冥府探偵零時

札神 八鬼

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本編

第二十六話 幻想売りの少女【後編】

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私は、まるでシンデレラのような生活だったの。
意地悪な継母、意地悪な義姉、
家の中でも外の世界でも、味方のいない世界。
それと、奴隷のような扱いを受けているのに、
逃げる場所も頼れる人もいない私。
だから私、シンデレラの絵本を見て憧れたの。
虐げられているシンデレラの前に魔法使いが現れて、
綺麗なドレスとガラスの靴。
かぼちゃの馬車に乗って舞踏会に向かい、
素敵な王子様と出会ってダンスを踊る。
そして最後には、落としたガラスの靴を頼りに、
王子様が私を迎えに来てくれるの。
そんなそんな、夢物語。
だからね、この能力を貰った時は嬉しかったの。
ガラスの靴の形をした時限爆弾。
どうして爆弾だったのかは分からないけれど、
きっと神様が応援してくれてるんだって思ったわ。

「素敵!素敵!これで王子様が来てくれるわ!」

でも私知ってるの。
シンデレラのお話では意地悪な二人が、
私の王子様を横取りしようとすることが。

「嫌よ、嫌よ嫌よ、私の王子様よ
私のために迎えに来てくれるのに……」

物語の世界のシンデレラは大丈夫だったけど、
もしかしたら、その前に殺されてしまうかもしれない。
だってあの人達はそういう人達だもの。
凍死しかけたことなんて、一度や二度じゃない。

「殺される前に、私が殺さなきゃ……
そうじゃないと私……王子様に会えなくなるもの」

私はすぐに行動に移したの。
あの二人に能力で作ったガラスの靴を渡したら、
二人ともとても気に入っていたわ。
それが爆弾だとも知らずに。

「良くお似合いですわ!ええ、とっても」

私は二人が上機嫌になったのを見計らって起爆したの。
あんなに私を苦しめた二人だったのに、
二人仲良くただの肉塊になったのは面白かったわ。
あっさりと死んじゃったから、
もう少し苦しめるべきだったなって、
後から後悔したけどね。

『素晴らしい、君のその残虐性は実に美しい
その能力があれば、君はすぐにでも王子様に会えるだろうね』

脳裏に神様の言葉が響く。
ありがとう、神様もそう言ってくれるのね。
私、きっと幸せになるわ。
この能力を使って、私……幸せをお裾分けしてあげるの!

…………………

この能力があれば、きっと王子様に会えるって信じてた。
でも、でもね、王子様には会えなかったの、私。
ガラスの靴はあったのに、迎えに来てはくれなかったの。
ずっと、ずっと待っていたのに……
ああ、これから死ぬんだって思ったら、
自然と涙が出てきちゃって……

「結局、王子様は迎えに来なかったな……」

……………

そうして私は人生を終えたの。
そしたらね、会えたの!王子様に!
やっと見つけたの!こんな所にいたのね!
今度こそ、私はこの手を離さないわ!
私の愛しい、運命の王子様!

◇◇◇

【B班 白雪チーム】

「………わ……かわ……姫川!」

白雪さんの呼ぶ声に私は我に帰る。
どうやら怪異の気に当てられて、少しの間意識がなかったらしい。

「大丈夫かい?呼び掛けても返事がなかったけど……」

「はい、もう大丈夫です
ちょっと昔の事を思い出しただけなので……」

「昔の事か……まあ詳しくは聞かないよ
人は誰しも秘密を持っているものだからね」

「ところで、この状況どうします?」

私は白雪さんと隠れてる茂みから、顔を覗かせる。
眼前にはいくつもの怪異が渦巻いており、
見つからずに通り抜けるのは厳しそうだ。

「どうもこうも……何とかするしかないだろう
全く、僕は幽霊退治をしに来たわけじゃないんだけどね……」

「何とかするって……具体的には?」

「それを今考えてるんじゃないか
思い付いてたらとっくにやってる」

「それもそうですよね……」

「そうだな……まず情報共有をしよう
僕は対象を氷漬けにする能力を持っているが、
そもそも君は特性持ちなのかい?」

「私は……時限爆弾付きのガラスの靴を作れます」

「範囲と威力は?」

「範囲は……半径10メートルくらいで……
威力は手榴弾くらいですかね」

「なるほど、分かった
それともう一つ共有しておくけど、
僕は人より身体能力は高いけれど、体力はない。
耐久戦はほぼ不可能だから、
走って逃げる時はすぐに僕を抱えて逃げてくれ」

