冥府探偵零時

札神 八鬼

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本編

閑話 金色の海猫

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とある夢を見る。
それは、いつしか忘れてしまった遠い記憶。
まだ俺が生きていた頃の、幼い思い出。


砂浜の流木に座っていたのは、
幼い俺と、俺の姉ちゃんだった。

潮風が髪を撫で、姉ちゃんの金髪を揺らす。
空に輝く太陽を眩しげに見つめた姉ちゃんは、
嬉しそうに青い海を眺める。

「ねえ、本当に行っちゃうの?」

幼い俺が姉ちゃんに話しかけると、
姉ちゃんは視線を俺へと向け、笑顔で語りかける。

「ああ、行くよ
見てみたい景色があるからね」

姉ちゃんはキラキラとした目を、海の方へと向け、
再び語り出す。

「僕はね、海が好きなんだ
僕達の母さんがそうだったように、
僕は海の先の景色を見てみたいんだよ」

「でも、人間は怖い人が多いって、母さん言ってたよ?」

それを聞いて、姉ちゃんは悲しそうに笑う。
姉ちゃんの頭に生えた狼の耳は、
ペタンと横に倒れてしまっている。

「それでも、僕は外の世界を知りたいんだ
例えどんなに怖いことが待っていたとしてもね」

そう言って、姉ちゃんは名残惜しそうに俺の頭を撫でる。
姉ちゃんに頭を撫でて貰うのは今日で最後だと思うと、
何だかとても寂しい。

「姉ちゃんが獣人だって知られたら、
姉ちゃんも殺されちゃうよ……」

「大丈夫だ、僕は人間の血の方が濃いからね
そう簡単にバレることはないはずだ
それに、僕の特性をもう忘れたのかな?」

「確か、偽装だったよね……」

「ああ、僕の特性を使えば、
周りは僕のことを人間だと思うだろう
そう簡単に殺されはしないさ」

「本当?」

「ああ、本当だよ
僕が今まで約束を破ったことある?」

「…………ない」

「それなら何も心配はいらないだろう?
僕のことを信じて待っていれば良い」

「…………うん、待ってる」

「良い子だ
母さんと父さんを頼んだよ」

「分かった」

姉ちゃんは座っていた流木から立ち上がると、
歩いて海の方へと向かい、波打ち際で立ち止まり、
俺の方へと振り返った。

「僕はいつでも狼のことを想っていることを、
どうか忘れないでね」

「………うん、忘れないよ
いつか絶対に帰ってきてね」

海猫うみねこ姉ちゃん」

そう言うと、海猫姉ちゃんは嬉しそうに笑った。


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