「あなたって最低のクズね」と罵倒された最低ラスボスに転生してしまったので原作にない救済ルートを探してみる

水都 蓮(みなとれん)

文字の大きさ
13 / 31
第二章

第3話 リヴィエラの頼み

しおりを挟む
 その晩、俺たちは旧都でも古い歴史を持つ高級ホテルに泊まっていた。

「え、えっと……本当によろしいのですか、兄様?」

 リヴィエラはその豪華さに困惑していた。

「ああ。今日一日で随分と蓄えられたからな」

 だが、これだけの部屋を取っても懐は全く痛まない。

 ゲームでは蜂の巣から蜂蜜が二つか三つ採集できて、一つ辺り約5000シエルで売れる。
 しかし、この世界では蜂の巣丸ごと持ち帰ってしまえば、ゲームの値段よりも遥かに高額で売り飛ばせるのだ。

「コツさえ掴めばこれが一番稼げるな」

 デストロイ・ビーの労働者は、女王が生存している限り、どれほど距離が空こうと蜜を生産し続ける。
 つまり、デストロイ・ビーの蜂の巣は、無限に蜂蜜を生み出す金の卵を産むニワトリなのだ。

 俺が女王を討伐しなかったもう一つの理由がこれだ。
 群れの女王を討伐してしまえば、持ち帰った巣は一瞬で無価値な木くずになってしまう。

 さて、今回持ち帰った巣にはかなりの値が付いた。
 蜂の巣一個で20万シエル。それが10個で200万シエル。基本的に1シエル=1円なので、とんでもない儲けを一日で達成したことになる。

 無策で突っ込めばあっという間に毒針を突き刺されて、蜂たちにむさぼり尽くされる危険な作業だが、対策さえ立てれば極めて実入りの良い採集だ。
 これだから〝養蜂〟は止められない。

「これもリヴィエラのおかげだな」
「え……?」

 リヴィエラが不思議そうな表情を浮かべる。

「毒が中和できたのも、リヴィエラの加護があったからだ」

 俺はそっと彼女の頭を撫でる。

「いつかリヴィエラに返せれば良いのだが」

 俺の加護があれば、誰かに加護を分け与える事も出来るはずだが、その方法が分からないのだ。
 ゲームでも、ジークが実際に加護を与えるシーンは描写されていなかった。
 ゆくゆくは加護を分け与える方法を見付けて、リヴィエラに加護を返したい。

「さて、この金で今すぐ帝都に戻っても良いんだが、それよりもまず装備を整える必要があるな」

 オルトとの対峙は避けられないだろうし、帝都までの道中を安全に進むためにも万全の準備をしたい。

「それに……」

 ちらりとリヴィエラの方を見る。

「えっと……どうされましたか?」

 リヴィエラの身体にあった傷は完全に治癒した。
 しかし、衣服の方はボロボロのままだ。
 それは俺も同様なのだが、おかげで受付の時にかなり訝しむような目で見られた。

 人間らしい生活を歩むためにも、明日は衣服や装備などを整えるべきだろう。
 俺としてもリヴィエラにいつまでもみすぼらしい格好をさせるわけにはいかない。

「明日、服を買いに行こうか?」
「えっ……そ、そんな。そこまでお世話になるわけには……私はこの服で十分です」

 慌てたようにリヴィエラが遠慮した。

「十分じゃないさ。その格好で外を出歩くのは嫌だろう?」
「そ、そんなことありません。私は何もしてないのに、兄様にこんなに良くしてもらって。贅沢なんて言っていられません」

 なるほど、彼女はそんなことを気にしていたのか。
 だが彼女はまだ幼い。そんなことを気にする必要は無いのだ。それに……

「リヴィエラは今まで散々酷い目に遭ったんだ。だから、これから遠慮無く俺に甘えてくれ。そうでないとあの日、君が崖から落ちるのをただ見ていただけの自分が許せそうにない」
「そんな、兄様達が気に病む必要は……」
「とにかく、これは決定事項だ。リヴィエラは年下なんだから遠慮無く甘やかされてなさい」

 俺はそっとリヴィエラの頭を撫でる。

「……ありがとうございます、兄様。私、兄様と出会えて本当に良かったです」

 それは俺のセリフだ。

 原作で彼女は壮絶な目に遭った。その時の胸糞の悪さは今でも鮮明に思い出せる。
 それが妹のように思っていたリヴィエラだったことは衝撃だったが、俺はそんな彼女を救うことが出来た。
 プレイヤーとしての俺と、ジークとしての俺は心底、今の状況を喜んでいる。

「あの……それでしたら、一つ頼みごとをしてもよろしいでしょうか?」

 その後、リヴィエラが控えめに尋ねてきた。

 どうやら早速、リヴィエラが俺に甘えてくれるようだ。
 原作で不幸になった分、こうして彼女に何かしてあげられるのはとても嬉しい。

「もちろんだ。何でも言ってくれて良いぞ」
「そ、それでは……」

 リヴィエラがもじもじし始める。
 きっと、改まって頼み事をするのを恥ずかしがっているのだろう。
 可愛い妹だ。妹じゃないけど。

「その……お風呂に入れて欲しいです」
「……………………………………は?」

 俺は絶句した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...