「自分では走らないんですね……」

「汗だくでバテてる僕なんて美しくないだろう
僕は常に美しくあるべきだからね
そう言う君は体力はあるのかな?」

「はい、まあテロ組織なので、
逃げる場面が多いんですよね……
だから人よりは体力がありますよ」

「よし、決まりだな
では、君の能力とその足を存分に使うことにしよう」

◇◇◇

私は白雪さんの指示通りにガラスの靴を作り、
それを怪異が溜まっている所に投げ込む。

「よし、起爆してくれ」

「わ、分かりました」

ガラスの靴を起爆させると、怪異が面白いように、
爆風に巻き込まれて次々と吹っ飛んでいった。

「す、凄い……あんなにいた怪異が……」

「よし、これを何回か続けて、怪異を減らして行くぞ」

「はい!」

まさかこんなに上手く行くなんてという思いと、
あれ?怪異なんて余裕じゃんという傲慢。
その油断が仇となり、この後巨大な怪異に遭遇するなんて、
その時の私達は思いもしなかったのでした……

◇◇◇

【A班 零時チーム】

「時人くんって、普段料理とかするの?」

「ああ、生前から料理はしてる
凝った料理は作れないが……一般の家庭料理なら作れるぞ
三成が良く食うから、生前よりも作る量は多いがな」

「へー、得意料理は何なの?」

「肉じゃがとカレーだ
特にカレーは桜が好きでな……
良く誕生日に作ってやったのを覚えているよ」

「そっかぁ、じゃあ時人くんの手作り料理、
いつか作ってもらおうかなぁ」

「作って欲しいなら材料くらいは持ってこいよ」

「持ってきたら作ってくれるんだ
時人くんの愛がこもった肉じゃが楽しみだなぁ」

「気が向いたらな」

「幻想はいかがですか……」

二人が他愛のないやり取りをしている最中に、
背後から見知らぬ少女の声が聞こえる。
振り返ると先程そこにはいなかった、
不思議な雰囲気の角が生えた少女が立っていた。
少女が持っているバスケットには、
籠いっぱいにマッチ箱が入っている。

「時人くん、これは……」

「ああ、目的の怪異だな……
依頼者に連絡しておこう」

零時はスマホを取り出すと、依頼者へと電話を掛けた。

◇◇◇

【C班 王志チーム】

王志は右手に妖銃、左手に鞭を構え、
数多の怪異達を蹴散らして行く。
右側の怪異達は頭を撃ち抜かれて消滅し、
左側の怪異達は幾重にも鞭を打ち付けられ消滅した。
その止まない銃弾と鞭の嵐を潜り抜けた怪異には、
その怪異を足蹴にし、破壊する。
次第に怪異の数は減っていき、
残りの怪異は王志を恐れるように離れていき、
最後には王志の周りには誰も近づかないようになっていた。

「ふむ、やはり所詮は雑魚ですか……
群れることしか脳にない怪異であれば、
私の敵ではありませんね」

「…………ん」

一息ついた所で、遠くから誰かの声が聞こえる。
視線を向けると、誰かがこちらに走ってきているのが見えた。

「……て………さん!」

次第にそれがこちらに近づいている。
どうやら走ってきてる人物は王志に用があるようだ。

「助けて!王志さん!」

「よし、その調子だ姫川!
このまま一定の距離を取って逃げ切れ!」

肉眼で見える距離になってくると、
白雪を俵担ぎして全力疾走してる姫川と、
抱えられながらエールを送っている白雪が見えてきた。
背後には巨大な怪異が追いかけてきている。
どうやらあれを私にどうにかして欲しいようだ。

