ」

「いやそもそもデートじゃな……」

「お兄ちゃん」

懐かしい声がして、聞こえた方に顔を向ける。
その視線の先には見覚えのある少女が立っていた。
懐かしい声、懐かしい顔、そして……

「さ、くら……」

その髪に結ばれた、桜色のリボン。

「お兄ちゃん……」

その少女は零時に手招きをする。
恐らく偽物であろうことは分かっている。
それでも。

「桜……」

思わず、手を伸ばさずにはいられなかった。

パァン。

乾いた音が心霊スポットに響き渡る。
その乾いた音の正体は、他でもない銃声だった。
隣を見ると、伊織が拳銃を少女に向けており、
銃口からは硝煙が漂っている。
目の前の少女が頭を撃ち抜かれ、ゆっくりと背後に倒れていく。

「…………伊織?」

「時人くん、あれは怪異だよ
妹と偽物の区別もつかないくらい、忘れちゃったの?」

伊織が零時と目線を合わさず、少女を睨みながら口を開いた。
零時はその言葉に驚きながらも、迷いを振り切るように頭を横に振る。

「いや、そうだ、そうだな
あれは桜ではない、桜ではないんだ
分かっていた、はずなのにな……」

「それなら尚更間違えちゃ駄目だよ
もし間違えて怪異に囚われたら、
きっと桜ちゃん悲しむよ?」

「そうだな、きっと悲しむ
桜はそんな……優しい子だった」

怪異の少女が消滅したのを確認すると、
伊織は銃を降ろして零時に笑いかける。

「さっ、行こう時人くん
今度は間違えちゃ駄目だからね」

零時は伊織に手を引かれ、引き続き調査を続けるのだった。



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