「はぁ……全く、仕方ありませんね
私の前まで来たら、すぐに下に伏せてくださいね」

「ありがとうございます!」

王志が妖銃を巨大な怪異に銃口を向け、
妖銃から膨大な力がチャージされていく。
その気配を感じ取った姫川は、
王志の前で白雪を抱えながらスライディングをした。

「消し炭になりなさい」

王志が妖銃を放つと、強力な光線が発射され、
それが巨大な怪異の体を呑み込む。
やがて大きな爆発が起き、煙が晴れていくと、
あの巨大な怪異は跡形もなくなっていた。

「まあ、こんなものでしょうか」

「いやいやいや、こんなものと言える威力じゃないだろあれは!
なんだあのバカみたいな威力は!」

「何だと言われても……見て分かりませんか?」

「全く、人外は皆あんな感じで火力が高めなのか?
あんなの受けたら肉体が残るかどうか……」

「おや、良く私が人間じゃないと分かりましたね」

「そりゃあ、鬼とはそれなりに交流はあるからね
君のような鬼を何度か見たことがあるだけだよ
もしかしてとは思ったけど、流石に今ので確信したよ」

「その様子ですと、零時さんも時間の問題でしょうね
何やら私の事を人間ではなさそうだと、
薄々気づいているように見えましたから」

「あの、王志さん
助けてくださりありがとうございました!」

「いえいえ、構いませんよ
まさかこんな早くに合流するとは思ってませんでしたけどね
それで?何があったんです?」

「実は……」

説明中……

「バカなんですか?バカなんですね?」

「面目ない……」

「だって行けると思ったんだもん……」

「作戦自体は悪くはありませんが、
同じ場所でバンバン爆発させてたら、
そりゃあ気付かれるに決まっています
やるなら居場所がバレないよう、
設置場所を変えながら爆破するべきでしたね」

「そっか、それなら場所を特定される心配がないんだ」

「そうですね、見つかるリスクは減ると思いますよ
一番はある程度爆破で逃げ道を確保した後で、
ガラスの靴を罠として置いて、
自分達は遠くの場所に逃げることですけどね」

「この際全滅させようと思ったのが敗因だったか……」

「全く、次は私も呼んでくださいね」

「え?」

「冗談です、忘れてください」

その直後、ポケットから電話が鳴り響く。
王志が電話に出ると、相手は零時だった。

「はい、どうしました?」

「例の少女に遭遇しました
遭遇場所を今から口頭で伝えるので、
至急こちらに来て貰えますか?
B班の方には俺から連絡しておきますので」

「ああ、白雪さん達なら大丈夫ですよ
今私の目の前にいますから」

「え?どうして白雪がそこに?」

「どうやら怪異にちょっかいをかけたようでして、
怪異に追いかけられてこちらに逃げてきたんですよ」

「それは二人がご迷惑を……
何か失礼なことはしませんでしたか?」

「大丈夫ですよ、不始末の尻拭いは、
させられましたけどね」

「その……二人は無事でしょうか」

「ええ、無事ですよ
私が助けましたからね」

「二人を助けてくださりありがとうございます
お手数じゃなければ、二人を連れてきて貰えますか?」

「構いませんよ、少女を見つければ
全員集合しようと決めたのは私ですからね」

「ありがとうございます、それでは、二人をお願いします」

王志は電話を切ると、白雪達に話しかける。

「零時さんが少女を見つけたようなので、
すぐに向かいますよ」

「ああ、分かったよ
すぐに白雪王子の元に向かうとしよう!」

「流石に自分の足で歩いてくださいね、白雪さん」

「む、ああ、まあそうだね
ここからは自分の足で白雪王子の元へ向かおうかな」

◇◇◇

全員が少女の前に集まり、目的の少女を視認すると、
王志は零時に問いかける。

「さて、問題はどう動くか……ですが、
まずは我々に有害か無害かを判断する必要がありますね
一旦様子見をしましょうか」

「そうですね……情報も無しに近付くのは危険ですし、
相手がどう動くかで判断することにしましょうか」

「そうなると相手にアクションを起こさせる必要がありますね
万が一のために助ける役割の私は除外するとして……
他に少女に接触して下さる方はいますか?」

「はい!私が行きます!」

姫川が緊張した面持ちで手を挙げる。
隣にいた白雪は驚き、姫川に問いかける。

「大丈夫なのかい?どう見ても震えてるじゃないか」

「大丈夫です、私、行けます!」

「怪異に接触するということは、
精神が壊れる危険性もあるんですよ?
それでも、怪異に接触しますか?」

「…………大丈夫、私とっくに壊れてるもん
今更失うものも、壊れるものも、何もないから」

「…………分かりました
ではお願いしますね、姫川さん」

王志が姫川を送り出すと、
姫川はぎこちなく少女の元へ歩いていく。
少女の前まで辿り着くと、姫川は少女に話しかける。

「ね、ねえ、あなたはどうしてここにいるの?」

「……………」

少女は答えない。

「ねえ……」

その時に、姫川は気付く。
服に隠れてはいるが、少女の体には痣があることに。
姫川はその場にしゃがんで、少女に目線を合わせる。

「ねえ、その痣どうしたの?」

「………………」

「誰かに、殴られたの?」

「……………」

「私みたいに?」

少女と目が合う。
その目は死んでおり、この世に絶望しているように見える。
少女が姫川にぎこちなく笑いかけると、
姫川の足元から無数の白い手が現れ、絡み付いていく。
姫川が逃げられなくなったのを確認すると、
少女はバスケットの中からマッチ箱を取り出し、
側面を擦って火を着けた。

「幸せな、誰も苦しまない幻想を」

「皆幸せになりたかったはずなの
皆苦しまずに死にたかったはずなの」

「甘くてとろける幻想で、包んで溶かして取り込みましょう」

「マッチの灯火」

姫川はマッチの火から目が離せなくなり、
マッチの火に魅入ってしまう。
その火から広がるように、周りの景色が変わる。

◇◇◇

「瑠璃」

愛しそうに私を呼ぶ継母の声が聞こえる。
視線を向けると、継母はにこりと私に笑いかけた。
あの時のような、見下した視線ではない。
あの時のような、害虫でも見るような視線の継母は、
この場ではどこにもいなかった。

「…………どうして……」

自然と疑問が口から出る。
だって私の家族は、一度たりとも名前で呼んでくれたことはないもの。
私のこと、便利な召し使いとしか思ってなかったはずだもの。

「どうしてって……娘を愛するのは当然でしょう?」

本来継母が言うはずもない言葉が出てくる。
こんな優しい口調の継母なんて見たことなかったから、
話せば話すほど混乱が強くなってくる。

「瑠璃!」

背後から再び私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

「何してるの!これから一緒に出掛けるんだから、
早く着替えなさい!」

振り替えると、そこにはめかしこんだ義姉がそこにいた。
どうやら私と一緒に出掛けたいらしい。

「でもお姉さん、私と一緒だと恥ずかしいから、
一緒に出掛けたくないって言ってませんでしたっけ?」

「誰よそんな酷いこと言ったのは!
可愛い妹と出掛けたいのは普通のことでしょ?」

今日の二人はどこかおかしいと思いつつ、ふと思い至る。
ああ、これはきっと夢なんだ。
私の夢見た幻想なんだ。
だからこんなに、私に都合が良い事が起きてるんだ。

「何ぼさっとしてるのよ!ほら、早く着替えなさい!」

義姉が私の手を引こうとする。
私は反射的に手を振り払ってしまった。

「……………」

「ご、ごめんなさ……」

「何よその態度!!!私が優しくしてやってるのに、
有り難いとも思えないわけ!?」

激昂した義姉の姿に私はすっかり怯えて、
自分を守るように座り込んで丸くなる。
義姉の機嫌が直るまで私は必死に謝って、
次第に義姉が我に帰ったのか、途端に静かになった。

「…………あら、ごめんなさい私ったら
傷つけるつもりはなかったのよ?
お詫びに今日はあなたの好きなもの何でも買ってあげるわ!
ほら、だから機嫌直して?ねっ?」

義姉は私の顔を覗き込むようにしゃがみこむ。
その態度から反省していないのが見てとれる。
やっぱり何も変わっていなかった。
優しいふりをして、私がどう反応するか楽しんでるだけだった。

「王子様……私の王子様……」

早く、早く助けに来て。
こんな幻想いらない。
だから早くこんな苦しいところから、
私を助け出して欲しいの。

「全く、仕方のない奴だな
助けて欲しいなら、ちゃんと口に出せ」

周りの景色と、私の家族に大きなヒビが入っていく。
ヒビの中が光輝き、その光の中から、誰かの手が差し出される。

「私の、王子様……」

直感的にあの人だと気付き、差し伸べられた手を取る。
私が手を取ったのを確認すると、その手は私を引き寄せた。

◇◇◇

幻想から出てくると、私を引き寄せたのは王子様だった。
私が無事でホッとした顔をした後、呆れた顔をされる。

「全く、ろくに助けても口に出せないとはな……」

「ご、ごめんなさい……」

「良い、無事ならそれが一番だ」

「ねえ、私の王子様」

「何だ」

私は繋がれた手に空いていた手を繋がれた手に重ねる。
祈るように、すがるように。

「どうか私を拒絶しないで、どうか私を置いていかないで」

ギュッと、両手で強く王子様の手を握る。

「もう、あなたしかいないの……」

王子様はため息を付いた後、私に語りかける。

「…………瑠璃、お前は俺の正義を背負うつもりはあるか?」

「うん、王子様がそれを望むなら」

「なら、生涯俺に力を貸してくれ
俺のために、生きてくれるな?」

王子様の決意のこもった目を見て、自然と涙が出てくる。
この人は、私まですくい上げようとしてくれているんだ。

「ああ、本当にズルい人
私の気持ちには応えてくれない癖に、
すがる手を振り払ってはくれないのね」

「信頼には信頼で応える
ただそれだけの話だよ」

悔しそうに眺める伊織さんと白雪さんを尻目に、
王志さんが私達に近付いて話し掛ける。

「お二人とも大丈夫そうですね
私も結界を破壊した甲斐がありました」

そう言って、王志さんが優しく微笑む。

「あの、どうやって私を助けに来たの?」

「まず私が結界を能力で破壊して」

「俺が結界の隙間に入って引っ張り出した」

「本当に時人くん、無茶なことするよね……
まあそこもカッコいいんだけどさ!」

「うむ、やはり白雪王子は誰よりも美しいね!
僕のためでないのだけが残念だが……」

「流石にお前相手にここまではしないが?」

「酷いじゃないか白雪王子!僕も同じように助けてくれよ!」

「今回は王志さんがいたから出来た芸当だ
いつでも使える方法ではない」

「それで?あの少女の処遇はどうします?
あの様子を見るに、野放しは危険だと思いますよ
私は処分が妥当だと思いますが、
判断は零時さんに一任しましょうか」

「そうですね……」

零時は考え込む。
この少女を果たしてどうするべきなのか。
今彼女が消えるか生き残るかは、自分の判断で決まってしまうのだ。
零時が考え込んでいると、少女が零時に近付いてくる。
伊織達が警戒して武器を構えると、零時はそれを手で制する。

「今のこの子からは悪意も殺意も感じない
一旦は様子見をしよう」

少女が零時の側まで近寄ると、零時の手を掴む。

「良いな、良いな、幸せそう
すっごく大事にされてるの、すっごく幸せそうにしているの」

「私も愛されたかった、私も大事にされたかった」

「もう寒いところで寝るのは嫌なの
痛くて眠れない日を過ごすのは嫌なの」

無感情に話す少女の前にしゃがみ、零時は問いかける。

「それなら、君はどうしたい?」

「…………幸せになりたい」

「なら、幸せになるために、君は俺にどうして欲しいんだ?」

「…………………………パパに、なって欲しい」

「これからは人に迷惑かけないって誓えるか?」

「うん、パパになってくれるなら、誓う」

「それなら、家に来ると良い」

「話は終わりましたか?
まあ見た限り確実に連れて帰ることになりそうですが……」

「ああ、俺が連れていく
どのみち野放しにしたら危険だからな」

「と、時人くんがパパに!?
子供に好かれそうな料理覚えなきゃ……」

「その点僕は洋菓子店も経営しているからな
これは僕の方が一歩リードかな?」

「ぐぬぬ……絶対に負けないんだからね僕は!
時人くんの胃袋も、この子の胃袋も掴んで見せる!」

「ねえ、あなたお名前は何て言うの?」

「私……灯火 朱音ともしび あかね

「これから宜しくね!朱音ちゃん」

「!うん!」

「では依頼達成と言うことで、今日はここで解散しましょう
零時さんには、依頼達成のお金を渡しておきますね」

「ありがとうございます
では、またのご依頼をお待ちしておりますね」

◇◇◇

冥府探偵事務所にて……

三成は心霊スポットの対応を終え、
探偵事務所のソファで横になって寛いでいた。

「ふぅー、ようやく終わりました……
もう一歩も動けません……」

「三成、帰ってきてたのか」

「あ、零時さんお帰りなさい
もうー!大変だったんですからね私!
疲れて動けないので肩揉んで下さい!」

「帰ってきてそうそう図々しいなお前は……」

二人がやり取りをしていると、零時の足元から朱音が出てくる。

「ねえパパ、あの人誰?」

「ああ、あの人は俺の助手でな
三成って言うんだ
一応お巡りさんでもあるんだぞ」

「おまわりさんなの?」

「ああ、あれでもおまわりさんなんだ」

「え、女の子……零時さん隠し子いたんですか!?」

「そんなわけがないだろう
心霊スポットに住み着いてた怪異を連れてきたんだ」

「え、それ大丈夫なんですか?」

「野放しにすると危険な怪異だからな
監視もかねて娘として引き取ることにしたんだ」

「え、えぇーーーーーーー!?!?!?」

その日、三成の声は近所中に響き渡ったという……


【怪異】灯火 朱音が仲間に加わった!


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